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シナリオ詳細

<星芒のカンパネラ>シンクロトロン・マーケット

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●シンクロトロン・マーケット
 青空の下、日差し炯然たる砂漠のオアシス地帯に幾多の天幕や旗が翻っていた。辺境宙域にて開催されている『シンクロトロン・マーケット』の会場である。
 果物、宝石、紙製の本、花、絵画、人形、陶器、衣類、実に様々な商品。マーケット会場では宇宙の端々から集まった多種多様な品々が売られている。

 体長3~4m程度のパワードスーツが警備を固める会場の隅。
 天幕を敷設し、自らの商品を陳列し終えた商人スフィンドルは12歳の息子フリンに小遣いを渡した。
「勉強をしてきなさい」
 スフィンドルは息子に多額を渡すことはしなかった。マーケットに並ぶ商品のうち、息子が欲しがりそうなもの――小さな喋るロボットであったり、玩具のドローンや宇宙船であったり――を購入するには、聊か不足する金額を渡していた。
「よっしゃぁー!!」
 息子フリンは顔を輝かせて天幕から飛び出した。飛び出す間際、父の呟きが耳に残る。
「グピル商会の会長さんは来月のデビュタントに顔を出さんのか。指環を賜ったのだと自慢していたのに。……そういえば中央は最近王女派と王子派が対立しているときくが、どちらにお味方するかを悩んでいるのだろうか?」
 グピル商会は、貧しい家に生まれたスフィンドルが成人前に奉公していた商会だ。ソレイユ文化(ソレイユ人類の文化)を愛し、彼らの歴史や文化に触れられる商品を多く扱っている――今は暖簾を分けている。

「これは我が家に代々伝わるソレイユ人類が遺した歴史書だよ! 超貴重な掘り出し物だ!」
「宇宙怪獣の卵だよ、ペットにどうだい?」
「うちの嫁さんのぱんつだ! バレたら殺されちゃうぜ!」
 マーケットの売り手は、商売を生業とする者だけではなかった。会場では、空き場所に好きに露店を設けて誰もが自分の持っている「売りたいもの」を気軽に「これを売るよ」と声を出し、売り手となって参加出来る。
 フリンは思う。
 父はおそらく「渡した金を元手に会場で売れそうな品物を安値で買い、それを自分の品物として少し高く売ることで遊ぶ金を増やしてみせろ」と言うのだ。
「そういうのは性に会わねえんだよなー!」
 しかし、天幕を飛び出したフリン少年が向かうのは、珍しい品々が並ぶ天幕ではなかった。食べ物屋台が並ぶスペースを駆け抜け、途中串焼きを買い込んで。途中、グピル商会の会長子息が憂い顔で屋台エリアのベンチに座っているのが見えたが軽やかにスルーした。
 そうして辿り着いたのは、3mほどの砂竜が地を走る速さを競うレース会場だ。

 ドドドドドッ、
 地響きをあげ、
 ザザザアッ! ブワアアアッ!
 風と砂塵を撒き散らし、
「「きゃああああ!」」
「「わああああっ!!」」
 遠くから怒涛の勢いで走ってきた砂竜数頭が観客の歓声と悲鳴満ちる熱気の渦の中を一瞬で過ぎ、ゴールする。
「「ワアアアアアアアアアアアアッ!!!」」
 ワッと湧く声と拍手、舞う紙吹雪! トップの砂竜に騎乗していた騎手が爽やかな笑顔で手を振っている。
「かっこいいなー!! 俺は商人よりレーサーになりたい!」
 フリンの頬が興奮で紅潮する。
「そうだ、ここで金を増やしてやるよ!」


