PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ライラックの花束に乗せて

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●Valore del prodotto

 怯えるひとみ。
 目からこぼれるナミダ。
 ふるえる手には鉄の鎖。

 鉄の箱からぞろぞろと繋がれた奴隷達が出てくる。全員子供達だ。
 ようやく自分で歩けるぐらいから成人近くまで様々な年齢の子供達が居た。

「さあ、お前達に役割を与えよう」
 ぷっくりとしたお腹を揺らして奴隷商人の男はニヤニヤと笑う。
「一人ずつ好きな奴隷を選べ。そして教育をするのだ」
 何を教育するのか、どう扱うのかは自由だと男は言った。

 目的はただ一つ。商品としての価値を高めること。知識。言葉遣い。心育み。時には恋だって――
 遠慮は要らない。換えはいくらでもある。
 壊してしまっても問題は無いと男は手を広げニヤニヤと笑った。


「――お前は『どれ』を選ぶんだ?」


●Si prega di scegliere

「こんにちは。ご主人様」
「僕の事を選んでくれるの?」
「私の方が良いわよ」
「あ、の……ね。その……えっと」
「何でもいい。はやくしろ」
「ねえ、いいことしない?」
「アタシ頑張るからね!」
「優しくして、ください、ね?」

 目の前には個性豊かな奴隷たち。その中から一人だけを選んで手を引いていく。
 与えられた部屋までの道のりがヴァージンロード。奴隷達はきっとあなたのことが好きになる。

「ご主人様――名前を」

 教えて。そして、つけてあげる。
 それが、契約。

●Inizia a piacere

 あたたかな手。
 ご主人様の手。
 私を選んでくれた。

 ひたりひたり。
 石畳の冷たさが足の裏に伝わる。でも、ちっとも寒くないの。
 だってね。ご主人様の手はとってもあたたかい。その手を握りしめたら、ご主人様も握り返してくれた。
 いままでのお家ではそんなこと絶対に無かったのに。何でご主人様はこんなに優しいの?

 ご主人様と目が合った。
 ふんわりと目元が笑って、僕は頬が赤くなる。だって、私の事見てくれたから。
 心臓の音がいっぱいになって。僕は気付かれないように下を向いてしまった。

 仮初めの恋が始まる――


NMコメント

 はじめまして。すのーちぇりーです。
 仮初めの恋してみませんか。

●あなたは
 奴隷商人のたまごです。
 素敵な商品を送り出すために修行に励んでいます。

●選んでね
 どんな子を選んだのか
 女の子? 男の子?
 年齢はどのぐらいか。
 性格はどんな感じ? 優しい? 元気? ツンツン?

●何をするの?
 手を繋いでこれから二人で暮らす部屋に来たあなた。
 まず名前を教えて、新しい名前をつけてあげましょう。
 みんな数字で呼ばれていました。

 次に何をするのかは自由。
 優しく育てて自分好みにするもよし。
 従順で大人しい子に育てる為に、ちょっぴり意地悪をしてもいいでしょう。
 天真爛漫に育てる為に、一緒に遊んでもいいですね。
 暗殺者にするために、暗殺術を教え込んでも構いません。

 全年齢ゲームなのでえっちなのは描写されません。

●別れのとき
 立派な商品となった奴隷は出荷されます。
 涙無しでは語れません。
 素直に見送り感傷に浸るもよし。その子を連れて逃げるもよし。

 奴隷との仮初めの恋をお楽しみ下さい。


●サンプルプレイング
 選んだ子は12歳ぐらいの女の子
 大人しくて、ちょっとオドオドしていて可愛い
 苛めたくなる可愛さ
 灰色の髪はセミロング目の色は水色
 耳が長いからハーモニアに似てる

「私の名前は●●。あなたは今日から△△という名前」

 最初はいっぱい甘やかす。
 綺麗な服を着せて、勉強が出来たらほめてあげる。
「わあ! よく出来たね! えらいえらい!」
 はにかんだように笑う顔がとっても可愛い

 だから、お別れの時は悲しくて。
 私は△△の手を取って走った。
 逃げるために走った。
「これからは自由に、二人で生きていこう」

  • ライラックの花束に乗せて完了
  • NM名すのーちぇりー
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年06月04日 22時10分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

鶫 四音(p3p000375)
カーマインの抱擁
マルベート・トゥールーズ(p3p000736)
饗宴の悪魔
ラクリマ・イース(p3p004247)
白き歌
リウィルディア=エスカ=ノルン(p3p006761)
叡智の娘

リプレイ


 手を引いて。
 ひんやりと冷たい石畳の上を歩いて行く。
 少しだけ褐色の肌をしたご主人様は優しく微笑んでくれた。

 小さな手を引いて『カーマインの抱擁』鶫 四音(p3p000375)は少女を部屋に連れてくる。
 歳は10歳に届くかどうかというところだろう。
 目元には僅かに優しさが浮かび大人しい性格だということが分かる。
「リリ」
「はい」
 四音は少女をリリと呼んだ。あの子の様に素敵な華を咲かせることを願って似た名前を付ける。

