PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<Bloom*Bloom>梅雨咲HydrangeA

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●朝露のまじない
「ねえ、フーちゃん」
「ポセイドン! 夏の島はどうかしら」
「居心地がいいからよく顔を出してるよ。
 それより、少し相談があるからいいかな」
 屈強な身体に似合わぬ温厚なおとこ――ポセイドンは、柔らかな笑みを浮かべて妖精女王(ティターニア)たる幼馴染(フローラ)へと声を掛けた。
「紫陽花のはながあるだろう? あの花に、魔法がかかってるんだって」
「私、花の妖精なのに知らなかったわ!?
 へえ、それでどんなおまじない?」
 優雅に玉座に腰掛ける娘は、余裕たっぷりに笑みを浮かべ。慣れた様子でポセイドンも付きの妖精を下げさせると、にっこりと笑みを浮かべた。
「わかんない」
「は?」
「わかんないから、一緒に見に行こうってお誘い」
 ふうむ、と一考し。フローラはふわりと飛び立つと――、

「いいじゃない! 行きましょうポセイドン!」
「そう言うと思った」
「だって兄様はまた熱なのよ。暇じゃないの?」
「この時期は仕方ないよねえ……」
 ともかく、と咳払いし、フローラはポセイドンの手首を掴むと王城の階段を下りだした。
「そうと決まれば早速準備よ、ポセイドン!
 お洋服は……新しいのがいいかしら。これから二人で会議よ!」
「ふ、フーちゃん、ちょっと……!!?」
 ずるずる引き摺られていくポセイドンを、カナタは頭を抱えて追い掛けたのだった。

●紫恋のはな
「紫陽花って綺麗だよね」
 紫陽花の花を摘んで、ひらひらと翳して見せたフィス。水色の髪を揺らして柔らかく笑んだ。
「紫陽花の色は土のあれそれで変わるらしいね……嗚呼、失敬。忘れてしまったんだ」
 なんて笑いながら、フィスは慣れた手つきで本のページを捲った。
「さて、今回の物語はブルーム・ブルーム――妖精の世界から、だね」
 フィスがステッキをクルクルと悩ましげに回す。ふうむ、と首を傾けて。
 握られた羊皮紙は普段よりも紫が混じっていて、恐らくは紫陽花で染色したのだろうな、と思わせる色合い。
 淡いグラデーションに踊る文字を、フィスが読み上げた。
「『願いを叶える紫陽花』が咲くそうだよ」
 なんでも、王城の裏に。そうつけ加えたフィスの顔は意地悪く歪んでいて。
「気になるなら行ってみるといいんじゃないかな」
 行ってらっしゃい。手を振ったフィスの顔は、やけに楽しげに見えた。

NMコメント

 貴方に心踊る物語を。どうも、染(そめ)です。
 紫陽花が美しい時期になってきました。
 まだ梅雨に入っていないような気がするほど、暑いですね。
 水分補給は忘れずに。それでは、依頼の説明に入ります。

●目標
 魔法の紫陽花に祈りを捧げる

 王城の裏に咲く魔法の紫陽花に願いを込めてみましょう。
 叶う願いなら花の色が変わり、叶わぬ願いなら花は蕾に戻るようです。
(※確定ロールも可能です)

●世界観
 魔法世界『ブルーム・ブルーム』。
 花と魔法で満ちた世界。魔法で文明が築かれています。
 基本的には物理攻撃よりも神秘攻撃がメインの世界です。
 また、ファンタジーな世界ですので、妖精やドラゴンなど、ありえない生物がいます。

●NPC
・フローラ(ティターニア)
 妖精女王。引き摺るほど長い若草色の髪が特徴。桜色の髪留めが宝物。
 エルフのように長い耳を持つ。成長が遅いとはいえ、いつまで経っても凹凸のない身体に悩んでいる。
 紫陽花に興味津々な様子。