●境界図書館
 『あらすじ』
 その世界は、プロキオンという種族が統べている。嘗て人類と争い、勝利した種族だ。
 プロキオン王には王女と王子がいる。
 覇気のない王子イルは、王から惑星を貰った。そして、イレギュラーズと会った。惑星には実は滅んだはずの人類が残っていた。イレギュラーズは滅びかけた人類を救った。
 王子は自らの所有惑星に住む人類を知り、プロキオンの大人達から隠すことにした。そして、「自分が王になる」と言った。
 そして数か月後、王女の暗殺未遂事件が起きた。本来そこで命を散らすはずだった護衛騎士はイレギュラーズの活躍により助けられた。現場からは王妃が暗殺者の背後にいる事を思わせる指環が出た。
 王女はイレギュラーズの助言により王妃や弟を敵と決めつけず、慎重に判断すると告げた。そして、「弟が王位を狙おうとも、自分こそが王になるのだ」と意思を明らかにしたのだった。

「いつもお世話になっています。日々お忙しい中を恐縮なのですが、今日もお話をきいてくださいますか?」
 境界案内人の翠仙(スイセン)がそう言って頭を下げ、本の世界を説明する。正確に言うと、その世界で開催されるイベントの話だ。

「『星芒のカンパネラ』。この物語は、『プロキオン』という種族が統べる宇宙世界が舞台です。砂漠のマーケット会場は、有人辺境宙域クネッサスにある惑星テノーラにあります。青空が広がる開放的な会場にいるのは全て亜人種『プロキオン』。見た目は人類とそう変わりませんし、皆さんと同じように感情を持つ人達です」

「皆さんは、会場で自由に過ごすことができます。
 例えば砂竜レースでお金や物を賭けたり、レースに騎手として参加したり、パワードスーツに搭乗して警備を体験してみたり、屋台で食べ物や飲み物を堪能したり、マーケット会場でものを買ったり、売ったり」
 持っている通貨で買い物をすることもできる。物と物を交換することもできる。飛び入りでレーサーになることもできるし、警備員にもなれる。

「いかがでしょうか。遊びにいってみませんか?」
 特に誰かを助けてほしいわけではなく、自由に遊んできてよいのだと告げて、翠仙はにっこりと微笑む。そして貴方が頷けば、とても嬉しそうな顔をしてもう一度頭を下げたのだった。

NMコメント

 おはようございます。remoです。
 今回は『星芒のカンパネラ』シリーズの続編です。過去作品を読まなくても今回のプレイに支障はありませんので、ご安心ください。

●世界観説明
 嘗て、蒼き星を起源とする『人類』は『プロキオン』という亜人種と宇宙を巡る戦争を繰り広げ、敗北しました。現在は『プロキオン』が星々を統べています。
 過去作品は
 『星芒のカンパネラ』(https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/2296)、
 『コールド・スリープ・エラー』(https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/2527)。
 『王女暗殺未遂事件』(https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/3334)。

 時系列は『王女暗殺未遂事件』の数日後です。
 キャラクター様は「前回までのお話を報告書や案内人の説明で知っている」と言って行動してもよいですし、「知らない」と言っても大丈夫です。

●舞台
 辺境にある惑星の中、砂漠にあるオアシス内のマーケット会場です。

●主なNPC
 フリン・アラー……12歳の少年、商人の子供。レース会場にいます。レーサーに憧れている様子。
 スフィンドル・アラー……フリンの父、商人。45歳。自分のお店(天幕)内で絵画や陶器、女性用のアクセサリーを売っています。珍しい品物を持ち込めば大喜びで買い取ることでしょう。
 ロウィン・グピル……グピル商会の会長子息。18歳の青年。屋台エリアにあるベンチに座っています。理由は不明ですが、憂い顔のようです。

 ●遊び方
 会場で自由に過ごすことができます。
 レースで遊ぶもよし、飲食を楽しむもよし、ものを買ったり売ったりするもよし。何もしないでぼーっとしたり、NPCに話しかけてみたり、全ての行動は自由です。イベシナみたいな気分で楽しく遊んでくださって大丈夫です。

