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シナリオ詳細

<Breaking Blue>RE:ワンダーサーペント号より

完了

参加者 : 8 人

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オープニング

●絶望の青に船を出せ
 ワンダーサーペント号の寄港である。
 乗員を求む。
 乗員を求む。
 報酬は永遠の命。
 対価は永遠の呪いである。
 乗員を、求む。

 こんな歌を聴いたことはあるだろうか。
 海洋から幻想にかけての吟遊詩人に伝わる『ワンダーサーペント号より』という歌の一節である。
 かの幽霊船は海洋王国や幻想の領海にも数年に一度の割合で現れ、人を連れ去って乗員にしてしまうと言われていた。
 その元凶は討ち滅ぼされたと……思われていたのだが。
「この幽霊船は絶望の青から流出したごく一部の部隊に過ぎなかった……そういうことだね?」
 『黒猫の』ショウ(p3n000005)は依頼書をめくり、テーブルの上の海図にピンをたてた。
 ここはアクエリア島拠点作戦室。大きな円形テーブルと海図を囲んで情報屋とイレギュラーズ、そして海洋海軍の将校デリンジャーは次なる作戦を話し合っていた。
「一部なんてものじゃない。絶望の青の防衛にまるで必要ない、極めて弱い部隊が偵察や調査のために港に近づいていただけというのが、今の見方だ。
 こうした幽霊船に対する戦術は今までの外洋遠征でも確立されてきたが、だからといって楽勝で沈められるような相手じゃない。なぜなら……」
 デリンジャーは沈痛なおももちで海図をにらんだ。
「幽霊船のアンデッドたちは、いわば二十二年前の……いやそれ以前もふくめた外洋遠征に敗北した者たちの残骸だ。
 新天地を目指して旅立ち、しかし強力な魔物や魔種や、廃滅病によって倒れそして国へ戻ることすら叶わなかった者たちの、な」
 これは決して他人事などではない。
 アクエリア島攻略ののち橋頭堡を気づいた王国兵士は廃滅病に蝕まれながらも更に進撃。絶望の青攻略はアルバニアにとって最も無視できない事態であるため、進撃を成功させればさせるほどアルバニアに対する『煽り』となる。引きずりだし、廃滅病を根絶させるチャンスを作れるのだ。
 ……逆に言えば、この進撃に失敗すれば自分たちも幽霊船の仲間入りをするのである。
「それに、一説によると幽霊船が格納している怨念『棺牢(コフィン・ゲージ)』は変異種発生の原因ともいわれている。見つけ次第撃滅すべきという意見もあるほどだ」
 戦いの重要性を説くのは、この程度でいいだろう。
 デリンジャーは咳払いをすると、幽霊船『ワンダーサーペント号』の説明を始めた。

●ワンダーサーペント号
 撃破目標の幽霊船は『三隻』からなる船団である。
「それぞれの船には約2人ずつ強力なアンデッド兵が搭乗しているが、残る兵士(合計15人前後)はサーベルやフリントロック銃を装備しただけの弱小兵だ。数と邪魔立てが厄介だが、排除事態はそう難しいことじゃない。
 課題はやはり、強力な上級アンデッド兵だな」
 デリンジャーがショウに目配せをすると、ショウが手元の資料を一枚テーブルにすべらせた。
「過去に交戦記録があったよ。
 実力はみんなと同等かそれ以上。油断するとぱっくりいかれちゃうくらいには強いってことだね。
 出現するたびに武装やスキル構成が異なっていて、神秘型だったり物理型だったりEXFに優れていたりHPが豊富だったり……まあ統一感は全く無いよね。
 一応共通している要素として、EXFが一定以上はあるだろうってトコロが上げられるかな。
 確実にEXF判定に成功してくるってレベルじゃあないだろうけど、【必殺】攻撃があったらかなり安心だと思うよ」
 一連の資料をまとめ、ショウはイレギュラーズへ突き出した。
「大変な戦いになると思うけど……外洋遠征の成功は僕らの、そして王国の未来になる。もしかしたら混沌世界全土を巻き込んだ大発見に繋がるのかも、ね」

GMコメント

■船について
 1PCにつき1隻まで、小型船系アイテムを装備していた場合に限り自分の船を持ち込むことが可能です。
 誰も持っていない場合普通の小型船を三隻ほど借りた扱いになります。
※もし装備しているアイテムが未特殊化アイテムだったとしても、『俺の船はこういうデザインだぜ』とプレイングで主張してかまいません。是非キャラを出していきましょう。

