シナリオ詳細
《狐の嫁入り 異聞録漆》獅狐戦争
オープニング
■時は遡り
「……親父、今なんて言った?」
カイとティティス、二人の少女の冒険劇が起きるより前。城塞都市の騎士団長とその息子は、執務室にて一つの話し合いをしていた。
「聞こえんかったかバカ息子」
「いや、聞こえてはいたんだが」
余りにもその内容が突拍子もなくて、唖然としてしまったからだ。息子イグニスは姿勢を正し、改めて内容を口にする。
「……兎人達の街に、獅子人が宣戦布告しただ?」
「聞こえていたか。その通りだ」
ここ、狐人の城塞都市は長スーラクの手腕もあり平和そのもの。いくつかの都市とは友好を結んでいる。
その中には彼の庇護を求めて、というものもあり。兎人達の住まう都市もその一つだ。兎人は穏やかな種族で、普段はのんびりと果物を育てたり織物を織ったりして暮らしている。
そこへ勇猛果敢で知られる獅子人が襲いかかろうとしているのだ。魔物の住む大地に近い都市に住まう獅子人は皆屈強で、まさしく軍事大国というに相応しい。種族の絶対数が少ないが為に、他種族を襲うということはしなかったのだが……。
「一体何があった……?あいつらだって馬鹿じゃないだろ」
「それだが……どうも代替わりが起きたようだな」
獅子人達は魔物を討伐して周り、見返りとして他種族から食物などを得て暮らしている。それは前代までの王達がずっと決めてきた事。共存の道を歩んでいたからこそ。
その獅子人の王が代替わりし、侵略を始めたとの事なのだ。
「……バカだろその王」
「お前と同じくらいにな」
「俺はそんなに愚かじゃねぇよ。……で、俺はどうすればいい?」
「簡単な話だ。一部隊を率いて兎人の都市へ迎え。獅子人を迎撃、もしくは和解の道を探れ」
へいへい、と肩を竦め。イグニスは部屋を後にする。
「……オークロードの後に、これか……」
■救援要請
「皆、いつもありがとう。今回も獣人達の世界のお話なんだけど……」
見慣れた本を手に境界案内人のポルックスはイレギュラーズ達に説明を進める。
「イグニスさん、は知ってるよね? 彼からの依頼よ。戦争になるかもしれないから、手を貸してくれないかって」
悲しそうな顔を浮かべ、ポルックスは語る。
「どうして、戦争なんて起きるのかな……。あ、ごめん。変な事言っちゃって」
- 《狐の嫁入り 異聞録漆》獅狐戦争完了
- NM名以下略
- 種別ライブノベル
- 難易度-
- 冒険終了日時2020年06月10日 22時35分
- 参加人数4/4人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 4 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(4人)
リプレイ
■作戦会議
「皆済まないな。俺の我儘に付き合って貰って」
狐人の騎士を率いる隊長となったイグニス。野営地での彼の張に共にいるのは、義兄弟のコルスと四人のイレギュラーズであった。
深々と頭を下げるイグニスに対し、他の五人は一度顔を見合わせてから笑う。
「水臭い事を言わないでくれよ、義兄弟」
「そうだヨ。おじいちゃんなら幾らでも手伝うサ」
イグニスの肩を叩いて親愛を示すのはコルスと 『風吹かす狩人』ジュルナット・ウィウスト(p3p007518)
もっともジュルナットは、縁などなくてもやられたらやり返す精神なので来ていたのかもしれないが。
「一方的な殺戮を見過ごすなんて寝覚め悪いしね」
「その代わり、やるなら完全勝利よ!」
腕組みをしてどこかしら斜に構えた『初日吊り候補』セリア=ファンベル(p3p004040)と、やる気に満ちた『狐です』長月・イナリ(p3p008096)の様子に、イグニスが少し笑う。
「それで、どのような作戦を取るのかな?」
『特異運命座標』羽住・利一(p3p007934) が帳の外に広がる大草原を見渡しながら問いかける。木々も疎らにしかなく、起伏のない地形だ。奇襲もできそうにない。姿を隠す場所がないのだ。
「正面激突もやむなしかと思っているが……被害が大きそうだな」
「獅子人達は至近戦闘なら敵無しだからね……」
地元民であるイグニスとコルスが唸り声をあげる。彼ら二人は狐人の中では最強に近いのだが、そもそも狐人と獅子人では基礎能力が違うのである。配下の騎士達は苦戦を免れないだろう。
「それならおじいちゃんに一計あるけど、乗ってみるカイ?」
ジュルナットの言葉に一同が身を寄せ合い、ささやき声で話を進める。時折「なるほど」「確かに用意はできる」と声が漏れる程度で……。
■決戦!
