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シナリオ詳細

子供たちはただ明日の太陽を待ち望む

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●孤児院の状況は苦しいです
 ユルコフスクの町、五番街コチュソフ通りに、孤児院『朝日を待つ子らの家』は建っている。
 教会が母体となって運営している孤児院には、両親を失い教会に託された子や、何かしらの事情があって親元を離れた子が、共同で暮らしている。
 しかし五番街はいわゆるスラム街。周辺環境を含め、孤児院の環境はお世辞にも良いとは言えない。
 今日もまた、孤児院で働くヴェーラとマルガリータが、孤児たちが寝静まった後の休憩室で、薄い紅茶を飲みながらため息をついていた。
「何とか、今日も乗り切ることが出来たわ……」
「何とか、ね。でもこんなんじゃ、子供たちは弱っていくばかりだわ」
 顔を見合わせながら二人は沈痛な面持ちで、今後の状況を話し合っていた。
 今日も二人は、八人の子供たちの相手をして、食事を取らせ、生活の面倒を見て、寝かしつけた。
 しかし今日も二人は、お腹を空かせて元気のない子供たちを、ただ死なせないように命を繋がせることしかできなかった。
「パーヴェル神父も運営資金の増額を教会にお願いしてくださっているけれど、教会の返事は今日も素気無かったそうよ」
「せめて一日に、ソバの実の粥を一杯と、牛乳をカップ一杯だけ、という生活を改善してあげたいものだけれど……」
 ヴェーラの言葉に、マルガリータも俯いた。紅茶を淹れたカップを両手で包み、目尻を気落ちしたように下げる。
 この孤児院にはとにかく金がない。運営母体である教会に運営資金の増額を打診しても返事は良かったためしがない。こんなスラム街に建つ孤児院では、住民からの寄付も望めない。
 少ない資金を何とかやりくりして、ソバの実と牛乳だけは買えているものの、逆に言えばそれだけを揃えるので精一杯なのだ。果物も、野菜も、肉も、もう何ヶ月も子供たちに食べさせられていない。
 食事が満足に取れない子供たちに、何とか食べさせたい。そう考えるが、現実は非情である。給与もお世辞にもよいとは言えない職場だが、子供たちを見捨てて別の職場に移るわけにもいかない。
 紅茶をぐいと飲み干して、ヴェーラが頭を振った。
「無いものねだりをしてもしょうがないわ。さあ、今のうちに掃除を済ませちゃいましょう」
「そうだわ。蝋燭の火も勿体ないもの」
 そう言いながら、雑巾と手燭を取って二人は立ちあがる。ユルコフスクの町で広く配備されている電灯も、この孤児院では使うことが出来ていなかった。

●この男性も苦々しく思っているようです
「やあやあお歴々、今日もお日頃はいかがかな?」
 『ツンドラの大酒飲み』グリゴリー・ジェニーソヴィチ・カシモフはにこやかに笑いながら、そう特異運命座標たちに告げた。
 彼がここに出張ってきたということは、何らかの用件があってというのに違いはない。どうやら今回も、彼の故郷たるユルコフスクの町で、なにやら問題があるようで。
「俺の故郷の五番街は、いわゆるスラム街でね。低所得者やら浮浪者やらが寄せ集まる地区なんだが、そこに一軒、教会が運営する孤児院が建っている。お歴々には、そこの助けになってもらいたいのさ」
 そう話して、グリゴリーはひらりと手を動かしつつ話し始めた。
 ユルコフスク市の教会が運営する孤児院『朝日を待つ子らの家』は、五番街コチュソフ通りに面して建っている。木造の平屋建てでそれなりの広さがあり、庭も同様に広い。孤児を受け入れるキャパシティは、それなりにある場所と言える。
 しかし五番街の佇まいに紛れるように建物は古く、あちこちガタが来ている。隙間風が入らないよう、何とか修繕はしている様子だが、体裁は明らかに整っていない。
「運営母体が教会なら、孤児院が取り潰しになることは、まぁ無いだろう。だがその孤児院は、教会側としてもあまり関与したくない場所らしくてね。
 運営資金は雀の涙、寄付もほとんど集まりやしない。子供は増えることもそうないが、生きて減ることはもっとない……つまり、絶望的なまでにボロボロなのさ。今は何とか、日に一杯の粥と牛乳で命を繋いでいる状況だ」
 グリゴリーの話した悲惨な状況に、特異運命座標が息を呑んだ。
 育ち盛りの子供たちがそれだけしか食べさせられないで、健康でいられるはずがない。
 ただでさえグリゴリーの世界は寒いのだ。寒さに耐えるには体力が要る。体力をつけるには食わねばならない。しかし現状、食えてはいないわけで。
 今はどうにか生きているそうだが、いつそれが崩れるとも限らないのだ。
「とまぁ、そういう訳でね。お歴々にはちょっと出かけてもらって、『朝日を待つ子らの家』の窮状を脱する手助けをしてもらいたいのさ。
 スタッフの女性陣の仕事を手伝うのでも、子供たちの相手をしてやるのでもいい。金銭面での寄付も……まぁ、無論というやつさ」
 そう話して、グリゴリーは肩を竦めた。
 孤児院にはヴェーラ・スヴェトキナ、マルガリータ・グロムイコの二名が勤務し、子供たちの面倒を見ている。しかし彼女たちも、満足に子供たちに食べさせることが出来ないことに、苦慮している様子である。
 院長であるパーヴェル・アクショーネンコも悪人ではないが、如何せん金策に苦労しているため子供たちと接する機会は、あまりないそうだ。
 子供は獣人族が五人、人間族が二人、鳥人族が一人。男女比は四対四。いずれも小柄でやせ細り、お腹を常に空かせている。そんなものだから元気もなく、子供らしく走り回ったり騒いだりすることも無いようだ。
「教会が資金をケチっているのか、他に何か理由があるのか……それは今調べることじゃあない。ただ、お歴々は子供たちが飢えているのを、黙って見ているほど非情でもないはずだ。そうだろう?」
 そう言ってにやりと口角を持ち上げながら、獅子の男は鬣のリボンを撫でてみせた。

