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シナリオ詳細

<Breaking Blue>病と怨念に侵されて

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ネオフロンティア海洋王国において発せられた海洋王国大号令。
 絶望の青に挑む王国軍とローレット勢だが、局地的嵐に狂王種(ブルータイラント)、魔種に廃滅病(アルバニア・シンドローム)と航行は困難を極める。

 アクエリアと呼称する島を足掛かりとし、絶望の青後半の海に挑む一行。
 アルバニアによる廃滅の呪いに侵される者もいる中、新天地(ネオ・フロンティア)を目指しつつ、戦線へのアルバニアの引きずり出しをはかっていく。


 海洋、アクエリア島。
 そこは、現状の絶望の青攻略における中継地点だ。
 後半の海へと向かう前に、イレギュラーズ達は一度ここに立ち寄り、状況を再確認することとなる。
 今回の参戦メンバーは、アクエリアへと立ち寄っていた『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)から情報を聞いていた。
 廃滅病という病気は死に至らしめる病として知られるが、どうやらそれだけではないらしい。
「絶望の青に浮かぶ怨念……病に侵された人に憑りついて、怪物化させてしまうそうです」
 幸い、特別な加護を受けているイレギュラーズは怪物化しないようだが、今回そういった形で怪物となった存在……変異種の討伐依頼が海洋王国軍から出ている。
 軍もその変異種の討伐をと乗り出そうとしたそうだが、そいつは怨念『棺牢(コフィン・ゲージ)』を引き連れており、迂闊に近付くことができないのだそうだ。
「海洋王国軍も廃滅病に侵されている人は少なくありません」
 怨念に憑りつかれれば兵を失うだけでなく、逆に変異種となって壊滅的なダメージを及ぼしてくる危険も大きい。
 この為、特別な加護に守られたイレギュラーズ達に討伐を願いたいとのことだ。

 その変異種は蒼い肌をした元人間だ。
 名前は不詳だが、下半身は触手となりはて、2つの触腕を持っている。触腕はイカなどにある先端が吸盤となった触手のこと。
 そいつはすでに水中に適応した体となっており、海中から襲ってくる。
 怨念と共に現れるそいつは知性を失くしかけており、本能のままに暴れ回って船を沈めようとしてくる。
「水中では相手の方が上手ですので、甲板に上がるのを待って倒すのが得策かと思います」
 船の破壊よりは、本能的に自営も含めて邪魔するイレギュラーズ達の討伐を優先するはずだ。
 後は引きつけつつ討伐できればいいが、中型船の甲板での戦いとなるので、基本的には至近から中距離で相手をすることになる。
 それ以上の距離で攻撃をしたいのであれば、飛行するか水中行動できるスキルを用意したい。
 もっとも、先に説明した通り、水中での戦いは相手の方が上手なのでお勧めしないが……。

 また、海は時化ている状況だ。天候こそ曇天といった状況だが、薄暗い中での戦いとなる為、敵の接近には気づきづらい。
「雨は降っていませんので、甲板が滑るといったことはないかと思います」
 また、新たに廃滅病へと罹患してしまう可能性もある為、それを留意した上で参加したい。
「非常に危険な状況です。くれぐれもご注意を」
 アクアベルはイレギュラーズ達の身を案じながらも、メンバー達の出港を見送るのである。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様、こんにちは。なちゅいです。
 絶望の青後半の海にて、皆様の船を強襲してくる変異種がいるようですので、その撃破を願います。

●敵
○変異種×1体
 怪物化仕掛けた元人間。人間だった時の名前などの情報は不詳です。
 下半身は無数の触手となり、破れかけの服を纏う上半身も水色の肌となり、怪物化が進行している状況です。
 かろうじて人語を操る知性を残していますが、それも薄れかけているようです。
 怨念を操りつつ、こちらの動きを止め、生気を奪う攻撃を得意とします。
 海中での行動は海種などでもなければ相手の方が上手の為、できる限り甲板上で倒したい相手です。

