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シナリオ詳細

惡食アリアンヌ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●監獄島
 幻想国における治外法権。そんな言葉が罷り通るのはこの場所位ではなかろうか。
 大罪人――それは『幻想国において』だ――を収容する絶海の孤島。その主たる女は仕立ての良い青いドレスに身を包み「良く来た」とルージュを引いた唇を歪ませた。
 社交界では一躍有名なその女は老婆であったといわれることも幼い少女であったと言われる事もある。それは全てがまやかし、謎をその身に纏う事で魅力を増させるとでもいうのだろうか。
「さ、気軽に座っておくれ。……取って食おうとは思ってないよ」
 にやりと笑う女傑ローザミスティカ――彼女が座るは看守長の椅子の筈だ。罪人たる彼女がどうしてそんな場所に――
 ここは治外法権だ。幻想国で最も安全で、そして誰の手も及ばぬ場所。かのアーベントロートの暗殺の手も及ばず、王国に有り乍ら王国から隔離された場所。それが『監獄島』と呼ばれる場所であった。
 ローザミスティカは貴族殺しの大罪をその身に背負いながらもこの島の実質指導者となった。監獄の王たる彼女を篭絡し、監獄等の実質的な権限を得たいというフィッツバルディ公による秘密裏の『オーダー』はこの監獄に収容される者達の願いを聞き届けることであった。
 謎多きローザミスティカ。彼女だけではない。看守や囚人たちの願いを聞き届け、この島の支配権を得るが為に特異運命座標はこの島へと踏み入れるのだった。
 尤も――この島に居るのは罪人だけではない。何故……? 此処が幻想国で一番安全だからだ。

●惡食アリアンヌ
 ローザミスティカは云う。監獄の中にも『自分の言う事を聞かぬ者』というのは多数存在するのだという。
 例えば、看守であった者。彼らは業務に忠実であればあるほどに、ローザミスティカを許容できないだろう。
 例えば――女にしてやられるかと反旗を翻す者。
 此度のローザミスティカのオーダーは後者の殺害であった。

「『フィッツバルディ公にとっても』あたしが監獄島のトップに居る事は都合がいいだろう?
 あたしは『貴族殺し』だ。貴族に関して『よぉく知っている』んでね」
 だからこそ、話が分かる相手がかの椅子に座り続ける方がいいだろうとローザミスティカは笑う。成程、彼女は頭がキれる女だ。フィッツバルディ公という依頼人の存在を仄めかす事で自身の不都合を『合法的に依頼』してくるというわけか。
「さ、アンタ達に相手をしてもらいたいのはねアリアンヌという『男』の殺害だよ」
 女の名に女の姿。それがアリアンヌという囚人なのだという。
 性別は男だ。しかし、犯罪に身を窶す際に、彼は女の姿に身を包む。その方がターゲットは油断するからなのかもしれない。
 その二つ名は『惡食』。彼は殺害した者を食った。子供であれど、大人であれど、動物であれど。どのような者でも食った。髄を啜るように強欲に、傲慢に。暴食の限りを尽くして。
 その狂気により監獄島に収監されたアリアンヌは女が嫌いであった。
 特に、社交界が疎ましかった。女を売り物にし、微笑む花たち。アリアンヌはそれを模しながらも酷く嫌悪していたのだそうだ。
 自分が『そのような女』になれないという逆恨みもあったのかもしれない。
 だからだろう。ローザミスティカに対して「ベルナデッド!」と堂々叫びナイフを向けたのは。

「ベルナデッド……?」
 イレギュラーズの言葉にローザミスティカは「昔の名さね」とそっぽを向いた。
 かつて社交界に咲いた花、『ローザミスティカ』ベルナデッド・――・――(データは残っていない)。
 その彼女を殺し食う為にアリアンヌは監獄島をうろついているそうだ。
「さ、仕事の時間だよ。アタシを守っておくれ。ああ……『お礼は勿論』?」
 ちゃり、と女の手元で揺れていコインには彼女を表す薔薇の花が咲いて居た。