●重要な備考
<Breaking Blue>ではイレギュラーズが『廃滅病』に罹患する場合があります。
『廃滅病』を発症した場合、キャラクターが『死兆』状態となる場合がありますのでご注意下さい。

■■■アドリブ度■■■
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用ください。

  • <Breaking Blue>RE:ワンダーサーペント号より完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年04月30日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)
共にあれ
夜乃 幻(p3p000824)
『幻狼』夢幻の奇術師
イリス・アトラクトス(p3p000883)
光鱗の姫
寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
ヴォルペ(p3p007135)
満月の緋狐
ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)
私の航海誌
羽住・利一(p3p007934)
特異運命座標

リプレイ


 海原をかすめるほどに低く、海風のように飛ぶ『『幻狼』夢幻の奇術師』夜乃 幻(p3p000824)。
 潮の香りを吸い込んで、そして深く吐き出した。
 眼前遠くには三隻の船。それぞれ北欧風のかぶとや胴鎧で武装してこそいるが、みな海の底からあがってきたアンデッド兵である。
 外洋を目指しつつも道半ばで息絶えた者たちの怨念が海にとらわれ形となった、それは『幽霊船(ワンダーサーペント)』であった。研究者いわく彼らを倒すことが怨念の壊滅となり、廃滅病罹患者をおそう変異化を防ぐと言われているが……真相は定かではない。
 武器軟膏ほどに、筋が通っているようで通っていない話であった。この海が前人未踏なれば、それも無理からぬこと。
「幽霊船で御座いますか……。
 邪魔しないで頂けますか。僕は絶望の青のもっと奥に行かねばならぬのです。
 そして、あの方の為に、アルバニアを引き出し、殺さねばならぬのです。
 貴方方が静かに死にたいのであれば、そこに直りなさい。
 そうでないならば、僕は幽霊船ごと貴方を潰しましょう」
 幻の後方より、三隻の船が彼女を追い越すように進み出る。
 『大いなる者』デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)の操舵する豪華旅船『ビッグドリーム号』をはじめ、『濁りの蒼海』十夜 縁(p3p000099)と『満月の緋狐』ヴォルペ(p3p007135)の船が左右を固めた。
「幽霊船はとっくに見慣れちまってるからいいとして……航海続きなモンで、いい加減酒が恋しくなってきたぜ。
 3隻もいるんなら、1隻くらい酒の一本や二本積んでねぇかね。年代物のワインでもありゃぁ最高なんだが」
 舵に腕をかけよりかかり、片眉を下げるようにしてアンニュイな空気を出す十夜。
「幽霊船、彼方の海に挑み帰れなかった者達のなれの果てのう……。
 ところでヴォルペよ、念のため今日もマヨネーズとレモンを持ってきたのじゃが使うかの?」
「それ別の依頼でしょ。今日は唐揚げ出な――やめて! おにーさんの身体にマヨとばすのやめて!」
 両手にマヨとレモンを出して振り返るデイジーと、船越しにマヨを飛ばされるヴォルペ。
 マヨで汚れたら仕方ないと言って素早く上着を脱ぎ捨てると、ヴォルペは舵をにぎって加速をかけた。
「幽霊とかよく分からないものは苦手だけど、攻撃して倒せるなら別に良いよね。それの元がなんであれ、ね」
 進む船のその更に後方。
「うーん、漁船を改造した位のなんだけど、こんな所まで漕ぎ出しちゃって平気なのかしら」
 『光鱗の姫』イリス・アトラクトス(p3p000883)は船の舵を片手で握ったまま、こちらを迎え撃とうと左右に広がる幽霊船の姿を見た。
 彼女の船に乗り込んでいるのは『大号令の体現者』秋宮・史之(p3p002233)。
 すぐ横につける形で、『虹を齧って歩こう』ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)は自らの船を、『特異運命座標』羽住・利一(p3p007934)を乗せて操縦していた。
 史之は理力障壁の発生装置をいじりつつ、わずかに飛行を開始。いつでも敵船へ飛び移れる姿勢をとった。
「確か、全員で乗り込んで幽霊船一隻ずつを沈めていく作戦だったよね」
「戦力的にも人数的にも、分散して乗り込んでそれぞれで集中砲火を受けるような余裕は無さそうですし」
 ドーナツを手早く頬張って水筒のお茶で飲み下し、ウィズィニャラァムはふわりとだけ浮きあがる。
「元の世界では八艘の船を跳び移って戦ったヤツがいたという伝説があるんだが、それに近いことをやることになるとはね。うっかり落ちたりしないよう気をつけよう」
 利一は揃えた足でかかとをトントンと打ち合わせ、簡易飛行を開始。
 船から船へ乗り移るにおいて、簡易飛行は便利な能力だ。
 幽霊船のうち一隻に思い切り船をぶつけ、その際に全員で飛び込んでいこうというのが今回の作戦である。それも四隻まとめて。
 大航海時代の海賊もかくやという豪快な戦法だが……。
「残り二隻を誰かが抑えたりはしない、と言うことで良いんだね?」
「そうですねえ……」
 自然に考えて、残り二隻が味方が集中攻撃されているさまを傍観してくれなどはしないだろう。もしウィズィニャラァムや史之が逆の立場だったなら、集中攻撃を受けた一隻を中心として包囲攻撃を仕掛けるところである。
「これ、純粋に45人前後のアンデッド兵に取り囲まれながらぎゅうぎゅう詰めで戦う感じだよね。だいぶ入り乱れるなあ」
「入り乱れるというか……」
 イリスがうげえという顔をした。
「私があっちの立場だったら、手下に前衛を拘束させた上で後衛から叩くかな。集中砲火できるなら密着して囲むほうが有効だし、範囲攻撃封じれるよね」
「げ」
 かついでいたハーロヴィット・トゥユーで肩を叩きつつ、ウィズィニャラァムはイリスのいわんとするところを理解した。
「じゃあラカラビほとんど使えないじゃないですか」
「貫通攻撃ならライン次第で通せる。問題は、撃破順を敵に選ばせるリスクを負ったことだな」
 利一は腰から光線銃を抜き、射撃可能範囲に入るのを待った。
 『先に消えて欲しい順に消していける』というのはごく単純にいえば勝ち筋の理想型である。眼鏡に指をかける史之。
「俺が敵の指揮官だったら、そうだな……。俺――は後回しにするかな。ヒーラーだけど殺しづらいし、集中砲火でゴリ押しするなら回復の暇を与えずに瞬殺したいだろうし。可能なら致命つきで削りたいだろうし?」
「あっ、私だったら名乗り口上マンをダブルブロックで封殺して、火力特化の砲台を集中射撃で潰すことで味方の減少を抑えますね」
 手を上げて振るウィズィニャラァム。頭数を武器にした部隊にとって、敵の火力を減らしつつ敵味方を混雑させることは部隊規模の防御と回避に繋がる。
「敵の指揮官にそれだけの判断力があるかどうかがキモ、かな……」
 イリスはそう言いながら、船を加速すべくギアレバーを操作した。


