PandoraPartyProject

シナリオ詳細

山羊のなる木とおいしい料理

完了

参加者 : 9 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●バロメッツ
 森林迷宮の一角に自生している植物であるプランタ・タルタリカ・バロメッツ・アスターはある程度育つと山羊が野菜のごとく実り、メエメエとないて肉食動物をおびき寄せる。
「モスグリーンな植物よね。けど、バロメッツだって無償で実りを与えるわけじゃないわ。見て」
 『色彩の魔女』プルー・ビビットカラー(p3n000004)がアクリル板のような魔術障壁越しに小部屋を指さす。
 背の低い木の上に、まるでおなかに木が突き刺さったかのような姿勢で子山羊がくっついているという奇妙な植物がそこにはあった。
 ここは深緑内に存在する博物館。バロメッツを展示するエリアに、プルーはイレギュラーズたちを案内していた。
 手元のパンフレットには『バロメッツの餌やりタイム!』と書いてある。
 ふと展示を見ると、バロメッツの小部屋に狼めいたモンスターが投入されていた。
 元気なロックウルフ。皮膚が硬く顎も強いことから岩石すらかみ砕くという野生モンスターである。
 餌やりどころか餌になってるじゃんと思う観客たち。
 ロックウルフがバロメッツめがけて牙むき出しで飛びかかった――次の瞬間。
 地面にあった植物からツタがのびロックウルフを高速。すさまじい力で引きずり込み、グワッと開いた隠し口に飲み込まれていった。
「このように、バロメッツは山羊部分を囮にして獲物を呼び寄せ、近づいてきたところを食らうという食獣植物なのよ」
 厳密にはバロメッツもどきと言って、民間伝承にある『羊のなる草』から名付けられたものである。
「バロメッツの肉は変わった味をしていて……そうね、一番近いのは『かにかま』かしら」
 実際に食べると、チキンのような歯ごたえや食感をしつつ、味わいは高級カニカマっぽい。
 町中にはバロメッツ料理の専門店なんかもあり、地元の生活に割と密着した植物(?)であるらしい。
「今回はバロメッツ卸業者からの依頼で、バロメッツ肉の調達を頼まれてるわ。
 森に入って、バロメッツの抵抗をおさえながら肉を調達して頂戴。肉を求めてやってきた野生モンスターとも戦闘になると思うから、ある程度は手分けしたほうがいいわね」

 まとめると、依頼目的はバロメッツ肉(上についてる子ヤギ部分)の収穫。
 収穫にあたってはバロメッツの抵抗を抑えつつ上手にゲットする係と、集まってきている野獣と戦い追い払う係の二つに分ける必要があるということだ。
「あんまり大勢固まって動いても非効率だから、三人一組で分散するのがお勧めよ。それじゃ、頑張って」
 プルーは手を振って、展示室から出て行った。

GMコメント

 森でバロメッツを収穫します。
 このシナリオではチーム分けとパート分けがあるので、それぞれ解説していきましょう

・チーム分け
 全員一組で動くのは効率がよくありません。
 得意分野をそれなりにバラけさせた三人×三組でいどむのがベターでしょう。
 後述する内容にもよりますが、『素早い人』『かたい人』『遊撃担当』で組むのが基本になります。

・バロメッツ発見パート
 森の中でバロメッツを見つけるのはそう難しくありません。
 メーメー言ってるし、獣も集まってるし、特別なスキルやプレイングがなくても発見できます。よって捜索プレイングはカットしてOKです。
 メインとなるのは、バロメッツの肉を今まさに食らおうとしているモンスターたちです。
 彼らは1~2匹くらいは犠牲になるだろうけどそれでも肉をゲットして持ち去ろうと群れで挑みかかっています。
 バロメッツが奪われないように、このモンスターたちを撃退してください。

 ここで出現するモンスターはランダム、というかどれと遭遇するかわかりません。
 主に狼型、猿型、鳥型に分かれますが特別対応すべき戦闘スタイルではないので、それぞれ得意なことをぶつけて追い払ってしまいましょう。

