シナリオ詳細
<鎖海に刻むヒストリア>天へと響け、魔法少女☆任務群っ
オープニング
●アバンタイトル
「そこまでです!」
きらっ、と戦場に光が差した。
具体的に表現すると、鉄帝の鋼鉄船にスポットライトが当たっている。
「……えっ」
比喩でなく山のような巨体を持つ大型魔種が、何度も目を瞬かせ、小首を傾げた。
「私達、魔法少女☆任務群っ」
中央に立つのはウサ耳でひらっひらドレスのフランシスカ・ミッターマイヤー。
メカメカしい杖にも見える魔法具は水色に煌めき、大きな力と華やかさを感じさせる。
「魔種の陰謀砕くため、絶望の海に只今参上です!!」
左右にずらりと並ぶ少女達が、一斉に華やかな――ただしあまり実用的でない構えをとる。
「……えっ?」
訳が分からない。
途中で倒れても構わないつもりで、廃滅病が進行してしまうほど全力を出して海洋の戦力を足止めしていた。
そこに現れたのがこの連中だ。
雰囲気的に若作りや男の娘が混じっているが見た目は全員少女で、装備から雰囲気まで輝いている。
「私は魔法少女☆任務群副司令、フランシスカ・ミッターマイヤー!!」
杖をくるりと回して魔種へと突きつける。
闇に染まった巨大イカと上端部から生えた海種美女の上半身の組み合わせは、なんとなく中ボスっぽい。
「鉄帝に可愛さをもたらすため、貴殿の首をとって名声にかえちゃいます!!」
フランシスカ・ミッターマイヤー(多分10代)。
鉄帝軍人としては模範的でも、魔法少女としては発展途上であった。
●前日譚
「フランシスカ・ミッターマイヤーであります」
将官級の鉄帝人が居並ぶ会議室で、フランシスカは礼儀正しく敬礼をする。
「うむ」
上座の男が答礼。
楽にするようにフランシスカへ促すが席は勧めない。
「緊急の用件だ。海洋への再遠征については知っているな」
「はい」
「貴官にはその一員として海洋に向かって貰う。資料を。この場で目を通したまえ」
秘書官が分厚い書類の束を渡す。
貴重な軍官僚が頑張ってくれたようで、最初に要約があり1分程度でおおよそを把握出来た。
「鉄帝の力を見せる貴重な機会ではあるが、海上装備は限られている」
フランシスカの目が底光りする。
ただ品行方正なだけの軍人では持ち得ない、渇望と情熱が渦巻く瞳が軍高官を見据えた。
「貴官が考案した装備の持ち出しを許可す……」
言葉が不自然に止まる。
高官は何度も瞬きをして、目を閉じて眉間を揉み、もう一度手元の書類を見て己の正気を疑った。
「魔法少女用兵装であります、閣下」
フランシスカは本気で正気だ。
「Gear Basilicaの決戦、第三次グレイス・ヌレ海戦にて記録された……」
言葉は理路整然と、そして熱情が籠もり早口に。
数倍の年齢と修羅場の経験を持つ高官達を圧倒するプレゼンを行い、魔法少女の素晴らしさを1時間語ってもまだ止まらない。
「分かった、分かったから存分にやりたまえ!!」
「10分の1も終わってません!!!」
ほぼフリーハンドを与えられたフランシスカが、警備の兵によって会議室から連れ出されていった。
- <鎖海に刻むヒストリア>天へと響け、魔法少女☆任務群っ完了
- GM名馬車猪
- 種別通常
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2020年05月21日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●
闇の終わりを告げる声が、こけー! と海に響いた。
「炎の魔法少女、焔参上!」
燃えさかる炎を背負い、『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)が槍を一振りする。
溢れる生命力と自然に滲み出る神々しさが、魔法少女という言葉に強い説得力を持たせていた。
「木漏れ日の魔法少女リディア、ただいま参上」
隣の『木漏れ日の妖精』リディア・ヴァイス・フォーマルハウト(p3p003581)は緑の気配を纏うハーモニアだ。
華奢ではあるが年齢相応に育った体は黄色いワンピース水着に包まれ、可憐さと色香の絶妙なバランスを維持している。