 突撃。射撃が浴びせられる中を、十夜は防御しながら船を進めていく。
 己の船を敵船の横をすり抜けるように走らせつつ一時放棄。甲板を走って飛ぶことで幽霊船へと飛び移った。
「生憎と、永遠の命なんてモンには興味ねぇんでな。一生死ねねぇってのも、充分“呪い”の類だろうさ」
 アンデッド兵の一人を蹴倒すと、わざと隙だらけなふりをして周囲のアンデッド兵に誘いをかける。
 と同時に、同じく射撃をかいくぐりながら十夜とは逆側に船をかすらせつつ飛び込むヴォルペ。
「さあ、おにーさんと遊ぼうか!」
 二人が一部のアンデッド兵を引きつけ、そして船の左右両端で取り囲まれている間、デイジーは幽霊船正面に自らの船を叩きつけつつ壺にのって幽霊船へと飛び込んでいく。
「ひかえおろー!」
 デイジーは壺から飛び降りると空中で『魔光閃熱波』を発射。
 迎え撃とうと剣を構えたアンデッド兵を圧倒的な破壊力でもって粉砕すると、その上にY字ポーズで着地した。
 幻はそんなデイジーの頭上を低空飛行によって越え、船上で銃を構えるアンデッド兵にねらいをつけてステッキを華麗に振り込んだ。
「EXFが高かろうと、何度も攻撃すれば死ぬでしょう?
 僕はしつこいんですよ。何度も何度も攻撃して差し上げましょう」
 奇術による破壊がアンデッド兵の一体を破壊。対抗するように無数の銃弾が幻へと集まり、跳躍したアンデッド兵がとりつこうと掴みかかってくる。
(生きているなんて許せない。
 僕を邪魔する存在が、アルバニアを守る存在が、生きていることが妬ましい。
 アルバニアが生きていることが妬ましい。
 アルバニアを殺して、あの方を守ることこそ、僕の生き方ですから)
 幻は美しい顔に怒りの影をさし、アンデッド兵を振り払う。

