PandoraPartyProject

シナリオ詳細

レガド・ウェストランドストーリー

完了

参加者 : 6 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ここを俺たちの楽園にしよう
 古い古い時代に大きな戦いがあった……と、石版には記されている。
 古くは美しく栄えていた街は一瞬にして光と灰に飲まれ、かつてそこで豊かに暮らしていた人々はその骸と崩壊した家々だけを残して消え去ってしまった。
 街を消し去ったという禁忌の魔術は重篤な呪いを土地に残し、植えた作物は枯れ子は生まれず、難民が流れ着いてもおよそ数年で無残に命を落とすことになった。
「この土地を、俺は『レガド・ウェストランド』と呼んでいる。長い間、誰も手をつけられなかった土地さ」
 カントリーミュージックが流れるパンケーキカフェで、黒人男性はマグカップを片手に苦笑した。
 男の名はブレストン・グルービー。ウォーカーである。
 アメリカ・マサチューセッツ州ボストンの生まれだという彼は、混沌世界を知るなかでこの手つかずな土地を再生させる試みに長い年月を費やしていた。
 そして、費やしただけの実りは、いまここに在るのだ。
「アルファ・テラフォーミング装置。レガドウェストランドの土地に染みついた呪いを除去するための装置だ。この土地に誰も住み着くことが出来なかった最大の原因を、こいつで除去することができる」
 嬉しそうに語るブレストンだが、しかしこの装置ひとつで『すべて』が解決するわけではない。そのことを重々承知しているからこそ、こうしてローレット・イレギュラーズへの依頼を行った次第である。
「まず依頼するのはこの土地で発生したモンスターの駆除だ。呪いの影響で現地の野生生物が変異したものが街に巣くっている。これを撃退して、直近の脅威を排除しなくちゃならない」
 現地に発生しているのは巨大化したネズミやハエ、タイラントと呼ばれる狂暴な熊などだ。
「巨大ネズミの巨大さだって? そうだなあ……まるまる太った大型犬から毛を抜ききったものを想像してみてくれ、そいつが巨大ネズミだ。見た目で侮ると膝を食いちぎられるぞ。
 ハエのサイズもたいがいだな。人の頭ほどあるハエが空中を飛び回りながら酸と毒の液を吹き付けてくる。こいつはかなり飛距離があるから戦うには間合いにも気をつけないとな。俺は銃で対応するが、やり方は任せる。
 タイラントは……こいつはかなり厄介だ。現れたら2~3人で対応する必要があるだろうな。特殊な能力はないがとにかくパワフルだ。役割分担をして着実に倒そう」
 これらの排除が完了したら、いよいよテラフォーミング開始。
 水資源、エネルギー資源、食糧資源をそれぞれ確保しつつ、移民を受け入れ住居を整えていく。
「生活環境の構築は、戦闘のように撃って殺してオシマイってわけにはいかないだろう。
 もし知人にそういうのが得意な奴がいたら声をかけてくれ。報酬もそのぶん上乗せするぞ」
 ブレストンはそこまで語ると、赤い瓶飲料の蓋をテーブルにカランと置いてから、ハッとして眉を上げた。
 蓋を回収して、かわりにコインを数枚詰んでから資料を置く。
「おっとすまん。ここはおごらせて貰う。現地で会おう、『良い人達』」

GMコメント

■EXプレイング対応シナリオ
 このシナリオはEXプレイングに対応しています。
 適用できるのは主にシナリオ後半のテラフォーミングパートとなるでしょう。
 ではパートごとに解説していきましょう。
 EXプレイングについてはマニュアルをご参照ください。
https://rev1.reversion.jp/page/scenariorule


■モンスター排除
 荒廃した街を舞台に、巨大ネズミは巨大ハエ、タイラントなどを撃滅していきます。数がけっこういるので、やや長期戦を意識してください。
 彼らは共通して【毒】系統のBSを持っており、これへの対処をしながら戦うと有利になるでしょう。
 街の広さは一般的な商店街程度。
 そのうち半数は倒壊しており、ずっと昔にあったであろう豊かな暮らしは炎と灰と呪いによって失われています。
 EXプレイングによって呼んだ関係者キャラが戦闘可能なキャラだった場合、ここでも活躍することが可能です。