・バロメッツ収穫パート
 モンスターたちはそれでも諦めずに仲間を呼ぶので、これを継続的に迎撃しつつ、仲間のうち1~2人を用いてバロメッツ肉を回収します。
 これには回避、反応、機動力といったものが判定要素となり、加えてプレイングでかけた工夫や持ち込んだ道具などで行為判定が行われます。(極端な話、回避がウン百あったからといって自動成功はしないので、工夫や頑張りをプレイングにしましょう)

 バロメッツ側はツタで拘束したり葉っぱを飛ばして斬り付けたり茎をシュッて動かして肉部分への攻撃を回避したりと様々な対応をとってきます。
 これに対し『できるだけ肉部分を傷つけないように』回収してください。具体的にはクキのつけね辺りを斬ったりちぎったりする形になると思います。

・オマケパート
 収穫が順調にいった場合、バロメッツ専門店で料理がいただけます。
 バロメッツ料理といっても想像つかないかもしれないので、PCの好きな料理や好きな味付け、食事するときの癖やスタイルなんかをプレイングに書くとアドリブ反映されることでしょう。

■■■アドリブ度■■■
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用ください。

  • 山羊のなる木とおいしい料理完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年06月28日 22時05分
  • 参加人数9/9人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 9 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(9人)

クロバ・フユツキ(p3p000145)
深緑の守護者
シャルレィス・スクァリオ(p3p000332)
蒼銀一閃
レンゲ・アベイユ(p3p002240)
みつばちガール
ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)
奈落の虹
湖宝 卵丸(p3p006737)
蒼蘭海賊団団長
アルメリア・イーグルトン(p3p006810)
緑雷の魔女
ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)
私の航海誌
ジュルナット・ウィウスト(p3p007518)
風吹かす狩人
ハンス・キングスレー(p3p008418)
運命射手

リプレイ

●ばろめっつのうた
「メッツ~メッツ~バロメッツ~」
 銀のフォークを指の上でくるくると器用に回しながら、『私の航海誌』ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)は楽しげに森を歩いて行く。
「楽しい狩りの時間がはじまりますよ~!」
「割と地域性のある食材だよね、バロメッツ」
 『魔風の主』ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)は顎を軽くなでながらバロメッツの味を思い出していた。
「深緑から出るとすぐに見なくなるから、殆ど地消してるんだろうね。確かに足の速い食材だし……」
「そ、そうよね! 足がとっても速いのよね! 一度逃げると大変で――」
「え?」
「えっ?」
 『みつばちガール』レンゲ・アベイユ(p3p002240)は(しったかぶりで)話を合わせようとして、ぶわりと額に汗をかいた。
「味が……逃げる……的な……」
「ああ、三日たったバロメッツってだいぶ悲しい味がするもんね」
「そうそう! 悲しいわよね! そりゃあもう有名な珍味だものね!」
「ん?」
「んっ?」
「バロメッツ……」
 『風吹かす狩人』ジュルナット・ウィウスト(p3p007518)は目を細めて遠い空を見た。
 前に食べたのは何十年前だったかなあという顔である。
「実物をあんまり食ったことが無いけど、覚えてる範囲では美味しさは保証できるヨ。
 見た目が奇っ怪なほど美味しかったりするのは、まあ不思議な自然の摂理だネ」
「そ、そうよね! 奇怪なバロメッツほど美味しいのよね!」
「ン?」
「んんっ!?」
 はやくもボロが出始めるレンゲであった。

