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シナリオ詳細

水底の恋心

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●深い深い海の底
 ──それはとある深い海の世界。
 それは愛の光すら届かない闇の海が無限に広がる場所。陸という概念がない水がその世界の全て。
 そんな闇の海が更に黒く染ったのはつい最近の事。

「サブマリン……あの女は何故私ではダメなんだ……」
 それは深海の皇帝イポヴリキオンの失恋。
 彼は傲慢で強欲な皇帝……その出会いを果たすまで酒と女と賭け事に夢中のだらしの無い皇帝で、政治になど見向きもしない歴代最悪の皇帝とまで密やかに囁かれていた。
 そんな皇帝が、だ。周りの女性や酒にも見向きもせずに、城の外を見ては憂鬱げにため息をついているのだ。いつも賭け事をもちかけるディーラーにすら耳を貸さない。
「こ、皇帝陛下、その……サブマリン様とはどのようなお方で……?」
「サブマリンは……城下町で見かけたただの美しい娘だ。あの様子だと平民と言ったところだろうな……皇帝に対する私への口の利き方はなっていないが、そこもまたいい」
 使用人の何気ない質問にすんなりと答える皇帝イポヴリキオン。この光景ですら異例中の異例だった。
「……こ、これは皇帝が何かお変わりになるかもしれない……! 探せ! サブマリンと言う名の女性を探すのだ!」
 そのやり取りを見ていた大臣が、大慌てで手が空いてる兵士を集めだした。

 ──その一方で
「はぁ……今日も何とかなりそうかな……」
 皇帝が口にしたサブマリンと言う名の女性は、漸く空にしてこれた花籠を家のテーブルに置いた。
「今日も私は人の良心で生きている。心苦しいけど……生かしてもらえるだけ有難い事ね……」
 それは空に出来た花籠を見つめながら。
 サブマリンは皇帝の言う通り平民……しかし両親を早くに亡くして貧民へと追い込まれた少女だった。
「今日のお客さん……って言っていいのかな。皇帝陛下のそっくりさんを見かけたな……私みたいなのが本物と会えるわけないけど……ああいう感じの方なのかな……」
 豪華なマントに艶やかな黒い長髪、そして翡翠のような緑がかった青い眼……とても美しい男性だった。……けれど。
「今は生きるのに精一杯、恋なんてしてる余裕ないよ……。……けどお断りする為とは言え、乱暴な言葉だったかな……」
 サブマリンは酷く驚いた様子の男性の顔を思い出す。その後は逃げて来たから覚えてないけど。

 そうサブマリンがまたため息をつこうとしていたその時
──ドンドンドンドンッ
「へ?!」
「サブマリン! サブマリン・マーレ! 王国大臣オセアンの命により、直ちに城へ!!」
「え、お城?!」
 サブマリンは突然の訪問者に目を見開いて驚いた。




「今回は海の世界の恋物語への案内になるね」
 『ホライゾンシーカー』カストル・ジェミニはそう君達に告げる。
「これまで怠惰だった深海の皇帝が一人の女性に恋をする……なんて、恋物語にはよくある話だけど……少女もこの皇帝の評判を知ってるみたいだから素直に頷かないみたいだ」
 更に付け加えれば大臣の命令で半ば拉致のような形で城に招待されている。皇帝が直接命令していないとは言え、少女からの皇帝の印象はあまり思わしくないと言う。
「そこで特異運命座標の皆にして欲しいのは皇帝陛下の相談相手になって貰う事だと思う。皇帝陛下はこれまで適当に恋愛していたみたいだから、少女にどう接すればいいか昔から馴染みのある親友と同じくする使用人に教えを乞うみたいだから、君達はその使用人として動いてもらう事になる」
 例えば皇帝の態度を改めて誠実に、例えば自分はこんな風に接すると自分の恋愛話を……少し無礼な態度でも許せる程の仲のようで大丈夫だとは思うがやり過ぎには注意を。

「さぁ、二人の恋を応援してあげて!」
 その恋が叶うのは二人次第だけれど、カストルはそう呟きつつ特異運命座標の皆を送り出した。

NMコメント

 月熾です!
 今回は恋物語の応援を書いてみました。
 よろしくお願いします!

