PandoraPartyProject

シナリオ詳細

さよなら、私のワンルーム

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●皆が私を助けてくれたのに、
 イレギュラーズが一旦帰った後。危ないから、教会に閉じこもっていた舞白。
 教会ではある程度力が強化される。能力者たちが生まれた時に神の手によって建設され、能力者が死ねば消えてしまう。
 脳のどこかに刷り込まれた帰巣本能。教会は能力者達の世界。
 能力者が最大限に戦えるフィールドで、見つけるのは難しい、筈だった。
「ここが君の教会なんだね」
 リンゴを食べている舞白の後ろからねっとりと、囁くように現れた少年――院長。
 疲弊していた舞白は反応することが出来ずに、手からリンゴが零れ落ちた。
(……あ、貰った、リンゴが)
 そんなことを思う暇もなく。
 院長は舞白の首元に、薄ら紫に光る半透明の液体の入った注射器を突き刺した。
「あ゛、やめ、なに、す、の、ひゅ、ぅ、たすけ、いたい、いたいいたいいたいいたい、いたい、たすけ、ぁ、ぁ」
「うん? 君が入院してたのは君を玩具にして遊ぶつもりだったからなのに……逃げちゃうなんて悪いモルモットだね?」
 苦しみ倒れる舞白の腹を蹴り、髪を掴んで持ち上げた院長。
(たすけて、たすけ、て、みんな、)
 ――このままじゃ、私が私じゃ無くなる。
 意識が蝕まれるような感覚を覚えた。舞白は必死に逃げようと、這って、這って、貼って。
 眠りに、落ちた。
「これ……まあ、解毒剤も一応作ってみたけどさ。君のヒーロー来てくれるといいね、舞白ちゃん!」
 教会の十字架の前に舞白を横たわらせて。院長は楽しげに笑うと、十字架を舞白の心臓に突き刺した。

●ガトゥの悲鳴
「……おにーさん、おねーさん、これ」
 舞白が描かれた表紙の『力の代償』が赤く滲む。それは血の色にも似て。
「だって、そんな。これは、舞白さんが死にそうになってるって、こと、なんすよ……」
 焦るガトゥはページを捲って挿絵を探す。
 物語の未来が変わっているならば。それならば、きっと舞白の『今』だってわかるはずだ、と。

 そこには、胸に十字架を刺され、ぐったりと横たわる舞白の絵があった。

 ガトゥの息が詰まる。空気が張り詰めたものになる。
 確かに救ったはずの舞白のいのちが、潰えようとしている。
「おにーさん、おねーさん。多分これが、『力の代償』、舞白ちゃんのところの最後の依頼っす」

「舞白を、救ってください」
 ガトゥの声が、やけに鮮明に聞こえた。

NMコメント

 お世話になっております。染(そめ)と申します。
 舞白は救われるのでしょうか。それとも。
 それでは、今回の依頼の説明に入ります。

●依頼内容・成功条件
 院長と呼ばれる少年を倒す(殺害も可)

 彼を倒して解毒剤を奪い取りましょう。殺しても良いです。
 彼は所謂火力型。超火力で破壊しようとしてきますが、耐久は弱いです。
 BSの類は毒辺りを付与してきます。

●舞白
 幸宮 舞白(ゆきみや ましろ)
 くだものと友達が大好きな17歳の女の子。
 癒しの能力を持つ超能力者で短命、それ故に入院していました。
 
 現在、能力を増やす薬の投与に合い瀕死の状態にあります。
 そこで、皆さんに選択してもらいたく思います。

【A】舞白を看取る(舞白死亡ルート)
 舞白の能力が二つになり人の姿を保つのが難しくなり、神に近い存在と呼ばれるモノになります。
 この場合の舞白の能力は回復と炎獄、致命付与です。
 成功条件に院長と舞白の殺害が必須になります。

【B】舞白を救う (舞白生存ルート)
 舞白の心臓を貫通した十字架を引っこ抜き、回復し、意識を取り戻させる必要があります。
 院長を倒すか殺害するかしないと、安定した状況を作ることは難しそうです。
 成功条件に解毒剤の投与、回復スキルが必須条件になります。
 上記のどちらかをご相談の上、ご記入ください。