○怨念『棺牢(コフィン・ゲージ)』×3体
 海を彷徨う怨念です。
 廃滅病に侵された者に対して憑依すべく、その前に撃破したい相手です。
 呪縛弾、ドレインタッチ、怨嗟の声といった神秘攻撃を得意としています。
 なお、イレギュラーズは特別な加護を受けており、変異種化することはありません。

●状況
 大荒れとなった海から突然、変異種が船の甲板へと這い上がってきます。
 そのまま甲板での戦いとなりますが、中型船は全長25m程度なので、飛行、水中行動などの手段がなければ遠、超遠距離の攻撃はできません。

 また、今回は怨念が襲ってくるという情報の為、海洋王国軍は別所で待機しており、参戦は致しません。

●重要な備考
<Breaking Blue>ではイレギュラーズが『廃滅病』に罹患する場合があります。
『廃滅病』を発症した場合、キャラクターが『死兆』状態となる場合がありますのでご注意下さい。
 
●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • <Breaking Blue>病と怨念に侵されて完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年05月13日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)
波濤の盾
日向 葵(p3p000366)
紅眼のエースストライカー
杠・修也(p3p000378)
壁を超えよ
ルウ・ジャガーノート(p3p000937)
暴風
アルテミア・フィルティス(p3p001981)
銀青の戦乙女
茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)
音呂木の蛇巫女
羽住・利一(p3p007934)
特異運命座標
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
戦輝刃