NMコメント

 特異運命座標の皆様、こんにちは。
 屋守保英です。
 遂に背景トップピンナップが完成しました。
 今回はユルコフスクの町での依頼となります。

●目的
 ・孤児院『朝日を待つ子らの家』に協力する。

●場面
 グリゴリーの故郷、ユルコフスクの町五番街に位置する孤児院『朝日を待つ子らの家』です。
 教会から派遣されている院長と、雇用されているスタッフが二人働いています。
 孤児は獣人族を中心に8人が暮らしていますが、みんな満足に食べられていないため、元気はありません。
 単純に金銭を寄付するよりは、子供たちと遊んであげたりスタッフの仕事を手伝ったりした方が、助けになるかと思います。
 スタッフのヴェーラとマルガリータはいずれも30代の女性で、それぞれ熊と猫の獣人族です。院長のパーヴェル神父は60代後半の男性で、兎の獣人族です。

 それでは、皆さんの楽しいプレイングをお待ちしております。

  • 子供たちはただ明日の太陽を待ち望む完了
  • NM名屋守保英
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年06月20日 22時10分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

鞍馬天狗(p3p006226)
第二十四代目天狗棟梁
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
シャッファ(p3p007653)
 酩酊遊戯
長月・イナリ(p3p008096)
狐です

リプレイ

●凍雪
「こういうの知っちゃうと見過ごせないのよねえ」
 『ドランクミストレス』シャッファ(p3p007653)が、雪のちらつくユルコフスクの五番街を歩きながら、深くため息をついた。
 そんな彼女へと、御者席に座った『第二十四代目天狗棟梁』鞍馬天狗(p3p006226)が天狗面の向こうからちらりと視線を向ける。
「男の扱いを教えるのは、やめておけよ」
「わ、分かってるわよ」
 心配そうに言う彼に、思わず目を逸らしながら彼女は言った。この女性、既に足を洗ってはいるが娼婦だった故に。
 『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)も小さく頭を振りながら、子供たちの置かれている現状を嘆いた。
「貧富の差がある世界じゃ、どこでもこういうのは無くならないんだな」
「うむ、これは、ひどい現実である。どうにかするしかない」
 鞍馬天狗も同調しながら馬車を進めていく。
 五番街はどこもかしこも寂れているが、その中でも特に荒れた場所というのはある。孤児院もその一つだ。『狐です』長月・イナリ(p3p008096)が徐々に近づく『朝日を待つ子らの家』を見つめた。
「ひもじい思い、お腹が減った、そんな人達が居るなら自分の手が届く範囲で助けてあげないとね」
 困っている人、苦しんでいる人がいるなら助ける。それが、神様の御使いたる自分の役目だと思うから。彼女の手の中で、稲穂がすっと伸びた。