 説明は以上です!
 オープニングと説明に目を通してくださり、ありがとうございます。
 キャラクター様の個性やプレイヤー様の自由な発想を発揮する機会になれば、幸いでございます。

  • <星芒のカンパネラ>シンクロトロン・マーケット完了
  • NM名remo
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年06月13日 22時10分
  • 参加人数4/4人
  • 相談2日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

アルペストゥス(p3p000029)
煌雷竜
ミミ・エンクィスト(p3p000656)
もふもふバイト長
ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)
黄昏夢廸
ライセル(p3p002845)
Dáinsleif

リプレイ


「……?」
 アルペストゥス(p3p000029)は蒼穹に羽搏いた。
 ここは一体どこだろう。
 全然知らないものばかりだ。大翼が上下して、大気がうねり流れが生み出される――人はそれを風と呼ぶ。


 砂に混じった獣の匂いがする。


 ――行ってみよう。

 誘われるよう、竜は飛ぶ。
 人里は息苦しい記憶が多い。匂いを辿り、竜は気付く。犇めく人の存在に。


●market
 地上では、 ミミ・エンクィスト(p3p000656)がふわふわの尻尾を揺らして華やぐ声をあげていた。
「やった、お出かけなのです!」
 ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)が柔和に笑む。
「この世界はこの間ぶりな気がするなぁ」
 ライセル(p3p002845)が同意した。
「またこの世界に来てしまったね」
 先日、2人は王女暗殺未遂事件に関わったのだ。

「世界の分岐点に干渉できるなんて、ちょっと不思議な感じだね。救世主とか神様とかはこんな気持ちなんだろうか」
「今回も暗殺止めたり戦ったりしちゃう? 悲鳴が聞こえるし……あ、違うこれは歓声の音なのか」
「楽しい悲鳴なのです!」
 ミミのお耳がぴこんっとして、水玉の眼はキラッキラ。テンションぶち上がりである。
「どったんばったんがっきんがっきんぎゃーうわー、とか……命を遣り取りする時の空気感とか音とか声、おっかないんですよねえ。ですゆえー、今回みたく平和なお仕事、正直最高なのです」
「自由に過ごして良いの? なにしようかなぁ」
「まず、お店です!」
「じゃあ、お店を見て回ろうかな」
 ランドウェラが付いていく。見送り、ランセルはフリンのもとへ向かった。


「色々あるねぇ。あっ、その美味しそうな肉買っても良いかな?」
 ランドウェルがアツアツの肉に歯を立てる。じゅわり、肉汁が溢れる。はふ、と息を漏らすのは熱さから。陽光に照らされる明るい世界。風がざらりと頬を撫でて天に駆けのぼる。
「どんな材料使ってるんでしょー?」
 同じ肉を頬張るミミが尻尾をぱたぱたさせて燥ぐ。
「んー、砂漠にいる動物の肉かな? 結構引き締まってて美味しいねぇ。酒はまだ飲めないからわからないけど焼酎っていう酒に合う気がする。塩や胡椒をふってもっと濃い味にしたら優勝とか花の妖精が言ってそうだ」
「あぁっ!? これ、可愛いですー!!」
 ミミが虹色パステル色のユニコーンケーキに歓声をあげている。ぱくりっ。頬張れば雲を食むようなふんわりした食感に続いて滑らかな口当たり、蕩ける甘さ、エスプーマ仕立ての繊細なホイップクリーム。屋台のお姉さんから聞いたレシピを心の中で記憶しながら、「帰ったら作ってみたい!」と思うのだった。ミミもパン屋さんだ。遊ぶ中でもアンテナを巡らせているのである。
 隣ではランドウェルが花の妖精ストレチアについてぶつぶつと呟いている。
「どうして妖精なのにあんな違いが……いやウォーカーもたくさんいるけど全然違うよな。それと一緒だよな」
「何か、ご心配ごとです?」
 ミミが小鳥めいて首を傾げれば、ランドウェルは首を振る。
「気を取り直して、良し美味しいからもっと見て回るぞ!」