「ダイナミックな植物ね。ダイナミックな植物ね。一瞬頭スイカなアイツがかかわってるかと疑ったわ……」
 なにかと故郷にカルチャーショックをうけるという経験を重ねる『緑雷の魔女』アルメリア・イーグルトン(p3p006810)は、若干の慣れと共にバロメッツの存在を受け止めていた。
「味は分からないけど美味しいものが食べられるらしいし、今回もがんばりましょ」
「べっ、別に卵丸、珍しいお肉が気になった訳じゃ、ないんだからなっ」
 腕を組んでフンッて顔を背けてみせる『蒼蘭海賊団団長』湖宝 卵丸(p3p006737)。
 見るからにツンデレムーブだったのでアルメリアが二度見した。
 そして安定したムーブで話を切っていく『讐焔宿す死神』クロバ=ザ=ホロウメア(p3p000145)。
「擬態して獲物を狩る植物か……料理すれば美味らしいが」
 片目を押さえ、ニヒルに唇の片端だけをあげてみせるクロバ。
「敵対する魔物が居るなら俺たちがそれを狩るだけだ」
「だね! みんなで頑張って収穫しよう!」
 クロバのこの、何事にも真剣(マジ)っぽいテンションにおそらくかなり慣れてそうなシャルレィス。眼帯を指のさきでくるくるとやりながら笑って見せた。
「それにしても山羊がなる木だなんてやっぱり深緑は不思議がいっぱいだね!」
「ほんとですねえ」
 『虚刃流直弟』ハンス・キングスレー(p3p008418)はほこほこした表情で、地面からちょっと浮いた状態で仲間達と共に森を進んでいた。
 美しい羽を羽ばたかせゆっくりとホバリングしている。
「それにこういう〇〇狩り、みたいなのちょっとだけ憧れてたんです。楽しみですね!」
「ね!」
「山羊ですけど!」
「ね!!」
 そんなこんなで、今回はこの九人でバロメッツ狩りと相成ったのでありました。
 彼らの未来や、いかに。

●バロメッツ狩り
 メエメエとなくバロメッツ。
 その周りには肉食動物系のモンスターたちが集まり、バロメッツから山羊部分(果肉?)を奪おうと迫っていた。
「それを食べるのは卵丸たちだっ!」
 風のようなスピードで割り込んでいった卵丸が、ギンイロオオカミの腹を蹴飛ばした。
 バロメッツは近づかなければ危害を加えないがこうして途中で取り合いになった場合は文字通りの生存競争が巻き起こる。
「お前達にあのお肉は、渡さないんだからなっ!!」
 ナイフとドリルを構える卵丸に、低く唸ったオオカミたちが取り囲む。
「伏せて」
 ウィリアムはそう短く述べると、森の魔力を取り込んで手のひらへと集めた。
 咄嗟に身を伏せる卵丸の頭上を、ウィリアムの放った魔術が暴風の如く通り抜けていく。
 具体的に言うと瞬間的に生成された『命のない種』が弾丸となって水平に乱射され、オオカミたちへと着弾。弱い個体はそれだけで力尽き、そうでない個体もウィリアムや卵丸の脅威が割に合わないと判断したのか逃げを打った。
「これであとはバロメッツを奪うだけ――」
「とは、ならないみたいだネ」
 ジュルナットは空を見上げ、風食鳥の群れが集まってきているのを指摘した。
 いや、それを示した時には既に弓に魔法の矢をつがえ、空に向けて放っていた。
 回転をかけて打ち上げられた矢は羽根部分についた笛で風の魔法を連鎖発動すると、周囲の風食鳥たちめがけてフェレシェット弾よろしく空圧針を乱射していく。
 『さあ今の内に』と首をかしげることでジェスチャーするジュルナット。
 卵丸は頷き、バロメッツへと走り出した。
 バロメッツの果肉を狙うのはオオカミや鳥ばかりではない。ファルカウスモールデビルと呼ばれる鋭い鉤爪を持った猿型モンスターもまた、バロメッツを目指して枝から枝へと飛び移っていた。
 負けるものかと加速する卵丸。
「邪魔になるモンスターの排除は任せてね」
 ウィリアムは先ほど撃った魔術を再び行使。枝葉を防壁代わりにしてファルカウスモールデビルは弾幕をかわすが、そうすることを先読みしていたウィリアムは別の魔術を高速発動。
 モンスターというよりその周囲にある空気をまるごと爆発する魔術によって、足を止めたファルカウスモールデビルを滅殺した。
「こんな所かな。後は卵丸が何とかしてくれるんじゃないかな。頑張れ卵丸!」
「ええっ!?」
「ジュルナットが援護してくれるから」
「エッ?」
 ジュルナットは苦笑して、しかし弓の狙いを素早くバロメッツへと向けた。
 放たれた矢は不思議な軌道を描き、卵丸を拘束しようとのびたツタをスパンと切断しながら飛んでいく。
 こういう状況で一手奪うということは、すなわち勝利を意味していた。
「貫け、轟天GO! からの音速の一撃、大人しくお肉をよこすんだぞっ」
 卵丸はドリルをバロメッツの根元に打ち込んで動きを(文字通り?)根元から阻害すると、逆手に握ったナイフでもって果肉をささえる茎部分を切断。転げ落ちたバロメッツの果肉を抱え、一目散に撤退した。
「回収完了!」
「さ、モンスターが集まる前においとましよう」
 ウィリアムとジュルナットは適度にモンスターたちに牽制射撃を加えつつ、卵丸と共に撤退した。