 当シナリオは心情(も含めた文字数)が多ければ多いほど良いです。
 熱い想いをぶつけて下さい。

●戦闘フィールド
 舞白の教会。
 扉をくぐった先に大きく十字架とステンドグラスのある一般的な教会です。
 白いです。

 1ターン終了毎にイレギュラーズに200のHP回復のサポートがありますが、ターンが経過する事に舞白の具合は悪くなります。

●世界観
『力の代償』
 という物語の中。
 現代日本によく似た世界ですが、超能力者が居ることが大きな違いです。
 超能力者は二つのグループに対立していて、良いことをする超能力者と悪いことをする超能力者に別れているようです。
 超能力者はその力と引き換えに短命で、大人になることが難しいと言われています。

●サンプルプレイング
(※平等さを保つために行先は明記致しませんが、明記をお願い致します)
 俺達の答えは【-】。
 俺達なら大丈夫だ。待っててくれ、舞白。

 以上となります。
 ご参加お待ちしております。

  • さよなら、私のワンルーム完了
  • NM名
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年05月29日 22時15分
  • 参加人数4/4人
  • 相談3日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

マルク・シリング(p3p001309)
軍師
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
ジュルナット・ウィウスト(p3p007518)
風吹かす狩人
冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900)
秋縛

リプレイ


(たとえ物語の中の世界だとしても、失われる命なんて、無いほうがいいに決まっている)
 マルク・シリング(p3p001309)は祝福の如き回復術を舞白に施す。与えられた傷は酷く、多かったけれど。
 青白く染まっていた頬には僅かに血の気が戻る。マルクは安堵したように息を吐いて、敵を見据えた。
(――だから僕は、死を遠ざける者となる)
 『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)はその表情に怒りの色を滲ませて。翳した手より生み出した白蛇の陣が、院長を狙っていく。
(ああ……久々にキレそうだ。この世界も院長とやらも舞白も、正直俺にとってはどうなろうと知ったことじゃない。
 が、俺がここまで関わったというのに結局こんな状況ってのが気に入らない。今まで積み上げてきた物が無に帰していくような……或いは苦労が徒労へと塗り替えられていくような嫌な感覚だ)

 ――この世界ですらも『俺』という存在を無視して勝手に進んでいきやがる。

 虚空に翳さぬ手は固く握られていて。マルクが施した祝福に重ねるように、調和の術を施していく。
 舞白が微かに動く。それは希望にも似ていた。
 世界は舞白と共に過ごした僅かな時間を思い出して、嗚呼、と声を漏らす。
 もう少し暗い、生きたって悪くはないはずだ、と。世界は一歩踏み出して、院長を白蛇と共に殺めるために進んだ。
「だがいいさ。『世界』が俺を無視するなら、俺も好きにさせてもらうだけだからな。アイツの知り合い(ゆうじん)の一人として全力でアイツの死を覆してみせるさ」
 『風吹かす狩人』ジュルナット・ウィウスト(p3p007518)は研ぎ澄まされた一撃に奪うための弾丸を秘めて、撃つ。
「短命であるならこそ、限りある生命を満足して生きぬいて欲しいからネ」
 その手から放たれる弾丸は酷く鋭く。
 その銃から描かれる射線は酷く美しく。
 ただ彼――院長の命を狙う弾丸であることを、嫌でも意識させるのだ。
(ただ単純に、かつ非常にいけすかないネ……。
 まあのうのうと足を地につけて生きているんだから、上手く隠してきたんだろうネ。
 病院内が全部グルって可能性もあるんだろうけど、この際関係ないネ)
 優しい笑みを浮かべているジュルナットもこればかりは許すまい。ただ院長を殺すための弾丸が降り注ぐ。
 味方にも舞白にも当たらぬようにと誓われたその弾丸が牙をむくのは、敵である院長のみだ。
 焦る院長が放つ魔は猛毒に満ちていて。けれど、それすらをも防ぐ魔を放つ『今は休ませて』冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900)は、必死に舞白へと想いを向けていた。
(ここでお別れなんてあまりに水臭い終わり方でしょう。それに約束はまだ果たしてませんから。ね、舞白さん)
 焦りながらも笑みを絶やさぬ院長に封印の言の葉をのせて、睦月は声をかけた。
「あなたはもしや舞白さんに好意を抱いていたのですか?」
「は?」
 その顔から笑みが消える。
 回復を施させない為に、院長が狙うはマルク。
 一瞬驚くものの、あえて攻撃を受けて院長を間合いへと踏み込ませ――聖なる光を放つ。
「肉を切らせて、骨を断つ……って言うんだっけ」
 燃ゆるパンドラ。攻撃を受けつつも、倒れることはないマルクの不殺の誓い。
 眩い光が院長を蝕む。けれど、ここで終わるわけにはいかない。ふらつく院長は立ち上がり狙いを変えた。
 