蒼い海を赤い魔力糸が彩る。
直前の二人より年長に見える『旅人自称者』ヘイゼル・ゴルトブーツ(p3p000149)が、しっとりとした微笑みを浮かべる。
「プロミスド・ヘイゼル。貴女を、運命が相まみえさせるのです」
朱い絲がクラーケンの足を掠める。
魔種の女の顔に、強い警戒心が滲んだ。
赤と青の光がふわりと着地する。
構えた聖剣に負けない存在感を持つのは『魔法騎士』セララ(p3p000273)。
金で縁取りされた紅のマントが海風に揺れ、小柄な体を包む魔法少女装束を観衆と魔種の視線に晒す。
狙撃銃を思わせる杖を構えるのは『魔法少女一番槍』ハイデマリー・フォン・ヴァイセンブルク(p3p000497)。
青と白の魔法少女装束、そして兎の耳のように伸びる青いリボンが凜々しくも愛らしい。
2人が速度をあわせ、それぞれの得物を巨大な魔種へと向けてぴたりと止める。
「魔法騎士セララ&マリー参上!」
「魔法騎士、セララ&マリー……惨状」
左右対称のポーズで同時に名乗る。
魔種には意識に、2人の名乗りが深く刻みつけられた。
「そして私は魔法少女をサポートする可愛い可愛いマスコット! 聖鳥トリーネよ!」
ばっさばっさと白い翼を上下させて、ちょっとふくよかなニワトリが少女達の少し上に滞空し器用にウィンクをする。
ちっちゃなトサカに飾り付けられた宝石がきらめき、『飛んだにわとり』トリーネ=セイントバード(p3p000957)の全身を神々しく彩った。
「おまえ達、いったい、一体なにを考えているのよぉっ!?」
上半身だけなら美人な魔種が絶叫した。
弱者であれば波でも起こして一掃しただろう。
華やかさふぁ欠けていれば侮蔑に籠もった笑みで浮かべただろう。
だが、鋼鉄の舞台にいるのは生き方と容姿の美しさを兼ね備えた魔法少女達だ。
薄暗い人生を送り、廃滅病で終わりを迎えようとしている魔種にとっては眩しいどころか意味不明だ。
「さあいきましょう魔法少女☆任務群の皆! 悪い奴をこらしめてあげるのよー!」
トリーネが開戦を宣言する。
後輩魔法少女5人も加わり、巨大クラーケンを下半身に持つ魔種に魔法少女達が戦いを挑むのだった。
●
「ま、無理もねぇか。俺も正直、どう反応すりゃぁいいかわからねぇ状況ではある」
穏やかな海面とは逆に、海面下40メートルには強い流れがある。
そこを力強い泳ぎで遡りながら、『濁りの蒼海』十夜 縁(p3p000099)はビルじみたクラーケンの巨体と、下部から伸びる特大触手を見上げた。
ここからは魔種の上半身は見えないが、クラーケンの仕草を見れば内心など手に取るように分かる。
幼子の頃に夢見た、名前は違ったかもしれないが輝ける存在を今になって目にしてしまい、目が眩んだのだ。
地獄を経てもなお己の足で立てる縁ほど、彼女は強くなかった。
「魔法が使えるわけでも、ましてや少女ですらねぇおっさんは裏方に回るとするぜ」
気を高め、気を絞り出す。
その上で大きく体を振ると、広がった気が膨大な水に浸透して海流を歪める。
残像が見えるほどの速度で立ち泳ぎをする触手が、徐々に強くなる渦に巻き込まれた。
「うーん! ダメダメ! ボク達が名乗ったんだからほら、キミも名乗らないと!」
上空では6つの特大触手対魔法少女の決戦が始まっている。
「戯れ言をっ」
「ザレ・ゴトー? うーん。なんだかあんまり幹部っぽい名前じゃないよね」
魔種の眉間に皺が寄り、触手の先端に開いた極小の穴から墨がレーザーの如く撃ち出された。
「よし!」
赤いマントとリボンが斜め下に伸びる。
墨ビームとそこから広がる毒墨よりも速く飛びながら、セララは魔種の上端を飛び越え剣に力を込めた。
「ボクがあだ名をつけてあげる。キミは『怪人ディープブルー』だよ。かっこいいでしょ?」
前転の形で宙で半回転。
聖剣が半円を描き、魔種の髪と触手の1本を深く切り裂いた。
「ははっ、女の子同士の戦いはいつ見ても……」
永い時を生きる『満月の緋狐』ヴォルペ(p3p007135)から見れば、セララはもちろん元海種の魔種も少女のようなものだ。
「わたしの髪ぃっ!!」
