PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ゴブリン・タンク・デサント

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ゴブリン戦車の襲撃
 幻想北部、鉄帝に繋がるカナンセ街道沿いの村。そこに、巨大な荷台に金属で補強した樽の蓋を車輪とした『戦車』が三台現われた。荷台の上に組まれた『部屋』は使い古した盾や鎧で覆われており、その前部にはタイプの違う砲が三台置かれており、『部屋』の上にはそれぞれ十匹ほどのゴブリンがひしめきあって乗っていた。
「ギャーオッ! ギィーエッ!」
「ギャッギャッ!」
 『戦車』が突如その村に現われたかと思うと、ゴブリン達は一斉に降りて抵抗する村人達を弓矢、投斧で殺戮して回る。扉を閉めて立てこもる村人達もいたが――無駄だった。
 ある家は、ドアをレールガンで撃ち抜かれて、住人をミンチにされ。
 ある家は、ドアをガトリングの弾丸の雨で破壊されて、ゴブリン達にその中に雪崩れ込まれ。
 ある家は、砲塔から放たれた火炎が回り、住人は生きながらに火葬され。
 凄惨な光景が、その村を支配した。
 抵抗する者、逃げ惑う者達を虐殺して回ったゴブリン達は、家々を荒らし回って『戦利品』とばかりに家畜や食料を略奪していく。
 最後には奪うものは奪い尽くしたとばかりに『戦車』で建物を破壊し尽くすと、『戦利品』を戦車に乗せて勝利の凱歌のような叫びを上げ、その村を去った――。

●兵を動かせぬ事情
「お前達に、このゴブリン達の退治を頼みたいのだ」
 ローレットで、『バシータ領主』ウィルヘルミナ=スマラクト=パラディース(p3n000144)が告げる。
「私が治めるバシータは、この村からカナンセ街道で一本だ。何時襲ってこられても遅くはないし、出来ることなら私の領土に入られる前に倒してしまいたい」
 それはいいのだけれど、と一人のイレギュラーズが口を挟む。領主なら、自前の兵士で何とかすればいいのではないか。
「……残念だが、いろいろとそうも行かない事情があってだな」
 バシータ領は鉄帝にかなり近く、問題の村はさらに鉄帝に近い。そんなところに幻想の領主が兵を繰り出そうものなら、鉄帝との戦闘に発展しかねない。鉄帝から仕掛けてくるなら受けて立たざるをえないが、わざわざ刺激するような真似はしたくないと言うのがウィルヘルミナの考えだ。
「それに、鉄帝との戦闘が何時起きてもおかしくない以上、兵士として戦える者は極めて貴重だ。このような奴らを相手に、みすみす失いたくない。――しかし、民達の平穏のために奴らは討たねばならない。だから、引き受けてもらえないだろうか?」
 ウィルヘルミナは頭を下げて、イレギュラーズ達の答えを待った。

GMコメント

 こんにちは、緑城です。
 シナリオのネタに困ったらゴブリンに帰れというわけで、ゴブリンネタでシナリオを考えていたら、連想ゲーム的にこんなシナリオが出来てしまいました。

●成功条件
 ゴブリン戦車三台の破壊

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●ロケーション
 道幅の広い街道で、周囲は開けた平原です。時間は昼間、天候は晴れ。
 特にプレイングによって状況を変えようとしない限り、この状況での遭遇戦となります。

●ゴブリン ✕39
 三台の戦車の上に10体ずつ分乗しており、中の部屋にそれぞれ3体ずついます。
 基本的には雑魚です。ダガーや投斧、弓矢で武装しています。

●ホブゴブリン ✕6
 2匹ずつのチームで、戦車を押しています。
 基本的には戦闘中でも戦車を押し続けますが、戦車が危ないと見れば、戦車を守るために攻撃を仕掛けてきます。
 攻撃力と生命力に優れています。

