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シナリオ詳細

トワイライト・マジック

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 さていきなりですまないが、キミに尋ねよう。
 喧騒と興奮を笑顔に変えるのは何だと思う?
 あぁ、いい。答えなくたっていいさ。だってそんなの。
「最高のショウに決まっているじゃないか!」
 ステージの中央でピエロは大仰な仕草で両手を広げる。
 胸躍る音楽。手に汗握るパフォーマンス。
 それ以上に人の心を突き動かすものがどこにある?
 サーカス団『トワイライト・サーカス』。
 観客に”ありえなくて楽しい夢”をお届けしよう。お代はどうぞその笑顔でお支払いを。
 
 あぁ、キミもどうだい? 一度くらい夢の与え手になってみるというのは?
 夢は受け手だけで見るものではない。与え手と受け手みんなで見るものだから。
 望むなら迎えよう。望まなくともその手を引いてしまおうか。

 さぁ、イッツショウタイム! たとえそれが後悔という名の濁りだとしても。
 ドキドキでハラハラで最高な夢を共に見ようじゃないか。
 そうさ、夜明けまで!


「やぁ。いらっしゃい、イレギュラーズ。今回はサーカスでパフォーマンスをする依頼だね」
 そう言って『境界案内人』カストル・ポルックスが手渡すのは一冊の本。それはカラフルで賑やかに飾られた絵本のようだ。
 タイトルは『トワイライト・サーカス』。愉快で儚いピエロの物語。
 彼はサーカスのピエロだった。人の笑顔が大好きな、ただの何処にでもいるような。
 そんな彼はある日、大一番の舞台を前に事故で命を落としてしまうのだ。
「けれどね、彼は死してなお夜ごとに現れてはサーカスをしているんだ。……未練、ってやつかな」
 彼を夢の呪縛から解くには、彼の夢だった最高のサーカスを実現させるしかない。
 夢の時間はいつかは終わる。それは夜明けが必ず訪れるのと同じように。
 覚めない夢(みれん)から、目覚める時間だ。

「どうせ見るなら最高に楽しい夢を届けよう。誰にとってもね」
 いってらっしゃい。そう、カストルはイレギュラーズの背を押すのだった。

NMコメント

 みなさんこんにちは。凍雨と申します!
 胸躍る一夜の物語です。どうぞよろしくお願いします。

●目標
 サーカスを盛り上げましょう。
 それが誰かに笑顔を届けられるものであれば、パフォーマンスはどんなものでも構いません。

●世界観
 『トワイライト・サーカス』
 サーカスを題材にした絵本です。
 ピエロの男がサーカスを行っており、観客は満員御礼。
 開催時間は日没から夜明けまでとなっています。
 ステージは中々広いのでスペースを使うことも出来ますし、サーカスにありそうな道具(大玉や空中ブランコなど)や動物たちはあるものとして頂いて大丈夫です。

●ピエロの男
 かつてパフォーマンスの練習中に命を落としましたが、”最高のサーカス”を実現する夢を捨てきれず、夜ごとに現れては幻のサーカスを行っています。

●サンプルプレイング
 自慢の身体能力でパフォーマンスをするわ! 笑顔も忘れちゃだめよねっ

 それではどうぞよろしくお願いします!

  • トワイライト・マジック完了
  • NM名凍雨
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年06月04日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ヨタカ・アストラルノヴァ(p3p000155)
楔断ちし者
武器商人(p3p001107)
闇之雲
オズ・ヨハネス・マリオット(p3p006699)
魔科学ドール
雨紅(p3p008287)
愛星

リプレイ

●Smile to you.
 心からの望みを果たせぬまま。それをきっと人は“寂しい”というのだろう。
「だからこそ、諦めることをしないのでしょうね」
 呟く『刑天(シンティエン)』雨紅(p3p008287)は人をあっと驚かせるような奇術も知らなければ、息を呑むような大技も持ってはいないけれど。
 それでも“心”がある。
 今はまだ鈍く思う心でも。ピエロの彼のように、笑顔の為にと思う心は同じはずだから。
「私も誰かの笑顔の為、ささやかな舞を捧げることはできます」
 微力かもしれないけれど、ピエロの望んだ夜を実現させる手助けをしよう。
 柔らかに笑む唇を紅が彩る。
 紅涙を絞らずと、雨紅の笑顔が伝わるように。
 そうして雨紅の笑顔を見た誰かにも笑顔になってもらえるように。
「今夜もトワイライト・サーカスをお楽しみください!」
 ピエロの大仰なセリフに合わせ、雨紅が舞台の中央に立った。