GMコメント

 どうぞ、よろしくお願いいたします。

●成功条件
 アリアンヌの殺害

●注意事項
 この依頼は『悪属性依頼』です。
 成功した場合、『幻想』における名声がマイナスされます。
 又、失敗した場合の名声値の減少は0となります。

●惡食アリアンヌ
 男です。金の髪に紅色の瞳、美しい淑女を化粧や衣服で作り上げ、女性のふりをして歩き回ります。
 女を嫌い、男を誘惑し、そして全てを喰らうそうです。ローザミスティカとは旧知なのか、彼女をベルナデッドと呼びます。

 ・前衛型、ナイフが獲物です
 ・必殺。確実に仕留めます。
 ・すべての攻撃にHP吸収。喰らっている。

●監獄
 看守室へと踏み込ませないようにしてください。
 塔です。様々な囚人が収容されています。アリアンヌは何処かを歩き回っています。

●ローザミスティカ
 監獄島の実質的な統治者。貴族殺しの大罪人。本名はベルナデッド・(データなし)30代程の美しい女。
 噂では老婆でもあり乙女でもあると言われている謎めいた淑女です。その噂の出どころもワケアリのようですが……。
 彼女に関するデータは少なく、全てが噂の範囲を出ません。
 今回は特異運命座標を『利用』しているそうです。

 勿論、ローザミスティカが満足する依頼遂行でしたらばお礼に『薔薇のコイン』を得ることができます。
 監獄島ではローザミスティカが用意した仮想通貨が存在し、『薔薇のコイン』を使用することで様々な恩恵を得られるそうです。
『薔薇のコイン』を得る事で追加報酬(gold)が増幅します。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • 惡食アリアンヌ完了
  • GM名夏あかね
  • 種別通常(悪)
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年05月30日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)
黄昏夢廸
ジェイク・夜乃(p3p001103)
『幻狼』灰色狼
極楽院 ことほぎ(p3p002087)
悪しき魔女
ジェック・アーロン(p3p004755)
冠位狙撃者
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ
メリー・フローラ・アベル(p3p007440)
虚無堕ち魔法少女
ゼファー(p3p007625)
祝福の風
フローリカ(p3p007962)
砕月の傭兵

リプレイ


 伽藍とした監獄は罪人を生かすためだけに誂えられたことの分かる質素な空間であった。監獄の構造を記憶しながら『黄昏夢廸』ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788) は「うーむ」と小さく唸る。
「うーむ。人は美味しくはないと記録しているのだが。囚人だし仕方ないか。
 所で歩き回っていることが不思議でならないのだが……狩りの演出でもさせたいのか? 何をしたいのかわからない人だなぁ」
 ランドウェラのその言葉の通り、『惡食』たるアリアンヌは狩りのつもりなのであろう。ローザミスティカを狙っているとは言うが――イレギュラーズにとて『女性』は居る。そして、狭い監獄島だ、イレギュラーズの来訪をアリアンヌが知らぬ筈もない。
 金の力で解決すべく『取引』をする様子をローザミスティカは見て見ぬふりをしていた。『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073) はアリアンヌの情報を得るべく『薔薇のコイン』を手に監獄島の内部の調査と――そして、アリアンヌの発見へと進み出す。
「さて、調査をしましょうか。アリアンヌが何処にいるか、対価も用意したので、話はしやすいでしょう」
「そうね」
 頷いたゼファー(p3p007625)は看守室の中で肖像の如く美しい笑みを浮かべていたローザミスティカの事が気にかかる。
「過去に何が有って、此処に何が在るのか、そりゃあもう、気になるとこですけど……ま、深くは詮索しないわよ」
 依頼人の秘密に踏み込まないことは自身の身を護る事と同義だ。特に、相手が『ワケありなワルい女』であるならば気を付けておくには越したことはない。
「長く楽しく旅をする秘訣ですものめ。其の依頼人がワルい女の時は尚更ね?」
「ああ。私にはフィッツバルディがどうだとか、ローザミスティカの思惑が何だとかはわからない。
 依頼人の事情も『仕事』以上は噛まない。金を貰ったから仕事をする。傭兵なんてそんなものだ」
『死線の一閃』フローリカ(p3p007962)はさらりと言葉を返した。光の刃を発するハルバードを握りしめ、歩むたびにかつりかつりと音立てる石の道を歩み往く。
「成程、初めて来たけど此れはデートスポットにするには向いてなさそうだわ」
 冗談めかしたゼファーの声に、牢の中から囚人が「ローザミスティカとならお誂え向きだ」と揶揄うように返してきた。