触手は20メートル近く、少しの動作でも速度は凄まじい。
高速で後退するセララにぬめる触手が実に5本も追い付くかと思われた。
「うん、これなら。……おねーさん!」
ヴォルペが優しく微笑み、自分自身の目元を指差す。
魔種は触手の操作も忘れてヴォルペを見て、次の瞬間己の目元に触れてそこに皺があるのに気付いて絶叫した。
触手が急角度を描いてヴォルペへ垂直へ振ってくる。
ヴォルペが乗る小型船ごと砕け散る威力は十分にある。
「ちょっと悪いことをしたかな」
ヴォルペは少しだけ申し訳無さそうにして、不可視の魔力障壁で5つの触手を迎撃する。
迎撃とはいっても正確に当てるだけだ。
障壁を境に小型船側には一切の影響はなく、触手の運動エネルギーの一部が触手側にのみ影響を与える。
「痛っ」
予想外の痛みに魔種が悲鳴をあげた。
「おにーさんは魔法少女お約束の守護聖獣の加護があるのさ!」
美形悪役をこなせる実力と容姿で、陽気に、大真面目に演じる。
「そうなのよー、加護が強力でごめんね?」
白い羽で嘴を隠し、トリーネがおほほと笑う。
ヴォルペに話を合わせて魔種を煽っているだけである。
「んっ、ぐっ……ならこれで沈め!!」
背中の半ばを斬られた髪を揺らめかせ、全神経を触手の操作に集中する。
予備動作が読み辛くくなり、明らかに速度と精度が増し、多数の触手が複数方向からヴォルペ1人を狙い墨ビームを放つ。
ヴォルペの体術でも全てを躱すことは出来ず、魔法の鎧に墨が付着し微細な飛沫がヴォルペの周囲を覆った。
「はは、楽しくなってきた!」
海風が墨の飛沫を散らす。
神秘の籠もった墨はヴォルペに決して小さくないダメージを与えていたけれども、それを為した魔種は口元を震わせヴォルペに凄い目を向ける。
「何故、効いていないっ」
心と体を汚染し尽くす呪いが籠もっていたのに、全く効いた様子がない。
誇りと自信の源泉でもある技を破られ、怪人ディープブルー……もとい魔種クラーケンの心が微かにひび割れた。
●
「静止、狙い、攻撃」
「はい!」
ハイデマリーの端的な指示に従い、5人の魔法少女が船の上から遠距離攻撃を仕掛ける。
【副】司令の水魔法を除けばさほど威力がないとはいえ、数を活かした攻撃は1つの触手を効率よく削る。
「魔法少女とは愛とか夢とか希望を心に宿して、戦う力を得た女の子達!」
中心近くまでえぐり取られた傷口に青い衝撃波が直撃する。
リディアの衝撃で吹き飛ばされた重傷触手が、ヴォルペにかかりきりな複数の触手を巻き込み触手勢を混乱させる。
「魔種の陰謀砕くため、あなたのこと成敗させていただきます!」
「小娘がっ」
怒る魔種が身を乗り出す。下半身のクラーケンも前のめりになる。
触手がこんがらがっているので、海種としての姿を保つ上半身だけが前に出ることになる。
がんばれー! と声が響く。
立派な木造船の上で、ケミカルライトを構えた男達が全身全霊を賭け応援していた。
「木漏れ日の……ブルーインパルス!!」
「っ」
両腕と髪を盾として魔種が防ぐ。
傷は浅く、しかし10メートル近く押されてしまい姿勢も指揮も乱され魔種が焦りと怒りで唇を噛んだ。
「焼きげそ一丁!」
焔が舷側から飛び出す。
海中から船倉に忍び寄っていた触手と接触。
水蒸気とイカ体液が混じったものと一緒に、焦げがついた巨大げそがぷかりと浮き上がる。
「どうだっ……て塩辛っ、流れ速っ」
新手の触手相手には互角以上に戦えるし、水の中でも焔の炎は消えはしない。
だけど、海は魔種とよりずっと強敵だった。
「任せて!」
こけっ、と一声残してニワトリが水面に向かう。
ホムラが伸ばした手を足でしっかりと掴み、しかし上昇する前に魔種に狙いをつけられる。
「まず1匹っ」
魔種は10の触手の大部分を攻撃に向けたつもりだった。
なのに、数本の動きが変だ。
「え」
魔種が視線を向けると、最初から別の2本が鋼鉄船の船首付近で無意味に蠢いているのが見えた。
「自分で自分の足を指揮してしまう程に『ぼっち』だとは」
3つの肉の塔の隙間を踊るように跳びながら、ヘイゼルが同情に満ちた声を切なげに漏らす。
「可哀そうなのです」
本気にしか見えず、実際に本気だからこそ魔種の心に響く。