 一方、マルクが狙われているうちに睦月は舞白の回復を急いだ。
 身体に無慈悲に突き刺さった十字架を抜き、治癒符を施す。能力を増やすために撃ちこまれた白銀の十字架は舞白から奪っていた力を返し、舞白の傷は少しずつ癒えてゆく。
 けれど。
(まだ、解毒剤が足りませんね)
 ならば残るはただ一つ。
 院長を倒して、彼から解毒剤を奪うのだ。
 睦月と交代し、献身的な治療を行うためにマルクは近づいて、治療の術を幾度も繰り返す。
「大丈夫、必ず助ける。だから、もう少しだけ……生きることを諦めないで欲しい」
 識別された治療の魔は仲間を癒す。それは舞白も同じ。肉体的に受けた傷を、少しずつ癒していった。
 ここは舞白の聖域。誰も負けるつもりなど、ないに等しいのだ!
「好きな子ほどいじめたいというやつですか? それとも舞白さんを独り占めしたいだけだったとか?」
「お前ッ、この僕にさっきからおかしいことばっか言ってんじゃねーよ!」
 真偽は不明だが、恐らくは。
 仄かに抱いた恋心は歪み過ぎていたのかもしれない。
(大切な人が振り向いてくれないならいっそ……僕もわからなくはないですが、実行までは至りませんよ)
 だってそれ以上に生きていてほしいから。
 生きることでしか解らないよろこびも、かなしさも、いとしさもあるのだ。
 振り向かないなら殺す、それだけが救いではない。
(……どうであれ舞白さんを苦しめた事実は変わりません。倒させていただきます)
 愛故に、盲目に。
 理解はそう難しくはないけれど、それでも。
 舞白を庇うように立つマルクと睦月は、背後で眠り続ける舞白に声を掛け続ける。
「舞白さんは僕たちの後ろに隠れていてください。無理に回復しなくていいです。
 僕たち自身で賄える程度はありますから。今は自分の身を大事にしてください」
「僕が支えるから。もう少しだけ辛抱して……!」
(なぜ君が舞白さんを殺すのか。なぜ能力者が殺し合うのか。
 最終的に、誰かの死を防ぐために君の――院長の命を奪わなければならないかもしれない。
 けれど、今はまだその時じゃない。何も知らずに、君の命を奪うわけには行かない)
 マルクが癒し、睦月は院長の攻撃を拒絶し、阻む。
 地面から貫くように生まれた晶槍が、院長を抑える。
「今です!」
「くそ、があああああああああ!!」
 自身の身体が傷つくのをもろともせず、院長は持てる力を振り絞って教会を出る。
 世界がその手を――そのポケットから解毒剤をくすね、マルクに投げ渡す。
(どんな理由があろうとも、今回は話なんぞ聞きとうない、耳障りさナ。
 逃げ出しても周りは森だからネ、逃さないヨ?)
 ジュルナットは、院長を追った。