■テラフォーミング
 街を再生していきます。
 水、電力や魔力などの発電(?)設備、再生した土地で生成する食料などの環境を整えていく必要があります。
 更に倒壊しきった住居を片付けて新たに家を建てたり、半壊した家を利用して綺麗に整えた家を作ったりといった作業も必要でしょう。
 移住を希望した移民は割とそれなりの数いるので、彼らが主な労働力になってくれますが彼らにはあまり専門的な技術がありません。
 皆さんがそれを補うか、EXプレイングによって呼び込んだ関係者キャラクターの力を借りるなどしてこのとりくみに参加しましょう。

■■■アドリブ度■■■
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用ください。

  • レガド・ウェストランドストーリー完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年06月21日 22時10分
  • 参加人数6/6人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 6 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(6人)

レイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)
騎兵隊一番翼
キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)
社長!
ルウ・ジャガーノート(p3p000937)
暴風
レスト・リゾート(p3p003959)
にゃんこツアーコンダクター
伊達 千尋(p3p007569)
Go To HeLL!
羽住・利一(p3p007934)
特異運命座標

リプレイ

●「ニュースがないのがいいニュース!」
 どこかレトロなカラーが施された雑誌を閉じ、『黒翼の裁定者』レイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)は目を閉じた。
 例えば緑豊かで人々が平和に暮らす町が、恐ろしい魔術の爆発によって物理的に崩壊し、あまねく死と腐敗をもたらし、むこう百年は人の暮らせない土地となるさま。
 二度と戻らない平和と、失われたままの命。
 アンデッドすら死に絶える世界で、いま生きているのは変異したネズミやハエばかりだという。
「そんな場所に人の営みを生み出すというのは、良い事だな」
「ああ、本当にそう思うよ。どんな世界にも、希望ってやつは必要だ」
 練達で造られたらしいビームマスケット銃をかつぎ、ブレストン・グルービーは渋く笑った。
「作物は枯れ子は生まれず、流れ着いた者は数年で命を落とす……か。
 元の世界にあった禁忌の兵器を嫌でも連想させられるな」
「禁忌? その……そっちの世界にもこういうことはあったのか? あんな有様はほかにないと思ったが」
「うん?」
 『特異運命座標』羽住・利一(p3p007934)は帽子のつばを親指であげ、片眉をあげることで疑問を示した。
「よく分からないが、私の世界にも『これを使えば世界は終わり』っていう兵器はあったはずだ。発達しすぎた文明の行き着く先だとか、な。幸いにもこれが世界中で使われることはなかったらしいが」
「そうか。それは……よかったと言っていいんだろうか」
「さあな。戦争がないことが平和なんだとすれば、そうなんだろうが……戦争が『迫り続ける』のも、あまり平和とは言えない気がするね」
 肩をすくめる利一。
 そんな彼らの後ろを、『遠足ガイドさん』レスト・リゾート(p3p003959)はどこかのんびりした様子で歩いていた。
 お気に入りのパラソルをさして、まるで海に浮かぶかのようにふわふわと移動していく。
 その後ろを、『ウィッシュ・ツアーズ』のロゴがついた馬車がついてくる。御者席で山高帽を深く被るハーモニアの男。知る人ぞ知るウィッシュツアーズの代表取締役トラヴェル・リゾートである。
「レスト、馬車に乗ったらどうだい?」
「いやよ~。だってそれは『お客様用』でしょ~?」
 反抗期の娘のようにふくれてみせるレスト。しかしすぐに笑って振り返った。
「まずは邪魔なネズミさんたちをやっつけちゃうから、おとうさまは後ろでみていて?
 太古の廃墟に町を造るだなんて、ワクワクしちゃうわね~」
 地に足をつけてたかたかと走って行くレストを見送り、トラヴェルは髭をたくわえた口元をゆるめた。