具体的にはプライドに致命的な傷が生じてそこから制御不能な怒りが噴き出した。
こけー、と。
ニワトリとは違って全く爽やかさのない怒声が響いて肉の塔がヘイゼルを目がけて落ちてきた。
●
建造物じみた大きさの触手が海から引き抜かれた直後、縁の掌が立ち泳ぎ中の触手に芯に触れた。
傷だらけの触手に衝撃が染み込み、触手が機能を失った場合でも絶対に失ってはいけないカ所に集中する。
臓器が潰れる感触が、物理的には離れた場所にある縁の掌に届いた。
縁は全力を出して加速し海面から顔を出す。
視線を少し下に向けると、死んだ触手2本が沈んでいく最中だった。
3本目が機能を停止した今、水よりはるかに重い魔種は急速に沈みつつあった。
「魔法少女の嬢ちゃん方。こっちは準備できたぜ、そっちはどうだい?」
赤と青の魔法少女がこくりと頷いた。
天に雷雲が集まり、海面には冷え冷えとしてそれでいて清らかな冷気が集まっていく。
「こんな……所で」
魔種の女が己の拳で己の額を叩く。
直前に見た剣技に心が囚われまだ現実に戻りきれていない。
海上の触手5本から1本が海面下に引き抜かれ、万全に近かった守りに大きな穴が開いた。
雷が聖剣を通して魔法少女に力を与える。
冷気が聖銃を通して魔法少女に力を与える。
白く輝く装束が、絶望の海に2人の少女を浮かび上がらせる。
「ギガセララ」
「ヘクセンナハトッ」
雷の剣戟と氷の銃弾が魔種の顔面に向かう。
直撃すれば触手が無事でも頭脳を失い即死する。
魔種は他への防御が薄くなる危険を承知の上で、3本の触手を防御にまわし……激痛で悲鳴をあげた。
感電死した触手と、芯まで凍って即死した触手が、魔種にとっての致命的な重りとなった。
「いけー、そこよー! せーの、マジカル・5連アタック!!」
トリーネの応援を受け、任務群の5人が魔力を絞り出す。
燃費が最悪の者もトリーネにより魔力を補給されたので、命を削らなくても後1度だけなら魔法を使える。
イレギュラーズと比べれば拙い、しかし気合いだけは匹敵する5つの力が、互いの持ち味を殺さず1カ所に集まり至近の触手に叩き付けられる。
半ばで弾けて、残った半分が海面でのたうった。
「舐めるなぁ!!」
触手が一斉に墨を吐く。
怒りと生命の危機で廃滅病が進行。墨の効果が跳ね上がり戦場全体を包み込む。
これまで墨の大部分を引き受けてきたヴォルペが、激しい虚脱感に襲われ膝をついた。
「みなさん、もう少しです!」
リディアの癒やしの力がステージを覆う。
複数の呪いに苛まれていた後輩魔法少女達が持ち直す。
「まだまだー! 魔法少女の力、あの悪の女幹部に見せつけてやるのよー!」
トリーネの召喚したひよこがバックダンサー如くステージを彩る。
絶望は今日で終わりとばかりに、トリーネがこけこけ鳴いて魔法少女達から傷を消していく。
こっけこっけ。
ぴっよぴっよ♪
こーけぴーよぴー♪
それはまさしく、夜明けを告げる聖鳥の声であった。
「本当に可哀想なのです」
ヘイゼルはステージを背に庇い、無数の赤い糸を展開しながらわざとらしく悲しげな表情をつくる。
仲間同士支え合い、先輩に守られ、聖鳥に祝福される後輩魔法少女と違って魔種はただ1人。
「せめてもで赤い糸の縁を結んであげるのですよ」
演技は終わっているのに、ヘイゼルの内心を読み取れない。
魔種はヘイゼルが見た目とは異なることにようやく気付き、僅かに感じ取れた本性に戦慄する。
だが折れはしない。
自身の望む終わりを掴むため、数は減っても威力は開戦時と変わらない巨大触手を鋼鉄船へと向ける。
「これで全部」
全ての触手に糸を繋ぎ終えたヘイゼルが、言霊を介して味方の治療を行う。
マタドールめいた回避盾をする彼女の横を、燃えさかる炎が駆け抜けた。
「からっからだ!」
かつてあらゆるものを焼き尽くす神の炎だった焔は、生命力が磨り減ったクラーケンをそう表現した。
神槍カグツチ天火を海面と水兵に構える。
霊的にも物理的にも膨大な熱が、魔種から薄く広がる闇を退け上昇気流を発生させた。
墨と病の気配が増す。
焔の抵抗力ですら完璧に防ぐことは出来ない。
