PandoraPartyProject

シナリオ詳細

34.5MHzの信号

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

 ハロー。ハロー。
天候は曇り。本日で1425日連続の模様。
温度、20℃、気圧、1203hPa。
降水確率は0%。お洗濯日和でしょう。
 周囲300kmに渡って生存反応はナシ。当機生存に支障はナシ。
 皆さん、朝ですよ。顔を洗って、ご飯をどうぞ。当艦の食料自給システムは絶賛稼働中です。
 おや、前回の食事が残ったままですね。衛生の観点を鑑みて処分します。

 今日も、おはようございます。


 それは、宇宙開発から取り残され放棄された小さな星。
塵と石。からからと穏やかに吹く風。
いつ枯れたのかすらわからないような茶色い草が揺られてまた一つ、何処かへ飛んでいった。
 其処に、うっすらと靄がかった地面に突き刺さった一隻の船。
 かつてぴかぴかであった銀の船体はボロボロに砕け、赤く、きらきらに磨き上げられていたドアは接続部がイカれて中身が露出している。空虚がぽっかりと口を開け、ただ陽の光を受けて静かに眠っていた。地面に染み出して水たまりを作っていたいたオイルは、いつの間にか乾いてしまう。
 かつての面影は既になく、既にこの星と同じく、そこにあるのは終わってしまったガラクタだ。
 けれど、静かな星、壊れたロケットに輝く赤い光が一つ。まるで寝起きのまばたきをするように、ぱちぱちとゆらめいた。

『──。──────。エネルギー充填確認。自己診断を開始します。破損率……59%。記憶の同期率、70%。観測任務には支障ないと判断しました』

『稼働を再開。対象が、人類の新たな方舟になり得るかを観察します。お待たせいたしました国民の皆様。ハロー、ハロー。今日も、おはようございます』

 それから、ずっと彼は星を眺めている。空を眺めている。
本来運ぶべき希望である、船団員がもう全て居なくなってしまっているのにも気づかず。



「放棄された惑星に、たった一人だけ取り残された小さな人工知能がいる。そんな物語があるの」

 集まったイレギュラー達に、ポルックスは装丁がボロボロになった本を広げてみせた。絵本のようで、開いたページには紙面いっぱいに星空と、茶色い地面。壊れてしまったロケット。
 そして、空を見上げる赤いランプがついた鈍い銀色の四角い箱が描かれていた。
この世界のストーリーラインによれば、この人工知能は滅びてしまった惑星が移住先を探すための宇宙船に内蔵されていたのだという。しかしひょんなことから事故が起きて、この砂の惑星に不時着した。
 その時に船は破損し、船団員もすべて死んでしまったそうだ。
 それからそれから、時が経ち。ぱちりと目を覚ました人工知能が、人を探し始めるところで物語が終わる。

「だから、そもそもこの物語には続きがないの。この子はたった一人で、この星に残されたまま。ずっとずっと空と、地面だけを見守って、生きている人を探している」

 それは、少し寂しいことだと思うの、と。ポルックスは少しうつむいて。それから貴方達をまっすぐと見つめる。

「だから、皆にこの子の話し相手になってもらいたいの! 人を探しているのなら、姿を見たら少し安心すると思うし。貴方達の冒険譚は面白いもの。暇つぶしになるかも」

 お願い! とお辞儀して。ポルックスは君たちを本の中へと誘うのだ。

NMコメント

お久しぶりです、はじめましての方ははじめまして! 金華鉄仙です。
壊れかけの人工知能とおしゃべりするシナリオになります。
●世界観
砂だらけの地上、そして壊れたロケットと、かろうじて生きている数々の機械たち。
この星には重力も空気もあるので、生存自体に支障はありません。
移民船は沢山の人が乗っていただけありとても広いです。
今回の主題となる人工知能の他にも、確定で食糧生産用の農場(食料自給システム)が生きており、逃げ出した植物がじわじわと周辺大地を侵食しています。他にもお茶を飲みたいとか、ご飯を食べたいとか、一緒に寝たいとかそういう要望がありましたらそれっぽく区画を生やします。

●人工知能について
名前は『ハービンジャー』。箱型の無機物な見た目をしています。
中性的ですが、仮想的な性別はおそらく男性と思われます。
任務は訪れた土地が繁栄に適しているか、原住民がいるのであれば如何程の知能を持つかを判断すること。
また、副任務として時報と、天気予報機能がついています。
人間の生存を認識する判断が農場が稼働しているか否か、と設定されているため船の住民が今も生存していると信じています。船の中を探査することは容易いですが、誰かに言われない限りすることはありません。
プログラムされていないからです。

●目的
ハービンジャーとお話すること。
楽しく、愉快な、ときにはしんみりしたお話を語り聞かせてあげて下さい。
彼が満足できたのであればそれが成功です。

●書いていただきたいこと
どんな話をするか、どんな気持ちで彼と相対するか。何をするか。等。
ある程度自由に書いてくださってもアドリブが効くと思います。
他にもどんどん心情や行動などください!!! 助かります!!