・グレイシア
 前の妖精王。鋭い目つきと薄氷色の髪が特徴。ガタイがいい。
 エルフのように長い耳をもつ。シスコン。眼鏡。
 他国の妖精へ外交をしに行っていた。
 今日もお熱でお留守番。

・ポセイドン
 気の弱い海の妖精。水かきのついた手や鱗のある足、耳がヒレのようなのが特徴。
 褐色の肌に青い髪をしている。水に入ると半魚人。
 フローラやグレイシアとは幼馴染。泳ぐのが好き。

・カナタ
 花冠師ギルド『Flowers Flag』のギルドマスター。齢19にしてトップクラスの実力を持つ温厚な青年。
 胃薬が手放せないのが最近の悩み。今回は天気予報とにらめっこしつつ来ているようです。
 何かあればカナタへ。

●サンプルプレイング
 俺はどんな願い事をしようかな。
 あ、そうだ。明日の朝は晴れますように、って願おう。
 洗濯物が干せてないんだよな……。

 以上となります。
 ご参加お待ちしております。

  • <Bloom*Bloom>梅雨咲HydrangeA完了
  • NM名
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年06月12日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談4日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ツリー・ロド(p3p000319)
ロストプライド
ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)
黄昏夢廸
武器商人(p3p001107)
闇之雲
回言 世界(p3p007315)
狂言回し

リプレイ


(魔法の紫陽花ね……。生憎願うことはないな。
 そもそも何かに願いを込めること自体そんなに好きじゃないというか……)
 『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)は紫陽花を横目にほう、とため息をこぼす。
 己は悲恋の想いを呪いに変えて生み出された鎌(サイズ)であり、そもそも願いは自分の手で叶える派なのだ。
(いい願いを込められていたなら話が違ってたかもしれないが……違ってたら違ってたらで、俺は間違いなくここにいないだろうし……まあ、呪いを背負って後悔は……)
 してない。
 した。
 頭の中でグルグルと回ることば。
 後悔はしているのか、それともしていないのか。
(うーん…微妙な所だな…)
「あらサイズ、なにか考え事?」
 呑気に微笑むフローラに『大したことじゃないです』と曖昧に返して、サイズは警護へと戻る。
「それよりほら、サイズも一緒に願いましょうよ!」
「えっ!?」
 ぐい、と手を引かれて。妖精の手に触れたことでサイズはみるみる顔色が悪くなるが、ぐっと堪えて『はい』と答えた。
「それじゃあ……」

 祈る。願う。

 フリを。
(そもそも、俺は願いを込められるサイドだからね……。
 まあ、何でも願いを叶える力はないけど。妖精の願いなら叶えてやりたいが、俺の力じゃ出来る事なんて微々たるもんだしな……まあ、出来る事をやるだけだというやつだな……)
 きゅう、と握った紫陽花が姿を変えることはなく。ただそのままに在るだけで。
「あら、動かないじゃないの。この紫陽花は普通のだったのかしら……」
 つんつんと紫陽花を指で弄ぶフローラに雨粒が落ちる。
「ああ……身体が冷えますから、こっちに来てください」
 二人ほど入れそうな大きな傘を差し出し、隣に入るように促す。『相合傘ね』とくすくす笑うフローラに、『そんな意図はありませんから』と釘を刺して、共に歩く。
「ねえ、サイズ」
「なんですか?」
「ふふ、なんでもないわ! それよりも戻ってお茶にしましょうか!」
「ああ、それなら暖かいお茶を持ってきたので、それにしましょう」
「サイズ、お茶入れられるの!? それなら任せちゃおうかしら!」
 ぽん、と手を叩き。
 クッキーにエクレア、フィナンシェにタルト。どれにしよう、と楽しげに笑うフローラの背を追ったサイズだった。


