シナリオ詳細
伝承の頭領に挑め!
オープニング
■それは戦国時代の先駆け
昔々。世は疫病に見舞われ人々は苦しみ悶え死んでいく。
それでも国の中央は何もしない、否、そんな力がない時代があった。
そんな国を見限って、六人の侍が中央を捨て旅に出た。彼らが目指すは中央の影響力の少ない、地方。
一つはその地方に重税を課し、私腹を肥やす悪徳侍を討伐する為に。
もう一つ、その地方に自らの国を興すという野望を胸に。
彼らは一つの決まりを作っていた。それは次の戦いで一番の功績を立てた者を頭とし、付き従う事を。
そして一人の男が頭となる。
その男は口先ではぶっきらぼうでめんどくさがりで、優しさの欠片も見せないような男だったが。その心に秘めた情熱は誰よりも熱く、決して困っている人を見捨てない優しき男であった。
そんな彼を侍も、民も慕い。その勢力は次第に広がっていき、一地方を完全に治めるにまで至った。
皮肉にも、そんな彼の存在が世を戦国時代へと変えていくのだが……彼は、死の間際まで戦った。戦い抜いた。
それは全て。
「俺を慕う奴を見捨てて生きられるかよ」
「俺を慕う奴を見捨てて逝けるかよ」
ただ、それだけの為に。
彼の死後、その地方は急速に力を失い。後の英雄に完全に飲み込まれる事となる。
そして皆が思う。彼が生きていれば、歴史は違ったのだろうかと。しかしそれは詮無きこと。彼は前の時代の人物なのだから。
■しかして人々の想いは彼を立たせる。
「もう世は平定して平和になっているんだけど、人々の『もしかしたら』という想いが、彼をこの世に呼び起こしてしまったようなんだ」
境界案内人のカストルは、一冊の本を手にそう告げる。
集まったイレギュラーズ達は、再びの強敵の登場にざわめく。
「彼は平和になった世を見て納得はしてるんだけども。折角蘇ったのだから、一度ぐらい暴れてから戻りたいと願っているようなんだ」
だから、これは単純な腕試し。
世の中がどうとか、民がどうとか関係ない。
もしかしたら初めてかもしれない、彼による彼の為の戦い。
- 伝承の頭領に挑め!完了
- NM名以下略
- 種別ライブノベル
- 難易度-
- 冒険終了日時2020年06月23日 22時20分
- 参加人数4/4人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 4 人
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参加者一覧(4人)
リプレイ
■誰が為の喧嘩
「おう、きたか。待ちくたびれて寝ちまうとこだったぞ」
川の中ほどに位置する小さな島。そこで一人座っていた男はイレギュラーズの姿を見るなりそう言って笑う。
しかし顔は笑っていても、その身に宿る覇気は隠せない。否、隠していない。
「俺はベネディクト=レベンディス=マナガルム。いざ、尋常に」
その覇気に応えるように、『ドゥネーヴ領主代行』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)は眼前に歩み出る。男の瞳をまっすぐに見つめ。
「いい目をするじゃねぇかボウズ。そっちの嬢ちゃん達もな」
無精髭を撫でながら、イレギュラーズを観察する男は。口の端に笑みを零す。何の気兼ねもない、ただ純粋な『喧嘩』など、いつぶりであろうかと昂ぶる。
「この身は門を潜りたての若輩にございますが……『加減』を誤りませぬよう」
「正々堂々力と力のぶつかり合い、お相手仕ります」
『二人でひとつ』桜咲 珠緒(p3p004426)と『二人でひとつ』藤野 蛍(p3p003861)の繋がる手が、力を分け与える証。共に戦い共に生きる、その誓い。
「若いってのはいいねぇ……そうは思わないか? そこの、川に潜んでるボウズよ」
二人を見て緩んでいた瞳が一気に険しくなり、川の一点を見抜く。そこに潜んでいたのは『艦斬り』シグ・ローデッド(p3p000483)だ。ざばん、と水面から顔を出す。
「戦う前から見抜かれていたとはな……」
「おっさんを甘く見るんじゃねぇって事だ。それがお前さんの戦いなら文句はつけんがな」
そう言葉にされ、シグは一度考え……再び水中に潜む。川の流れは今は緩やか。強敵を相手どるならば、不意を打てる可能性のあるここから出る理由はない。例え、存在を知られていたとしても、だ。
「先に一つ言っとくぜ若造。俺はな、自分の為の喧嘩ってなると……楽しくて仕方なくなるんだ!」
その咆哮と共に気魄が漲る。気を抜けばこれだけで飛ばされてしまいそうな程の、しかし、なんでもないはずの咆哮。
しかし対するイレギュラーズ達も若いとはいえ、一騎当千の猛者ばかり。誰一人として怯む事なく、得物を構える。
■背負う者なき猛獣
「いくぜぇ!」
ゆっくりと歩を進める男に対し、蛍は油断なく身構える。
彼女が己に課した使命は唯一つ。愛する珠緒を守り抜く。その為に、ベネディクトにもシグにも無茶は言った。しかし二人も納得済みだ。
背負う者がある猛獣は、とても強い。ならば、背負う者なき猛獣は?