 一隻に対して密集した三隻。その間を無理に縫う形で突っ込んだイリスとの船から、イリスが助走をつけて跳躍した。
「永遠の命とか要らないけど、この先に用があるからここまで来た、イリスですよろしくお願いしまーす!!」
 ジャンプと同時に振りかざした拳で、銃を構えたアンデッド兵を殴り倒す。
 勢いで自分も転倒するがやはり勢いを殺すことなくごろごろと転がり、敵集団の真ん中で敵を引きつけ始めた。
 そこへ、飛行能力を用いた史之たちが突入。
「強力な固体は……あれかな?」
 ひとりだけ装備の充実したアンデッド兵を見つけ殴りかかろう――とした途端、史之の足をひっつかむ別のアンデッド兵。更には派手に飛びかかって史之を拘束しようと剣を食い込ませにかかる。
 邪魔だとばかりに理力障壁で殴りつけ、振り払う史之。
 強力な固体へ向かうまえに足止めされてしまったが、史之と通常アンデッド兵の戦闘レベル差は歴然の開きがある。ファイティングポーズをとり、史之はアンデッド兵の剣を打ち払った。
(幽霊船の人たちもさぞかし無念だったろうな。必ずこの海を踏破しなきゃ……。
 俺は間に合わなくても次の人がきっと。女王陛下、見守っていてください)
「さあ、Step on it!! 恩讐も悔悟も、全部……過去まで吹っ飛べ!」
 追って飛び込みをかけたウィズィニャラァムが、史之のそばについていたアンデッド兵をナイフで叩き潰す。
 自身の抵抗力をルーンの力で強化すると、群がるアンデッド兵を右へ左へと振り払っていく。
 背後から羽交い締めにしたアンデッド兵。更に正面から斬りかかろうとする兵。ウィズィニャラァムは一旦両足で正面のアンデッド兵を蹴り飛ばすと、巨大ナイフをぶんと振った反動で背後の兵を振り払い、柄の部分で殴り倒す。
 それでもしがみつこうと迫るアンデッド兵を、利一が射撃によって破壊。頭を吹き飛ばされたにも関わらずまだ動く兵がウィズィニャラァムの腕に掴みかかった途端、飛び込んできた利一が剣によって腕を切断した。
 そんな彼女たちに、船一隻分を挟んだ距離から包囲射撃が浴びせられる。
 さらには残る幽霊船二隻から飛び出してきた兵達がサーベル片手にこちらの船へと乗り込んできた。
「殆どすし詰めだな……」
 利一は乱戦の予感に本能で身震いしつつ、剣と銃をそれぞれ構えなおした。

「逃がさぬ。不思議な力で死ぬのじゃ。もしくはマヨとレモンにまみれるのじゃー!」
 デイジーが魔光閃熱波を発射。
 剣と盾を備え孔雀のような兜を装備したアンデッド兵はデイジーの砲撃を盾によって防御。しかし絡みついた電撃は防げなかったようで、歯がみしながらデイジーへと突撃していく。
 顔面めがけて繰り出される剣。それをあえて右手で受け止めるデイジー。
「お主は既に妾の術中にはまったのじゃ」
 至近距離から、目の中に昏く光る小さな月を浮かべギラリと光らせる。
 抵抗力をおとされたアンデッド兵を不吉の泥沼にはめるのはそう難しいことではない。
 デイジーは大きく飛び退き、『悠久のアナセマ』を打ち込んでいく。
 派手に精神破壊を受けたアンデッド兵は混乱し、自らの腕を切り落とし始めた。
「死んで頂けますか。僕の大切なあの方が生きるために。僕の為に」
 それを狙い目ととったのか、幻は奇術『夢幻泡影』 を発動。
 どこからともなく現れた黒い箱がアンデッド兵を包み、閉じ込めていく。
 更に発動させた奇術『花蝶風月』 によって新たに生まれた無数の剣が箱へ突き刺さり、内側で虹色の光が荒れ乱れた。
「『花咲き、蝶舞う世で観せる奇術は貴方へのせめてものはなむけ』……」
 詩をよみ、背を向ける幻。
 アンデッド兵は破壊され、込められた怨念もまた破壊された。