「願いを叶える花? 流れ星じゃなくて?」
 『黄昏夢廸』ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)は目を瞬かせる。流れ星も流れるだろうが、まさか花とは。
 ふわふわと周囲を飛ぶ妖精達がこんぺいとうを強請るものだから、『あとで一緒に食べようね』と柔らかく笑みを浮かべて。
 きゃあきゃあ声を上げて喜んだ妖精達に手を引かれるままに、噂の紫陽花の元を訪れたランドウェラだった。
「ほんとうに何でもあるんだなぁ……けどなんで紫陽花なんだろう。ここも季節は6が――いや夏で雪が降るくらいだから関係ないか。
 じゃあ偶然出来上がったってことか?」
 むむ、と小さく唸るランドウェラ。紫陽花とにらめっこし、皺の寄る眉間を妖精が解して。
「どうして僕らに願いを込めさせてくれるんだ?」
「なんでだろ……なんでだとおもう?」
 ふわふわと漂う妖精から帰って来たのは余りにも興味関心意欲態度の辺りの成績が引かれそうな反応。それでいいのか。
「はっ、もしかして紫陽花が大量発生中で人手が足りないとか?」
「ちがうとおもう!」
「だよねえ」
 ばっさりと切り捨てた妖精。やめてさしあげろよ! なあ!
 ランドウェラもあまり気にした様子はなく、『それなら遠慮なく願わせてもらうけどね!』と嬉々として紫陽花を手に取った。
「ああ、そうだ妖精たちの願い事が気になるなぁ。どんなことを願うんだろう」
「んっとねえ、ポセイドンさまがもっとタフになりますように!」
「ああ……ポセイドンは気が強くなりますように、ね。いいね」
「フローラさまがもっとびじんさんになりますように!」
「ふむ、ああ。フローラには……大きくなりますようにもいいかもね」
 どこがとは言わないし目をそらしたランドウェラ。どこかから突き刺すような視線が飛んでくる。
「……グレイシアは来ていないから持っていくことができないかな、なあカナタ?」
「ああ……持って行けたら楽なんだけどね」
(カナタは予想通りの天気が来ますようにって願ってそうだなあ)
 紫陽花を持ったカナタの表情は曇っていて、まるで雨降りの空のようだ、と。
 ランドウェラも改めて、紫陽花と対峙する。
(願い事かーもっと強くなりたいとかは願うんじゃなくて実行しなければいけない事……。
 いや大体の願いはそうか。自分自身じゃあどうにもならない事を願ってみればよいのか)
 ならば。
「じゃあ……んー『いろんな世界を見て回れますよう』に、と」
 紫陽花の花は淡く綻び――そして、花開いた。



 ――本当は叶えたい願いというのはあんまり無くて、

 願いを叶える紫陽花(キミ)に興味があったから見に来たんだ――

「紫陽花ってね、界(さかい)によっては我(アタシ)を象徴する花になるみたいでね」
 『闇之雲』武器商人(p3p001107)は紫陽花と目線を合わせて笑みを向け。
「紫陽花(キミ)に少し親近感を感じるようだ……そこで、紫陽花(キミ)と仲良くしたいという祈りを捧げておこう。いいかな?」
 ひょい、と手に取った紫陽花がみるみる花開く。
 手内にある紫陽花が淡く光り姿を変える。きっと紫陽花が優しい言葉に反応して、新しく妖精を生み出したのだろう。
 小さく寝転がる妖精に武器商人はくすくす笑って、『おめでとう』の祝福を。
「ああ、そうだ……それから。氷河のコにここ最近の季節は厳しいみたいでね」
 紫陽花をもうひとつ取り。『グレイシアの体調が良好になるように』と祈りを捧げた。
「みんな脆いからねぇ、身体には気を付けないと。ヒヒ」
「もろいの?」
「くずれちゃう?」
「壊れやすいのさ。でも紫陽花がきっと護ってくれるよ」
 武器商人は不安げな妖精に微笑んでみせる。
「まあ、紫陽花が守ってくれるのかしら?」
「それならフーちゃんのお転婆を直してもらいたいなあ。おれの胃がもたない」
「ちょっとどういう意味よポセイドン!」
 馴染みの友である武器商人の元へ、フローラとポセイドンが現れる。そして数分後に息を切らしてカナタも。
「俺羽根ないんですからね!!?」
「ごめんってば!」
 お説教をするカナタとフローラを横目に、ポセイドンに武器商人は声をかける。
「願いが叶う紫陽花の他に、素敵なコがいたら教えてほしいんだ。よければ王城の周りを散歩しても?」
「うん、大丈夫だと思うよ。でもおれは海のほうが詳しいんだよな……フーちゃんは?」
「ええと。確かおまじないの効果がある朝顔がどこかにあったような気がするわ?」
「……もしかしたら」
 ふと口を開いた武器商人。カナタはそれに気付かず奥の道へと指を指す。
「朝顔なら今朝方見ましたね。こちらです……あ、案内しても?」
「ギルドマスター殿の方が詳しかったりして……」
「あらやだ、ほんとうね武器商人……」
 うん、と頷いたポセイドン。カナタの背を追うようにして、フローラと武器商人も進んだ。
 残された紫陽花が、四人を祝福するように風に揺れた。


