PandoraPartyProject

シナリオ詳細

地獄の底もあなた次第

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●閻魔の憂鬱
 炎の柱が上がる。それは轟々とう鳴り響いて。
 延々と消えることのない地獄。
 それは永久的な苦しみが与え続けられる煉獄の炎。

 これはこの世界の『日常』である。

「ではそなたを阿修羅地獄と処す。この地獄は病院に運び込まれ意識あるままベッドに縛りつけられ、解剖されるそれを繰り返す地獄である」
 赤肌の鬼人と見られる者は恐ろしく険しい表情を浮かべながら、目の前にいる白い死装束に天冠を被る人間へそう指を差す。
「ひっ! お、おお、お助けを……!」
「戯け。様々な悪口を並べ、不幸を自分以外のもののせいにし、自らを正当化するような貴様のような人間はこの地獄で妥当だ。……連れて行け」
 酷く脅えた様子の死装束の人間にも目もくれず、寧ろ最後のトドメと言わんばかりの言葉を言い放った。
 いやだー! 死にたくないー! そんな悲痛な人間の叫び声にこの赤肌の鬼人……閻魔はため息をついた。
「もう既に死しているであろうに……人間とは愚かなものよ」
「仕方ありませぬ、それも人間というものです」
「難儀だな」
 この現閻魔は歴代の中でも上位に入る程の凄腕の裁断者。地獄に割り当てられた罪人を、鏡を用いその罪人の現世での行いを中立的に判断し妥当な地獄へ突き落とす。
 そんな一連の流れを閻魔は単純作業のように行っていたが。
「地獄に割り当てられた癖に、ここに来てもしらを切る人間が多くて正直疲れる。お前達にも苦労をかけているが……私も少し休暇が欲しいところだ」
「閻魔……しかし」
「わかっている、この地獄には休暇などないと。だからこれは提案なんだが……」
 閻魔は使いの者にそっと耳を打つ。



「静粛に、静粛に! 本日は抜き打ちの裁断試験にある!」
「抜き打ち?!」
「本当に突然だな!?」
 閻魔が使いの者へ何かを耳打った翌日にあたる時刻。その使いの者は大きな板に墨で大きく字を書いた。
「裁断試験に合格した者は次期閻魔に近づく、心して受けよ」
 内容はこうである。
 閻魔の代わりに裁断台へ立ち罪人を妥当する地獄へ落とす。現世鏡を用いても良いとの事で安易な試験と見られがちだが、その罪人にその地獄が妥当しなかった場合、閻魔代々に伝わる尺で罰が下る。その罰はどのようなものかは知らされていない。
「さぁ、次期閻魔を名乗り出る者よ! 前へ出よ!」


「今回は地獄のお話だよ」
 この場に集まった特異運命座標達にそう口を開いたのは『ホライゾンシーカー』カストル・ジェミニ。
「僕達にとっては地獄へ行く機会なんて滅多にない……と言うかあると困るけど。……ああ、試験者の一人として降り立つから余所者扱いな心配はいらないよ」
 どんな地獄を担当するかはその在任次第ではあるけれど、死後の世界なんてそうそう体験出来るものでは無いから気楽な気持ちで行ってきて欲しいとカストルは穏やかに笑む。

「さぁ、地獄の底へお送りしよう!」
 まさかこんな風に地獄へ特異運命座標をお送り出すことになるなんてねと、カストルはそう苦笑しつつも特異運命座標の皆を送り出した。

NMコメント

月熾です!
 今回は地獄の日常(?)にスポットを当ててみました。
 よろしくお願いします!