 ――ローザミスティカ。
 悩ましい美貌のその人は、掴み所も無く謎めいている。興味深い女だと『『幻狼』灰色狼』ジェイク・太刀川(p3p001103)はまじまじと見遣った。
「そんなに熱烈に見つめちゃって、まあ」
「興味深いと思っただけだ。……腹の底を覗いてみたいと思いたくなる。
 言っておくが恋愛対象とかそういうのじゃねえ。どんな人生を歩んだら、そうなるのか――それが興味深いってだけさ」
 そう言ったジェイクにローザミスティカは笑う。興味こそが彼女を守るという尤もらしい理由になるのだから好奇心というのは侮れない。
「ローザミスティカ。よーやくのお目通りで嬉しいぜ。ちったァローレットも信用されてきたみてーだなァ」
 にいと笑った『瓦礫の魔女』極楽院 ことほぎ(p3p002087)にローザミスティカはからからと笑った。ことほぎは明るく、そして、誰が相手であれども素直そのものだ。
「金払いの良い依頼人は大歓迎だ。これからもどーぞよろしくお願いしますってな!」
「素直な子は嫌いじゃァないよ」
 ローザミスティカのその言葉を聞きながら『躾のなってないワガママ娘』メリー・フローラ・アベル(p3p007440)は茫とローザミスティカを眺めた。これは、ローザミスティカの頼みでもあるが、それ以上にフィッツバルディ公の直々の頼みでもある。
(これは、あのとっつきにくそうなレイガルテの歓心を買うチャンスだわ。
 わたしは三巨頭の内で最も利用価値が高いのはレイガルテで、最も取り入るのが難しいのも彼だと見ているから、恩は売れるだけ売っておかないとね)
 ローザミスティカの蠱惑的な笑みを眺めながら『スナイパー』ジェック(p3p004755)は「ローザミスティカ」と呼びかけた。呼び辛いと感じたのはその通り名が彼女の名ではないからだろう――ジェックがスナイパーと呼ばれていると同様のその状況だ。
「看守室は通常ホカの出入口は?」
「ないよ」
 さら、と返したローザミスティカにジェックは頷いた。惡食の囚人アリアンヌ。それは粧い美しい女を演じるのだという。
「オンナが嫌い、ネェ。性別を偽れるホド自分を綺麗に着カザれるのは一種の才能ダ。
 だから、マァ……いいんじゃない。ベツに」
 それが罪なのではない。人を喰らうことと――そして、『この島の王』に歯向かうのが罪なのだから。