「こちら、ご注文の品ご用意できました」
「ああ、すまない。感謝する」
物見の部隊が獅子人の接近を告げる朝、イグニスは兎人達に会っていた。ジュルナットから聞いた作戦を実行に移す為に必要な物資を、兎人達に頼んでいたのだ。
「コルス、これがそちらの部隊の分だ」
「ああ」
二人が分け合うのは、大量の弓と矢。それらを配下の騎士達のうち50名ほどが身につける。
「それじゃ、私達はイグニス部隊ね」
「ああ。それじゃあまた後で」
イナリと利一がイグニス配下に混ざり歩いていく。ジュルナットとセリアも一度視線を交わし、コルスの部隊へと混ざって戦場へ。
「来たね。確かにムキムキの獅子だわ」
コルス部隊の前衛。普通なら盾持ちを配置する場所にいるのは、弓矢を持った騎士達とセリアとジュルナットの二人。
「もうすぐ射程範囲ダネ。皆、用意はイイ?」
ジュルナットが弓矢を構えながら、騎士達に声をかける。皆一様に弓に矢をつがえ、天に向ける。
セリアが秒を数える。ジュルナットの視力を用いて、射程までの演算を行い。
「今よ!」
「撃てぇ!!」
セリアの号令をコルスが増幅させ、一斉に空を矢が覆い隠す!
ぐぇっ! ぎゃっ!
矢に貫かれる獅子人達の叫びが少々聞こえるが、当然止まるはずもない。否、止めるものは見捨てられるからだ。
「よし、ここから作戦通りの陣形に移るぞ! 前衛部隊、前へ!」
「おじいちゃん達は後ろに下がるヨ!」
「……思ったより足は早いわね。でも、先手は貰った!」
コルスの合図で重装備に身を包んだ部隊が射手達より前に出る。その隊列はまっすぐではなく、若干の斜。遠目を働かせると、イグニスの部隊でも同じ動きをしているのが見て取れる。
セリアは前衛部隊にまじり、ジュルナットは射手部隊を率いる。まだまだ、これから。
「来たわね……今よ!」
ジュルナット達が一斉射撃を行うと同時。イナリも声を上げ、火之神を降ろし獅子人達へ先制攻撃を見舞っていた。
彼女が起こす爆炎を目印に、矢が降り注ぐ。
「よしよし……こちらも!」
利一は一瞬攻撃タイミングを遅らせて、獅子人がより深く入ってくるのを待つ。そして小石を指で弾き飛ばし、一つの弾丸とする。
「よーし、皆作戦通りに頼むぞ!」
「それじゃ私は一回下がるわね」
「ああ、こちらは前に出る!」
イグニスの号令にあわせ、イナリは一度射手部隊と共に下がり利一は前衛部隊に混ざって前へ出る。
ニ部隊合わせてVの字を描くように展開し、イグニスとコルスの部隊長は最後衛へと下がり敵部隊に対しての指揮をとる。
彼らの妻達は、それぞれの射手部隊に混ざり回復支援を行い、前線を支え。射手部隊は前衛部隊を盾にし遠距離攻撃で敵を削る。
前衛部隊は無理をせず、耐える事に徹することで被害を軽減。実力差を作戦で埋める。
「サア皆、ガンガン撃つヨ!」
射手部隊に混ざってジュルナットが叫び、獅子人の肩を射抜く。
「こちらも負けてられないわよ!」
イナリの声に、射手部隊が呼応しさらなる射撃を見舞う。
獅子人達の部隊に遠距離攻撃のできるものはいない。皆が皆、剣、槍、斧などの至近武器しか持っていないのだ。
それは常日頃から魔物達と力比べ、討伐を生業としてきた者達故に。自らの武勇をもって、力を誇示することが生きる術だったのだ。
「くそっ、狐人共め!」
「姑息な手を使いよって……!」
「それなら私が相手しようか?」
舌打ちをする獅子人の前に、利一が身体を踊らせる。その名乗りに獅子人は視線を向け、彼女へと斧を振り下ろす。
その一撃を利一は腕を殴りつける事で逸し、同時に気を流し込み腕へと呪縛をかける。
「な、何をしやがった……!?」
「言うほどじゃあないねぇ君。もっと自分を鍛えないと」
「そこ! 前に出過ぎよ、少し下がって!」
セリアは前衛部隊に混ざり騎士へ指示を飛ばす。彼女の戦略眼が見るは全体の消耗、隊列の維持。前衛部隊の気力を保たせながらも自ら雷撃を放ち、獅子人を穿つ。
「その女だ!」
「やばっ……!」
雷撃を放つ瞬間を獅子人に見られ、一斉に襲いかかろうと集うが。そこは周囲にいた騎士達の背中へ隠れる事で窮地を逃れる。
「ふー……危ない危ない」
「セリアチャン、無茶しないようにネ」
セリアの雷に焼かれた獅子人にトドメの一射を放ちつつジュルナットが笑う。なんだかんだで長い付き合いになったこの二人、少しは気心もしれてきた。
「善処するわ。さあ、もうひと頑張りよ」
「おっと……思ったよりこっちに来ちゃったな!」
前衛に混ざって格闘戦を繰り広げていた利一だが、一対一ならともかく次第に集まってきた数に押され始めていた。それだけ彼女が驚異とみなされているからだが。
どうしたものかと攻めあぐねていると、空から降り注ぐ炎の弾丸が獅子人達を焼き払う。
「大丈夫、利一さん?」
「ああ、助かったよ」
イナリの言葉に大きく息を吐いてから返す。一先ずの窮地は脱した。ならば次に進むのみ。