「焼きイカにしちゃうよ!」
だがその程度で焔が止まることはない。
炎と化した髪が焔の勇姿を強調し、眩く輝く神槍が魔種の触手を怯えさせる。
「たぁっ!」
槍が水平の半円を描く。
巨大な肉塊は膨大な生命力で即死は免れ、しかし熱には抗しきれずに内側から燃え上がる。
「土の魔法少女ちゃんは船倉で守ってもらいなさい。フランシスカちゃん! あんなへんてこな姿でも大幹部なんだから油断しちゃ駄目よ!」
ばっさばっさと羽を動かすトリーネは、テンションは高くても声は落ち着いている。
イレギュラーズほど修羅場を経験していない面々にとって、先輩魔法少女の背中と同レベルの道標だ。
「大丈夫、皆を信じて力を合わせたらきっと勝てるわ!」
「はい!」
水系魔法少女フランシスカも、魔力が尽き銃器を構えた魔法少女達も、強大な魔種を相手にしても戦意を維持している。
「私を、私は、こんなところでぇっ!!」
2本の触手が海から引き抜かれる。
浮力が足りなくなった巨体が急速に沈み始める。
「……今ほど海種でよかったと思ったことはねぇな」
若者達の戦いを海面越しに一瞥し、縁が優しく笑う。
無意識に首の痣に触れる。
1本だけで本体を支えようとする触手に、自然体のまま渾身の一撃を叩き込んだ。
「ぁ」
10メートル近く一気に沈没した魔種が、慌てて触手を水面下に戻そうとした。
「魔法少女の実力を目に焼き付けて、海の藻屑となってください!」
リディアの衝撃波が海面近くの触手を上空へ跳ね上げる。
内側から燃え上がるそれに、跳躍した焔が上から下へと切り裂き止めを刺す。
「魔法少女☆任務群、撃てぇ!!」
弾幕と水魔法が別の燃える触手の一点に集中。
炎がさらに拡大して、根元まで到達する。
そして。
赤と青の魔法少女の白い一撃が、触手のほとんどを失い無防備なクラーケンに、深く深く突き刺さった。
「アル……」
沈んでいく。
魔種の口に海水が流れ込み、何も言い残せず海底へ落ちていく。
圧壊音が聞こえるまで、さほど時間はかからなかった。
●
「潮でべとべと」
水着がじっとり湿って肌に張り付いていることに気付いて、リディアは苦笑を浮かべ安堵の息を吐く。
全員、無事だ。
「みんな無理しちゃ駄目よ。船員の皆さんもお疲れ様。怪我した人は集まってー」
トリーネはマスコット用アイテムを身につけたまま、徐々に回復していく力を使い負傷者の治療にあたる。
「ミッターマイヤーッ!」
「は」
水系魔法少女が綺麗な敬礼をハイデマリーに向ける。
「あの口上は何でありますか。鉄帝任務でやったらどうしようもないであります」
「はい、先輩方と比べるとあまりに拙い言動でありました。反省しております」
しょぼんとした犬耳と尻尾が幻視出来る程、反省していた。
「はしゃぐのもいいでありますが鉄帝軍人である事を忘れることなかれ」
いいですねと念を押してから、ハイデマリーは旧知の友に対する態度に切り替えた。
「もっと派手にいこうよ!」
「焔さんの身体能力を基準に考えないでくださいっ。そこは飛ばすにこう……」
普通の髪に戻った焔と後輩魔法少女が、熱心に集合シーンのポーズを議論している。
「そもそも魔法少女ってのは、一体全体何なんだい?」
聞くのは野暮かとも思ったが、現実に部隊として存在するなら聞いておくべきだと縁は判断した。戦闘中に解釈違いで無駄に揉めるのは馬鹿らしいし。
フランシスカはどの側面から説明しようかと数秒考え、最終的に本音だけを口にする。
「光です」
迷いのない目を見て、縁は頑張れよと一言言って周囲の警戒に戻った。
「今回だけの部隊みたいですし上層部も特に気にも留めないでありましょう。……ないでありますよね?」
ハイデマリーはまだ知らない。
セララがギフトで出力した漫画が複製され流通することも、魔法少女に鉄帝のイメージアップデートという可能性を見いだした者がいることも。
いずれにしても、未来はまだ未定である。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
(ケミカルライトを全力で振っている)
GMコメント
魔法少女依頼です。
わるい魔種をやっつけよう!