 愛らしく見える仕草や表情を教え込んだ。人に好かれるように。
 可愛いということは正義だから。
「ご主人様、どうしましたか?」
 青い瞳が四音を見上げていた。
「いえ」
 成熟していない子供の身体で。大人と同じ様な成果を出すのは難しい。労働力として機能しないのなら失敗しても許される。周囲に助けて貰える。愛想の良さが必要だろう。
 生きて行く上で愛嬌とは武器になるのだから。

「リリは可愛いですね。……いいですか?」
 一番に自分を大切にすること。それが四音の教えだった。
 心から想う本当の愛情は何れ出会う大切な人の為に大事に仕舞っておきなさいと。
 四音を含め周囲の人間を利用するように。
「それが、貴女の幸せに繋がります。きっと」
 優しい四音の言葉にリリはこくんと頷いた。

 静かに過ぎていく日々。
 少しずつ色づく四音との記憶にリリは頬を赤く染めた。

 ――――
 ――

 別れの時は、今日この日。
「とうとう、この日が来ましたね」
「ご主人様」
 別れという物は悲しみで溢れている。この日の為に四音は此処までリリを育てた。
 過酷な試練によって物語は花開く。彩りをひとつ。落とす。

「ねえ可愛い貴女。奴隷がどうやって生まれるか知ってる?」
 首を振るリリの頬に四音は指を添える。
 家族に売られ孤児となる。庇護者が居なくなるから奴隷は生まれる。

「知ってる? 貴女の家族を奪ったのは私なんですよ」
「嘘、ですよね?」
 泣きそうな顔をしたリリは四音の口元が歪むのを見た。
 心底楽しそうな。恍惚とした表情。
 このときを待ち望んでいた――
「嘘? いえ、実は本当。くふふ、どっちでしょうか?」
 疑念が生まれる。四音の本心が見えない。
 でも、何時だって。本心が見えた事なんて無かったのではないだろうか。
 何をしても。誰かの面影をリリの後ろに見ていた。

「待っていますよ。可愛いリリ」

 それは、きっと自分じゃなくて。誰かへの言葉。


 奴隷商人の真似事をするなんてと『饗宴の悪魔』マルベート・トゥールーズ(p3p000736)は大人しい少年の手を引きながら思った。
「人生山あり谷ありだね。勿論、君にとっても」
 こてりと首を傾げた少年。
「あぁ、まだ名前がないのだったかな?」
 マルベートは少年に『ルゥ』という名を与えた。
 愛情深く誇り高い獣の名前。ルゥは気に入り嬉しそうにはにかむ。

「さて」
 何から教えてあげようかとマルベートは腰に手を当てた。
 文字の読み書きや簡単な計算。教養や礼節。親や教師から学ぶ人としての基本。
 それから。
「戦闘も出来るようにしたほうがいいかな」
 どんな場所でも生きて居られるように。木槍で稽古をつけて。獣として必要なこと。

「……うわぁ!」
「まだまだだよ!」

 上手くなるまで何度も厳しく教え込む。涙を流しても、手にまめが出来ても止めない。
 けれど、上手になれば抱きしめて頭を撫でた。ルゥの嬉しそうな表情は忘れない。

「だけどね。いいかい」
 大事なことを伝える。本当に大切なことは『自分の望みを知る』こと。
 そして、『何をしてでもそれを叶える』こと。
 善行、悪行。自由と愛情。他者を殺すことだって構わない。
 欲望という名の『願い』の元に。
 その為の牙を持て。爪を磨き、智を得る。意思のままに。
 悪意と愛情を持つ誇り高き『人という名の獣』として。

「明日を信じて、自分の為に生きるんだ」
「自分のために?」
「難しいかな? まだ理解出来ないだろうか」

 ルゥの頭を撫でながら、マルベートは優しい表情を向ける。
 いつか。必要な時が来れば自分の言葉を思い出して欲しいとマルベートは思った。
 これからルゥの身に降りかかる困難。苦難。挫けそうになるとき。
 自分を優先してほしいと願う。

 ――――
 ――

「さ、これを」
「これは?」
 別れの日の選別。マルベートはルゥの手の中にナイフを落とした。
「君が自分の道を選べるように」
 襤褸にも隠せるような小さなナイフをルゥに贈る。
 この残酷で愛らしい世界を生き残って。自分の力で。自分の意思で。
 そして再開出来たのなら。
「また抱きしめてあげようね」
 仮初めの恋の最後に交した約束は。ルゥにとって生涯忘れる事の無いものになるだろう。
 マルベートと過ごした時間を噛みしめながら。
 大人しかった少年は意思の強い眼差しで、自分の道を歩み始めた。
 明日を信じて。自分の為に。
「じゃあ、行ってきます」



「ふむ、奴隷商人ですか……」
 小さく頷いた『協調の白薔薇』ラクリマ・イース(p3p004247)は、特別な感慨はないけれどと目の前の少年の手を取った。
 流石に共同生活をする上で、女の子を選びにくい。
 元気いっぱいでよく笑う。
 灰色の髪をした少年。在りし日の友人と同じいろ。