●依頼内容
 深海皇帝イポヴリキオンの思いを伝えさせる
※その恋の結末については成功失敗に左右されません。

●詳細
 特異運命座標の皆さんはイポヴリキオンの恋の相談相手になって下さい。
 皇帝はその使用人自分の事を語るでも、皇帝のここを治した方がいいでも、一先ずはどんな事でも聞き入れてくれるでしょう。
 但し行き過ぎた指摘は元々は傲慢で強欲な皇帝です、逆鱗に触れないとは限らないので程々に。


●世界観
 深海特異点『アトランティカ』
 世界の全てが『海中』となり、人魚と海中生物が平和に暮らす世界。
 皇帝の機嫌次第で海の色まで変わってしまう。

・深海皇帝イポヴリキオン
 黒い長髪と翡翠の眼を持つ褐色肌のウツボの人魚。ワイルド系の見た目で元々女性や酒、賭け事にはだらしが無かったが、サブマリンとの出会いで一切が手につかなくなっている。
 元々の傲慢で強欲な性格が染み付き過ぎていて、乱暴な言葉ばかりが出る不器用。

・平民サブマリン・マーレ
 海花売りを主な生業としており、早くに両親を亡くし働き始めた事から恋愛は諦めてきた少女。皇帝に見初められたと言われても皇帝が故にまだ実感が湧いていない。

●サンプルプレイング
皇帝はあれだよ、そう、傲慢な態度を何とかしなきゃ!
惚れてるのはこっちなんでしょ?ならさ、誠実に……ゆっくり気持ちを伝えなきゃと思うんだよね。
女の子は大切に扱うんやで!って俺のジーちゃんも言ってた!たぶん!

それではご参加、お待ちしております。

  • 水底の恋心完了
  • NM名月熾
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年05月03日 22時10分
  • 参加人数4/4人
  • 相談4日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

リウィルディア=エスカ=ノルン(p3p006761)
叡智の娘
ソア(p3p007025)
無尽虎爪
メリー・フローラ・アベル(p3p007440)
虚無堕ち魔法少女
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
戦輝刃

リプレイ

●作戦会議
「よく集まってくれたな」
 皇帝イポヴリキオンは四人の使用人……もとい特異運命座標をそう静かに自室へ招き入れた。

(さて……傲慢で強欲な皇帝に告白させる。まともな言葉が出るかが問題だから。そうだね……正面から皇帝を崩していては地雷を踏みそうだ)
 冷静にそう分析するのは『銀蒼討』リウィルディア=エスカ=ノルン(p3p006761)。
(人間の恋なんてもの、ボクの方が分からない! けれどとっても興味があるよ! 恋や愛を知れたらもっと人間に近づけるって思えるから!)
 『雷虎』ソア(p3p007025)はそう興味津々な様子で。
(大事なのは相手の気持ちじゃなくて自分の気持ちだと思うの。自分が相手をどうしたいかが全てであって、それを相手がどう思うかなんてどうだっていいじゃない)
 ここにいる誰よりも皇帝の考え方に近いと思われる『純然たる邪悪』メリー・フローラ・アベル(p3p007440)はフフンと悪い笑みを浮かべて。
(皇帝が平民に恋を、か……駄目だな、父と母さんを思い出す。母さんは不幸では無いと笑っていたが、苦労はしていた……父を恨むなとも。……俺に出来るのは自分の経験から少しでも良い方向に向く様に力を貸すだけか)
 この中で唯一の男性である『特異運命座標』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)は自身の経験から真剣な様子で。

 特異運命座標がそれぞれの思いを抱きながら、作戦会議が今開かれる。




「『幸い』サブマリンは裕福ではないみたいだから、彼女を皇帝のしたいようにさせてくれたらお金を援助してあげるって言えばどうにでもできるわよ。皇帝と一緒になれば一生お金に困らないって気づけば、少なくとも愛するフリぐらいはしてくれるんじゃない?」
 拒絶されたら? 牢屋に入れて従うまで鞭で打てば? そんなメリーの言葉に他の特異運命座標は凍りつく。
「メ、メリーちゃん? それは……」
「……こう言うのだって意見の一つでしょ? ……ただまぁ、愛するフリをされそうだとか……サブマリンの心を得るとは限らないけどね」
 リウィルディアの慌てようにメリーは渋々と言った様子でそう訂正する。メリーの意見は確かに一つの意見であり、皇帝の考え方に最も近しいところがある。
 だからこそ酷く危うくもある。