●依頼内容
 地獄の裁断試験を受ける。
 ※合格不合格は成功判定には関係ありません。

●詳細
 現地人にとっては試験になりますが、特異運命座標にとっては閻魔大王の仕事を体験できます。

※書いて欲しいこと
・どんな罪人か(名前は表記しません)
・現世の鏡に映るもの
・どんな地獄へ落とすか

を最低限書いてください。

●世界観
 地獄になります。
 ただし混沌風の地獄となりますので、実際にない地獄もあるかもしれません。

>困った時の地獄一覧
・阿修羅地獄
 人を責めさいなんだり、人の悪口ばかりを言ったりしている人が行く地獄です。
・等活地獄
 「殺生の罪」によって行く地獄です。
・色情地獄
 男女関係において著しく間違った生き方をした人が行く地獄です。
・火焔地獄
 煩悩に身を焦がした人や、怒りの炎や嫉妬の炎で、人を焼き焦がした人が行く地獄です。
※他地獄、オリジナルの地獄も歓迎します。

また、合格不合格に指定がある場合はご記入下さい。

●サンプルプレイング
罪人】普通の会社員
鏡】愚痴愚痴うるさいと社内でも噂になるほど
鬱になる後輩もいたという
「なんでこんなことも出来ないんだ!このグズめ!!」
地獄】阿修羅地獄
現世の鏡を見たらこれは酷い……鬱になった人もいるじゃん。
相手がグズだったから?
うそうそ、もしかしてここに来て反省してない感じ?
オッサン……めっちゃ度胸あるね!なら……ちゃーんとピッタリな地獄にお送りしねぇとな!



それではご参加、お待ちしております。

  • 地獄の底もあなた次第完了
  • NM名月熾
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年05月29日 22時15分
  • 参加人数4/4人
  • 相談4日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚
ペルレ=ガリュー(p3p007180)
旋律を集めて
長月・イナリ(p3p008096)
狐です
鬼怒川・辰巳(p3p008308)
ギャンブル禁止!

リプレイ

●裁断試験
 特異運命座標の四人は閻魔亭へ向かう行列へ並んでいた。この行列、全ての鬼人が試験への挑戦者のようだった。
「わたし達が裁く罪人……一体どんな方がいらっしゃるのか……今から緊張しますの!」
 『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)はふわりと漂いつつ、そわそわと不安の色を見せている。
「地獄〜……叙事詩の「へる」とか「こきゅーとす」とか言うところとおんなじですかね~? そこの一日偉い人ですか~……ちょっと楽しみですね~」
 『英雄のたまご』ペルレ=ガリュー(p3p007180)は少し勘違いをしつつもこの試験を楽しむ魂胆のようだ。
「地獄の裁断試験……これも初経験の御仕事だわ。とりあえず、閻魔ぽい事すればいいのね、頑張るわよ!」
 小躯な狐の少女『狐です』長月・イナリ(p3p008096)は気合十分に意気込みを見せて。
「地獄に落とすの体験出来るってすげーっ! て言うか地獄って俺がいた世界でも話はあったけど共通してんの?」
 金髪でアウトローな見た目の鬼怒川・辰巳(p3p008308)はそんな事を考えつつも、元いた世界の現代日本でも語られていた地獄を思えば興味深い話……かもしれない。
 こうして四人は思い思いに列へ並びその時へ進んで行った。



●罪人:巨大ザメ
「そ、それでは……裁断を始めますの! 罪人は……巨大、ザメ……?」
 ノリアが裁断の上から見下ろしたのは巨大ザメ。地獄に送られる者は何も人間だけではない、例えばそう……凶悪な巨大ザメもきっとその対象になるだろう。
「こ、こほん! えっと……巨大ザメ、さん……あなたの現世にいた頃を見ますの!」
 ノリアは指導官に教えてもらった通りに鏡に手を翳し、巨大ザメの現世での様子を見る。
 鏡に映るのは罪もない人びとを、次々に丸呑みしてゆく光景。凶暴にその血肉を食いちぎる様子に、故郷のことを思うノリアは胸を痛めた。
(海にいたころのわたしは、あんな捕食者たちおびえて、ひっそりと暮らしていましたの……その恐怖を思えば、迷わず等活地獄に落とすのが、相当ですの!!)
 彼女は自分が味わった恐怖を思い浮かべ、そのまま罰を述べようとしていたのだが……
「また食べちまった……けれど仕方ねんだ、生きる為に……仕方ねんだ……」
 続く鏡の映像に巨大ザメは申し訳なさそうな様子で、天に祈りを捧げている。
(……生きるために食べるのは、誰だって同じ……ですのよ、ね……さっきの罪状ではなさそう、ですの?)
 いっそ知らないフリをして等活地獄に落としてしまえたならば自分は安心出来たけれど。けれど、ノリアはそんな不誠実なことは出来ない。
「わたしと、おなじ苦しみを味わった、だれかのことを思ったならば、くやしい結論ではあるのですけれど……何度鏡を見ても、わたしには、ほかには…とくには罪を、見つけられませんでしたの……」
 ならば、考えられるのはこの罪人は受験者の注意深さを確かめる為の引っ掛け! きっとそうなのだろうとノリアは試験管へ目線を送った。
「ノリア・ソーリア……失格!」
「な、なんでですの?!」
 ノリアは結果に信じられない様子ではあるが、その祈りを捧げた影でほくそ笑むサメの姿を試験管は見逃していなかったのだ。
「その罪人は等活地獄に加え大叫喚地獄に相当、連れて行け」
「ちくしょーー!!」