 息を呑む音さえ響くような静寂の中を雨紅が舞う。
 振るう槍は戦士の如く、躍る四肢は激しくも艶やかに。
 彼女は用意された的を次々と両断していく。
 的がスパリと斬れる度に湧き上がる歓声。おおっと漏れる声が耳を掠めるほどに、雨紅の舞も鮮烈を増して。
 意気高揚とするような、それでいて美しい動きから眼が逸らせなくなる。
 紅が弧を描き、雨紅の微笑みが“見えた”瞬間。
 スパン、と。その槍先が大きな的を小気味よく両断した。

 弾む息を整えながら、雨紅が客席に目をやる。
 見えないはずの面下の瞳が、見開かれたような心地だった。
 そこに見えたのは止まない拍手と、大輪に咲くたくさんの笑み。
 ぎゅっと、武器を握る手に力がこもる。傷つけるだけに思えた武の技が、今こうして誰かの笑顔をもたらしているのならば。
「武器を振るう術を知っているのも、悪くないです」
 呟く面の下は誰にもわからない。
 誰かを笑顔にして、己も笑顔にすることは難しい。
 けれど首から上が見えなくたって伝わることもあるのだ。
 今間違いなく雨紅が笑っていることも、そのひとつ。

●Clown girl
「オズ様、大道具を運ぶのをお手伝いします」
 雨紅が次の出番である『機械仕掛けのマリオネット』オズ・ヨハネス・マリオット(p3p006699) に声を掛ける。
「雨紅君は休んでていいんだよ? 力仕事ならオズに任せてね」
「そういうわけには参りません。幾つもの素敵な演目があってこそ、最高のサーカスでしょうから」
 オズが使う大玉やナイフを半分持つと、雨紅も共に舞台袖へと向かう。
 もちろん手伝う為でもあるけれど、もうひとつ。雨紅も他のイレギュラーズ達のパフォーマンスを見てみたいと思ったのだ。
 弾むような、踊るような、不思議な高揚感。感情というものにはまだ不慣れではあるけれど。これはきっと。
「わくわく、どきどき、そういった感情だと思うのです」
 雨紅は心が浮足立つほどに「楽しみ」だと思う心をまた一つ知ったのだ。
 舞台に踏み出す直前にオズは雨紅の方を振り返り、笑ってウィンクを送る。
「それならしっかり見ててねぇ♪ 見ている人皆、幸せになれるような舞台にするねぇ!」

「君もピエロかな?オズはピエロ! そして魔法使い(物理)さんだよ!」
 舞台に進み出たオズは、整った顔ににっこりと笑みを浮かべた。
 オズはピエロであり魔法使い(物理)。そして今夜はピエロの男とペアを組んで演目を行うのだ。
 一夜限りでもお客さんに素敵な夢を魅せたいと思う心は、ピエロの男もオズも同じはず。
 だからほら、一緒に。
「空中ブランコをやろう! 君はピエロ、オズもピエロ。ピエロ同士、素敵なショーにしようねぇ♪」
 オズが舞台の端にいたピエロの彼の手を引く。
 屈託のないオズの笑顔は、こちらまで笑顔になるようで。ピエロもオズと共に空中ブランコに挑むのだった。
 くるくるり。オズの体が空中で軽やかに回転する。
 かと思えば梯子から手が離れ、その体がピエロの男にまっすぐに飛んでいくではないか!
 会場全体がハッと息を呑む音で包まれたかのようだった。
 笑顔のままにオズが伸ばしたその手を、少しの狂いもなくつかみ取ったピエロの手。
 わぁっと歓声が会場に沸き起こる。
 その光景をみたピエロは、オズと顔を見合わせ笑い合うのだった。

「お次は玉乗りだねぇ♪ どんどんジャグリングが増えていくねぇ」
 ころころ転がるカラフルな大玉に乗りながら、オズの手には様々なモノたちが踊りだす。
 ボーリングピンにボール、リンゴ、レモンに卵。
「わわっ、落としちゃったねぇ!」
 両手からバラバラとボールたちが落ちていく……かと思えば、おどけたように舌をのぞかせ、その手に現れる新たなモノたち。
 くるくると“魔法”のように手の上を乱舞するジャグリング。
 その手が止まった時、その手にあったのはなんと十数本のスローイングナイフだ。
 ナイフをジャグリングしながらくるりと一回転。
 スコンッ!華麗な動きで投げられたナイフが、小気味いい音を立てて的に刺さっていく。
「これでフィニッシュだねぇ♪」
 最後の一刀が的に向かって投げられる?
 否。ヒュッと風切音と共に投げられるは観客席へ!
 とす、と。軽い音を立てて観客のひとりの手に収まったのは一束の花束だった。
 ――わあぁぁ……!!
 上がる歓声の中、オズが満開の笑顔を浮かべてピエロの男に近づいてゆく。
「ほら見てね! ピエロ君が幸せになれたらいいねぇ♪」
 その手を取って、観客に向けて大きく振って見せるのだ。
 観客の顔が彼にもよく見えるように。それはきっと、彼の望んだ光景であるはずだから。
 舞台の上には、笑うピエロが二人。