「そうだね、それでは彼女の心は動かない。仮初の心を得るだけだろう。しかしそれも陛下が平民の彼女に対してどう思って欲しいかによります。……陛下は彼女が居るだけでいいのか、それとも心も欲しいのか……どうでしょうか?」
 メリーの言葉を汲み取りつつも真剣な眼差しでベネディクトがそう問うと、静かに聞いていたイポヴリキオンは口を開く。
「……そうだな……私はこれまでたくさんの女と夜伽を共にしメリーが言う事も一瞬頭を過った。……だがサブマリンは、違った。彼女の恐怖で歪む表情を想像すると、胸が苦しい。……こんな経験は初めてなんだ、だからお前達にこうして集まってもらってきる」
 サブマリンは美しい女性だが、彼女より魅力的な女はこれまで何人もいた。けれど幾度も夜を共にしたその女達よりも、彼は心の底から惹かれている。その姿はワイルドな見た目に反して、初恋に戸惑う青少年のそれそのものなのだ。

「イポヴリキオンさんがそう思えるようになったのは大きな進歩だね! けど先ずは想いを伝える前に自分の事を振り返る事から始めてみるとかどうかな?」
 例えば……これまで皆にどういう風に見られていたのか、自分ではどういうふうに思ってる? だらしなかったり、恐かったりしてなーい? そんな人から急に好きって言われても逃げられたリしちゃわない?
「自分はもうそんなじゃないって伝えられたら、初めてお話をちゃんと聞いてもらえるようになると思うの。大丈夫? 変われる? ボクは出来るって思うよ! ボクだってうんとうんと大昔は今と全然違ったもの!」
 ソアからの問いにイポヴリキオンはううんと唸る。
 正直な話、イポヴリキオンは他人からの評価を気にした事がなかった。逆らう者がいればその力でずっとねじ伏せてきたのだから。……けれど、それがもしも良くない事であるならば、確かに正さなければいけないのだ。

「皇帝。君は今瀬戸際に立っているようなものだ。場合によっては進退、とまでは言わなくともまぁ世界に関わりもするんだろう。だからそれなりに真剣に聞いてほしい」
「……ああ聞こう、リウィルディア」
 真剣な様子のリウィルディアにイポヴリキオンは静かに言葉を待つ。
「……君が見初めた女性。たしかサブマリン・マーレと言ったね。彼女は君に対して当然ながら俗世で伝え聞く程度のことしか知らない。……まあそれも君の知るところではないのかもしれないが、あまり良い傾向にあるとは言えないだろうね」
 だからまずは言葉遣いから注意していこうか。粗野な言動は相手にいい印象を与えはしない。行動次第ではあるけど、それでも耳から聞こえてくるものは印象に強く作用するものだ。乱暴な言葉は控える。それだけで少し良くなるさ。
 リウィルディアの言葉は普段の皇帝陛下なら打首物に等しいが、それも正論だからこそ。
 そして今の彼はそんな言葉をちゃんと正論だと頷き受け止められるぐらいには、心の変化を灯しているらしい。


