シナリオ詳細
Blue youth
オープニング
●『青春』
高校。
期待に胸を膨らませてた。
君との出会い。
平凡な僕の人生の全てだった。
快ち良い晴れのひ。青。入道雲。
鳴り響く風鈴の音と、白いカーテン。
まだ日に焼けぬ君の白い肌。
君が好きだった。
校舎に残したこころ。黒板の消し残し。
隅に残ったチョークの粉と、消しゴムのカス。
揺れる制服の端、アイロンをかけ忘れたスカート。
まだ好きだ。
野球部の野太い声。吹奏楽部の練習の音。
バスケ部が体育館でボールを鳴らし、美術部は筆で色を伸ばす。
砂を蹴る陸上部、飼育部のうさぎは遠く走り行く。
園芸部の育てた花を潜り抜けて、セミが鳴いていた。
――ねえ、忘れないで。
夕暮れと帰り道。まだ暑い夏の日。
首筋に張りついた髪の毛と、君の肌を伝う汗。
「ねえ、暑いね」
なんて、君は言うけれど。
そのあつさは、体温故だったのかもしれないし、単に夏の日差しのせいだったのかもしれない。
自転車で坂を下る。風。
君が僕に触れた。それだけで幸せだと思えた。
「だいすきだよ」
「わたしも」
君の笑顔は向日葵みたいで、こんな夏が続けばいいななんて思って。
夏休みがはじまって一週間。
君は、姿を消した。
そして、僕は。
君を追って、夏に囚われた。
●置き去りの校舎
「夏は暑くて堪らないよ」
「ほんとうね、カストル!」
カストルとポルックス、双子星はイレギュラーズに笑みを浮かべて声をかけた。
「夏は好き?」
「それとも嫌い?」
「どちらでも構わないわ!」
「とある少年からの依頼だよ」
数学のプリントの裏、くしゃくしゃになった紙切れを読み上げるカストル。
「僕の学校を綺麗にしてください、だって」
向日葵を揺らしたポルックスは、くるくる回ると夏に思いを馳せた。
「学校って思いが沢山で素敵よね!」
「校舎裏で告白……なんて定番だけど、実際はないんだよね」
「バレンタインのチョコの山も現実にはないわ!」
くすくす笑った二人は、ふう、と息を吐くと笑みを浮かべた。
「夏に囚われた少年からの依頼だよ」
「夏から離れられない少年からの依頼ね」
「叶えてあげるかな、特異運命座標(イレギュラーズ)?」
「叶えてくれるかしら、特異運命座標(イレギュラーズ)?」
「「よろしくね!」」
二人の声が木霊した。
- Blue youth完了
- NM名染
- 種別ライブノベル
- 難易度-
- 冒険終了日時2020年06月13日 22時10分
- 参加人数4/4人
- 相談4日
- 参加費100RC
参加者 : 4 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(4人)
リプレイ
●
「学校かぁ……懐かしいなぁ」
膝丈のブルーのプリーツスカートとセーラー服が眩しい『差し伸べる翼』ノースポール(p3p004381)は目を細めて、懐かしい風景に笑みを浮かべる。
広がる青空、優しく吹きつける風、そして友の姿。
卒業したのはもう昔だけれど、いつまで経っても色褪せない思い出が学校にはあるのだ。
「私はこんな景色知らないはずなのに……なんだかとっても懐かしい気がするわぁ」
『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)は初めての景色に何故か懐かしさを思い出す。
ラベンダーのポニーテールが揺れた。項を擽る風に心地良さを覚える。
同時に揺れたスカートは慣れない心地がして恥ずかしいけれど、学生とはそういうものだ。
「……おや、ずいぶんと素敵ですわ、アーリアさん。心配しなくても似合っていますとも」
「そ、そうかしらぁ……。でも流石にこれは、恥ずかしいわよぉ……!」
くすくすと笑う『キールで乾杯』ミディーセラ・ドナム・ゾーンブルク(p3p003593)は、アーリアが恥じらっている姿に愛しさを覚えて。
かわいいひと。どんな貴女だって、愛おしくて堪らないのに。
でも暫くは『かわいい』のひとことだけは、黙っておこう――だってきっと、その方がもっと可愛い貴女が見られるから!