「ああ、そうか名前がいるのですね」
 灰頭を撫でて『ユール』と名付けた少年に「よろしくお願いします」と微笑んだラクリマ。
 冬を越えて力強く芽吹く太陽の日差し。祝祭の名を少年に与える。

「とりあえず」
 何から教えようかとラクリマは考え込む。
 奴隷教育の知識は無いから、生きて行く術でも教えるのだろうか。
 読み書き。それに家事。
 それに。
「ご主人様、焦げたね?」
「そ、そうですね」
 少し目を離した隙に焦げたハムエッグを囓りながら。

 自分を守る強さも教えなければならない。
「魔法は……」
 流石に世界が違うので難しそうだと思案して。
「無理そうなので。主人を守る為の武器の使い方を教えてあげましょう」
 近くにあったロープを持たせて、鞭の基本を教えるラクリマ。
 それは、昔。彼が一番始めにしてくれたこと。

 父の傍にしか存在しなかったラクリマを、初めて外へ連れ出した手。
 戦い方や魔法の使い方を教えてくれた声。
 白い薔薇に触れて。傷ついても構わないと笑う瞳を今でも鮮明に思い出せる。
 けれど、彼に似た髪のユールを育てることで、忘れかけていた感傷も同時に募った。

 ――――
 ――

 最後の日。
 ユールの意思のままに。その手伝いをしようと手を握るラクリマ。
 逃げたければ、それで構わないと。
「でも、ずっと一緒にはいられません」
「どうして」
 住む世界が違うと言ってもきっと分からない。
「自分の道を進みたければ、強くなってくださいユール」
 ラクリマにとって泡沫の幻だとしても。少年にとってはこの世界が全てだから。
 生きて行くために。この手を離すのだ。

「貴方と過ごした日々は暖かく幸せでした」
 捨てきれぬ思い出に彼の面影を重ねて。
 ユールが彼と違う事に焦燥感が湧いて。何度もそれを否定した。
 止まってしまった彼の時間はもう戻ってこない。
 これから歩むユールの未来には関係の無いことだと分かっていても。

『同じ名』を与えてしまうほどには――

 だからここでお別れ。
 ユールがユールとして生きて行くために。この手を離す。
「貴方の幸せを願っています、ユール」
 今度は『生きて』別れを告げる。
 また、会える事を祈りながら。


「奴隷か。僕には縁遠いものだと思っていたけど」
 まさかこんな形で体験する事になるとはと『絶望を穿つ』リウィルディア=エスカ=ノルン(p3p006761)は肩を竦めた。
 手を取るのは13歳ほどの男の子。
 無表情で居心地が悪そうな顔。
 けれど、胆力はあるようだ。リウィルディアが前に立っても怯みすらしない。
 ブロンドの短髪に灰色の瞳。
「僕とは正反対の見た目をしているね」
 そこが気に入ったのだと少年の手を引いて廊下を歩く。
 片耳は無くしてしまったらしい。

「君を、僕の元へ迎えよう。リウィルディア、よろしくね。君は……そうだね。今日からはレリズと。そう名乗るといいだろう」
「レリズ」
 自分の名前を無表情で反芻するレリズ。
 さて。と腰を上げたリウィルディアは少年を風呂に入れる。
 身を清めしっかりとした服を着せて。
 それから、耳当てを着けてあげるのだ。
 痛みはしないだろうけど、視線は気に入らない。隠せるようにと耳当てを被せた。
「うん、よく似合っている」
 くしゃりと撫でれば、照れくさそうに頬を染める。
「……なんだ。そんな顔もできるのかい」
 リウィルディアは優しく微笑み、更にレリズの頭を撫でた。

 奴隷として、付き人として。必要なスキルを叩き込むリウィルディア。
 一つ覚える毎に。褒める。それを繰り返せば、レリズの感情がどんどん膨らんでいくようで。
 まるでスポンジみたいだとリウィルディアは笑う。
「……今の生活は、楽しいかい?」
「楽しいです」

 ――――
 ――

 しかし。来るべき日はやってくる。
 教養を身につけ表情豊かになったレリズに買い手が付いたのだ。
 リウィルディアに拒否する権利は無い。奴隷商人のたまごにとってそれは許されない。
 掟破りには厳しい処罰が下される。
 けれど。
 それでも、レリズと。リウィルディアは耳元で囁く。

「レリズ。君が、選ぶんだ」

 自分の未来を。行く末を。
 他人に委ねたままで言い訳が無い。
 レリズは意思の強い眼差しをリウィルディアに向けた。

 ――ああ
 この手を掴んで、くれるんだね。

 だったら、何処までも駆けていこう。
 掟もしがらみも何もかも捨て去って。
 ただ心の赴くまま二人で歩いて行こう。

「ご主人様!」
「なんだいレリズ?」

 レリズとリウィルディアの弾む声。
 そこは二人だけの世界が広がっている。
 何処までも続く。
 幸せな日々を永遠に――

成否

成功

状態異常

なし

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