リプレイ


 絶望の青の攻略の為、アクエリア島を出港していくイレギュラーズ達。
 晴れていた空は瞬く間に曇天になり、海は時化てメンバー達が乗る船は荒波に大きく揺られることとなる。
「後半の海になって、更に悪意が増してきたわね」
 幻想生まれの貴族、銀の長髪の『銀青の戦乙女』アルテミア・フィルティス(p3p001981)は、この海域で発見される敵、事件などを見聞きし、そう感じていた。
「俺のギフトがあれば、航行も船の上での活動も大きな問題はないな」
 身長2mもある巨躯の白クマの獣種、『二代野心』エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)は海洋王国軍大佐だ。
 航行もかなり慣れており、どこから敵が現れようとも冷静に対処できる自身が彼にはある。
 日の光も厚い雲に遮られ、かなり薄暗い。
 エイヴァンは事前にある程度状況を聞いていたこともあり、発煙筒を準備するなど準備に余念がない。
「薄暗い環境は敵に有利に働くだろう」
 凛々しい顔立ちをした『秘境探検家』の元男性、『特異運命座標』羽住・利一(p3p007934)は仲間と相談し、カンテラを使って甲板を照らす。
 そこで、黒髪に緑のメッシュが入った半吸血鬼の青年、『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)がこんな話を持ちかける。
「狂王種の次は変異種が出てくるとか、ホント手札が尽きないっスね」
 これから戦う相手は元人間であり、葵は狂王種よりもタチが悪いと感じていていた。
「怨念がまともな人間を化け物に変えちまうなんて、おっかねえ話もあったもんだな!」
「変異種ねぇ、あー、やだやだ」
 バッファローの角を生やす筋肉粒々な『暴猛たる巨牛』ルウ・ジャガーノート(p3p000937)が豪快に語ると、星の守護者だったという長い黒髪の女性『戦神』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)が露骨に嫌がる素振りをみせた。
「無駄に硬くて強くて、めんどくせーってやつよねっ」
 とはいえ、この海域に蔓延する病気をもらってしまう前に倒さなければと、依頼自体は前向きな秋奈は今回の対象討伐に意欲を見せる。
「怨念が襲ってくるとか、あーこわいこわいっ」
 そうは言いながらも、呪いや病気になどかかる気もおきないという秋奈である。
 さて、そんなメンバー達が会話をしているうちに、海上にゆらりと現れる不気味な影が。
「どうやら現れたようだな」
 それにいち早く気づいたのは、ハイセンスを働かせて薄暗い海を見ていた利一だ。
 利一は相手の行動を適切に把握して、仲間達に注意を促す。
 敵の出現を聞き、古武術を修める眼鏡着用の少年、杠・修也(p3p000378)がその姿を視認する。
「船の上で戦うっていうのは初めてだな」
 故郷だと、家の道場か路上で喧嘩を売られたことくらいしかなかったと修也は思い返す。
 だが、これから、イレギュラーズとして戦う上では、こうした不安定な足場での戦いもよくあるはずだ。
「……眼鏡を海に落とさないように気を付けないとな」
 いい鍛錬だと割り切り、修也は戦いに臨む。
 その間も、討伐対象はゆらりと波に逆らってこちらへと近づいてきている。
「情とか罪悪感あたりは後で思い出しときゃいいか」
 向こうからやってくる以上、ぶっ潰さないと先に進めないっスからと葵は語る。
 相手はこちらの甲板へと上がってくるべく、わざわざ近づいてきている。
 ならば、いっそ上がってくるまで待とうというのがメンバー達の総意だ。
「んー、来るまで準備運動もいいわねっ」
 それまで秋奈は体を動かしつつ待機するが、彼女はいい笑顔を浮かべてアルテミアへと無言で『さむずあっぷ』する。
「廃滅病発症者を変異種に変異させる棺牢……」
 そのアルテミアは近づいてくる物体が怨霊のようなものを引き連れてきているのを視認する。
 それらはこちらに呪縛弾を飛ばすことがあった為、利一は身構えて攻撃に備えていたようだ。
 下手に進めば、被害が増すだけ。
「でも、だからと言ってここで立ち止まるわけにはいかないの」
 仲間達の状況もそうだが、アルテミア自身もいつ廃滅病を発症するか分からないという怖さがあるのだ。
 なお現状、今チームに廃滅病へと罹患した者はいない。
 その一方で、廃滅病に罹患した上で、人ですらなくなってしまった変異種……。
 それがイレギュラーズ達の乗る船へと上がってくる。
「わざわざ甲板に上がってきてくれるのはありがたいぜ! 二度と泳げない体にしてやるぜ!」
 意気揚々と言い放つルウの前に現れたのは、怪物となり果てた人と思しき存在。
 下半身は無数の触手となり、破れかけの服を纏う上半身も肌が水色となっていた。
 さらに、海を彷徨う怨念……棺牢(コフィン・ゲージ)がゆらりと空中で揺らめき、大きく口を開いて威嚇してくる。
「怨念と……そして変異種が一体か」
 金髪の槍騎士、『特異運命座標』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)が自らの槍を構えつつ、敵の出方を窺う
「ゼツボウ、アオ……トウハ……」
 呟く言葉はこの海の攻略を臨む声。
 しかしながら、こんな姿になりはてて絶望の青に縛られてなお、海の踏破を願う言葉をうわ事の如く呟く状況はあまりにも悲しい。
「人間に戻すことができないなら、せめて安らかに眠ってもらおう」
 利一はその姿に同情を覚えながらも銃を抜く。
 戦場の広さが制限される船。しかもその中央で戦うとなれば、遠距離攻撃はかなり不利だが、万能スキルであればそのデメリットはない。
 すると、棺牢が前に出たことで、ルウが豪快に大剣を手にして叫ぶ。
「さらに怨念をばらまいちまう前にすっきり成仏させてやるぜ!」
 その棺牢に引きずられるような形で変異種が触手を伸ばす。もはや、自我を保てぬその怪物は生ある者に仇なす存在でしかないのだろう。
 それらを一通り確認し、ベネディクトは油断せぬようにと奮起する。
 この場を越え、自分達がこの先を目指す以上、ここから逃げ出すわけにはいかない。
「行くぞッ! 我々は此処を超えて、さらなる絶望へと踏み込む!」
 その先の希望をつかみ取る為、ベネディクトはまず襲い来る障害の撃破を仲間と目指す。