 深い森の中。枝から枝へ飛び移るようにしてジグザグに駆け抜けていくシャルレィスの姿があった。
 目標はバロメッツ。
 同じものを目指して枝を飛び移っていたファルカウスモールデビルの横を素早く追い抜いていくが、そのたびにファルカウスモールデビルが弾き飛ばされ、ぼてぼてと地面へ落下していく。
 彼らにはとらえられないくらいの早業で蹴りを入れていることに……真下を走るウィズィニャラァムは気づいていた。
「うーん、さすが……」
 ウィズィニャラァムの左右から、進行阻害するかのように牙を剥いたギンイロオオカミが飛び出してくる。
 茂みに隠れたり陽動をはかったりと彼らなりの連携をしてはいるが……。
「連係プレイは得意なので――ねっと!」
 巨大ナイフの柄を使ってはじき返したりブレード部分で噛みつきをガードしたりと、ウィズィニャラァムは棒術の動きでぐるぐる回りながら攻撃を弾いていく。
「知恵は使えどもやはり獣ですね。ヘイトコントロールがだいぶ有効みたいです。
 さあ、Step on it!! どんどんかかってきなさい!」
 挑発的に足をとめてみせるウィズィニャラァム。
 ここぞとばかりに首筋を狙って跳躍するオオカミめがけ、黄色い星型の手裏剣めいた光が直撃した。
 星はパチンとはじけ、オオカミは衝撃で地面に転がる。
「まだまだ殺さないわよ。後でちゃーんと利用するんだから!」
 レンゲは空中に50㎝ほど浮かび上がり、黄色と茶色の模様がついたタンバリンをしゃらんらしながら構えていた。
「どんどんいくわよ!」
 反復横跳びの動きでタンバリンをぱんぱか鳴らすたびに星が飛び、ウィズィニャラァムを狙うオオカミたちを打ち落としていく。ウィズィニャラァム視点からは蜂少女がどや顔ダンスでこっちを煽ってきてるように見えるが、レンゲ視点からはダンスとタンバリンのリズムゲーでオオカミを打ち落とす感覚だった。
「うーん、さすが……」
 太い枝を鉄棒みたいに逆上がりジャンプしてストンと着地するシャルレィス。
「邪魔はだいたい排除できたみたいだね。空のアレは私が対処するから、バロメッツはお願い!」
「オッケー! あたしにドーンとまかせなさい!」
 腰にタンバリンをあてて胸を叩くレンゲ。空中で胸を張りまくったので軽くブリッジしかけたが、ぴょこんと上半身を戻し(触覚をみょみょんとゆらし)タンバリンを本気モードで構えた。
「走って、ウィズィ!」
「いえす!」
 言われたとおりに走り出すウィズィニャラァム。
 バロメッツは彼女を迎撃すべく葉っぱを回転ノコギリのようにして発射した。
 ――が。
「そこよ!」
 レンゲがタンバリンをフリスビーのように投擲すると、ぱかーんという小さい花火のような音をたてて葉っぱのカッターが空中で破壊された。
 一方で、シャルレィスは空から急降下突撃を仕掛けようとする風食鳥たちめがけて風の刃を連射。まるで蜘蛛の巣のごとく張り巡らされた斬撃の線が鳥たちを破壊し。その一部を生きたままバロメッツの頭上へと落とした。
 ハッとして捕食モードに入るバロメッツ。
 そこへ猛烈な勢いで接近していくウィズィニャラァム。
 バロメッツはどちらにも対応すべく、まずは伸ばしたツタでウィズィニャラァムの両腕を胴体ごと拘束。
「ぎゅむっ!?」
 『きをつけ』の姿勢で転倒したウィズィニャラァム……だったが、仕込みナイフで素早くツタを切断。ビーチフラッグ選手のごとき俊敏さでバロメッツへ迫った。
 対処が済んだとおもって油断していたバロメッツの首(?)をかくことはそう難しくない。
「その茎、もらったッ!」
 ナイフで茎を切断。片手でむんずと山羊の首をひっつかむと、そのままの足で駆け抜けていった。