●ゴブリン戦車 ✕3
 姿はOPに記載したとおりです。HPは固有で持っていますが、攻撃は部屋の中のゴブリンや後方から押しているホブゴブリンによって行われます。
 部屋は盾や金属鎧で覆われているために硬く、部屋の何処か一面を破壊しない限り、中にいるゴブリンにはダメージは与えられません。

・攻撃手段など
 体当たり(通常攻撃) 物至範 【移】【飛】【弱点】
 砲撃(アクティブスキル) 戦車によってそれぞれ違います
  レールガン 物超貫 【防無】
  ガトリングガン 物遠範 【弱点】【連】
  火炎放射 物近範 【火炎】【業炎】【炎獄】

 それでは、皆様のご参加をお待ちしています。

  • ゴブリン・タンク・デサント完了
  • GM名緑城雄山
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年06月17日 22時35分
  • 参加人数8/8人
  • 相談4日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)
レジーナ・カームバンクル
レクス・フェリシアーノ(p3p001028)
準々主人公
レナ・フォルトゥス(p3p001242)
森羅万象爆裂魔人
錫蘭 ルフナ(p3p004350)
澱の森の仔
アッシュ・ウィンター・チャイルド(p3p007834)
Le Chasseur.
羽住・利一(p3p007934)
特異運命座標
カイン・レジスト(p3p008357)
数多異世界の冒険者
ルナ・フォルトゥーナ(p3p008525)
「わるいこ」

リプレイ

●ゴブリン共、駆除すべし
 カナンセ街道沿いの村を壊滅させたゴブリン共を退治し、奴らが操る戦車を破壊してほしいとバシータの領主から依頼を受けたイレギュラーズ達は、街道を鉄帝方面に向けて進んでいく。
「――確かにこの位置では、派兵を悩むのも分からないではない。
 私達なら鉄帝国との誼もあるし、うってつけかもしれないね。
 ゴブリンがいては、落ち着いて暮らすのは難しいだろう。
 領主に頭を下げられたからには、その期待に応えたいところだな」
 その道中、バシータ領主が兵を動かせないのが腑に落ちたように、『特異運命座標』羽住・利一(p3p007934)は街道の先を見渡して独り言ちた。
 ゴブリン戦車によって壊滅させられた村はまだ先であるが、それでもかなり鉄帝の支配領域に近付いている。確かに、下手に兵を動かせば鉄帝との戦闘になるのは間違いの無いところだった。
「うん、害獣駆除だね。
 あんなに凄惨な仕打ちで村を一つ滅ぼされて、
 なのに僕らに対処を任せなきゃいけない領主さんの憤懣やるかたなさは察して余りある」
 利一の独語に、『猫派』錫蘭 ルフナ(p3p004350)が応じた。
「――ならば、僕らがすべきなのは完璧な仕事だ。
 鉄帝を刺激しないように、戦闘も当たり前のように
 圧勝する駆除でなきゃいけない。蹂躙には、蹂躙を返そう!
 ……と、こんな攻撃的なこと言ってても、僕、回復専門なんだけどさ!」
 最後にオチを付けるように言って、ルフナは苦笑いする。
「ゴブリンなんて、飽きる程見てきたんだよ。
 その浅知恵諸共、掃討してみようかっ」
 とは言いながら、様々な異世界でゴブリンに遭遇してきた『数多異世界の冒険者』カイン・レジスト(p3p008357)は、決してゴブリンを侮ったりはしない。ゴブリン共は他のモンスターと違い群れ、連携し、あまつさえ道具まで使う。
 ゴブリン退治を甘く見て全滅の憂き目に遭った初心者冒険者達の悲劇を知るカインは、その轍を踏む気は無かった。
(――とは言え、やっぱりゴブリンに知恵比べで負けたくはないよね!)
 まぁ、それが人間としての意地ではあろう。
 一方、『「わるいこ」』ルナ・フォルトゥーナ(p3p008525)のスタンスは、非常にシンプルだった。
(わるいこたちが、わるいことしてるんだよね。
 それならめっ! しなきゃダメだよねっ)
 「わるいこ」とか「わるいこと」で済むレベルの話ではないが、それはともかく事態の捉え方としては何ら間違っていない。
 「わるいこ」に「めっ!」するべく、ルナは気合いを入れるのだった。

