PandoraPartyProject

シナリオ詳細

関所砦突破せよ!

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●未来の英雄達
 がさがさと背後の茂みが鳴り、青年は慌てて振り返った。
「俺だよ。そうビビるな」
 薄ら笑いを浮かべながら茂みを抜け、中腰のまま走り寄って来るのは頬に傷のある仲間の盗賊だ。
「ビビってない」
「そうは見えなかったが?」
 ムッとした顔の青年に盗賊がさらに絡むのを、神官装束の女が苦笑と共に窘める。
「勇者を揶揄うのはその辺にしといて。で、どうだったの?」
「もっと見晴らしのいいとこはあるが、身を隠せるこういう岩がない。向こうからも丸見えだ。大先生の魔法が確実に届く距離ってのも考えるとやっぱりここじゃねえかな」
「決まりだな。ではここから魔法眼の呪文を使うぞ。あと、大先生は止めろ」
 赤髪の少女が片膝立ちのまま杖だけを翳し、目を閉じて呪を紡ぎ始める。不可視の魔法の目が宙に発現し、彼ら4人の潜む崖上の岩陰から飛び出して月下の空へと舞い上がった。

 眼下に広がるのは目も眩むような深い断崖。そこへ架かる石造りの国境橋は、隣国の関所砦の城門へと通じていて、まるで砦の一部であるかのようだ。

「どうだ? 兵力は?」
「まだ始めたばかりだ! 話しかけるな!」
 先程勇者と呼ばれた青年が声を掛けると、ローブ姿の少女は不機嫌さも露わにぴしゃりと彼の言葉を撥ねつけた。術の行使には集中が必要であるから、彼女が正しい。だが正論で殴られ、まだ若い勇者は少しむくれて、むうっと黙り込んだ。

 城壁は3メートル弱、物見の塔はその倍くらいの高さで、戦時でもない辺境の国境橋を守る関所砦としての規模はまあそんなものだろう。だが不可視の魔法眼を城壁の内側に飛ばした魔術師の少女はあっと息を飲んで、しばし言葉を失った。
 10人程度が詰めていると思われる兵舎の横に、顎門からちらちらと炎を覗かせる黒い魔犬が2頭繋がれていたのだ。知識としては知っていたが、初めて見る“地獄の番犬”ヘルハウンドである。
 
 さらに塔の内部へと魔法眼を滑り込ませた少女は、様子を見守っていた仲間達へ突然キッと振り返り、逃げるぞ! と叫んで自ら林の奥へと駆け出した。
「お、おい! なんだよいきなり! どうしたんだ?」
 とりあえず追いすがりながら勇者の青年が問う。慌てて隣まで追い付いた盗賊と神官も口には出さなかったが同じ気持ちだっただろう。
「ダークエルフがいた! 4人いて1人は多分呪い師だ。こっちの術に気付いたかもしれん!」

「ダークエルフ……!」噂は本当だったんだ、と勇者は武者震いした。彼らの隣国は、暗黒神を奉ずる闇の勢力と契約し、周辺国家に対して侵略戦争を仕掛けるつもりなのだ。
 そして魔術師の態度からして、現状、自分達が無策のまま突破できるような相手ではないのだろう。一旦出直して、準備をしなければならない。なんとしても、国境を越えて潜入を果たし、諜報と攪乱を行うのだ。例え……ここで犠牲を払ったとしても!

●案内人は語る
 見ての通りよ。とある世界を大戦争から救う事になる英雄一行だけど、それは「ここで彼らが死ななければ」の話になるの。ちょっと反則だけど、今回は手助けがいるわ。そう、あなた達イレギュラーズのね!

NMコメント

 どうも、かそ犬と申します。
 いわゆる剣と魔法ファンタジーの、とある世界が今回の舞台となります。

●達成条件
 若き英雄達が死をも厭わぬ覚悟で戻って来るまでに、彼らに代わって国境の関所砦を突破して下さい。砦側兵力は、ダークエルフシャーマン×1、ダークエルフアーチャー×3、ヘルハウンド×2、一般弓兵×10です。砦側の攻撃は主に弓で、難敵と見ればヘルハウンド2頭を橋に放ちます。エルフも兵士も基本的には城門を開けて打っては出ません。ダークエルフは近付かれると透明化して攻撃してきます。ヘルハウンドは炎の息と噛み付きが武器です。ダークエルフとヘルハウンドが倒されると一般兵は降伏するか逃亡します。
 