 マルクが解毒剤を投与し、舞白の目覚めを待つ。
(解毒剤と回復、両方を試みれば救命の確率は上がるはずだ。
 まずは体力を回復させて危険な状態を脱してもらってから、解毒剤による恒久的な治療を行おう)
 世界や睦月もサポートとして回復の術を施す。
 そして。
「ん……」
 目覚める少女。
 三人は安堵して、でもそのまま眠るように舞白に告げる。
「取り合えず今は休んだ方がいいな。俺達が番をしておくから元気になるまでゆっくり休んでくれ」
「ありがとう、世界。そうね、暫く一人は怖いもの、お願いね」
「ああ、任せろ。それと、あそこ以外の病院を探そう。流石に弱ってるだろうから」
「まるでお父さんみたいね、なんて。ふふ、そうね、探さなくっちゃ」
 お見合いだなんて笑えていた頃が懐かしく思える。
 凄まじい戦闘があったことを思わせる教会の惨状からは目を背け、今はただ安堵に溺れたい。
 舞白は胸を貫いていた十字架を見ながら、そうだ、と声を上げた。
「私の胸から忌々しいこの十字架を引き抜いてくれた王子様は誰なのかしら、なんて」
「王子様ではありませんが、僕ですよ」
 ひょい、と手を挙げて。睦月は舞白に向かい合うように無事な椅子を持ってきて腰掛ける。
「冬宮さんじゃない! そうだわ、約束の続きを聞かせて頂戴」
 はしゃぐ様子には先程迄死にそうになっていた人間とは似ても似つかない。やれやれと首を振る世界と、困ったように苦笑するマルクを横目に、睦月は舞白の耳元に口唇を寄せた。
「僕の名前は寒櫻院睦月。寒櫻院は戒名です」
「……!」
 世間一般的なあれそれに疎い舞白ですら、一瞬言葉に詰まってしまう。『嗚呼、そんな顔をしないで』と眉根を寄せて笑った睦月に『でも、』と言葉を返すことしかできない舞白は、悲しそうに口唇を噛むばかり。
「僕もね、短命の定めなのです。だから生まれつき戒名を与えられました。
 舞白さん、あなたは僕の分も生きてくださいね」
 再び秘め事のように耳元で囁いた睦月に、舞白は少し考えた後、『そうね、』と口を開いた。
「私もおなじだから……天国に行ったときは、沢山遊んで頂戴ね、『睦月』。
 そしたら屹度、私達いい友達になれるわ!」
 『それに、天国なら身体も丈夫だもの』と笑う舞白に、『ええ、勿論です』と頷いた睦月は、顔を綻ばせるのだった。
 それから、と。
 マルクの方を向いた舞白は、笑みを浮かべる。
「初めまして、名も知らぬ人。私は舞白、助けてくれてありがとう」
 マルクは面食らったように目を瞬かせ、それからうん、と頷いて挨拶を返した。
「初めまして。僕はマルク・シリング」


「――君が生きていてくれて、良かった」



 ズドン。

 迷うことなく放たれた一撃は、院長の胸を穿つ。それは奇しくも、先程の舞白のように。
 命を奪うことに抵抗のある者だっているだろう。ならばそれは年長者の役目である、と言わんばかりに、迷うことなく銃口を向けたジュルナット。
「あわよくば、生まれ変わったりする事なく、永劫に地獄を彷徨う事を願うネ」
 目の前で死んでいく少年の躯を森の奥深くへと埋める。
「あゝ、狩人が私情に揺られて仕事でもなく手にかけることはとても良くない事さナ。
まだ未熟な証拠だネ」
 狩人の目が光る。
 掘り返し埋められたばかりの土には湿り気が感じられる。近くに咲いた紫陽花は少しずつ赤を帯びて。
(だからこそ、殺意に満ち濡れた"狩人"たるこの目を、舞白チャンがいたずらに覗いてしまわない事を、一心に願うヨ)
 おじいちゃん、と。
 屈託もなく笑った舞白の笑顔を思い出して。
 ジュルナットは近くの川で手を洗うと、教会へと戻っていった。

成否

成功

状態異常

なし

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