 牢獄に居る者に寛治が賄賂として渡したのはローザミスティカがこの島で独自の通貨として流通させているコインであった。
「さて、アリアンヌという囚人の牢についてご存じでしょうか」
 囚人たちから集めた情報によれば――
 まず、アリアンヌはその髪型や衣服を気分で変更するらしい。まるで、看守の様な素振りで愛らしく振舞っている。変幻自在とまではいかないが、変装の達人とでもいう事か。
 ただ、囚人たちも『ローザミスティカに近いものを除けば』牢に入っている事が多い。女性と出会う可能性がある看守室の付近を彷徨っている事もあるらしいが……。
「感情探知で探すのは羨望や憧憬がいいかな。あまりに昏ければ他の囚人がサーチされてしまいそうだからね」
 ランドウェラの言葉に寛治はこの状況を楽しんでいるものと想定し、そうしたものの探査をしてほしいと提案した。頷くランドウェラの傍らで、囚人らの情報を繋ぎ合わせてちぐはぐなそれを一本筋に通るものにすべくフローリカは頭を悩ませた。
「囚人のお兄さん達。もっと身なりを綺麗にして、にこやかに笑うぐらいしてくださいな?
 そんな辛気臭い顔してちゃ、誰も寄って来ないわよぉ」
 その美貌を武器に囚人らと『他愛もないおしゃべり』をしているゼファーもある程度の情報を得た。今日はこの辺りに『女』は通っていないらしい。一癖も二癖もある囚人たちにのらりくらりと笑みを返すゼファーは音を頼りに『本来あるはずでない場所に音や空間』を確認した。
「ある意味、ローザミスティカにとっては絶対的な要塞だな、此処は。
 罪人を逃がさないために建物は構造を見るにしっかりしている。内部にこうした『反乱分子』がなければ過ごしやすい城みたいなものだろう」
 フローリカの言葉に罪人は「違いない」と大きく笑う。その言葉にゼファーは「その心は?」と小さく笑う。
「そりゃ、此処は大罪人が流れる場所だ。ローザミスティカは貴族殺しの大罪人だろ?
 処刑されずこの島の塔に幽閉されて一生を終えるってんなら、お国も罪人の逃がさぬためにこの塔をきれいに保ち守るって事さ」
「へえ……それは、良い暮らしだね」
 さらりと返したフローリカ。ふと、服の裾を啄む鼠に気付き顔を上げた時――目の前には鼻歌を混じらせて歩む『美女』が存在した。そこから感じられる感情は何処までも楽し気な愉悦。ランドウェラが頷けば、一行は姿をそっと、柱の陰に隠した。


 ジェイクが放ったのは『先行し状況を確認する』ファミリアーの小さな鼠であった。ローザミスティカの護衛役として看守室で彼女と『他愛もないお話』を楽しむ時間はもう、過ぎ去ったか。
 二度鳴いたその声はメリーの小鳥を中継し護衛班へと連絡を寄越す。相手はどうやら『散歩』の気分で監獄内を闊歩していたようだ。アリアンヌは男だらけの牢には構うことなくハイヒールをかつりかつりとならして歩き回る。
「見つかったみたいね?」
 つい、と顔を上げたメリーの言葉にジェイクは頷く。彼女は監獄内に存在した小型の動物たちにヘルプを頼んでいた。どうやらそちらもアリアンヌの接近に気付いたのだろう。探索班が事前に見つけたのは僥倖だという様に、ローザミスティカを振り返ったメリーは「静かにしてて頂戴」と小さく告げる。
「看守室にハイられたらアタシ達のマケだ。
 ローザミスティカ、『キケン』がアッタら、スグに連絡してくれル?」
 ジェックのその言葉に赤いルージュが吊り上がる。「ええ」と和やかに返されたそれに小さく頷いた。
 看守室の前で立っていたことほぎが「おいでだぞ」とにい、と笑う。ジェックは扉を閉めて、ローザミスティカの姿が見えなければ『内部で殺されてました』なんていう下らないジョークの様なオチは避けたいと後方を振り返る。
「安心しなよ。アンタの背中だけを見ててあげるからサ」
「……ソウ? 中でマモれと言うならソウするけどネ」
 これも信頼の証だよ、とジェックへと手渡された小さなコイン。それを弾くように指先で遊ばせて、ジェックは緩く頷いた。