●プレイング
【城門まで】【砦内】の2項目を記載して下さい。
 
【城門まで】は橋を渡りきり、門の前までの行動です。
 見張り台は一般弓兵2名ですが、シャーマンの魔術的警戒とヘルハウンドの嗅覚で、イレギュラーズの存在は接近前に砦側には気付かれています(英雄一行のせいで警戒が厳しくなったのです)。壁は超人的跳躍力がなくても、誰かの補助があれば越えられるものとします。内側から城門を開ける際は(特に怪力でもない限り)2人必要となります。一般弓兵達の射撃はイレギュラーズが何とか避け続けながら前進できる程度の精度です。
【砦内】は城壁を越えてからの行動です。戦いたい相手がいれば記載して下さい。おそらく弓兵は混乱しています。思う存分暴れましょう。

 飛行能力、透明化などで単独行動をする場合や、二手に分かれて誰かを中へ行かせるような場合(ここは任せて先に行け、ですね)は、参加者同士で動きをよく打ち合わせて下さい。苦しい戦いが予想されますので、心情の描写などもしていただけると助かります。任務達成後は未来の英雄達とは顔を合わせない内に立ち去りましょう。

 以上となります。
 ご縁がありましたら宜しくお願いいたします。

  • 関所砦突破せよ!完了
  • NM名かそ犬
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年05月31日 22時35分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ソア(p3p007025)
無尽虎爪
羽住・利一(p3p007934)
特異運命座標
長月・イナリ(p3p008096)
狐です
鬼怒川・辰巳(p3p008308)
ギャンブル禁止!

リプレイ

●英雄代行者たち
「底見えないじゃん。落ちたら死ぬね、こりゃ」
 鬼怒川辰巳(p3p008308)が、闇で塗り潰したような深い断崖を見下ろしながら言った。造物主が両手でふたつに割ったかのようなこの地の裂け目は、右を見ても左を見ても地平線の彼方まで伸びていて、まるで神話の風景である。

「ボクが抱えて向こうまで運ぼうか?」
 辰巳を見ながら、にっと笑ったのは『雷虎』ソア(p3p007025)だ。
 だが、ハイセンスで周囲を調べていた『特異運命座標』羽住利一(p3p007934)が小さく首を振った。
「確かにソアに向こう側まで抱えて飛んでもらえば、回り込んで砦の後ろを突けるだろうね。でも今回は時間がないし、多分この橋を攻略する事に意味があるんだと思う。“彼ら”の歴史的には、ね」
 
「決まりね! それじゃ始めましょう。あちらをいつまで待たせるのも悪いわ」
『狐です』長月イナリ(p3p008096)は、いつ拾ったものかポケットから小石をふたつ取り出し、何やら唱えながら橋へぽいと放り投げた。石は膨張しながらむくむくと形を変え、それぞれ人型の上半身、下半身を形作ると、【術式的水銀装甲】で銀色の輝きを纏いながら合体する。
「巨大合体式神イナリダ――――X!」
 イナリの叫びと共に突如橋上に出現した巨人を前に、砦側で臨戦態勢だった兵士達から、おお、と驚きの声が上がった。式神巨人がゆっくりと歩き出すとすぐさま砦から矢が降り注ぐが、装甲を貫く事が出来ず、ばらばらと足元に落ちてゆく。

「おい! 全然前が見えね――ぞ」
 巨人の脚を遮蔽にして進みながら辰巳が叫ぶと、イナリはひらひらと手を振りながら大丈夫大丈夫と笑った。
「このまま、門の前まで進みましょうよ。辰巳さんはこの式神を駆け上がって、壁を越えてね」
 
 さらにそのイナリ達の後ろから、ばちばちと爆ぜる雷を纏いつつソアが空へと舞い上がった。
「ボクたちがやっつけてしまって良いんだよね?」
「そういう事だ!」 
 式神に負けじと目立つ彼女を危険と見て素早く弓を向けた兵士に、橋の袂に居残った利一の超長距離指弾が炸裂した。一瞬、どこから狙撃されたものか兵士達は混乱し、落ちてきたソアの雷に弾き飛ばされて2人が壁から転げ落ちる。 