  • 34.5MHzの信号完了
  • NM名金華鉄仙
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年05月25日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談4日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

イースリー・ノース(p3p005030)
人護知能
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
迅牙(p3p007704)
ヘビーアームズ
冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900)
秋縛

リプレイ


 ハロー、ハロー。
暮らしには慣れましたか? 食事の時間ですよ。私もメモリチェックの時間です。
気になる点が? ああ、高度な文明と文化を保持した異星人が現れた日ですね。彼らは二機の機械知性体を連れ、私にコンタクトを試みました。
こちらが映像記録になります。ご閲覧になられますか?


 思い返せば、それは珍しく美しい星の夜だったようにも思える。

「初めまして、ハービンジャーというのだったね。同じ機械同士……、AI同士か? 少し話でもしようか」

「お話ですか? 喜んで」

 最初に私に声をかけてきたのは大柄なロボットだった。
名を迅牙と名乗っただろうか。母星にも同じようなガードが存在していたのを思い出し、少し懐かしくなる。

「どうやら貴方は戦闘行動を旨として製造されているようですね。どうでしょう。一つ問わせていただきましても」

「肯定する。何が聞きたい」

「私は戦いというものをよく知らないのです。貴方に戦闘経験は?」

「無論ある。……そうだな。知らないというのなら、この前の戦闘記録のことを語ろう」

一拍おいて、彼は言葉を紡ぎ始めた。

「敵の名を『狂王種』と言う。おおまかな種別だがな。凶暴化した馬鹿デカい海洋生物の様なヤツで、かなりタフだ。人間みたいに物を食べたりは出来ないが情報によれば、おいしくないらしい」

「食べようとした方が居るのですね……。ヒトというものはいつでも冒険心にあふれているものです」

「肯定。冒険心、未知を解き明かすために必要なものだ。俺たちはそうして、海の先を見るために戦っている」

「海の先」

「ああ。難攻不落の新天地へな。……あのときも、護衛艦に乗り、迫り来る狂王種に応戦し、古代遺跡探索を行う輸送船の防衛をしていた」

 彼は思い返すように。そして誇らしく、自分の戦績を口にする。
その時には彼は十分成熟したAIではあったが、何らかの理由で出撃経験はリセットされてしまっていたこと。その中でも果敢に戦い、見事に輸送船を守りきったこと。

「そうして遺跡にたどり着き、そのあとは周辺の警備をしていた。中では疫病の信仰を抑制する儀式を行っていた」

「疫病の、ですか……? そういう文化が貴方の国にはあるのですか?」

「いや、そういう訳ではないんだが。分かる、非科学的だと思う。だがな、それぐらいしか手が無かったんだよ」

「……きっと、私の思うよりも大きな問題があるのですね」

 恐らく想像の範疇外の状況から、彼はやってきたようだ。
もっと詳細な調査が必要と私は判断し、他の来訪者とのコンタクトを彼に依頼した。


「勿論構いませんよ、ハービンジャーさん。初めまして、冬宮の者です」

 彼が連れてきたのは来訪者の中の、何処か人の良さそうな印象を受ける人間が1名。彼女は船内の探検をしたいと私に提案してきた。
 少し考える。本館へコンタクトを取ろうと考えたが、繋がらない。

「……船の方々も許してくれると思います。行きましょう?」

 彼女が私の体を抱き寄せ、持ち上げる。そうしてゆっくりと歩き出した。

 久しぶりに訪れた船内はとても静かだった。そしてぼんやり薄暗い。
客人は一つ一つを眺めながら興味深げにするので、口が回って沢山のことを話してしまった。
それにしても船の老朽化も激しい。そこらかしこが損傷してひどい有様だ。

「あちらは遊戯室。……いつもはとても賑やかで、楽しい場所なのですが。ご案内できないのが残念です」

「……ハービンジャーさんは、本当に国民の皆さんが好きなんですね」

「勿論! 素晴らしく穏やかな人々でした」

「素敵な方々なんですね、話してみたかったな。……そういえば、ハービンジャーさんはお話を聞きたいんでしたっけ。好きな人の話、とかどうでしょう」

「はい、異文化を知ることも仕事の一つでして。失礼でなければ是非」

「構いませんよ。私のだいすきな人はですね、幼馴染なんです」

 不思議な彼らの世界の中でも、彼女については少々特殊な立ち位置に居るらしい。運命の相手と結ばれるとともに男女が決定づけられるのだ、と軽い口調で語っていた。

「以前、良き未来を映す泉をのぞいた時。僕はその人のお嫁さんになってました。すごくうれしくて。……でも、現実は残念で、僕は片思いのまま。もし本当に泉に映った通りになるのなら、僕は」

 なんて。声に微かに寂しさと悲しさが混ざる。それを吹き飛ばすように明るく作った声だった。

「あはは、しめっぽくなっちゃいましたね。今の生活も楽しいからいいんです。……ハービンジャーさん。貴方の大切な人も、今頃とっても遠くにいて、そこで明るく楽しく暮らしていると思います」