 一方。
 ヴォルペは巨大な鋼のグローブをはめたアンデッド兵に殴り飛ばされ、離れた場所で戦っていたイリスへと激突。
「おっと、そっちも大変そうだね」
「そうかな? 楽しくなってきたところだよ」
「おいおい、楽しむのはいいが、この状況……『か弱いおっさん』としてはいただけねぇな」
 混ざってきた十夜が、両腕をだらんと垂らした独特の構えでアンデッド兵を見やる。
 イリスはファイティングポーズを、ヴォルペは挑発的にズボンのポケットに手を入れて前屈みになるような姿勢をとってみせた。
 三人はびっしりと取り囲んだアンデッド兵たちに対し、それぞれの背をつける形で身構えている。
「ねえ、一応聞くんだけどさ……」
 イリスは飛び込んできたアンデッド兵の顔面に拳をめり込ませることで撃退すると、二人へと呼びかけた。
「この状況、私たちって勝ってるの?」
「んー……どうだろ」
 ヴォルペは余裕そうにへらへらとしているが、目が笑っていないのが十夜からみてわかった。
 こうして一箇所に集められてブロック包囲をかけられている間にも、仲間がひとりまたひとりと倒されている。
 アンデッド兵たちは40あまりという頭数にモノを言わせて高火力型の幻たちによる部隊損失を抑えつつ、比較的撃破困難な十夜、ヴォルペ、イリスの三人を封殺しようとしているらしい。
 範囲攻撃で滅茶苦茶になぎ払ってしまいたいが、敵味方が複雑に入り乱れた状況で振り回せるような識別効果をもったスキルを持ち合わせてはいない。
「おにーさん的にはかなーりイヤかな。おにーさんのお仕事は護ることだから……」
「……ったく」
 十夜は首に手を当て、顔をしかめた。
 アンデッド兵たちは交替でブロックし、ダメージを受けたら引き下がってを繰り返している。何らかの方法で治癒しているのかどうなのか、こうして囲まれた状態では判別がつかない。一応数は減っている気がするが……。
 新たに斬りかかってきたアンデッドの手首を掴み、ひねり投げて甲板に叩きつけるイリス。
「もうこうなったら根性でしょ」
「ガラじゃないんだがねぇ」
「おにーさんももうちょっとゆるいのが好み」
「好き嫌いいってる場合じゃないっての!」
 わかってるさ、とヴォルペと十夜はシニカルに笑い、そしてアンデッド兵へと殴りかかった。

 階段を駆け上がり、飛び上がることでロープを掴む利一。
 剣でロープを切ることで素早く帆へと飛び上がると、柱に足をつけて銃を連射した。
「各個撃破を仕掛けられてる。強力な固体を優先的に潰せ。援護する」
「了解」
 史之は理力障壁の出力を上げると、鋼鉄のグローブをはめたアンデッド兵へと飛びかかった。
 邪魔しようと腕を伸ばすアンデッド兵が利一の射撃で排除され、史之はまっすぐに突撃。
 振り返ったアンデッド兵の繰り出す拳に自らの拳を合わせることで、真正面からの衝突をはたした。
 バギンという破砕音。
 史之の障壁とアンデッド兵のグローブが同時に破壊された音である。
 が、史之の顔面はもう一方の腕によってつかみ取られ、豪快に投げ落とされる。
 歯を食いしばって耐える史之――の上を通り抜けていく巨大テーブルナイフこと『ハーロヴィット・トゥユー』。
 アンデッド兵の胸に先端だけが刺さったのを見て、アンデッド兵はそれをはずそうと手を伸ばし……た所に更に飛びかかるウィズィニャラァム。
 ドロップキックによる衝撃でナイフを強引に突き込ませると、アンデッド兵はがくりと脱力して倒れた。
「次ィ! まだまだぁ!」
 アンデッド兵からナイフを引っこ抜き、振り返りながら投擲。
 味方が減ったことでかえってアンデッド兵に『ラカラビの限り』を尽くせるようになったのだ。
 アンデッド兵をまとめて切断すると、ぐるぐる回転しながら戻ってきたナイフを掴んで反転。
 背後から斬りかかってきたグレートソードをもったアンデッド兵の首を切り払った。
 それでも動こう……としたアンデッド兵の動きがさび付いたロボットのごとく軋む。
 ウィズィニャラァムの振り抜いたナイフに刻まれた『Go for a ride.』の文字が光った。
 アンデッドはついに動きをとめ、よろめくように手すりにぶつかり、そして海へと転落していった。
 徐々に沈みゆく船。
 役目を終えた……もとい怨念の破壊された船がいつまでも海上に出続けることはないのだろう。
 ウィズィニャラァムたちは倒れた仲間を手早く回収すると、自分たちの船へと戻っていった。
「お疲れ様。おやすみ。もう、化けて出るんじゃありませんよ」

成否

成功

MVP

ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)
私の航海誌

状態異常

なし

あとがき

 ――海域、攻略完了。

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