「初手から――」
 空に突き上げたアルメリアの手のひらを中心に、巨大な魔方陣が展開。
 外縁部に配置された魔術式がばちばちと大量のスパークを起こし、残像現象から緑色に発光した。
 そしてその全てがあたり一体にまき散らかされる――かと思いきや、アルメリアがもう一方の手から発射したポインティングマジックによって風食鳥単体に集中。とてつもない電撃によって、鳥がまっくろになって落下した。
「全力でいかせてもらうわ」
「――!?」
 いくら犠牲を厭わないといっても、仲間が一瞬で炭になるのを見て平気でいられる動物は少ない。
 本能的にアルメリアから距離をとろうと飛行したまさにそのタイミングで、木の枝を蹴って飛び出したハンスが稲妻のようなジグザグ飛行を繰り出した。
 もし高い動体視力をもっていたなら、彼が装着した具足から『在らぬ鉤爪』が生まれ鳥たちを次々に切り裂いていったのが見えただろう。
 太い木の幹へむけ宙返りからのクイックターン。
 バロメッツへの直線ルートをとろうと身体のバネをグッとしぼった。
 それを阻害すべく飛び上がる猿型モンスターたち。
 一匹や二匹が倒されてもいいように何匹もがライン上に割り込んだが、ハンスはためらわなかった。
 なぜなら。
「無想刃・吹斑雪――」
 ガンエッジ・フラムエクレールを構えたクロバが、ある剣士特有の構えからレバーを握り込み、豪快な斬撃を繰り出した。
「【劣】」
 光の斬撃が何十本も一度に走り、その間を突っ切っていくハンスだけを残して猿たちだけを切り払っていく。
 ハンスが狙うは超高速の一撃離脱。バロメッツの果肉だけをかっさらう猛禽類の如きハントだ。
 が、その一方でバロメッツを挟んだ向かい側から大量のギンイロオオカミが出現。
 食らいつくオオカミの牙を回避すべく、ハンスは素早く軌道修正をはかった。
 ぐわんと風を鳴らし、カーブをかけるハンス。しかし諦めること無く別の樹幹に足をつけ、再びの突撃を計画した。
 一瞬のことである。
 だがしかし、アルメリアとクロバはその一瞬で意図を読み取った。
「上手くいったらお慰みってね……!」
 魔方陣に指をたて、ダイヤルを回すように属性と規模を素早くチェンジ。
 五行思想を例に取るまでも無く、この世の自然元素は一定のサイクルをとって繋がっている。例えば熱の移動は風になり、風によって起きたプラズマ移動は雷になる。その計算式を理解していれば、魔術を一瞬で組み替えることもまた可能なのだ。
 渦巻く風を引き起こし、その全てを刃にかえるアルメリア。
 オオカミが一瞬にして切り刻まれる一方、クロバはオオカミの群れ……というよりバロメッツへと飛びかかって再び『無想刃・吹斑雪【劣】』を繰り出した。
 光の巨大な回転切りがオオカミたちを切り払う。バロメッツはそれをツタでの防御やかしげる動作などで防いだが――直後に突き抜けていったハンスの鉤爪がバロメッツの果肉を切り取って急上昇。
 文字通りにかっさらっていった。
「肉は手に入れたよ。さ、帰ろう!」