「誰かを捌くのは難しいですの……」
 ノリアは少し落ち込んだ様子で罪人を見送った。



●罪人:一般人
 続いての罪人はごく普通の男性。担当はペルレである。
「現世の鏡にはなにが映ってるでしょうか~?」
 どこか何が映るか期待しているようなとも取れそうな口振りで、ペルレは鏡に手を翳した。
「……ふえぇ、鳥さんばっかり殺したんですか?」
 自宅や人気の少ない公園、そのゴミステーションで罪人が捕まえた鳥類を殺している様子が映った。
 飛行種であるペルレはぶるりと震えて、それは自身の翼をも震わすほど。
「どうして鳥さんを殺しちゃうんですか~?!」
「ゴミ捨て場を漁るから」
「このカラスさんは子供のご飯を探してただけですよ~!?」
 人間にとっては害鳥であることの多いカラス。しかしそれは繁殖、育児、そもそもの生命に必要な行動であって。それにゴミよけネットを雑に掛けた奴だって悪い、そいつは地域の人に処されろ。ペルレは怒りでどうしたものかと悩んだが、こほんっと体勢を立て直した。
「そんなあなたは……え~っと……」
 傍にあったガイドに手を伸ばして、罪人に見えないように罰を探す。
「あ、あった!「畜生道」におちるんです~……あれ? 違う……え~っと……」
 何かが違うと更にガイドのページを捲りまくれば
「そう! ……等活地獄! 「等活地獄」におちて~、「十六小地獄」の~、「屎泥処」~? で、カラスに突かれる刑に処します~!」
 カラスだけじゃなく、雀とか、鳩とか、ドバトとか、シジュウカラとか、今まで殺した鳥さんに突かれまくればいいです~! ペルレは怒りのままに罪状を読み上げた。
「……ところで鳥の刑は屎泥処って書かれてましたけど、どんな地獄でしょうか? ……ヒッ!」
 裁断を終えてガイドのページを捲ると、とんでもないものが見えた。
「あ、あ……あ~……えっと……「不喜処」!不喜処に変更します~!」
「屎泥処で妥当だが? 良い裁断だった、ペルレ=ガリューを合格とする!」
「あ、はぁ〜……」
 感情のままに裁断しただけに、ペルレは少しばかり複雑な表情を見せた。