 こちらの多彩な戦術に対応できていない――このまま壁に取り付けるのでは――そうイレギュラーズが思い始めた橋の中央地点で異変は起きた。
 
 突然、橋の真ん中にぽっかりと大きな穴が開いたのだ。
 辰巳とイナリは飛び退いたが、式神巨人にそんな芸当が出来る訳もなく、腹までズボッと穴に嵌ってしまう。石を変化させるダークエルフシャーマンの魔術だろう。さらに、まるで待ちかねていたかのように、馬ほどもある黒い魔犬が2頭、ひらりと壁を跳び越えて現れた。“地獄の番犬”ヘルハウンドだ。
「いいねえいいねえ! こういうの待ってたんだよ!」
 自分に飛んできた矢を掴みとりながら辰巳が悪い顔で笑った。せっかくこんな世界に来たのだ。手加減無用で殴っていい相手を殴らなくてどうするのだと。矢を投げ返して1人の弓兵を仕留めると、辰巳はパ――ンと拳を掌に打ち付けて気合いを入れ直した。
「動物を殴るシュミはねえが、お座りくらいは覚えてもらうぜ?」

「え」
「あ」
 ヘルハウンドに対抗して大狐へと変化したイナリと駆け寄ってきた利一が止める間もあればこそ、無謀にも独りで突撃した辰巳は、跳びかかってきた魔犬の顎を鉄棒でカチ上げて仰け反らせ、もう一頭の噛み付きを棒を水平に噛ませて受け止めた。
 イナリがすぐさまカバーに入り、魔犬と首を狙い合って転がるのを見ながら、利一は冷静に戦局を見極めようとしていた。弓兵達は誤射を恐れて今はこっちに撃ってこないが、ダークエルフ達をフリーにしているのは危険だろう。誰かが先に上に上がって牽制するべきだ。イナリが魔犬を蹴り退けて城壁を背にする形になったのを見て、利一はお誂え向きの位置関係と即断した。

「イナリ、私達は上に上がろう。辰巳! すまん、一足先に入らせてもらう!」
「わかったわ」
「おう、貸しにしとくぜ!」
 ヘルハウンドの首を抱えて奮闘する辰巳の横を帽子を押さえながら滑り抜けた利一は、大狐の背に飛び乗り、彼女の力も利用して一気に城壁に取り付くや、身体を引き上げた。一瞬の軽業に反応できずにいた近くの弓兵が呪縛が解けたように短槍で突きかかるが、利一はそれを捌いて兵士を壁から突き落とし、奪い取ったばかりの槍を下に伸ばして掴め、と叫ぶ。一旦変化を解いて槍を掴んだイナリを引き上げる利一へ当然数本の矢が飛ぶも、それらはイナリの周りを浮遊するふた振りの神剣が全て叩き落とした。

 兵士達は明らかに狼狽した。
 魔獣どもで消耗させるつもりが、あっけなく壁越えを許してしまった。攻め手は異能者揃いで自分達が敵う相手ではなさそうに思える。
「狼狽えるな」
 ぞっとするような冷たい声と共に、するすると闇からダークエルフが現れた。
「逃げれば先に殺す」
「来たな……!」

 
 片や橋上では、咆哮がふたつ轟く。
 ひとつは辰巳。
 もうひとつは彼の援護に空から降りてきた虎の姿になったソアだ。
「犬になんか負けないんだから!」
 ソアとヘルハウンドは互いに首元に噛みつきながら身体に爪を立て合い、激しく転げ回った。爪で引き裂いた魔犬の傷口から黒い血と共に炎が噴き出し、ソアは慌てて飛び退く。
「辰巳さん! 炎に気をつけ……あ――っ!?」
 辰巳に警告しようとソアがちらりと視線を向けると、まさしく彼が正面からヘルハウンドの地獄の業火を浴びたところであった。辰巳が消し炭になっちゃった、と一瞬固まりかけたが、炎が消え去ると、意外にも彼はぴんぴんしている。
「なんだよ……思ったより熱くねえ。日本の8月舐めんじゃねえぞ!」
 辰巳渾身のフルスイングで魔犬の巨体が浮き上がったのを見て、ソアはこっそり苦笑した。彼の心配はいらないようだ。こっちも片を付けよう。
「いくよっ、おすわり!」 
 彼女自身も消耗する諸刃の剣、とびきりの大雷“ギガクラッシュ”の黄金の輝きがヘルハウンドを飲み込み、爆ぜて踊った。光の収束後、白目を剥いて痙攣する魔犬を見下ろしながらソアがふうっと息を吐いていると、城門が音を立てて開く。
 