「大分数は減ってきたと思うけども……」
「そうね、けどこっちも結構厳しいわ……」
まだ狐人と獅子人の戦いは続く。メルティからの回復支援は届くが、精神力はそうもいかない。段々と疲弊が溜まっていく……。
■臆病者のエール
「皆さん、頑張ってください!」
その時、後方から大きな声と共に、何人もの兎人達が現れる。
「な、何を……!?」
「私達だって、護られてばかりじゃありませんから……せめて、これくらい!」
彼ら彼女らの言葉は。臆病者が奮い立たせた小さな勇気と言葉は。狐人とイレギュラーズを包み込み大きな力を与えていく。
「傷が……癒えていく。これなら!」
「私も力が戻ってきた……!」
「やるネェ、これは助かったヨ」
「さあ、この声援に応えるわよ皆!」
イレギュラーズ達が奮起する。周囲の狐人達も、動けるものは皆続く。
獅子人達を押し返す力が今生まれた。戦場のバランスが今逆向きに傾く。
「情けねぇ奴らだ……この程度倒せないとは!」
大柄な獅子人達の中においても、更に大柄な獅子人が二人。前線に歩いてくる。その威圧感は仲間の獅子人すらも圧倒し、ひれ伏させるものがあった。
恐らくは指揮官なのだろう。ならば、とこちらも温存していた戦力を投入する時。
「イグニスクン!」
「コルス、お願い!」
セリアとジュルナットの声に、二人の指揮官が駆ける。そう、この二人ならば、或いは!
「これは負けられないよな、義兄弟」
「ああ、そうだね。期待には応えないと」
こつん、と二人の義兄弟が拳を突き合わせ。そして獅子人に立ち向かう。
二人の実力は屈強な獅子人にも拮抗し。攻撃を受け止め、或いは逸し。隙を見ては反撃する。盾で殴りつける。
「おっと、不意打ちなんて卑怯な真似はさせないよ!」
コルスの背後から襲おうとしてた獅子人を、利一が組み伏せ殴りつけ。
「折角の一対一よ。無粋な真似はさせない!」
イナリがイグニスに襲いかかろうとする者を焼き払う。
「命の惜しくない者は、卑怯な手を使うといいわ!」
「このおじいちゃんの目は誤魔化せないけどネ!」
セリアとジュルナットが戦場に目を光らせ威圧する。やがて皆、指揮官同士の決闘を見守るだけになり……。
「ふ、ぅ……紙一重ってとこだったぜ」
「はは……勝てたなら重畳だよ」
シルヴィアの手当を受けながら、二人の男は大地に寝転ぶ。
最初の邂逅は勝利に終わった。だがしかし……闇の足音は消えてはいない。
成否
成功
状態異常
なし
NMコメント
時系列がバラバラなのは思いついた順に書いているからです以下略です。
今回から数話使って戦争編スタートです。今回は一先ず、兎人達の街を獅子人より護る事が条件です。
以下状況説明。
■フィールド:広大な草原
背後に兎人達の街。目の前に広がるは広大な大地です。戦争の舞台となる地は起伏もなく林もない。平坦で広大な草原です。
味方NPCは四名。
■イグニス・ルークス
今回の味方総大将。彼が敗れれば敗戦となります。部隊を率いて正面切って戦います。
至剣騎士相当の実力。真っ当に戦えばそうそう負ける事はないはずです。
■メルティ・ルークス
イグニスの奥様。イグニスの部隊の回復支援を行っています。
カーディナル相当の実力。攻撃性能は控えめですが、その治癒能力は本物です。
■コルス・フォレスト
義兄弟からの要請に応えて参戦。イグニスとは別部隊を率いる隊長になります。
ソードミラージュ相当の強さ。彼も真っ当に戦えばそうそう負けません。
■シルヴィア・フォレスト
妹が参戦しているので。コルスの部隊にいます。
ワイズマン相当の実力。妹と同じく回復支援技能に長けています。
■狐人の騎士達×300
イグニス配下の騎士達。コルスの部隊とで半分ずつにわかれています。
それなりには強いのですが、獅子人と比べると若干劣ります。
■兎人達の援護部隊
臆病な彼らですが、勇気を振り絞って後方援護をしてくれる部隊がいます。彼らがいる間は狐人及びイレギュラーズに再生150と充填75が付与されます。
以下敵詳細
■獅子人×300
それぞれが屈強な戦士です。そのまま素通しすれば兎人達はひとたまりもありません。
近接戦闘を好む者達ばかりなので、遠距離攻撃と術士はかなり少ないです。
■獅子人の隊長×2
彼らを倒せば獅子人は撤退します。和解申し込みもできますが……ほぼ応じないと思って下さい。
獅子人の例に漏れず、更に屈強で素早いです。但しやはり遠距離と魔術は好まないので……。
以上となります。
イレギュラーズはイグニス、コルスのどちらかの部隊に所属し戦う事になります。
何か妙案があれば提案していただけると、彼らは採用するかもしれません。
また一部非戦スキルがあれば部隊員の全能力がアップします。
それではよろしくお願い致します。
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