「あのドリンク、イケるんじゃないですかね?」
「その変わった色のシュワシュワしてる飲み物買うよ!!」


●Death Merchant
 一方、レース会場。
「やあ、こんにちは。君もレースを見に来たのかい?」
「こんにちは?」
 ライセルが友好的に声を掛ければ、フリンは人懐こく笑顔を返した。
「俺の名前はライセルっていうんだ。君は……お父さんかお母さんは居ないのかな?」
「俺、フリン! とーちゃんは商売で忙しいし、かーちゃんは病弱で家にいる」
「そっか、一人で遊びに来たんだね。えらいなあ。やんちゃなんだ」
 ライセルがまっすぐな目を向けて褒めればフリンは顔を輝かせた。
「兄ちゃん、イイ人だな! へへっ、俺、人を視る目はあるんだぜー! 兄ちゃんも賭ける?」
「お小遣いの範囲でなら賭け事も良いんじゃないかな。でも、勝っても負けても楽しむ事が重要だね。賭け事は詳しくないけど機械とかには興味あるよ」
「俺教えてやるよ! なあ、警備で並んでるロボ、あるだろ」
「うん?」
「あれの10倍でっかいの造ってる製造会社があるんだぜ」
「3、40mの人型ロボット?」
「戦争に備えてるんだ」
「戦争が起きるのか?」
「かもしれないって噂」


●ring
 風がくるりと舞い、会場を遊ぶ。


 ――見つけた。


 会場の隅、ベンチに座り憂えるロウィンに。
「どうして楽しそうじゃないんだい?」
 聲が降る。
 ランドウェルが声を掛けたのだ。
「肉食べる? こんぺいとうの方が良いかい?」

 ロウィンは顔を向けた。
 見事な大粒の宝石、長い髪。ロウィンにとって男はお忍びの貴族のようにも視えたし、腕利きの宇宙傭兵のようにも見えた。
「父の大切な指輪が盗まれてしまって」
 だからだろうか、すんなりと打ち明けたのは。
「我が家にあらぬ疑いがかけられてしまう。陰謀だ」

 ランドウェルは眉を寄せた。
「その話、多分わかるな」
「貴方は貴族の方か?」
「いや。でも、王子、王女そういう話だな?」
 ロウィンは「やはりお忍びの方かなのだ」と思い、姿勢を正した。そして、「指輪は盗まれたんです。信じてくれます?」と縋るような眼を向けた。
「信じる」
 ランドウェルは感情を感知できるが故に微笑んだ。そして、自分がもし「能力で彼が嘘を言ってないと分かった」と言えば、王女は信じるだろうと思った――彼は王女の信頼が厚いのだ。

 そして、告げた。
「アドバイスなんてものはできないが、面白そうなことをやってみれば良いと思うよー? そうだなぁ例えば、完全中立、和解志向」
 気紛れな風が吹く。
「頑張ってねー」
 青年の頬をやんわりと撫で、風は通り過ぎていく。


●race
「くぅぅぅー!」
 的中して浮かれる人の波に埋もれるようにしてフリンは悔しがっていた。外してしまったのだ。
「負けて悔しいと思う時、そこで諦めないときちんと線引きしないとだめだからね」
 ライセルが保護者のように穏やかに諭している。
「ぐぬぬ」
「誰かのお金を盗んだりしてはだめだよ。勿論『親』からもね。勝手にお財布や金庫からお金を盗み出したりしてはいけないよ」
「兄ちゃん、盗まれた事あるとかか?」
「俺は無いんだけど、そういうのを沢山見てきたからね」
 フリンはちらっとライセルに視線を送る。
「賭けるためのお金は貸さないよ」
「ええーっ」
「さあ、レースを楽しもう。おやつぐらいだったらお兄さんが奢って上げるから……っと、仲間が来たようだ」
 ライセルが手を振る。別会場から来たミミとランドウェルが手を振り返し、傍に来た。合流だ。