●もくてき
魔種をたおせ!
●すてーじ
絶望の海の中では穏やかな海域です。
中心にすごく大きなイカ魔種がいて、魔法少女の挑戦を待っています。
鉄帝船『魔法少女号』と海洋船『魔法少女2世号』が参戦します。
●えねみー
『女幹部(仮)』
魔種の上端部分です。
闇を広げて広範囲に命中を下げる非ダメージBS攻撃をしたり、10本の足を指揮したりします。
魔種アルバニアに対する情念があったりなかったりしますが今は魔法少女という存在に混乱中です。
頑丈で防御巧者。防御に力を入れているときは指揮出来ません。
『くらーけん(巨大イカ)』
魔種の上端部以外です。
本体全高20メートル、幅13メートル。足18メートル。超絶生命力。
10本の巨大足がそこそこ高速で攻撃【物遠貫】【飛】したり、足の先端から墨を吐いたり【神近範】【BS多数】します。
泳ぐのを止めると生きていけない深さまで海に沈んでしまうので、移動しない場合でも最低3本は泳ぎに使っています。
10本とも自立行動しますが、『女幹部』の指揮を受けていないときは命中も回避も低いです。
●なかま
『フランシスカ・ミッターマイヤー』
水系魔法少女。
攻防に隙の無い強力な使い手です。
テンションが上がりすぎて注意が足りなくなっています。
『魔法少女』×4
フランシスカの同志と協力者です。
テンションが上がって魔力が上昇していますが、付け焼き刃の魔法少女なので射程が短かったり命中が低かったりします。
先輩魔法少女(イレギュラーズ)の指示がない場合は、船の防衛を優先します。
『水兵』×2隻分
魔法少女の協力者です。
船長もいます。船乗りとしては高レベルですが、戦闘力は低めです。
この依頼における主な役割は、照明機材操作とケミカルライトを使った応援。魔法少女のテンションが上がります。
●ほか
『魔法少女号』
正式な名前は別にあった気がします。
第三次グレイス・ヌレ海戦で破壊された砲がまだ修理されていない鋼鉄船です。
装甲はアップデートされたので非常に頑丈です。
魔法少女集合シーン用の舞台が、甲板に設置されています。
『魔法少女2世号』
正式な名前が別にあった気がするような。
各種照明機材完備。ケミカルライトの在庫も十分です。
『魔法少女☆任務群』
フランシスカが指揮する臨時の連合部隊です。
今回の戦闘終了後に解体されます。
司令官の席は、現在誰も座っていません。
『魔法少女』
アイドル性も重要です。多分。
プレイングで指定がない場合、イレギュラーズは魔法少女扱いされることも(性別年齢不問)。
もちろん、積極的に魔法少女をするのも大歓迎!
助っ人ヒーロー、お供の精霊や妖精もいいですよね。
●情報精度
このシナリオの情報精度はCだよ!
魔法少女依頼だから、不思議なこともあるよね!!
●重要な備考
<鎖海に刻むヒストリア>ではイレギュラーズが『廃滅病』に罹患する場合があります。
『廃滅病』を発症した場合、キャラクターが『死兆』状態となる場合がありますのでご注意下さい。
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