 風すさぶ砂利道を歩きながら飲料瓶を取り出し、親指の爪を蓋にひっかける。
 キュポンと瓶の蓋を親指で勢いよく外すと、『暴風』ルウ・ジャガーノート(p3p000937)は回転して飛び上がる蓋をキャッチした。
「お、見ろよレッドスターだぜ」
 キャップの裏に赤い星がプリントされているのを隣で瓶のルートビアを飲む『盗賊ゴブリン』キドー(p3p000244)に見せつけた。
「まじかよ、くれ」
「やるわけねえだろレアもんなんだから」
「しゃあねえあとでスるわ」
「スリの予告するんじゃねえよあとでもぐわ」
「殺害予告をするんじゃねえよ!」
 瓶の中身をごぶごぶ飲み干し、ぷはあとため息をつくルウ。
「昨日は飲み過ぎちまったからか変な夢みたんだよな。なんだっけなあ」
「しらね。てかなんだ、レガド・ウェイストランド? 古代のナンカだったらお宝のひとつや二つ……」
「無いらしいぜ。その辺はあらかた拾われちまったってさ」
 『Go To HeLL!』伊達 千尋(p3p007569)がぬるい瓶コーラを飲み干して口元をぬぐった。
「残ってんのはガラクタだけだろ」
「マジかよただの害虫退治じゃねえかこの依頼」
「再建忘れんな再建」
 空になった瓶を眺め、千尋はキドーへと振り返った。
「廃墟を再建って、よくねえ?」
「……ま、いいんじゃあねえの。金も出るし、たまには手伝ってやってもいいって気分にはなるわな」
「だーーーろーーー?」
 千尋はそう言いながら、ポケットから取り出したスマホを見た。
「ちっと声かけてみたんだけど、瑠璃雄さん来てくれっかな……。キドーは誰か呼んだ?」
「知り合いのジジイをちょっと」
 とか言っている間に、先頭を歩いていたブレストンが足を止めた。
「そろそろ危険地帯だ。地面に気をつけろ」
 彼が銃を構えるがはやいか、地面がボッと音を立てて巨大な変異ネズミが姿を現した。