「戦車……其れほどの兵器をゴブリンが保有しているのかと、少々驚きましたが、
 手押し式、なのですね……。違う意味でまた驚いてしまいまし、た」
 ゴブリン戦車と聞いてアッシュ・ウィンター・チャイルド(p3p007834)が想像したのは、おそらくキャタピラで進んで鋼鉄の装甲と旋回可能な砲塔を持つ、現代的なものであったろう。それだけに、ホブゴブリンが手押しすると聞いたアッシュは何とも言いようがない風に苦笑いする。
「ゴブリン戦車ですかしら?
 なんていうか、それ聞くと、イノシシが引く特攻戦車を思い出すんですけど。
 でも、今回のは、それとは違う……ホブゴブリンが押しているって、相変わらず、
 移動に関しては愚鈍、だけど厄介なものですわね。
 これで、村を蹂躙とか、許されないことですわね。
 ――人類種や、それに近いものや友好的な種族に敵対的な妖魔。
 殲滅あるのみですわね」
 『森羅万象爆裂魔人』レナ・フォルトゥス(p3p001242)の元の世界のゴブリン戦車はそうだったのだろうか。何というか、そのイノシシが引く特攻戦車は炎の魔素とあと適当な魔素で召喚できそうである。
 それはともかく、元々の世界でも主にファイアボールで魔物を討伐してきたレナにとっては、今度のゴブリン達も討伐するべき標的であることに違いなかった。

●戦車を迎え撃つ罠
 バシータと壊滅させられた村との半ば当たりまで来ると、『レジーナ・カームバンクル』善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)を中心に、イレギュラーズ達はゴブリン戦車を迎え撃つための罠を作り始めた。
「対戦車戦闘はゲリラ戦の基本ね。
 ちゃんとしたディーゼルエンジンや軍馬ではなく手押し型という特殊な点はあるけれども、
 やることは殆ど変わらないのだわ」
 何故か自信満々に言い放つレジーナが選んだ罠は、ゴブリン戦車の車輪を嵌める溝だ。
(金属で補強されているとは言え、樽の蓋で造られた車輪なら踏破性は低い。
 一メートル……いえ、五十センチ程の溝でも掘れば、
 それだけで車輪が溝に嵌って先に進めなくなるのだわ。
 少なくとも戦車を足止めすることは可能ね)
 と言うのがレジーナの判断であり、それは後程、正しかったと証明されることになる。
「ここから、私が主人公の冒険が始まるんだね!
 いきなり穴掘りをすることになるとは思わなかったけど……」
 今回の依頼が最初の依頼であるという『準々主人公』レクス・フェリシアーノ(p3p001028)も、額に汗を輝かせながら土を掘り進めていく。
 さすがに最初から土木作業をするとは予想外だったろうが、だからと言ってレクスは不満を抱いて手を抜いたりはしない。自らを主人公たらしめんとするレクスにとって、そのようなことは主人公としての在り方とは相容れないことなのだから。