●美味しいは嬉しい
「私は肉だったら甘辛ダレが絡めてあったり胡椒たっぷりだったりとにかく何でも好きだけど……バロメッツって肉なの!? 野菜なの!? どっちなの!?」
 バロメッツ料理専門店。
 赤い中華テーブルの一角でお箸をカチカチしていたシャルレィスは、誰もが抱く疑問を口にした。
 圧倒的せやな。
 ぱっとみ山羊なので山羊肉の味がしそうだが、全体的には植物なのでキュウリとかナスとかの味がしてもおかしくない。けど獣を捕食してるから肉っぽいのかもとも思える。
 ぐるぐるする思考のなか、レンゲは両肘をテーブルについて口の前で指を合わせるように組んだ。
 ちなみにこの姿勢、シャーロックホームズハンドっていうよ。
「あたし、お肉はあっさり塩味で食べる派なの。
 でも野菜にはドレッシングやソースをたっぷりかけたいわ。バロメッツははたして」
「えっでも前に食べたって――」
「ももちろん食べたわよたとえ話に決まってるじゃ無いフフフーン!」
 口調がぶっ壊れるシャーロックレンゲ。
「百聞は一見にしかず。もとい一食にしかずよ」
 アルメリアは注文したバロメッツチョップ(ラムチョップみたいなやつ)を前に、おしぼりて丁寧に手を拭いた。
 テーブルマナーがどうとかを一旦忘れて、紙ナプキンで包まれた骨部分を握って直接がぶりとかじりつく。
 ソースのふんわりとした香りとわずかな湯気。熱気を未だにはらんだ肉を食いちぎって咀嚼すると、歯ごたえはどこか鶏肉もも肉に似ていた。
 そして肝心の味だが……。
「ど、どう?」
「ひとことでいうと……」
 集まる注目。
 前髪のせいで全然表情がわかんないが、アルメリアはチョップ片手にパァって顔(?)を明るくした。
「蟹だわ!」

 バロメッツ豆知識。
 土からはえて山羊がなるバロメッツの肉は、蟹の味がする。
 身がものすごく引き締まってそしてぶっとい蟹の身を想像していただきたい。
 クロバはそれをネギ塩焼きにしたものを箸でつまみ、豪快にかぶりついた。
 歯ごたえと良いうまみといい、予想していたものとだいぶ違う味だがめちゃくちゃ美味い。
 正直今すぐ醤油とごはんがほしい。
「いや……鍋もいいな、これは」
 目をキラキラして料理をのぞき込んでいた卵丸が、視線にきづいてぷいってした。
「卵丸、別に期待なんかしてなかったんだからなっ」
「なぜそこでツンデレになる」
「バロメッツ料理といえば……」
 ウィリアムがバロメッツ肉とニラと春菊をニンニク醤油で炒めてあんかけにした中華丼みてーなやつを手にしていた。
「やっぱりこれだよね。ファナバナファッサゴベナ」
「ファッ……!?」
「ファナバナファッサゴベナ」
「呪文……かな……?」
「端的にいうと、郷土料理かな。深緑の西の方でよく見るよ」
「へえ……そっちだと濃い味付けにするんだネ」
 ジュルナットは薄切りにしたバロメッツ肉を煮立った森昆布のだし汁にとおすバロメッツしゃぶしゃぶを楽しんでいた。それに酢醤油をちょっとつけて食べるという贅沢である。
「うメェ〜、なんてネ!」
「地域差? 地域差なのかな……」
 どっちかというと薄味好きなハンスは同じようにしゃぶしゃぶを楽しんでいたが……。
「こんなにあっても食べきれないし、少し包んで貰ってあの師匠くんや仲間へのお土産にしよっかな」
「あっ、い~~~~~~ですね~~~~~~~!」
 ウィズィニャラァムがバロメッツキムチをクラッカーにのせてチーズで覆い焼くとかいう悪魔の食いもんをサクサクしながら片手にビールジョッキを掲げていた。
 完全にできあがっている。
「はぁ~世の中にはうまかモンば色々あるったいね~。
 これ持ち帰りできます? おうちでハニーと食べるの☆」

 こんな具合に、彼女たちはバロメッツ料理を堪能したのでありました。
 めでたしめでたし。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 キムチ鍋の素にカニカマを一晩つけたやつを食パンに並べてあの細切りみてーなチーズをまぶしてオーブンで2~3分焼くと悪魔の食い物になりますよ。終盤でてきたあのクラッカーなんちゃらを疑似体験したい方にお勧め。

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