●SPECIAL
 ビームマスケットを乱射しながら後退し距離を取るブレストン。
 そんな彼を待っていたかのように、瓦礫の間から巨大なハエ変異体が出現。
「しまった――!」
 背後をぴったりと取られた形になったブレストンが前後どちらに対応すべきか迷ったその瞬間、『ハイドロイド』の召喚術が完成。八ツ頭の大蛇が魔方陣から首だけを出し、高圧水流を発射。
 襲いかかろうとしていた巨大ハエを無理矢理吹き払う。
「獲物としては少々不服かもしれんが、蹴散らしてくれハイドロイド」
 レイヴンは召喚術を継続。魔力を魔方陣へと流し続けると、すぐさま別の対象へと狙いを定めた。
 次々と現れる巨大バエと巨大ネズミ。
「うわなんだこのハエ気持ち悪ぃ! キドーさん! よろしくオナシャス! イカすゴブリンの力見せてやっちゃってください!」
 叫ぶ千尋にキドーはビッと親指を立て、巨大ハエの放つ毒針のような物体をナイフでたたき落とした。
「おうおうお望みならイカしたゴブリンの戦い様、見せてやるよ!」
 さらなる射撃を放つハエを横っ飛びに転がることで回避すると、懐から取り出したカード状のマジックアイテムを投擲。不思議な推進力をもって飛んだカードが巨大ハエにざくりと刺さり、毒針の発射を封じた。
「来たねえもん吐きやがって、殺虫してやんぜ!」
 ナイフに己の力を込めると、ハエめがけて球速接近――と見せかけて距離をあけたまま衝撃を発射。ナイフに対抗しようとしたハエが回避に失敗し、空中ではじけ飛んだ。
「ハンターの武器が欲しいとこだな……ま、今はコイツでいくか」
 ルウは巨大な剣を振りかざすと、毒針を放つハエめがけてまっすぐに突撃。
 自らの肉体に刺さる針や浸透していく毒などお構いなしに剣を叩きつけ、ハエの固いボディをたたき割った。
 複雑な軌道で飛ぶせいで当てるのが難しいが、当たってしまえばこの通り爆発四散である。
「そっちのネズミは任すぜ」
「よっしゃあ! ステーキにしてやんぜネズ公!」
 千尋は拳をぽきぽき鳴らしながら巨大ネズミに近づいて……みたものの。
「あれ? よくみりゃちょっと可愛くねえ? ねえ飼おう? 餌あげるから。俺毎日餌あげるから!」
「メッ!」
 レストおかーさんじゃなかったレストおばさんに怒られてしゅんとする千尋。
 しかしめげずにネズミの前に手を出して見せる。
 彼の手をぺろぺろなめ始めるネズミ。
「ほら見て! 俺になついてる! 毎日散歩連れて行――痛ってええ!?」
 手を盛大にガブっとやられ、血を吹き上げる千尋。
「だからメッって言ったでしょ~」
 レストは鞄を開いて魔法の包帯を取り出すと、ヒーヒーいってる千尋の腕に巻いてやった。
「これが変異動物というやつか。凶暴性が野生動物の比じゃないな……ま、俺なら見た瞬間殺すけど」
 そんなふうに独り言をいい、利一はその辺に落ちていた鉄パイプを投擲。
 飛びかかろうとしていたネズミに突き刺さり一匹が地面に転がってところで、更にその辺に転がっていた円盤状のプレートを投擲した。
 がいんと音を立てて激突するプレート。ネズミは一瞬ひるんだものの、すぐさま復帰して利一へ威嚇するように吠えた。
 レストは頬に手を当てて困ったように首をかしげた。
「あらあら~、狂暴なネズミさんね~。仲間同士はなかよしなのかしら~」
「仲良しっていうか……連携して囲まれてねえ?」
 ふと横を見ると、ボッと音を立てて緑色に光る巨大ネズミが出現。
 千尋はギャアと悲鳴をあげたがその瞬間、どこからともなく走ってきたバイクがネズミを撥ねていった。
 ブレーキをかけてターン。ヘルメットもせずにまたがるライダージャケットの男が、サングラスを外して振り返った。
「……待たせたな、ヒーロー」
「るりおすぁぁん!!」
 瑠璃雄はとめておいたバイクを『フンッ』て言いながら持ち上げるとネズミの群れめがけてぶん投げ、その辺に落ちていた木製のパレット台をバリケードのように押し当ててネズミの集団を一時的に封殺した。
 ギーギーとパレット台の向こうから吠えるネズミ。振り返り、頷く瑠璃雄。
 千尋と利一は頷きあい、思い切り助走をつけた跳び蹴りでパレット台もろとも粉砕。
 吹き飛んでいくネズミたち。
 レストがこれで一段落ね~と胸をなで下ろしたその途端。
 近くの廃墟を粉砕しながら巨大な熊が突撃してきた。
「ヤ――変異熊だ!」
 防御もむなしくいきなり吹っ飛ばされるブレストン。
「ブレストン! ……強敵らしいな、一気に行くぞ!」
 レイヴンは自らの魔力を小さな魔方陣にこめ、鋭い光線にして発射。
 レストもパラソルステッキをライフルのように構えると、ジェリービーンズのような魔法弾を連射。
「すっごく元気ね~。これだけ攻撃してもびくともしないわ~」
「そういうときは決まってる」
「ああ決まってるな」
 キドーとルウが同時に構え、そして同時に突撃をしかけた。
 純粋なレベルによって鍛え上げられたゴブリンパンチと、ルウの屈強な腕から繰り出されるパンチが同時に炸裂。
「take weapons kill a bear!」
 と同時に、瑠璃雄が両手で組んだジャンプ台を利用して千尋と利一が大ジャンプ。
「相手は熊だ! 頭上が弱点に決まってんだろ!」
「なるほど……いやまて」
 巨大熊がむくりと二本足で立ち上がり、吠えながら鋭利な爪を晒した。
「あっ死――」
 死ぬかなと思ったその瞬間、千尋の蹴りがラッキーヒット。巨大熊の脳をぶるんとゆらした。
 それをよしとして利一は相手を蹴り倒して地面へとスタンプ。
 白目を剥いたまま気絶した巨大熊に素早くサバイバルナイフでトドメを刺した。
「今度こそ、排除完了だ。無事か、ブレストン」
 服についた血をはらいながら立ち上がる利一。ブレストンは瓦礫をはらって立ち上がり、落ちた帽子を被り直した。
「腕と足は身体にくっついてるだろ?」
 肩をすくめるブレストンに、利一は苦笑して同じジェスチャーをした。