「ふふ……、うふ、ふふ……」
 罠を迂回されることを考えて、アッシュは街道の中心だけで無く、その両端にも溝を掘り進めていく。一心不乱に溝を掘り進めていくうちに、アッシュは楽しそうに笑いだした。
 ランナーズハイならぬ、ディガーズハイとでも言うべきだろうか。
(皆がせっかく素敵な落とし穴を作ってくれるって言うんだ。
 小枝や藁を用いて、簡易でちゃちなバリケードを作ってみようか。
 ご自慢の戦車で一気に薙ぎ倒して駆け抜けたくなるようにさ!)
 ゴブリン戦車の車輪を嵌める溝の前に、簡単に踏破出来るようなバリケードを構築しはじめたのはルフナだ。敢えて簡単に突破出来る罠をあからさまに見せ、それを突破させたくすることで、本命の罠からゴブリン達の注意を逸らす狙いだ。
「ひっかかってくれればたのしいけど、うまくいくかな……」
 ルナは、街道から外れたところで草と草の先端を次々と結わえ付けていった。戦車から降りたゴブリン達が足を取られて転べばいいな、と思いながら。 

 最終的にイレギュラーズ達によって作られた罠は、五十センチの幅と五十センチの深さの横に長く掘られた溝が三本。両端の二本は中央の一本の真横に掘られているため、全体的には横に長い一本の溝の間に掘られていない部分があるようにも思える。これらの溝は油を塗り込んだ上で、ぱっと見ただけではわからないように隠蔽された。
 その三本の溝の前にはデコイのバリケードがあり、左右の溝のさらに外には草結びの罠がいくつも仕掛けられていた。

 罠が完成すれば、今度は自分達を隠す番である。
 街道から四十メートル距離を置いたところで、イレギュラーズ達は土の表面を崩さないように剥いでいく。剥いだ部分を三十センチほど掘って、その土を街道に向けて盛ると、剥いだ表面を周囲の風景と違和感が出ないように乗せる。
 そして、平原用に迷彩した布を被って盛り土の影に隠れると、イレギュラーズ達はゴブリン戦車を待ち受けた。

●陥穽!
「――現われたよ」
 イレギュラーズ達が隠れてすぐに、街道に姿を見せたゴブリン戦車を発見したのは、超視力を持つ利一だった。だが、仕掛けるにはまだまだ遠い。
「ギャッ、ギギャッ?」
「ギィーエッ?」
「ギギャーッ、ギッギッ」
 ゴブリン達はデコイのバリケードには気が付いたようだが、イレギュラーズ達には気付いていない。バリケードに対して如何するか、車上のゴブリンと車中のゴブリンが話し合う。だが、すぐに方針は決まったらしい。
「ギギィーエーッ!!」
 三台のゴブリン戦車が、勢いよく突進してバリケードを突き破った。
 ガクン! 次の瞬間、ゴブリン戦車は前輪を取られて、突進していた勢いのまま前につんのめる。その衝撃で、ズザザザッ、と車上に乗っていたゴブリン達が車上から戦車の前方に滑り落ちた。
 戦車の上に兵を乗せるタンクデサントの欠点の一つに、戦車が急な機動をすると車上の兵が振り落とされると言うものがある。故に戦車の側もそうならないように機動には気を遣うのだが、罠にかかって足を止められたとあってはそうはいかない。
 ましてや車上のゴブリン達からすれば、ちゃちなバリケードを戦車が突破したと油断した瞬間に、戦車に急ブレーキをかけられたようなものであり、その状況で振り落とされるなというのが無理な注文なのであった。