 イレギュラーズ達の船へと乗り移ってきた変異種と怨念……棺牢達。
 それらは生ある者へと本能的に近寄り、海へと沈めてしまおうとする。その行動は、同胞を増やそうとしているようにも感じられた。
「水中では変異種の独壇場となるから船上で戦う事になるけれど、まず厄介な棺牢を先に対処する必要があるわ」
 アルテミアは事前情報からそう考えるが、変異種に水中へと逃げられたりでもすれば、どうしようもなくなってしまう。
「水中へ逃げないように抑えつつ、ダメージを稼いでいくわよ」
 変異種の抑えへと回るアルテミアとエイヴァン。
 先にアルテミアが瞬発力を活かし、先手を取って彼女はマークへと当たる。
 続き、エイヴァンも自らの能力を全盛時のものにまで高め、変異種にアックスガンから氷の弾丸を打ち込む。
「万能付きなら、船の大きさなんざ関係ねぇな」
 ただ、撃ち込むだけではない。エイヴァンは万能スキルを作用させ変異種の身体と精神を強く引き離して自らへと気を引く。
 変異種は精神が先行し、エイヴァンへと足の触手を伸ばして絡めとろうとしてくる。
 抑えが上手くいっている間に、他メンバーが浮遊して呪いを振りまき、体力を奪い取ってくる怨念……棺牢の討伐に当たる。
「確実に仕留めよう」
 ベネディクトの呼びかけを受け、素早い葵が真紅のガントレットで殴り掛かり、利一が魔弾を発射していく。いずれも中距離に陣取り、攻撃を続ける構えだ。
「怨念か、確かにその思いは強かろう。だが……過去が未来を止められる通りは何処にも無い!
 もちろん、ベネディクトも確実に1体ずつ仕留めるべく敵へと近づき、傲慢な左の一撃を喰らわせていく。
 秋奈もくまさんこと、エイヴァンへと変異種のヘイトが向いていることを確認し、戦いを仕掛けるのだが。
「星間守護機構『戦神』元部隊長、茶屋ヶ坂 戦神 秋奈よ!」
 棺牢があちらこちらへと向かってしまわぬようにと、3体を纏めて注意を引きつけに当たる。
「怨念か……。殴れるかどうか知らねえが、俺の一撃で吹き飛ばしてやるぜ!」
 一応、仲間の物理攻撃が聞いていることを確認し、自身のアドレナリンを爆発させたルウは溢れんばかりの闘志を燃やして突進し、巨獣の大剣で切りかかっていく。
 まだ、立ち回りを確認しながらといった形で戦う修也は、自由なる攻勢で仲間達に合わせて鋼の拳で棺牢に殴り掛かる。
 ただ、この場には多数の仲間がおり、彼らの立ち位置や範囲攻撃を気に駆けるべく、修也は一度敵から距離を取っていた。

 カンテラの光に照らされながらイレギュラーズ達はしばし、敵グループごとに交戦を続ける。
 絶望の海で悪意を振りまく怨念達。
 そして、怨念に憑りつかれ、人でなくなってしまった廃滅病発症者。
 彼らには、絶望の青を攻略できる生きる者達が羨ましくてたまらない。
「ナン、デ、イキテル……」
 だから、自分達と同じようにすべく、攻撃を仕掛けてくる。
 エイヴァンと共に抑えに当たり続けるアルテミアは、変異種となり果てたその呟きに、少なからず感傷に浸って。
「この海を越える為に死力していた一人なのだから、せめて私たちの手で楽にさせてあげないと、ね」
 彼女は細剣で変異種の触手を切り刻み、相手の戦闘力を削ぎつつ牽制を続けるのである。