●「ここを我が家ってやつにしようじゃないか」
「解体作業は任せとけ!」
 ほぼ瓦礫の山とかした元家屋に向けてショルダータックルを仕掛けるルウ。
 どういう理屈なのか爆散していく瓦礫。
 そう時を待たずして土台の石だけになった建物跡地に利一の馬車がとまった。
「住居を建てるならある程度安全が確保された場所がいい。地図でいうと……」
 利一は鳥を使った俯瞰視点で大雑把な地図を作成し、居住エリアと生産エリアを分けて管理するよう提案していた。
 ここで暮らすことになる入植者たちが彼女の指示を聞いて木材を運び込み、簡単な木造家屋を組み立てていく。
「廃材も山ほどあるからな。スクラップハウスの作り方も教えておくか」
 トタンや鉄板などを使った壁や天井の作り方を記述し、入植者にわたしていく利一。
 その一方でルウはさらなる整地作業と木材調達に動いていた。
 力仕事を任せっぱなしにできるというのは心強いものである。
 そんな中。
「瑠璃雄さーん! この配線どっか切った方がいいんすかね? とりあえず一本いっときます?」
「時限爆弾じゃないんだ、千尋(ヒーロー)」
「USB!? USB刺しますか!?」
「パソコンじゃないだ、千尋(ヒーロー)」
 肉体を惜しげも無く晒したタンクトップ姿で廃材を運んでいた瑠璃雄が、千尋に瓶ビールをぽんと投げた。
 慌ててキャッチする千尋。
「しばらくそれでも飲んでろ」
「あ、はい!」
 瑠璃雄はフィジカルが強い上に器用で、スクラップを利用してバリケードを造るのがうまかった。
 巨大ネズミのような外敵が現れても進行を抑えられる、ないしは限定できるように壁をめぐらせていき、高所に見張り台をつけて警備を固めるスタイルをとっていく。
 その一方。
「そういや発電機ってどうやって動かすんすかね」
「こうだ」
 瑠璃雄はマナジェネレーターを拳でガンッてやった。
 ややあって勝手にブルブル動き出す発電機。
「……」
 沈黙の後。
「すげえや瑠璃雄さん!」
「フッ」

「オラァ、インフラ整備行くぜヤローども!」
 ゴブリンがナイトフィーバーのポーズをとって入植者たちを従えた……その横で、全く同じポーズでニッと笑う70'sディスコファッションのジジイ。その名は『R』。
 キドーは突如現れた彼を二度見した。
「うおおいつからそこにいた!」
「水くさいネエ、キドークン。こういうカルマの白そうなことはもっと早く教えてくれないとネ」
 サングラスの下でパチンとウィンクするR。
 キドーは一度げっそりした顔をしたが、首を振って気を取り直した。
「ま、仕事決まったのつい最近だしな。それよりカルマ白そうでしょおじいちゃん?」
 七色に光るミラーボール(自前)の下で踊り狂うR。
「だからねこの町のインフラをどうにかするメカをちょちょっとねおじっちゃん?」
 価値のない札束をばらまいてシャンパンタワー(自前)をこしらえるR。
「聞けよジジイ!」
「なにカナ? ゴブリン酒でもつくったらいいの?」
「よくねえよやめろよ」
 ファントムペインにぶるりとくるキドー。
 Rはガッハッハと笑ってからフィンガースナップを鳴らした。
 途端ピンクの煙がおこり、どこからともなく軽ワゴン車程度の物体が現れた。
 サングラスの下で、きわめて真面目な目をすると、Rはキドーの顔をまじまじと見た。
「ボクを『利用』するってことは、相応の対価は支払えるんだヨネ?」
「腕一本じゃ足りねえってか」
「フフン」
 イエスともノーともいわず、Rはこの大型マナジェネレーターの使い方を入植者たちに説明しはじめた。