「へー、これがせーふくってやつか! なんかかっけーな! 気に入ったぜ!」
「不便、という訳ではないですけれど……なんだか慣れませんこと」
『受け継がれるアザラシ伝説』ワモン・C・デルモンテ(p3p007195)は制服に興味津々な様子。
肩周りが動かしづらい! とワモンが肩をぐるぐる回すのに対し、ミディーセラはゆるっと着崩して。暑いのだから仕方ないのだけれど、アーリアはそれが気になって仕方ない。
(みでぃーくんの制服は……ずるいわぁ)
汗の伝う白い肌だとか、ぴっとりくっついた白いシャツだとか。お揃いのポニーテールは可愛いのにかっこよくてぐっとくるし、なにより少し頬が赤らんでいるのが、いけない。
「よし、学校を綺麗にして、皆で美味しいソーダをいただきましょう♪」
「「おー!!」」
ノースポールが拳をぐっと掲げると、ワモンにアーリア、ミディーセラも合わせて拳を合わせる。
4人の夏の物語が、今幕を開けた――。
●
「げほっげほ! すげーほこりっぽいな!」
ワモンが勢いよく扉を開けた先、埃の舞う教室の姿。
「掃除は教室ぱぱっと、プールをたっぷり!」
暑い日には水が浴びたくなる。アーリアの声につられて、ルシアンくん学ランバージョンも箒を動かした。端っこの方の埃が取りづらかったり、箒に埃が絡まったりしていて苦戦しているのに、一同は心を和ませた。
「よいしょ、よいしょっ……!」
「机運びってたいへんだよなー」
「ですねえ、でも終わったらサイダーが待ってますよ……!」
「だな、頑張るぜ!」
ノースポールとワモンはペアになって床を吹いたり黒板を消したり机と椅子を運んだり。
見事な連携プレーで、あっという間に教室は元の姿を取り戻していく。
「暑いから早くプールに行きたいぜ……!」
「換気していてもやっぱり教室って暑いですもんね……!」
ノースポールとワモンがバケツに水を汲みに行った。
ミディーセラはルシアンくんにちりとりを出し、一緒に掃除をしていた。
(こういうのは綺麗な尻尾の天敵なので…しっかり綺麗にしてしまいましょう。……おや)
「うーん、窓の汚れって落ちにくいのねぇ……」
「アーリアさん、バケツの水を変えてきたので良ければ使ってください!」
「たくさんあるから遠慮なく使ってくれ!」
「あらポーちゃんにワモンくん、いいのぉ? ふふ、ありがとうね」
本日のメンバーは小柄な者が多い。『頑張らなくっちゃねぇ』と決意固く窓を磨くアーリア。の、太ももと、うっすら見えた白。
磨かれたばかりの窓がきらきら煌めいて、ラベンダーの髪が光を受けて輝いて。
(アーリアさんが背伸びをして窓を……。なるほど、あのスカートはああいう魅力もあるという事ですね……)
背中に突き刺さる熱視線。アーリアが振り返ると、にっこりと邪気のない笑みを浮かべたミディーセラ。口パクで『すかーと』と告げられれば、下を向く。
スカートは、ぱんつが見えるか見えないかぎりぎり。
「……み、見てないわよね!?」
「あら、ふふふ。なんのことでしょうか」
ばっとスカートを押さえるアーリアの頬は、みるみる赤くなって。ミディーセラは『どうしたー?』と首を傾げるワモンに『なんでもありませんよ』と告げて、ごみ捨てという名目をつけて先にプールへと向かった。
●
「これは掃除のし甲斐がありそうですね~!」
ノースポールがスカートの裾をあげる。健康的なふともも。素晴らしい。
「うひゃー! プールもすげーよごれてるな!
よーし、水辺の掃除はアザラシのどくだんじょーってやつだぜ!」
別にそういう訳でもないだろうが、ワモンがそういうのならきっとそうだろう。
ぬるぬるが気になるノースポールは白雪の翼を奮い低空飛行で、ワモンはアザラシであるからあまり気にならない様子で遠慮なくつるんと滑りながらデッキブラシを動かして。
しかしアーリアとミディーセラは違った。デッキブラシを支えに、少しずつ二人で動いて。
「プール……プール。はあ……このブラシで?
これ……このブラシでひとつ騎乗用のモノを作ってみるのも一興ですね……」
その時は隣に乗せて頂戴ね、と笑んだアーリア。ミディーセラは頷く。
「ふふ、一緒にこうしてお仕事するのもあんまりないから浮かれちゃうわぁ!