「「「乾杯!」」」
 ジュースのグラスの端をこつんとぶつけて乾杯する声を「ワアアアッ」と歓声が飲み込んだ。


(この場所に集まった技術の結晶とそれを支える人達の動き。沢山の人がこの一瞬の為に努力してそして輝いてる)
 ライセルは思う――争いの為に技術を使う事もあれば、人を楽しませる為に技術を使う事もあるのだ。

「神様、ミミにも何卒ご加護をお願いしますですー!」
 ミミがレースにのめり込んでいく。
「うおーそこなのです! いまですいって! いって! ほらーあ、そこそこそこ!」
 ミミの耳に何者かの啓示が届く。心なしか呆れ声だが本人は夢中であった。
「いけるいける、いけるのです! いけ、……あああぁぁぁぁ?!」


「「!?」」


 悲鳴をあげたのは、ミミだけではなかった。
 ぶわりと砂を巻き上げ、急速ダイブして砂を爆裂させたのは雄大で神秘的な銀竜――アルペストゥス!

「「きゃああっ!?」」
 俄かに恐慌状態に陥った人々は、しかし軈て落ち着いた。乱入した竜が害意なく砂浴びしている事に気付いたのだ。四肢を折りたたむ仕草は無邪気で、優美な翼はのびのびとし、煌く眼はなんと心地よさそうなのだろう。
「ギャウ~?(なにをしているの?)」
 はしるの?
 楽しそう。ぼくもいっしょにはしっていい? 人にはわからぬはずなのに、その温かなやり取りは不思議と観る人の心に伝わった。
「……ギュアウ!」
 そして、アルペストゥスを加えてレースが再開した。


 地を駆ける砂竜をアルペストゥスが追いかける。翼を広げバランスを取りながら走る姿は懸命な様子で、競う砂竜も「クウ、クウ」と鳴きながら楽しげであった。彼らは遊んでいるのよ、と誰かが言えば皆が手を叩いて「いいぞ」という。

「ゴール!」
 合わせた様に一斉にゴールする竜達。アルペストゥスが顔を寄せ合い羽根で労わるよう砂竜を撫でれば砂竜達も全身で応えた。
「今のはレースとしてありなの?」
「面白いからいいよ、ははは!」
 人々が笑っている。

「わあああ!」
 力一杯拍手して燥ぐフリン。アルペストゥスが振り返る。
「ギャウ!」
「!」

「凄いね。感動しちゃった」
 ライセルが隣のフリンに目をやり、微笑んだ。
「君も楽しかったかい?」
 フリンは頬を林檎のようにして、眼をキラキラさせていた。
「兄ちゃんっ、あの竜が俺に鳴いた! 今の見た? 俺を見て鳴いたんだぜ!! すっげー!!」
「良かったね」
 子供は元気なのが一番、とライセルは眼を細めた。

「とほーん」
 ミミはというと、軽くなった財布にお耳をへたっと垂れ、尻尾をしょぼーんとさせている。
 そんなミミを慰めながら、ライセルとランドウェルが席を立つ。
「さて、そろそろ帰ろうかな。君も気を付けて帰るんだよ」
「ああ、帰りたくねええ」
 フリンが駄々をこねている。
「ギャウー?」
「竜が呼んでる! 俺触りてえ! 触っていいかな?」
 燥ぐ声が砂漠の夕暮れを彩り、吹く風はあたたかだった。


「平和だな」
 ランドウェルが蒼穹を見た。青い空を越えて昇っていった先に真っ暗な宇宙が広がっているのだと、彼は知っている。

 ――この世界で、戦争が起きるかもしれない。

 だが、彼にはそれを阻止できる気がするのだ。

成否

成功

状態異常

なし

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