 幻影のローザミスティカは『本物』とは違わぬ美しさであった。金の髪に、社交界の華たるその美貌を押し気なくアリアンヌの前に晒しだす。
「ベルナデッド! やぁっと会えたわね、あたしの旧友(にくいひと)!
 嗚呼――今日も美しくって腹が立つ。その血を絞ってジュースにしたいわ。その肌を剥いで食べてしまいたいもの。内臓だって美しいんでしょう!?」
 朗々と語るアリアンヌを眺めながら幻影を作り出した主たるゼファーはそっと傍らのランドウェラを見遣る。ランドウェラは首を振って『美味しくないだろうに』と口をぱくぱくと動かした。
 見える範囲で幻惑と語り合う。その様子を見てことほぎがそっと身構える。
「金髪紅瞳、美しく着飾った淑女がたまたまこんなトコ歩いてる訳ァねーし。問答無用でイイだろ?」
 そうは言いながら、動向を見守れば――その背後よりぐん、と躍り出たフローリカの刃が光の軌跡を描いた。
「ッや――!」
「『悪食』か」
 端的にそう答えたフローリカがステップを踏む様に後退すれば、それに合わせる様にことほぎがアリアンヌの体を『探索班』の方へと押し返す。鮮烈なる光が弾く。メリーの放った神聖なる光の中で、アリアンヌが「何よ」とけたたましく叫ぶ声がする。
「あら、有難う。後でお礼は弾むわね」
 小鳥を始めとする動物たちに小さく礼を言う。迫り来るアリアンヌの足を止めさせるように、古くそして身の丈ほどの槍の穂先をアリアンヌの喉元に向けたゼファーがにい、と小さく笑った。
「どんな想いがあってそうなったのやら。其れは知らないけれど、服の趣味は最悪みたいね? ――ええ、ええ。傍から理解する気もないわよ」
 ゼファーのその言葉に憤慨したように拳のナイフが振り上げられる。それは監獄島の中で容易に得ることが出来る果物ナイフであろうか。
「何よ、どこからどう見ても美しいでしょう!? ベルナデッドがいるから、あたしが劣って見えるのね!?」
「確かにベルナデッド様はお美しいですが――人を喰らうとその美しさも陰るのでは?」
 静かにそう告げた寛治はステッキの様に傘を持ち上げる。そこより飛び出すは凶弾。アリアンヌの頬を擦れ、赤い血を溢れさせるそれに憤慨したように『彼』は寛治へと特攻しようとしゼファーに行く手を阻まれる。
「おっと、痛いのはやだなぁ――どうかこの牙に喰われておくれ」
 手をひらりとふったランドウェラ。契約を交わした妖精がひらりと空を舞う。その牙がアリアンヌに襲い往く様子を眺め、ふと、『何気ない』会話をしようとランドウェラが微笑んだ。
「ああ、そうだ。ローザミスティカとはどういう仲なんだい?教えておくれよ美しい人。
 趣味とか、好きな物とか。教えてくれたらお礼に貫きあおうじゃあないか」
「あら、良いわね。あたしの話、聞いてくれるの? ベルナデッドとあたしは社交界で出会ったのよ。
 彼女、美しくって、ええ、ええ、とっても憎らしかったわ。社交界じゃ噂だったのよ。人の生き血を絞って飲んでいるから魔的な美貌を手に入れたんじゃない? ――って」
 にこやかにそう告げるアリアンヌの声を聞いてジェックは「ウワサデショ」と小さく呟いた。
「ああ、噂だろうな。美しい女には付き物の、やっかみの混じり込んだ下らないジョークだ」
 ジェイクが吐き捨てる様に告げた言葉にアリアンヌが憤慨したように彼を振り返る。イレギュラーズたちを見て『食事』であると認識したアリアンヌにとって美男美女たるイレギュラーズは『自身が美しくなる糧』の様に見えていたのだろう。
「お前に俺達を喰らうことは出来ない。てめえが食らうのは鉛弾だけだ!」
 振り向きざま、アリアンヌの顔を目掛けて飛びこんだ凶弾が彼女の美貌を汚してゆく。

 アアアア――!