「ふっ!」
「くぅっ!?」
その答えは男が持っている。蛍の脇腹を狙った蹴りに対し、彼女は的確に防御壁を構えた。しかしそれを見抜いたのか、蹴り出した足を強引に地に落とし、逆の足で脛を狙ってきたのだ。
なんとか応対する蛍だが、その威力は削りきれるものではない。衝撃に歯を食いしばって耐える。
水中から男の動きを見つめていたシグが、水中で魔剣を形作る。一時的に川の水がシグより離れ、現れた道筋を剣から伸びたエネルギーの流れが暴れ奔る!
「おぉっと!」
仕込み刀でエネルギーの奔流を受け、そのまま払う男。直撃は避けたようだが幾らかの威力はその手の痺れとして残る。
「やるじゃねぇかボウズ……!」
「おっと、俺も忘れてくれるなよ!」
水中のシグへと視線を走らせる男に、挑発的にベネディクトが笑う。
拳の代わりに突き出すは、右の手に握られた槍。鍛え上げた胆力から放たれるは、黒狼の叫び!
「ぐ、ぉぉ!」
「今です!」
ずっと男の動きを観察していた珠緒が遂に動く。蛍に守られ、また蛍に与えられた力。それを一気に開放する。
珠緒から飛び散る桜の華は男の腕にべっとりと張り付き、それが幾重にも。
「なんだ、こいつは……!?」
血のように染まる……いいや、逆だ。植物の根のように広がる血に男は戦慄する。確かに、少しずつだが力が奪われている。
それが幾つも、だ。
「なるほど……一番厄介なのは、お前か……!」
男が珠緒に振り向く。猛獣が獲物を見つけたかの如き笑いを浮かべ、ゆっくりと、しかし威圧感を増して歩く。
シグに焼かれた手も、ベネディクトに貫かれた腹も痛むはずであろうに。そんな素振りは一切なく。
「させないよ!」
珠緒をかばうように、蛍が彼女の前に出る。己の矜持を、そして愛する人を守る為に。
「いいねぇ、その目。きっと俺も昔はそうだったんだろう、な!」
珠緒を投げ飛ばすべく男が腕を伸ばすが、その腕を蛍の手が払いのける。
大の男にも負けない。それが、彼女の想いの強さ故に。
■傷ついた猛獣
「後ろに下がるな、か。だがお前さんから飛び出したらどうなんだ?」
男の隙をつき、シグが川から飛び出して空気の壁を作り出し、壁ごと男へぶつかりかかる!
しかし男は目に見えない壁を両の手で受け止め、吼える。
「この程度の壁、ぶち壊すに決まってるだろう!」
「なんて奴だ……!」
目に見えない壁を拳で突き破り、あろうことかシグごと殴り飛ばそうとする。すんでのところで身体を逸したシグが冷や汗をかく。
枷を外した猛獣は、かくも危険なものかと。
「これは確かに古強者だ……!」
幾度目かの槍撃を放ちながら、ベネディクトは畏怖と歓喜が入り混じった感情を抱く。
それは先に死んだ者への敬意か、はたまた強者と戦える事への感謝か。
「大丈夫ですか、蛍さん?」
「ええ……まだ平気だよ」
シグとベネディクトが男を押さえている間に、珠緒は傷ついた蛍の身体を癒やす。何重にも重ねられた治癒魔術はすっかり蛍の傷を消し、体力を取り戻す。
普段ならばこれだけの大量魔術を行使すれば力尽きるものだが、蛍に預けられた力が活きている。まさに『二人で一つ』。
「いいね、いいねぇ……!」
一人で戦い血を流す男。だがその気力は未だ尽きる事なく、まだまだやる気を見せている。仕込み刀を引き抜き、全員を斬りつけるように豪快に振り回す!
「か、は……」
至近距離でまともに受けてしまったシグだが、血を流し息を吐きながらも賦活の力を呼び起こしすぐに自己治癒を行う。
「シグさんは大丈夫、蛍さんも……ベネディクトさんは!?」
「俺もまだ余力がある……最後まで付き合うさ!」
蛍に庇われ無傷な珠緒が戦場を見渡す。常に男に相対していたベネディクトが、額から血を流して頬も足も斬れているが、まだ笑っている。
男への返礼とばかりに、愚直に槍を前に出し、踏み込む。
「無理はしてはなりません」
蛍の背に守られた珠緒が、ベネディクトへの治癒術を施す。傷が塞がり血が止まり、彼の肌が美しさを取り戻す。
「なぁるほど、こりゃあ確かに一人じゃ勝てんな」
イレギュラーズの連携を見た男が、諦めたかのように呟く。その言葉を耳にした全員が、思わず動きを止める。もう勝ったのかと。
「だけどな……俺は諦めが悪いんだよ!!」
一度俯いた男が、笑う。嗤う。そして吼える!