(願い事を叶えられるか……前にもそんな機会があった気もするが何を願ったかなんて忘れてしまったな)
 『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)は祈る。祈る。ただひたすらに、真っ直ぐに。
「――まあそんなことはどうでもいい。俺の願いは一つ。このカチューシャが外れて欲しいってだけなんだ」
 端正な容姿を嘲笑うかのように頭にしがみついたピンクのカチューシャ(リボン付き)。
 正直イケメンだから許されると思う。
「カチューシャが外れて欲しいだけ……だけなんだがおかしいな? 俺の願いはそんなに無茶なものだったとは!」
 辺り一面に広がる蕾化した紫陽花は世界に告げる。諦めろと。
 紫陽花の蕾畑が完成しそうな勢いである。世界を中心に広がる蕾の群れ。なんと悲しいことか、無謀な願いでは無いはずなのに。
「いやちょっと待て。この世の全てを手中にしたいだとか億万長者になりたいとかそんな規模のデカい話じゃないんだぞ!
 あくまで俺の頭にあるこの忌々しい物をちょっと取り外すだけでいいんだ!?」
 申し訳なさそうに蕾に戻っていく紫陽花。頼みの綱が無くなったかのように光のない目をした世界。
 地獄絵図が広がろうとしていた。
「っく、こうなれば別の紫陽花で試すしか……おい! 何故ちょっと見ただけで蕾になってるんだ!!
 あと申し訳なさそうに蕾を俯かせるのをヤメロ!! むしろこっちが申し訳なく思うから!!」
 ごめんね。これが運命(さだめ)なんだ。
 世界の必死の形相を見ないふりするかのようにつぼみに戻っていく紫陽花。世界は深く深くため息をついた。

 ――無謀な願いではないはずなのに、どうして……。

 そんな世界の背中をみたカナタは肩に手を置くと、そっと横に首を振るのだ。

 ――諦めろ。お前の願いは叶わない。

 と。
 無慈悲である。
 そんなカナタを一掃し、世界は粘った。健気すぎるほどに。



 〜青年、願い中〜




「駄目だ、粘ってみたが一向に叶えてくれる気配がないな。この願いは諦めよう」
 これで何個目だ、と数えるのをやめたほどに積もった紫陽花。その近くにゆっくりと腰を下ろすと、世界は自虐気味に微笑んだ。
「気持ちを切り替えて別の願いに変更して、うーん――それじゃあ、また来年に紫陽花が咲き誇るよう願うか」
 手のひら返しとはこの事か。みるみる咲き誇る紫陽花にえっといいたげな顔をする世界。大丈夫。妖精はいつでも世界の味方だよ。
「やれやれ……できれば今度は俺の願いも叶えられるくらい強力になってくれるとありがたいんだがな」
 なあ? と紫陽花に目を向けて。そんな世界を笑うかのように、紫陽花は揺れていた。

成否

成功

状態異常

なし

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