●罪人:主婦
「ひっ」
 次の罪人は主婦。が、担当のイナリを見るや否や表情が恐怖に染った。
(あの外見じゃ罪人を裁くのに不釣り合いだからね、こっちの方が威厳がマシマシでいい感じでしょ?)
 ほら、罪人の女の人も震えてる。ニメートルサイズの大狐に変化したイナリはフフンと得意げな様子を見せる。
「さぁ、裁断を始めるわ!」
 イナリは研修通り鏡に手を翳す。すると徐々に見えてくるのは主婦の真なる姿。
「子供の世話なんて面倒だわ。だって自分の遊ぶ時間が取られちゃうんだもの……あ、そういえば二~三日あいつに餌を与えてないわね、餌を与えないと死んじゃってるかもね〜」
 今の地味な姿の罪人とは打って変わって派手な服装派手な化粧。家で泣き喚く子供になど見向きもしない典型的な毒親のそれ。そも子供への食事を『餌』としている時点で、この女の性格は手に取るように理解出来た。
「……弁解の余地は無いわね。金銭的な余裕があったにもかかわらず、私利私欲を優先するあまり、子供に満足な食事を与えず飢餓状態に陥らせた罪は重いわよ」
「そ、そんな……っ!」
 まるで絶望したような女の顔に、イナリはフフリと微笑む。
「あ、そんなに喚かないで、私の考えた地獄は美味しい物がお腹一杯食べられる素敵な地獄だから安心なさい」
「え……?」
 そう、これはとっても素敵な地獄だ。
「私があなたに下す地獄は大満腹地獄。この地獄の罪人達は極度の飢餓状態で、目の前の物を食べ続けなければならない」
 メニューは食べられた後も生きるゴキブリ、蛆、蟻、蜘蛛等々が一杯の等活地獄鍋。熱く焼けた縄の黒縄ステーキ。沸騰する熱湯の叫喚ドリンク。熱く焼けている油の大叫喚ドリンク。どれもこれも地獄にふさわしい素敵なフルコース。
「八大地獄に合わせた素敵なメニューを食べ続けるの。ちなみに排泄物は食べた物がそのままの状態で出てくるわよ。ね? 素敵な地獄でしょ?」
「いやーーーー!!」
「ふむ、長月・イナリを合格とする 」
 楽しげに話すイナリ、泣き喚く主婦、冷静な試験管……三人の反応はそれぞれでとても歪だった。



●罪人:会社員
「私が地獄に落ちるなど……何かの間違いだ!」
 裁断の場に来て早々そう口を開いたのは今回の罪人。彼を担当する事になった辰巳は深いため息をついた。
「あーはいはい、そう言うのはこの鏡見てから言って。じゃ、見てみるかね」
 確かに見た感じは普通の会社員のように見えるけれど。しかし完璧な選考を求められる選考者、どうして死後の行先を間違えるだろう。

 そんな死後の事情は置いておいて、裁断すべく辰巳は鏡に手を翳す。
 映るのはその人当たりのいい外見とは裏腹に、現状の生活を維持するためなら危険を犯し犯罪に及ぶことも辞さない矛盾を孕んだ罪人の姿。
(嘘つきで傲慢、やった犯罪は数しれず、殺人、脅迫、裏取引に……うわ、これ全部バレないでやったの? マジ? 良く平気な顔して大往生できたもんだ)
 自分が平穏ならそれでいいっての? つか、それにしたっていくらなんでも行いが突き抜けすぎてて引くわ。
 現世では全て表に出ること無くやり遂げたそんな罪人の姿に、辰巳は酷いものを見たと表情を引き攣らせている。
「まあ、ぐだぐだやってても仕方ないしさっさと落とすか。はいじゃテメーはココね、大叫喚地獄」
「はぁ? 何故だ!?」
「ここで聞いてくるとか、アンタほんと終わってる。いらない物を完全に排除した環境はさぞ居心地が良かったろうけど、そいつもここまでってわけさ」
 苦痛を受けながら、嘆きと叫びの大合唱で永遠に心をかき乱され続けるといい。辰巳はため息こそ吐きつつも表情を変えず無慈悲に罪状を述べた。
 こんな大悪党に与える慈悲など最初からないも同然ではあるが。
「ふむ……鬼怒川・辰巳を合格とする」
「え、これ一発だったんだ?! やー合格出来て良かった……」
 何人も裁断しなくてはならないのかと思っていたのか、辰巳は一先ずと息を整えた。



●裁断試験、了
「今回の試験状況はどうであった?」
「まずまずと言ったところでした」
「まずまず、か……」
 地獄の裁断は慈悲なく完璧にこなさねばならない、でなければ罪人に付け上がられる為だ。
 より冷徹に判断出来る人材が必要不可欠。

「地獄の沙汰はこの手で決まる。その責務を的確に全う出来る者でなければ、な」
 閻魔は静かに呟き、今日も裁断へ上がる。

成否

成功

状態異常

なし

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