 しばらく時を勧めて。
 ダウジングロッドを両手にもってうろうろとしていたレイヴンは、ぴたりと足を止めて地面に手と耳を当てた。
「このあたり、か。機材を持ってきてくれ」
 レイヴンの言うとおりの場所に井戸掘り機材を持ち寄る入植者たち。
 金をかければとんでもねー速さで井戸を掘り進めるマシンでも使えそうなところだが、ここは人力。
 両サイドに伸びた棒を掴んで掘削器をごりごりねじこんでいくというスタイルでの井戸掘りが行われた。
 Rが用意してくれたジェネレーターで吸い出しを、砂の層を用いた浄水パイプで浄水をそれぞれ行い、飲み水を確保する。
「これで水が飲めるようになるんですか?」
「地下の真水ではあるが、飲料水にするときは念のため煮沸消毒をせよ」
 土地の呪いを浄化する装置がはたらいているとはいえ、真水を飲むのはよろしくない。
 レイヴンは入植者たちが病気にならないように一通りの知識を与え、それを書き記していった。

 更にもうしばらく時を進め、『ウィッシュ・ツアーズ』の馬車からいくつかの資料や機材を積み下ろしていくトラヴェル・リゾート。
 長机や棚といった道具をメカロバに詰んで小屋へと運びこむ。
 その隣では入植者向けに植えたポテトとトマトの中間みたいな作物の種にむけ、レストがおまじないをかけた如雨露で水をかけていく。
 瞬時に成長した作物に入植者達が喜ぶさまを、トラヴェルは口の端を小さく上げて見つめていた。
 ぱっと振り返るレスト。
「あっ、おとうさま! 頼んで置いた道具は積み込んでくださったかしら?」
「ああ、もちろんだともレスト。しかし……」
 周りを見渡せば、木材とスクラップでできた町。
 人々は自給自足で暮らし、外敵から身を守っている。
「ここを観光地にしようと言い出した時には流石に驚いたよ」
「自給自足だけじゃなくてお金を稼げる産業があれば、色々とメリットあるでしょ~?」
 レストの提案で、古代戦争時に建てられたであろう頑丈な建物はできるだけそのまま残し、内部を改装するなどして食堂やその他娯楽施設を作り上げていた。
「今はまだ暮らしていくのに精一杯だけど、太古の歴史を感じに外から人がやってくるわ~」
「そうだといいね」
 トラヴェルは優しく笑いかけ、そして帽子を深く被り直した。
「なら、観光業のイロハを入植者たちにも教えるとしようか。教育係を一人置いていくから、活用しなさい」
「ありがとう、おとうさま~!」
 きゃっきゃと子供のようにはしゃぐレスト。
 そんな風景を……。
「そういえば、この場所の名前は決めてんの?」
「名前?」
 コーラの瓶を同時に開き、ブレストンやキドーたちはぼんやりと眺めていた。
「いやだってさ、人が根付いて町になればいずれは地図に載る。いつまでもウェイストランドじゃねえ……締まんねえだろ。な?」
「ほう、興味があるな」
 瓶をゆらゆらとさせながら身体をかたむけてくるルウ。
 ブレストンはコーラをひとくち飲んでから、小さく笑った。
「小さな聖域……リトルサンクチュアリ、というのはどうかな」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――クエスト完了!
 ――幻想の土地に新しい町が生まれました

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