 もちろん、ゴブリン戦車の足が止まった好機をイレギュラーズ達が逃すはずは無い。
「さぁ、殺戮を始めましょう♪」
 真っ先に盛り土の影から飛び出したのはレジーナだ。桜吹雪を彷彿とさせる火の粉が舞う中、紅蓮の炎と熱砂の幻影が手近な戦車の押し手であるホブゴブリン達を襲う。
「機動、Ring・of・BLAZING!
 ならば、行くわよ!! エクスプロード・ファイアボール!!」
 レジーナの天譴・華咆一閃を受けたホブゴブリンに、畳みかけるようにレナが火炎弾を叩き付ける。ホブゴブリンに当たった火炎弾は、ドカン! と爆発して隣のホブゴブリンを巻き込んだ。
「いきます、よ……」
「グギッ……グゲエッ!?」
 続いて、アッシュがホブゴブリン達を殺傷の霧で包む。焼け爛れた皮膚に毒を含んだ霧が染みてか、ホブゴブリンは苦悶の叫びをあげた。
「今のうちに、少しでも削っておかないと……!」
 利一は戦車から滑り落ちて地面に突っ伏しているゴブリン達を目掛けて、D・ペネトレイションを放つ。一直線に進む死の凶弾は十体以上のゴブリンを次々と貫き、深手を負わせた。
「手負いのホブゴブリンを、僕達で仕留めるよ。
 レクスさんは手前のを狙って。僕は奥のを狙う。いいね?」
「うん、わかったよ!」
 カインとレクスは、度重なる攻撃を受けてダメージの重なったホブゴブリン達に向けて、手分けして魔弾を放つ。
「……やったぁ!」
 魔弾をもろに受けたのが止めとなって、ホブゴブリン二体は崩れ落ちた。初の戦果に、レクスは快哉の叫びを上げる。
「おしおきのじかん! しんじゃえ!!」
 ルナは、利一のD・ペネトレイションで貫かれたゴブリンのうち一体に毒瓶を投げつけて虫の息に追い込む。そこにルフナのダーティピンポイントが重なり、ゴブリンの一体は息絶えた。

 罠にかかり、イレギュラーズ達の奇襲を受けたゴブリン達は混乱の最中にあった。戦車から滑り落ちたゴブリン達は何が起きたのかわからないという風に周囲をキョロキョロと見回しつつ、とりあえず立ち上がろうとする。
 押し手のホブゴブリンを潰された戦車の中のゴブリンはそれも知らず、ただ今はいないホブゴブリンに向けてわめきちらすのみ。残り二台の戦車の押し手であるホブゴブリン達は戦車の前輪を溝から脱出させようとするも、溝に仕込まれた油がつるつると車輪を滑らせて手こずらせていた。

●利一の賭け
「脱出なんて、させないのだわ」
 中央にいる戦車の押し手であるホブゴブリン達に対し、レジーナは天譴・華咆一閃を放った。前輪が罠から脱出して自由に動けるようになれば、ゴブリン戦車はイレギュラーズ達にとって脅威となる。その前に、ゴブリン戦車の機動力の源であるホブゴブリンは倒しておきたいところだった。
「もう一発!! エクスプロード・ファイアボール!!」
 レナも、レジーナに続いて爆発する火球をホブゴブリンに叩き込む。続いて、カインとレクスがまたも手分けしてホブゴブリン達を魔弾で攻撃して、深手を負わせる。
「皆さん、容赦のない……ですが、彼らのしたことを思えば、此れも、とうぜんの報い」
 他のイレギュラーズ達の攻撃をそう評しつつも、アッシュとて手加減はしない、するはずがない。このゴブリン達は村一つを無惨に壊滅させたのであり、かける情けなどありはしない。それに、ここで仕留めなければ今度は自分達が滅びた村と同じ運命を辿ってしまうのだ。
 必ず、これで――その殺意が乗ったロベリアの花は、ホブゴブリン達を包み込むと瞬く間にその命を刈り取った。