「さぁさぁ次に態度だ。この場合言葉遣いが改善されたとしても君の表情や姿勢によってはまた逆戻りだってあり得る。つまりそうなれば詰みだ。言葉遣いが直ってもすべて水の泡。そうならないよう、顔は引き締める。指導者としての威厳を蓄えて、そこに少しの慈愛かな。皇帝とは大いなる者。しかしそれだけでは相手を委縮させるだけ。そこに皇帝の、世界の父であるという器の大きさを見せることが肝要だと、僕は進言しよう」
「世界の父たる器の大きさ……か、ふむ。」
 リウィルディアの強い言葉を素直に聞きいれている分、彼女への思いは本物なのだと特異運命座標は察する事が出来る。
「しかし私は人に優しくしたことも慈しみわ持ったことも無い……それは私が、皇帝がそんなことをせずとも皆が勝手に動いたからだ。だがサブマリンはそれらを持って接さなければならないのだろう……ならば優しさとはなんだ? 慈しみとはなんだ?」
「それはボクが見てる限り、もうイポヴリキオンさんの中にあると思うな」
 イポヴリキオンの問いにそう柔らかく答えたのはソア。
「だってだって、サブマリンさんの為にこんなに考えてるんだよ? これも優しいとか、慈しみなんじゃないかな?」
「誰かの為に考える心……どうしたらいいかと私達に尋ね、サブマリンさんを傷つけたくないと思う心……それがきっと優しさ、慈しみだと……私も思うよ」
「ふむ……」
 ソアの言葉の後にリウィルディアもそう続けると、イポヴリキオンは考えるような仕草を見せる。
 これまで使用人を、民を乱暴に振る舞い、女や酒、賭け事に溺れてきた日々。それはきっとこれからも変わらないものだと思っていた。だと言うのにあの美しい眼を見ただけで、声を聞いただけで……それら全てに手がつかなくなる。
 それはイポヴリキオンにとっても戸惑い隠せないもので、けれどこれまで無理矢理穴を埋めていた感覚よりも大きく違う。
 無理矢理に彼女の心を奪いたくない……どうしたらいいのだと悩む心……これは紛れもなく『優しさ』と『慈しみ』なのだ。


「皇帝陛下、彼女は平民です。ともなれば、我々と常識が変わってきます。貴方は民の上に立つべき方として、これまで学び、彼女は平民として暮らす為の術を学んで来ているのですから」
ですので、落ち込むのはまだ早いかと存じます、使用人唯一の男性であるベネディクトはそれに続けて
「そして皇帝陛下、あなたはこの国の皇帝です。大凡、望めば殆どの物が手に入るでしょう。ですが、人の心はそうとは限りません。メリーの言葉の通り金銭で動く者もおります。ですが、真に彼女に傍に居て欲しいと貴方が願うなら──陛下、あなたの言葉で、心で彼女を動かす必要があります」
 それはベネディクトが聞いてきた見てきた過去が、イポヴリキオンの未来でも有り得るもの故。皇帝と平民の恋がどれだけの苦難が待っている事を知っている彼だからこその言葉。
「……陛下、私は陛下にも当然幸せになって頂きたいですが、そのお相手にも幸せになって頂きたいのです。諫言だとお怒りになられるのなら、私の首の一つ程度であれば差し上げましょう。ですから、どうか──」
 どうか、彼女に歩み寄り、彼女を少しでも理解して差し上げてください。我々も、そのお手伝いであれば喜んで致しますから。ベネディクトは真に迫る勢いでイポヴリキオンへそう語りかける。
「……私は堕落屋だが馬鹿ではない。だから、ベネディクトの言葉の意味は理解したつもりだ。……ならばそうだな、『紳士たる態度』で『慈しみ』を持って……努力しよう。……彼女が、サブマリンの心が……欲しいのだから」
 そこにはもう『傲慢で強欲な皇帝』はいなかった。


 一方連れてこられたサブマリンは化粧と衣装を施され、応接室に案内されていた。
「あの人、本当に皇帝様だったのかな……」
 失礼な事をしてしまったから打首になってしまうのかな……と不安に思っていると、この部屋の扉が静かに開いた。
「サブマリン……」
「イポヴリキオン陛下……っ、あ、あのっ! 先程はご無礼を……っ」
「いいのだ、いいのだサブマリン……これは罰ではない。それに……勝手に連れてきてしまいすまなかった」
「へ?」
 話で聞いていた皇帝とは思えぬ程の態度で接され、サブマリンは驚き目を見開く。
「……まずは話をしたい、おま……んん、君の事を、サブマリンの事を知りたいんだ」
「陛下……」

 ──水底の恋心
 それは不器用な皇帝と純な平民の恋。
 結末がどうなったかは……蒼に染まる海だけが知っている。

成否

成功

状態異常

なし

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