 その間、棺牢と交戦するメンバー達。
 変異種と比べれば個々の能力はやや落ちる相手だが、こちらの動きを止め、思考を奪い、呪いを振りまいてからじっくりと体力を奪おうとしてくる連中だ。
 この海域にまだ無数存在していることを考えれば、何とも恐ろしい相手である。
 ただ、棺牢3体に対して、こちらも6人で相手している。
 また、ベネディクトなどは棺牢が響かせる怨嗟の声には白梟の誇りで対抗し、思考だけはしっかりと保って。
「絶望など何度も味わって来た。止まれぬ理由が俺達にはある」
 守るべき者、矜持。
 ──この槍を握った時の気持ちを、ベネディクトは忘れた事などない。
 廃滅病となってしまった者達を救う為、彼は強い信念を抱いて。
「俺達は守る為に戦う、それだけだ!」
 素早く突き出された彼の槍が棺牢を貫くと、刹那形を保てなくなったそいつは身体が薄れかけた。
 一気に攻め崩すメンバー達。
 利一はその敵を撃破すべく、因果を歪める力を行使して棺牢の体を完全に霧散してしまう。
 1体を倒し、息着く利一だが、まだ怨念は近場で蠢いていて。
「次はアイツを狙うっスよ。出来るだけ速攻で潰すぞ!」
 葵は数が減ったことで仲間を勢いづかせるように叫び、次の攻撃対象を変異種から遠い1体へと定める。
 そして、葵は目にも留まらぬ速さで再び敵へと殴り掛かり、空中で固まる力を少しでも早く霧散させようとしていた。
 変わらず、引き付けを行う秋奈が呪いの弾丸に耐えながらも緋い刀身の姉妹刀で切りかかる。名乗り口上の効果が目に見えて確認できていたからか、彼女は嬉々として攻撃を続けていた。
 ベネディクトも槍を突き出して棺牢を攻め立てる。その近くの修也は仲間の間隙を縫って攻撃を行うのだが。
(まだまだ俺は未熟だ)
 混沌の地でイレギュラーズとして、戦い続ける仲間達の力はすさまじい。
 修也は仲間の足手まといにならぬよう、無茶な攻めは行わずに攻撃を続ける。
 まして、時化の海に浮かぶ船の上での戦いだ。
 戦いで海に投げ出されないよう、修也は甲板の端へと寄りすぎぬよう配慮して、棺牢へと飛び蹴りを繰り出す。
 例えば、豪快に攻撃を行う獣種のルウ。
 その出で立ちから有り余る力を感じさせる彼女はバッファローの力をいかんなく発揮し、幽体と思われる棺牢にも気合いで大剣を叩きつけていく。
 その怨念を切り裂くごとに、元に戻る力が確実に遅くなってきているのをルウは見逃さない。
「もう一撃だ!」
 敵が殲滅するまで、闘争心に溢れるルウの猛攻は止まらない。
 そんな中、仲間達を牽引して戦いに臨んでいた葵。
 ドレインタッチで秋奈に触れ、なんとか抗戦を続けようとしていたその怨霊目がけて葵は距離を詰め、ここぞと温存していた音速の攻撃を浴びせかけ、完全にこの場から消し去ってしまう。
 順調に戦いを進めていたようだが、変異種を抑える2人の状況が芳しくない。
 きっかけは、相手を痺れさせたエイヴァンによるこんな問いかけだ。
「折角だから、名前ぐらいは聞いといてやろう」
「ナマエ……ナマ、エ……!?」
 問われた変異種は自らが化け物となった事実を自認してしまい、暴れさせてしまうことに。
 触手に絡まれたアルテミアがそれらの斬り飛ばしに当たる中、エイヴァンを触手が叩きつける。
 その見た目から、スタミナと防御に自信のあるエイヴァンも、思わぬ一撃に体力を奪われてしまい、パンドラに頼らざるを得なかったようだ。
「もはや、回答できる知性すら残っていなかったか」
 すでに人でなくなってしまったことを再確認し、エイヴァンは再び大盾で雷撃を叩き込み、その動きを止めようとしていた。
 ただ、その間に攻撃集中した利一がやや体力を減らした秋奈を庇うようにして、因果を歪める力で敵対心を強く抱かせる。
「お前の相手はこっちだ!」
 だが、桜花の刀で自己回復し、態勢を立て直した秋奈が二振りの赤い刃から光を迸らせる。
「余計なことはさせないよーう」
 次の瞬間、最後の棺牢は大きく目を見開いたまま、虚空へと消えていったのだった。