一緒に学校に通っていたら、私達どんな感じに出会っていたのかしら?」
思い馳せるのは有り得たかもしれない『日常』。歳の差なんて考えれば果てしないけれど、それでも彼らは愛し合う。恋に壁なんてないのだ。
「アーリアさんと、学校に行っていたら、ですか。きっと、時間さえあれば貴女に会いにいって、周りを騒がせてしまうかもしれませんねえ。
先輩なんですから、誘われたからには仕方ない……ふふ。そうでしょう? わたしのアーリアさん」
意地悪に笑う貴方が愛おしい。小さく頷いてから暑いわぁ、と少しだけ横を向いて誤魔化して。
「でもやっぱりぃ、みでぃーくんが先輩だから……」
つう、と滑るように彼女が近寄って、ミディーセラに抱きついて。耳元に顔を寄せて囁くは――、
――ミディーセラ先輩、大好きです。
屈託もなく、彼女が笑んだ。困ったように眉根を寄せて。
大好きで堪らないのだ、とでも言わんばかりに。
「なぁんて……やっぱり忘れて、お願い……」
離れようとした。
その股下をくぐり抜けるアザラシモップ。
「うひょー! すべるぜすべるぜー! すべってとまらないぜー! アーッ!!」
鈍い音と滑る音。ワモンが石鹸を塗った腹で超高速で美しくなりつつあるプールを滑り回り、アーリアは足を滑らせミディーセラをプールに押し倒す。
ノースポールは白雪の翼をパッと消してしまって、4人纏めて水の中。
「あっ!?」
「おや、足を滑らせて……思っていたより不安定ですものねえ」
「ひゃわあっ!?」
バシャン、と足首までの水が揺れる。
4人の影が揺らめくプールは、陽光煌めいて。
「ふう、やっぱアザラシモップはあぶねーな! だがやめない!」
可愛い。許された。
「ふふっ、濡れちゃいました!良い天気ですし、そのうち乾きますよね」
(……それなら皆さんも、濡れても問題ないかも?)
ノースポールの可愛らしい悪巧み。ワモンも同じことを思いついたようで、ワモンとノースポールはホースを握って仲間を狙う。
「えいえい!」
「おりゃー!!」
「……もぉ、びしょびしょ! でも冷たくて気持ちいいわぁ……えい!」
「仕方の無い子ですねぇ……あ、そうだ。ねえねえ、アーリアさん。もう一度、大好きですって言ってくださらない?」
だめ? 先輩が言っても?
背丈的にも上目遣い。ミディーセラの瞳が柔らかく弧を描く。
「……うう、やっぱりみでぃーくんには勝てないわぁ」
今度は確り、己の足で地を踏んで。
――大好きよ、みでぃーくん。
蝉の声と水の音。
僕の青には、やっぱ。君が必要不可欠で。
●
「いやー、掃除がんばったぜ! それじゃご褒美のソーダはやくはやくー!」
「うん、ありがとう。はい、どうぞ」
「やったぜー!!」
ワモンがぐびぐびとソーダを飲み干す。おかわり! と瓶のソーダを3つほど隣に並べていた。
「学校、綺麗になりましたね♪ 夏、好きなんですか?」
「……うん。僕の大好きな人との、思い出の季節なんだ」
少年は柔らかく笑みを浮かべた。少しだけ、寂しそうに。
「私はずっと冬が好きでしたけど。大切な人と夏の思い出をいっぱい作ったら、夏も好きになってました」
夏は暑いですけど、おしゃれが楽しいです! と笑うノースポールに、少年は頷いて。
「あっ、とってもしゅわしゅわする炭酸で……。嫌いではないのですが、中々に」
瓶を回して炭酸を少しずつ抜くミディーセラ。隣に座るアーリアは、夕暮れに染まる校舎に瞳を揺らして。
「きっとここには、たくさんの思い出が詰まっているのねぇ……」
少し古びたプールサイド。使い込まれたデッキブラシ。
嘗て此処に居たひとを、思う。
「また、夏が来ますね……」
ノースポールの声が鮮明に響く。水面で夕焼けが揺蕩う。煌めく。
(……取り残されるのは、少し悲しいですねえ)
小さく俯いたミディーセラの想いに共感するように、少年は空を見上げた――。
成否
成功
状態異常
なし
NMコメント
心踊る物語を貴方に。どうも、染(そめ)です。
青春の思い出なんて言うのは人それぞれですが、何となく理想系があったりした青春時代です。
それでは、今回の依頼の説明に入ります。
●依頼内容
退廃した学校の掃除
一般的な高校です。閉鎖してから数年、グラウンドはまだ雑草が伸びきっていません。
まだ落書きも窓ガラスも割れていないようです。
依頼主はプールと教室を掃除して欲しいそうです。
終わったら美味しいソーダをご馳走してくれるようですよ。
●プール
普通のプール。25メートルあるあたり学校らしい。
水は干上がっていて、苔が生えていたりするようです。
ホースやデッキブラシ、たわしや石鹸など必要なものは貸し出してくれるようです。
●教室
『2-7』の教室。
黒板は汚れ、机や椅子は散乱し、ホコリやゴミが落ちています。
美しい教室にしてしまいましょう。
●特殊ルール
制服になります。拒否権は無いです。染が奪いました。
学ランでもブレザーでもセーラー服でもなんでもいいです。
お好きな制服をきて学生になってください。
●依頼主
普通の少年です。
声をかければ色々話してくれるようです。
特に登場する予定はありません。
●サンプルプレイング
よし、デッキブラシおっけー!
こういうのってつるんってすべっちゃうよね!
もちろん私は滑らな――わぁっ!?
以上となります。
ご参加お待ちしております。
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