●粗目雪
 孤児院の玄関をノックすれば、中から熊の獣人の女性が姿を見せた。ヴェーラ・スヴェトキナだろう。
「『朝日を待つ子らの家』にようこそ……当院にご用事が?」
「ああ、子供たちが飢えていると聞いたのでな。支援をと」
 ヴェーラが怪訝そうな表情で言えば、世界がにこやかに笑う。
 支援の二文字に彼女はハッとした。こんなスラムの孤児院だ、物的支援を申し出てくるような人など、そういないのだろう。
 鞍馬天狗が馬車から降りて幌を持ち上げる。中には孤児院一つを救うには十分な量の物資があった。
「この馬車に、銀貨と支援物資を積んで、持って来た」
「まあ、ありがとうございます! マルガリータ、ちょっと来て!」
 ヴェーラがすぐに、同僚のマルガリータ・グロムイコを呼んで。何事かと院長のパーヴェル・アクショーネンコも表に出てきて目を丸くした。
 馬車から物資を降ろす中で、鞍馬天狗がヴェーラに声をかける。
「確認の合間に、子供たちにいくらか食わせて、遊んでいてもよいか?」
「えぇ、どうぞお入りください。子供部屋は中に入って右手です」
 了承を得られた鞍馬天狗と世界が笑う。この二人は元々、子供たちの相手をすることを中心に考えていた。
「シャッファ、任せていいか?」
「そうね、私が対応するわ。イナリは掃除をするんでしょう?」
「ええ、そのつもり。でも荷物の受け入れには同行するわ」
 建物に入る世界がシャッファとイナリに声をかければ、二人がこくりと頷いて。
 男性二人は建物に入ると、入って右手の扉を開けた。ぐらつく扉を開ければ、孤児たちが揃って二人を見る。
「邪魔するぞ」
「天狗たる我の参上なのである」
 短く声をかける世界と鞍馬天狗。突然の登場に、孤児たちはキョトンとしていた。
「知らない大人……」
「お兄さん、誰?」
 不思議そうに声をかけてくる孤児に、世界がふっと笑いかける。
「俺たちは、君たちと遊びに来たんだ。だが……この中で、腹を空かせている奴、手を挙げな」
 世界が子供たちへと質問を投げかけると、ば、とまっすぐ上がる腕が八本。それを目にした鞍馬天狗がため息をついた。
「見事に、全員だ」
「だろうな。さぁ皆、腹ごしらえといこう」
 苦笑しつつ、世界が持参した菓子折りとボーロの包装を破る。その隣では鞍馬天狗も羊羹や饅頭を取り出して、イナリが持参したおにぎりも一緒にテーブルに置いていた。
「これ、何?」
「もしかしてお菓子?」
「そう、お菓子だ。皆で分け合って食べるといい」
「我の持ち込んだ菓子もあるぞ。しょっぱいのがよければ、おにぎりもある」
「「わーっ!!」」
 途端に、孤児たちの腕が一斉に殺到した。奪い合うほどの元気はないが、菓子もボーロも羊羹も饅頭も、あれよあれよと消えていく。
 元々、日々の食事にすら苦しむ環境なのだ。しかし、甘いものはどんな子供だって大好きだ。
「美味しい!!」
「甘いものが、新年以外にも食べられるなんて……」
「この白いのも美味しい!」
 がっつく孤児たち。空腹にいきなりたんまり食料を詰め込んで、腹を壊さないかが逆に心配だ。
「思っていた以上だな」
「飢えていたのだろう。甘いものなど、望めない」
 世界が零せば、鞍馬天狗も肩を竦める。甘いものを食べるどころか、お腹いっぱいになることすらなかった子供たちだ。
「確かにな。さて……外に出て遊ぼうか」
「でも、お外、寒いよ?」
 世界が庭に繋がる子供部屋の窓を開けながら言えば、孤児の一人が眉間にしわを寄せる。
 しかし世界はそのまま外に出ると、魔法陣が描かれた布を取り出した。
「心配はいらない。ほら……」
 布を広げてさっと手を添えれば、そこから可愛らしい精霊が何匹も飛び出してくる。さらに鞄を開ければ、そこから角の生えたもこもこ兎が飛び出した。
「わ、かわいい!」
「ほう、なら我も呼ぼう」
 好意的な反応を見せる孤児たちに、鞍馬天狗も考えがあるようで。パンパンパンと手を三度打てば、虚空から烏の羽を持つ小さな妖怪が飛び出した。
「ゴシュジン、ナンダ」
「烏天狗、お前も遊んでやれ」
 妖怪・烏天狗に鞍馬天狗が命令を出すと、烏天狗は少々まごついた。どうやら、子供の類は苦手な様子。
「エ、チョット、ゴシュジン、コドモハ、チョット」
「いいから、遊べ」
「ア、ハイ」
 しかしそのまま押し切られて、孤児たちの中に放り込まれるのだった。