 全ての棺牢を倒したメンバーは残る変異種の方へと向かって。
「やだやだ、触手とか私の担当じゃないんだけど」
「触手野郎! 大人しくしてれば、楽に逝かせてやるぜ!」
 その見た目に秋奈が嫌がるのに対し、ルウは全員でボコって終わりだと笑う。
 とはいえ、すでにエイヴァンが一度倒れかけている状況もあり、交戦も長くなってきていたことから、皆立て直しも図る。
 緩急をつけたステップで残像を残しつつ相手をほんろうするアルテミアは、変異種から魔力を奪いつつ立ち回る。
 エイヴァンも自らの傷を不滅の如く塞ぎ、盾役の任の維持に努める。
 触手を数本切り落とされた変異種は海を見回すことが多くなったこともあり、エイヴァンはそちらへと回り込んで逃走の阻止に当たる。
「相手もかなり苦しそうっスね」
 一気に追い込むべく、葵はシルバーのサッカーボールを蹴り込む。 葵が放った無回転のシュートが変異種の腹へと叩き込まれ、そこから素早く肉薄して殴り掛かっていく。
 利一も仲間の攻撃の一助となるように、因果を歪める力で変異種の身体の破壊を目論む。
 その一撃で破壊が敵わずとも、火力に優れたメンバーが畳みかける。
「戦神が一騎、茶屋ヶ坂アキナ! 有象無象が赦しても、私の緋剣は赦しはしないわ!」
 気を取り直した秋奈は、変異種の腹目がけて斬りかかる。
 向かってくる触手が多少自分の精気を奪おうとも、秋奈は思いっきりぶちのめす。
「他の変異種に逃げられかけたから、ちょっと鬱憤が溜まってるのよね」
 そんな仲間達の戦いぶりを見ながら、修也は気力が尽きたのか直接殴りにかかっていた。
 堅実な一撃を心掛ける修也の拳は、着実に相手へとダメージを与えて弱らせていく。
 続き、ルウは相手が逃げぬようにと注意を払いながら、圧倒的なパワーで叩き伏せようとしていく。
「アア、イヤダ、シニタ、クナイ……」
 追い詰められる変異種は何とかこの場から逃げようとするが、すかさず葵が背後をブロックする。
「悪ぃが、ホームには戻さねぇからな? アンタはアウェイで倒れてもらうっスよ」
 取り囲んだ敵へ、イレギュラーズ達はさらに攻撃を加える。
 触手を払いのけたアルテミアが胸部を直接切り刻んでトドメを狙う中、ベネディクトが構えを取る。
「叶うならば、まだ人としての意識があるまま送ってやろう」
 それが救いになるとは限らないし、彼にとってはただの自己満足に過ぎないかも知れない。
 それでも、間違いなく言えることは、目の前に居た者は人間だったということだ。
「夢は何時かは覚めるモノ。……もう悪夢は終わりだ、次はどうか」
 ――安らぎのある夢が見れます様に。
 仲間達が胸部につけた傷を抉るように、ベネディクトが刺突によって相手の胸を貫く。
「ア、アア……」
 倒れる直前に変異種の目から光るものが零れ、変異種は甲板へと崩れ落ちていったのだった。


 今回現れた変異種、棺牢全ての撃破を完了して。
 なんとか、初めての海上での戦闘を終え、修也は大きく安堵の息をつく。
 メンバー達は改めて状態確認しつつ、被害状況を整理する。
「まったく胸糞悪いな……。気を取り直して、絶望の青もとっとと攻略しねえとな!」
 戦いの後の修繕作業、仲間達の手当てと動くメンバーへ、ルウが豪快に笑いかける。
 哀れな変異種は水葬で弔うことにし、ルウは祈りを捧げていたのだが……。
 そんな中、体に異変を訴えかけたベネディクト。
 彼の身体には死兆……廃滅病の症状が出始めていたのだった。

成否

成功

MVP

ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
戦輝刃

状態異常

なし

あとがき

 リプレイ、公開中です。
 MVPは変異種のことを慮りながら、最後の一撃を与えたあなたへ。
 今回はご参加、ありがとうございました!

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