(危険ではあるけれど……やるしかない)
 利一はわずかに考え込むも、その逡巡を振り払うように立ち上がるゴブリン達に向けて歩みを進める。
「お前達のような悪鬼は、この俺、羽住・利一が相手してやる!
 さぁ、まとめてかかってこい!」
 そして、裂帛の気合いを込めて名乗りを上げた。利一の口上に刺激されたゴブリン達が、ざわざわとしながら敵意を利一に向ける。
(……すごい。あんなにたくさんの敵に対して堂々と、主人公みたいで格好いい!
 いつか私も、あんな風に敵に向かって啖呵を切れたら――)
 その姿に、レクスは目を奪われて見惚れる。名乗り口上は敵の注意を一気に引き付けるため、回避なり防御なり敵の攻撃を引き受ける実力に自信がなければ、ただの自殺行為である。今の自分の実力で出来ることではないことは、レクス自身にもはっきりとわかっていた。
 しかし、利一とて万全の自信があったわけではない。防御には自負のある利一だが、それでも流石に三十体近くの相手は思わぬ事故を起こしかねない数だ。それでも敢えてこれだけの数を引き寄せにかかったのには、当然理由があった。
 それは、イレギュラーズ達の中で数多の敵を相手取る適性があるのが、自身を除けばルフナだけだと言うことだ。もちろん、冒険が初めてのレクスやルナとて一対一ならゴブリン相手にはどうにかながら勝ちうるだろう。しかし、いくらゴブリンが相手とは言え数を頼みに囲まれれば、レクスやルナはおろか、レナ、アッシュ、レジーナ、カインさえ危ない。それ故に、自身が三十体近くを引き付ける賭けに出たのだ。
 その利一を援護するべく、ルフナはダーティピンポイントで、ルナはSPOで、それぞれ手負いのゴブリンを倒していった。

 利一の名乗り口上を受けたゴブリン達はすっくと立ち上がると、一斉に利一の方へ集っていく。だが、今回は移動しただけに留まった。
 一方、残るホブゴブリン達は押し引きで戦車を動かすのは無理と判断したらしく、一番近くにいたレジーナに殴りかかろうとするが、その拳は空を切った。

●ゴブリン戦車、完全破壊
 戦闘は、長引いたもののイレギュラーズ達の勝利に終わった。
 レジーナに殴りかかってきたホブゴブリンは、即座にレジーナ、カイン、レクス、アッシュ、レナから集中して反撃を受け、すぐに斃れた。
 その後、利一を巻き込む危険があるため範囲攻撃で一掃とはいかなかったので時間こそかかったものの、戦車の中にいた個体も含めてゴブリンも全て殲滅された。
 およそ三十体ものゴブリンを相手にして利一が無事でいられたのは、ゴブリン達の敵意がただ一人に集中したために一度に攻撃してくるゴブリンは精々その三分の一であったことと、ルフナからの強力な回復があったことによる。
 実際、思わぬ「事故」は何度か発生したが、その度にルフナの神奈備が利一をほぼ完全に癒やしていった。それがなければ、もしかしたら利一はパンドラを費やさねばならなくなるまで追い込まれてたかも知れない。もちろん利一はルフナの存在を意識した上で賭けに出たのであり――そして、見事に勝ったのだ。

 ゴブリンやホブゴブリンを殲滅し終えたイレギュラーズ達は、次にゴブリン戦車を破壊しにかかった。装甲を残らず剥ぎ取ると、カインがマリオネットダンスで細かく切り刻んでいく。そして残骸を一カ所に寄せ集めると、ルナのマジックフラワーやレナのエクスプロード・ファイアボールで焼き尽くした。
 そして、罠として掘った溝を埋めて通行に支障のないよう元に戻すと、依頼完了の報告をするべく一行はバシータへと向かう。もう、この兵器による惨劇が起きることはない――そう思うと、戦闘を終えたばかりにもかかわらず、イレギュラーズ達の足取りは自然と軽くなっていた。

成否

成功

MVP

善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)
レジーナ・カームバンクル

状態異常

なし

あとがき

 シナリオへのご参加、どうもありがとうございました。
 まさか、罠を仕掛けてくるとは……と、わなわなしながら皆様のプレイングを読んでました。罠だけに、ですね。
 シナリオを作った時は某アーケードゲームのようにゴブリン戦車が暴れ回り、それに轢かれたりしながらもイレギュラーズ達が力で立ち向かう光景を想定していたのですが、見事にその上をいかれました。脱帽です。

 MVPは、罠に関しての理論武装についてもゴブリン達から身を隠す手法についても共に素晴らしく、文句の付けようのないプレイングをして下さったレジーナさんにお送りします。

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