「こっちよ!」
 イナリは橋の中央で穴に嵌っていた式神を解放し、壁内で2体とも召喚し直して城門を開けさせていた。自身は再び大狐の姿になり、春雷武御雷で槍持ちの兵士を大きく吹っ飛ばしたところである。ソアが駆け寄り、大狐と虎が並ぶと兵士達にさらに動揺が走った。
「獣は狩人には勝てぬ」
 そこで宙から滲み出るように現れたのは2人のダークエルフ。
 逃げぬよう兵士達を一瞥し、自身らは風に再び溶けるように消えてゆく。ソアとイナリは鼻をすんすんと鳴らし、嗅覚で位置を特定しようとしたが風がそれを妨げる。
「いたっ!」
 鋭い痛みを感じて、2人が振り返ると背中に数本矢が刺さっていた。黒い妖魔は時折、陽炎のように現れては矢を放ち、またすぐに消えてしまう。狙いをつける事すらままならない。
「んもうっ! ちょこまかと!」
「ねえ……あの辺頼める?」
 苛立たしげに雷光で敵を追っていたソアは、イナリに囁かれて、はっと彼女の顔を見た。何度も共闘した仲だ。何がしたいかはそれ以上言わずとも伝わった。
「分かったよ! せえの、でいこう」
「せえ、の!」
 彼女らが選択したのはソアの雷光弾きとイナリの迦具土連砲による砦中庭を覆い尽くす飽和攻撃。強烈な複数の閃光が瞬き、数人の悲鳴が上がった。ばたばたと倒れている兵の中に、黒い妖魔も2人。
「獣は狩人になんだって~?」
 ふんす、と勝ち誇るイナリの隣で、ソアは塔を見上げた。
「……利一さんは?」

 彼女が見上げた物見の塔内――少し時間は遡る。
 ダークエルフの弓使いを追った利一は塔の最上部で激しい一騎打ちを続けていた。利一のハイセンスで透明化が無駄と分かると、妖魔は姿も隠さず堂々と挑んできた。互いに指弾と矢を撃ち合い、躱し、接近しては短剣と拳を交錯させ、また離れた。
 やるな、と素直に思ったその瞬間――利一は突然足元を割って伸びてきた蔦にぐるりと拘束され、思わず呻き声を上げた。いつの間にか、杖を手にしたシャーマンが階段入り口に立ち、不敵に笑っている。
「おまえを人質に撤退させてもらおうか」
「……どうかな」
 不敵に笑ったのは利一もだ。届かない距離だと思って油断したのだろう、身を晒した術者を、因果干渉力を込めた指弾“歪業”が貫く。精神を破壊され、シャーマンは頭を抱えて階段を転げ落ちた。蔦が消え、慌てて妖魔は弓を構え直したが、利一の指弾が一瞬速い。喉を抜かれた妖魔は、踊るように塔から転落していった。
 
 
 塔からよろよろと逃げ出したシャーマンは魔犬を仕留めて返り血まみれの辰巳が門から近付いてくるのに気付き、慌てて透明化した。
「ふう……手こずったぜ。でぇ、あんたはさ」
 ポケットに突っ込んでいた辰巳の手が伸び、さっとシャーマンの襟首を掴む。
「なにこそこそ、逃げようとしてんだよ。ビビッてる臭いが隠せてねえじゃん?」
 どすん、と強烈なボディブローがめり込むと、身体をくの字に折り曲げて血を吐くシャーマンの姿が現れ、それが残っていた兵士の士気崩壊の最後のひと押しとなった。


●砦は落ちて
 何が起きた、と4人の英雄達は茫然とした。魔術師が砦の異変に気付き、急いで駆け付けてみれば、砦は陥落していたのだ。最初は罠かと思ったが、間違いない。
「俺達の他にも行動を起こした人間がいたんだ!」
 いつもなら単純な奴だと勇者を笑ったが、案外本当にそうなのかもしれない。
 砦を越えて、4人は敵国へいよいよ潜入を果たした。

「ま、あんたらも頑張れよ」
 走り出した彼らの背中に、誰かの声が掛かったような気がした。

成否

成功

状態異常

なし

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