●玉雪
 他方、孤児院の休憩室では。
 パーヴェル、ヴェーラ、マルガリータの三人と向かい合うようにして、シャッファとイナリが協力して紙にペンを走らせていた。
 書き記すのは、今回孤児院に寄付した物品の内訳だ。内訳を記すのは大事なことだ。
「これが支援物資の内訳ね」
「確かに……ああ、ありがとうございます。これぞまさに、神からのお恵みです」
 支援物資の目録を恭しく受け取りながら、パーヴェルがシャッファに頭を下げた。頭を下げられた二人が、苦笑しつつ手をひらりと動かす。
「言っておくけれど、雌鶏は食べちゃ駄目よ」
「私の持って来た鶏草も、卵を産んでくれるからちゃんと世話をしてね」
「分かりました、しっかりやるように言い聞かせます」
 シャッファとイナリの言葉に、ヴェーラが頷く。卵は重要なたんぱく源だ。餌を与えればいくらでも産む。ある程度話がまとまったところで、イナリが椅子からそっと立ち上がる。
「こんなところかしら? それじゃ、私は掃除と修理のお手伝いをするわ」
「ありがとうございます、では、まずはキッチンの方から」
 掃除をやりに行くイナリは、マルガリータに先導されて休憩室から出ていく。あとに残されたシャッファは、おもむろに果実酒の瓶を取り出して笑った。
「あなた達も大変よね。愚痴なら飲みながら聞くけど、どう?」
「やあ、これは失敬」
「ですよねー、お酒がなきゃ」
 パーヴェルもヴェーラも、嬉々としてカップを差し出してきた。やはりこんな寒い地域、酒は嗜好品でなく日常品というわけだ。
 かくして始まる酒を交えての愚痴吐き大会。やれ美味い酒が飲めないだの、やれ薄給だの、二人から愚痴がどんどん出てくる。
「ふぅん、さすがに資金が回ってこなさすぎるって?」
「その通りです。母体の教会も資金は潤沢なはずなのですが」
「おかしいですよねー、だって『光臨教会』でしょう? 一番街の建物はあんなにキラキラして綺麗なのに」
 ヴェーラが果実酒をぐいと呷り、息を吐き出しながらそう言った。と。
「そんなに立派な教会なの?」
「あら、イナリ。もう終わったの?」
 片眉を持ち上げたシャッファがふっと後ろを振り返れば、そこには箒を手に持ったイナリがいた。
「終わるわけないじゃない。休憩ついでに手伝ってもらいに来たの」
「なるほど」
 手伝おう、と立ち上がったシャッファが、ふと立ち止まってパーヴェルに向き直った。
「あ、そうそう神父さん」
「なんでしょう」
 目を見開くパーヴェルに、彼女は椅子の背もたれに顎を乗せながら笑う。
「もし、子供たちが興味があれば、だけど……うちの知り合いの道場で内弟子を取ってるとこがあってね。修業は厳しいけど、よければ紹介してあげられる。道場に住み込みだから、家と食事には困らないわ。どう?」
「願ってもない! あとで子供たちにデモンストレーションをお願いできますか?」
 予想外の申し出に、パーヴェルが椅子を蹴って立ち上がる。その反応に、にこやかに笑うシャッファだった。

●灰雪
 庭では鶏小屋と鶏草の花壇が作られ、建物の外壁と内装には手が入れられ。
 『朝日を待つ子らの家』はどんどん、環境が整っていく。世界は子供たちの相手をしながら監督作業だ。
「我がやって、失敗したら、目も当てられないからな」
「いいわよ、物を運んでくれるだけでも有り難いわ」
「おっちゃん、こっちに釘持って来てー!」
 板材を運ぶ鞍馬天狗がぼやくと、シャッファが笑いながらそれを受け取り壁に打ち付ける。孤児の子供も他の場所で修繕をしては、鞍馬天狗に新しい釘を要求して。
「話にあった通り、五番街は全体的に治安が悪いみたいね……あら?」
 外壁を修繕しながら、イナリがふと通りの十字路に目を向けると。
「んん?」
 彼女は気が付いた。何者かが修繕作業をじっと見ている。
 イナリがそちらを見ていることに気が付いたのか、その人物はすぐさま十字路の向こうに身を隠した。その拍子に、ひらりとはためく服の布地が見える。
「……まさかね」
 謎の人物の逃げた方を見つめて、イナリはぽつりと声を零した。

成否

成功

状態異常

なし

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