その叫びはまさしく魂からのもの。イレギュラーズ全員の魂を揺さぶっていく。闘争への誘いをかける。
「もっと、もっとやろうぜ! この喧嘩をよぉ!!」
その叫びに、シグとベネディクトが応える。魔炎の剣と黒狼の槍が男を喰らうべく襲いかかるが、まだ男は倒れない。二人を殴り飛ばし、肩で息をする。
「まだ、だよ!!」
更に蛍が叫ぶ。桜の色に染まりし剣を上段から振り下ろす!
「甘ぇよ!」
その剣を、男は素手で受け止める。手のひらが切れるが、そこまでだ。
蛍も男も、動かない。いや、僅かに男が剣を押し返し始めている。
「……かかったわね」
「なにぃ?」
薄く笑う蛍に、怪訝な表情を向ける男。シグとベネディクトは先の攻撃の反動からまだ動けていない、蛍は目の前で止まっている。
もう一人、いるのだここには。
「術を込めた『ただの突き』です。拙く恐れ入ります」
たやすく折れそうな細い腕に、魔力と、愛を握りしめ。無防備になった男の腹へ、小さな拳を突きつける少女が、いたのだ。
「……は、はは。俺の負けだぜ……」
■眠る猛獣
「……満足は出来たか?」
戦では拳は合わせられなかったから、と。ベネディクトが倒れた男へ拳を突きつける。
弱々しくこつん、と拳を突き合わせ、二人の男は笑う。「満足だ」と
「……お前さんは人の願いを叶える為戦い続けた。……だが、お前さんの闘いによって、本当に人は幸せになれたと思うかね?」
笑う男に、シグは問いかける。長き間知識を代償として人々と交わり、何度も悲劇を見てきた彼故の問い。
それに対し、男は……。
「知るかよ。俺は結局、自己満足の為にやりきっただけなんだ。それで幸せになったかどうかは、俺が決める事じゃねぇ」
これから生きる奴らが決める事だ。
コホ、と血を吐き空を見上げながら、男は笑っていた。
「じゃあ……ボク達はきっと、幸せになるね」
再び珠緒と手を取り合った蛍が、そう宣言する。
「おう、しっかり幸せになりな。跳ねっ返り娘」
『アイツ』を思い出すぜ……と小さく小さく呟いたのは誰にも聞こえておらず。それは在りし日の思い出の中のみに。
「ええ、ええ。勿論」
ふわりと珠緒が笑ったのが、彼が最期に見た光景であった。
「彼は、強くも寂しい人だったのかもしれないな」
流れる川を見下ろし、シグは思う。
誰かの為に戦う事が、己を表現できる唯一の事だったのか、と。
「ああ……そうかもな」
ベネディクトが最期の彼の手を思い出す。幾多の戦場で傷ついた、無骨な手を。
いつしか己の手もそうなるのであろうかと、ふと思いを馳せ。
「ボクは蛍、藤野蛍。行き先を照らすものよ!」
「名乗るは珠緒。宝を繋ぎとめるものにございます」
二人でひとつ。彼女達ならば、きっと違う道を見つけ歩む事であろう、生涯を共にして。
成否
成功
状態異常
なし
NMコメント
ようやく伝承シナリオの続きができました以下略です。
今回の敵は一人。小細工はしてきませんが、強敵です。
またフィールドが少々特殊です。お気をつけを。
以下敵詳細
■剛勇の頭領×1
仕込み刀を装備した初老の男。HP、攻撃、命中が極めて高く、防技も高め。反面機動力と回避は歳のせいか低めですが……。
Pしゃらくせぇ!:全BS無効。全攻撃に【ブレイク】付与
A蹴撃:物理至近単体攻撃。【弱点】
Aぶんまわし:物理自分中心範囲攻撃。高威力。
A巴投げ:物理至近単体攻撃。【体勢不利】【防無】
EXいいぜぇ、かかってきな!:戦場全域、神秘攻撃。【怒り】【Mアタック200】HP半分以下で使用解禁。
EX喧嘩から逃げるんじゃねぇよ!:戦場全域。物理+神秘攻撃。威力極大。後ろへ移動しようとする者がいれば使用。
■フィールド:浮島
大きな川の中にぽつんとある、10メートル四方程度の広さしかない浮島に彼はいます。
広さが広さなので各種スキルの扱いにはご注意下さい。
以上となります。
純粋な力と力のぶつかり合い。どうか制して下さいませ。
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