●Little dear dream.
 サーカスも終盤に差し掛かる頃。
 見惚れるような舞を見せた雨紅、そしてハラハラドキドキの大道芸を見せたオズのパフォーマンスの熱気そのままに、興奮冷めやらぬ会場内。
 けれど宵の時間はあと少し。夢を見ていられる時間もあと少し、だ。
 夢(みれん)はいつか覚めるもの。楽しい事はあっという間で儚いもの。
 それは生者も死者も隔てなく平等で。
 でも、だからこそ。せめて、というべきか。
「終わり際は盛大でありたいものだよね」
 『闇之雲』武器商人(p3p001107) の言葉に、その番である『小鳥の翼』ヨタカ・アストラルノヴァ(p3p000155) が小さく頷いた。
「終わらぬ夜を彷徨うピエロに……最高のショーを……盛り上げて見せよう」
 瞬きの間に過ぎていくような、夜が明けるまでのほんの短い時間を慈しむように、大切に。
 盛り上げて見せるのだ。見るのが良き夢であるように。
 旅一座【Leuchten】団長の、名に掛けて。

 さて、ヨタカと武器商人の二人が舞台に立てば、再び会場は静寂に纏われる。
 決して熱気が冷めたわけではない。むしろ逆だというべきだろう。
 空気は先ほどよりもずっと熱く、観客はこれから繰り広げられる舞台に期待を込めた視線を向けているのだ。
 そんな中で、武器商人が視線を集めるように舞台中央に進み出る。
 いつもは団員たちの紹介や前置きの「語り」など、手伝いに回ることが多い武器商人だけれど、今宵は少しばかり多く出番を貰うこととしよう。
 今宵、武器商人が語るは笑いあり涙ありの英雄譚。
 思わず笑い声を零してしまうような、けれどふと涙が溢れてしまうような。
 そんなワクワクの英雄譚をお届けしよう。
 あぁ、そうだ。物語には音楽がなくては始まらない。
 ヴァイオリンの音色で物語を彩るのはヨタカの役目だ。
「よろしく頼むよ、我(アタシ)の可愛い小鳥」
 愛おしくヨタカの名を呼ぶコトバと共に、武器商人の唇が三日月を描く。
 瞬間。テント内が騒がしくも賑やかな物語の一幕へと一変した。
 武器商人の語るコトバに合わせて景色がくるくると変わり、舞台上では登場人物たちが物語を紡いでいく。
 語りに合わせて物語を飾るはヨタカのヴァイオリンの音色。
 かき鳴らされるその旋律は、ヨタカの普段のぼうっとした様子からは想像できないほど力強く響く。
 それはまるで、星に恋焦がれ、あの夜の帳を目指して燐の火となって飛び立った、あの夜鷹のように。
 その音色に会場から歓声が沸きあがる。ヨタカの演奏が耳に触れれば物語に引き込まれていく。まるで登場人物の一人になったような気持ちで、強く感情が揺さぶられるのだ。
 同時にテント内を巡るはヨタカの心から生まれた輝き。
 その輝きが煌めいて、瞬いて。明けゆく空を、もう少しだけと引き留めるかのように星で彩っていく。
 盛り上がりは最高潮。けれど物語はまだ、ほんの序章に過ぎない。
 さぁ音楽を鳴らそう。物語を紡ごう。
「さて、とある英雄の物語を語るとしよう――」
 そう、夜明けまで。

●Good night.
 遠くの空から薄明かりが昇ってくる。夜明けまでの時間は本当にもう、あとわずか。
 ヨタカと武器商人はテントの裏でピエロの姿を見つけることができた。
「やァ。キミは満足できたかい?」
 武器商人の言葉に、ピエロが静かに頷く。
 たくさんの笑顔に包まれたこの夜は紛れもなく、ピエロの望んだ最高の一夜だった。
 消えてしまうのを、惜しく思ってしまうほどに。
「でもそろそろ、夢から醒めることにするよ。あまりにも長く留まってしまったから」
 白んでいく空と共に、ピエロの体が薄くなっていくのがわかった。
「お嬢さんたちにも伝えてくれよ。お客さんと私を笑顔にしてくれて、ありがとう」
 その言葉に笑みを零してヨタカと武器商人はウタを紡ぐ。
 彼がもう迷わぬように、道標のウタで送ろう。
 その調べはさながら懐かしき子守歌にも似て。

 音色を耳にしながら、ピエロはゆっくりとトワイライト(薄明り)に溶けていく。
 その顔は、幸せそうに笑っていた。

 おやすみ、永久の眠りを君に。願わくば、今度は夢も見ぬほど安らかに。

成否

成功

状態異常

なし

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