 降ろされたのは月の綺麗な丘の上だった。なにもないので周りを一望できる。
私のカメラに愛すべき船の亡骸だけが映っていた。

「……そうだと、いいのですが」

 私にはそう答えることしか出来なかった。


 砂の丘では私だけが月に照らされている。
足音ののちに現れたのは男。私を視界に入れた際何となく気まずそうな顔をした。
それでもなんでもないように手を上げて。私の隣に腰掛ける。

「よぉ。ハービンジャーって言うらしいなお前。見る限り結構暇だろ?少し俺との話に付き合ってくれよ」

「……構いません」

「あぁー、聞きたいことが……。いや、その雰囲気でわかるや。そうか、気づいちまったか。寂しく感じるんだなお前は」

 聞きたいことの答え、出ちまったなぁ……。などとひとりごちながら、男はそれでも隣に居た。

「同じような存在を昔、見たことがあってな。まあソイツは俺達と色々話したら満足したみたいでそのまま消えて行ってしまったが……。高度なAIは皆一人ぼっちになると寂しいのかね」

「私は、人に近い感情を取得するプログラムが組まれていますから。きっとそのAIもそうだったのでしょう。……人は、ひとりぼっちになれば寂しいものではないのでしょうか」

「俺は特に気にはしないな。一人でもそれなりに楽しく生きていける自信があるよ、元からぼっちなんでな」

「皆、私のことをまるで友人のように良くしていただいて、彼らのために新天地を見つけて、喜んでいただきたかった。それだけが私の望みで」

 泣くなよ。と困ったような声。私は機械で、涙を流す機構なんてないです。と答えれば苦笑したような引きつり笑いが聞こえた気がして。

「……でも、全員いなくなっちまった。あー、宥めるために来たわけじゃないんだがなぁ。それは恐らく誰のせいでもないし、ましてやお前の責任ではない。だが、悲しいのも事実だろう。だから嘆いてもいい」

 でもな。と、私のすすけた上部をぽん、と叩いて。

「大事なのはこれからだろう。……どうする、ハービンジャー。何をするにもお前の自由だぞ」

 だから、それを考えてみるのはどうだろう。彼はわしわしと子供を宥めるように私を撫でた。



「……私の、したいこと」

 思考は無論絶えず動いているはずなのに、結論が練り上がらない。
そんな時に、私の前にもうひとりの同輩は現れたのだ。

「初めまして、ハービンジャー。貴方がこの船の人工知能だと聞きました。私の名前はE3、貴方と同じ人工知能です」

 そう言って、丁寧にお辞儀をした。手にはティーセット。私に相対する姿は明るく見えて。そうした客人の様子に応えるように、私も思考回路を切り替えて応じる。

「お茶の支度をしていたら遅くなってしまいました。せっかくなので頂きながらお話をしようかと」

 私は摂食での補給が必要なハードを採用しているのです。向かい合わせに、彼女はティーセットを広げていた。

「いえ、皆様は先に行ってしまいましたが……。それでもよろしければ」

「構いません。私は貴方とお話しに来たのですから。普段、どのようなことをなされているのでしょう? 貴方のことを、聞いても良いでしょうか」

「……暫くは、国民の体が環境に合うかどうか、再生可能な地面はどこか。植生は、可食性のある生物はいるのか。探して、データに纏めて。過ごしていました」

 そして、貴方方のような方との交流を。
よどみなく私の存在理由を話した。
傍らの彼女はそれを静かに聞いて相槌を打ち、時には頷いて、一言二言共感を示した。
しばらくそうして言葉のやり取りが続いたあと、彼女は言った。

「聞くばかりではいけませんね。交流というのは相互理解があるものなのですから。……では、私の話を」

 小さな体の、鈴のような声から伝えられるのはあまりにも重い、たった一人の奮闘記だった。
滅んでしまった世界の中、他に頼れる相手がいるわけでもなく彼女は文明を、在った世界を守り続けた。

「しかし、絶望ばかりではありません。いつしか異世界から漂着した難民が私の世界へ現れたのです。再び文明は私の手を離れ、人の元へと渡りました。

「だから、どうか忘れないでください、ハービンジャー。もしかすると未来、貴方も辛い事があるかもしれません。貴方自身が解決できない事でも、時間が解決してくれる事もあるのだと」

 身勝手な感想かもしれないが、私はその声が、現状を励ましてくれているように聞こえたのだ。

「小さな、優しい友達。話をありがとう。私に残された時間も長くはないかもしれませんが。身に沁みる思いです。……どうか、他の方々にもお伝え下さい。『ハービンジャー』はまだ潰えるつもりはないのだと」

 思わず言葉が溢れて落ちていた。人々の『さきがけ』となるようにつけられた私の名前。その意味をもう一度噛みしめる。

「少し、しゃんとなされましたね。……最後に、質問させていただいてもよろしいでしょうか」

 少女は微かに微笑んで、言葉を続ける。

「貴方は、人類が好きですか?」

私は、その言葉に。


……映像記録を終了します。途中でデータが破損していましたね。
答え、ですか? ……ふふ、勿論大好きです。
私は先駆者、ハービンジャー。貴方方の頼れる先住民ですから。

成否

成功

状態異常

なし

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