 金切り声が響き渡る。その声に、ごん、と音がしてジェックは『扉』を振り返った。
「ドウかシタ?」
「いーや、面白いもんだね。アタシを狙った奴がアンタらに倒されるのを見るのって。ゾクゾクするよ」
 けらけらと少女のように笑うその声を聞いてジェックは「ふうん」と小さく呟いた。ことほぎは手にした盾をくるりと回す。悪意をその胸に抱き、呪いの魔弾をアリアンヌへと打ち出した。
 振り下ろされたナイフがゼファーの槍とぶつかり合った。じわりじわりとアリアンヌを蝕む執拗な病。
「何の為に他者を喰らう? 誰かを羨んでどうする?」
 理解が出来ない、とフローリカは言った。自分以外の何物にも、なれる筈がないのに、噂話を真に受け続けているとでもいうのか。
「最初は、ローザミスティカになりたかったのよ。美しくねぇ。
 けど、食べれば知ってしまったのよ。この甘美なる味わいを! 美味しいのよ、人間って」
 うっとりと、そう呟くアリアンヌの声を聞き救いがないとフローリカは首を振る。
 ゼファーに向けて果物ナイフを振り下ろさんとしたその背後より輝く鮮烈な光を受けてアリアンヌががバリと振り向けば、メリーは『フィッツバルディ公を懐柔するための仕事』として彼を倒さんとしていた。そこにはアリアンヌに対する感情は何も宿っては居ない。
「……ヤレヤレ、可愛そうダケど、ダレも理解できないみたいダ」
 ジェックのその呟きに寛治は「そうでしょうね」と止むを得ないと頷いた。ジェックがぴたりと看守室の扉に背を付けたまま狙い穿てばアリアンヌの足よりヒールが飛んだ。
 跣の儘、奮闘せんとする彼の化粧は崩れ往く。そうしてみれば美しい女を粧ったその名残は何処へやら、だ。ジェイクは肩を竦めた。
「どうやら浅慮過ぎてお前の話を聞く気にもならねぇな」
 謎深きローザミスティカとは対照的だという様に放った弾丸が飛び込んだ。
 ベルナデッドという名を知れただけでも、ローザミスティカの謎を暴く一歩になるのだろうかと考えたジェイクの傍らで、ふと、思い出したようにランドウェラが笑った。
「――それと美しい人というのも冗談だ」
 倒れ往くアリアンヌ。人を喰らう事も出来ぬその肢体は見窄らしい男に過ぎない。マリーはそれを見下ろして、ため息を吐いた。

 ギィ、と音を立てて開いた看守室のドアの向こうからローザミスティカが「お疲れ」と笑っている。メリーはその様子を見て「人が死んでも顔色さえ変えないのね、罪人だからかしら」と呟いた。
「看守長だからね」
 メリーに返された言葉は嘘だらけだ。ランドウェラはそれを感じながらも口を開かず様子を見つめている。
「またいい仕事があったら言ってくれ。できれば今度はもう少し判りやすい相手だといいがな」
 獲物を手にしたまま、打ち倒れたアリアンヌを見下ろしていたフローリカはローザミスティカへと静かに告げる。
「ああ、何かありゃ、頼むよ。ローレットという良い遣いをくれたものだねぇ、フィッツバルディ公も」
 にんまりと笑んだ彼女のその言葉にフローリカは「金さえあればそれでいい」と何の感情も宿さずそう答えた。
「次回はダンスにお誘いしたいところです、ベルナデッド様」
 寛治の呼んだ言葉にローザミスティカは『ベルナデッド』と嘗て名乗っていた時の様に振舞った。妖艶な笑みを浮かべ。淑女は恭しくも首を垂れる。
「まあ……勿体ない言葉でございますわ。ええ、けれど――お待ちしておりますわよ、ローレット」
 その美しい仕草は、彼女が悪逆非道の大罪人だとは思えない。寧ろ、上流階級の教育を受けた立派な淑女ではないか。寛治はその様子に違和感を感じながら、ローザミスティカが机の上に並べたコインをそっと握りしめた。

成否

成功

MVP

新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ

状態異常

なし

あとがき

 お疲れ様でしたイレギュラーズ。
 まだまだ謎の多い女ではありますが、これからもどうぞ、監獄島で――!

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