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シナリオ詳細

<Breaking Blue>蒼き海に潜む赤き悪魔

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ネオフロンティア海洋王国において発せられた海洋王国大号令。
 数々の魔種を撃破し、多くの大事件を解決してきたローレットのイレギュラーズの力を借りた海洋王国は第三次グレイス・ヌレ海戦において、鉄帝国を退けた。
 心置きなく絶望の青に挑むものの、局地的嵐に狂王種(ブルータイラント)、魔種に廃滅病(アルバニア・シンドローム)と航行は困難を極める。

 魔種アルバニアが海中に身を顰める中、海洋王国は仮称アクエリアなる島へとたどり着くが、ここもまた多くの魔種、狂王種が待ち受ける島だった。
 激闘の末にアルバニア配下の魔種ミロワールを撃退したイレギュラーズ達。
 アクエリアにて女王エリザベスから霊薬、黄金の果実を使ったアップルパイを振舞われ、廃滅の呪いを遅延させながらも、一行はアクエリアを橋頭保として後半の海に挑む。

 ただ、廃滅病は徐々に絶望の青に挑む王国民、イレギュラーズ達を蝕み、死へと近づける。
 治癒の為には、一刻も早くアルバニアを倒したいところだが、敵はこちらが病魔で倒れるのを待つべく時間稼ぎをしている。
 アルバニアを引きずり出す為にも、一行は絶望の青の攻略を進める事にし、新天地(ネオ・フロンティア)を目指すのである。
  

 幻想ローレット。
 イレギュラーズの中にも、廃滅病に侵された者はちらほらと現れていたが、現状、アルバニアの討伐はなかなか至らぬ状況が続いている。
「早く、アルバニアをぶっ倒したいところだけどねぇ」
 『海賊淑女』オリヴィア・ミラン(p3n000011)はイレギュラーズ達の身を案じながらも、絶望の青にて待ち受ける次なる困難の打破について依頼を行う。
 なんでも、海上に赤い悪魔と呼ばれる狂王種が出現しており、行く手を阻んでいるのだというのだ。
「全長10mはあるデビルフィッシュさ。捕まっただけで船を破壊されかねない危険な相手だ」
 距離を取って相手にしたいところだが、海上では相手は素早く距離を詰めてくる為、逃れることは難しい。
 今回は海洋王国から派遣される軍艦2隻と同行し、この難敵の撃破に挑むことになる。
「3隻で動きながら撃破に当たるけれど、相手は頭と8本の脚が一度に動いてくるよ」
 飛行したり、海中を移動したりできるスキルがあれば、相手をうまく翻弄することができるかもしれない。
 また、直接頭に乗り、攻撃するのも有効だ。その場合、敵が海中に潜る可能性があることも留意しておきたい。
「海中戦になれば、こちらが不利だよ。船底に穴でも開けられたら目も当てられない」
 海中では、王国軍も援護が難しい状況がある。
 できるだけ敵が海面に顔を出している状況で、相手が船を掴みかからぬように脚を落とし、頭を狙って攻撃を仕掛けていきたい。
「頭を落とせば、脚の動きも止まるはずだが、少しの間動き続けるから気を付けるんだよ」
 倒したからと言って油断していると、海中へと引きずり込まれかねない。
 頭も脚も、全てが動きを止めるまでは気を緩めないようにしたい。
「分かっているのはこんなとこさね」
 また、絶望の青での作戦行動は新たに廃滅病へとかかる可能性がある。そちらも覚悟の上で作戦に臨みたい。

 絶望の青の航海は後半に差し掛かっている。
 ここで一つ一つ、困難に打ち勝てば、業を煮やしたアルバニアが姿を現すことも十分考えられる。障害となる狂王種は確実に撃破しておきたい。
「では、よろしく頼んだよ」
 無事の帰港を信じ、オリヴィアはイレギュラーズ達を海洋の海へと送り出すのである。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様、こんにちは。なちゅいです。
 絶望の青後半の海に潜む、赤き巨体を持つ狂王種の討伐を願います。

●重要な備考
<Breaking Blue>ではイレギュラーズが『廃滅病』に罹患する場合があります。
『廃滅病』を発症した場合、キャラクターが『死兆』状態となる場合がありますのでご注意下さい。

●目的
 狂王種『レッドデビル』の討伐。

●敵……レッドデビル
 全長10m以上ある巨大ダコです。
 8本の脚と頭がそれぞれ個体として動きます。
 頭を倒せば脚は止まりますが、それでも脚は2ターン動き続けるので注意が必要です。
 頭は睨みつけ、墨、溜め後に複数の脚を使った集中攻撃を行います。
 脚は個別に敵を狙い、締め付け、叩きつけ、海中への引きずり込みを行います。

●NPC
○海洋王国軍軍艦×2隻
 それぞれ乗組員は12、10名。大砲、バリスタ砲などで援護してくれます。

●状況
 15名程度乗れる中型船と数名の船乗りを借り、絶望の青へと向かいます。
 出現海域に近づけば、敵は向こうから姿を現します。
 どのように現れるかは不明ですので、王国軍としっかりと連携を取って備えておきたいところです。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • <Breaking Blue>蒼き海に潜む赤き悪魔完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年04月30日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
イリス・アトラクトス(p3p000883)
光鱗の姫
ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)
黒武護
寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
リナリナ(p3p006258)
カンベエ(p3p007540)
大号令に続きし者
ミィ・アンミニィ(p3p008009)
祈捧の冒険者
ルーチェ=B=アッロガーンス(p3p008156)
異世界転移魔王

リプレイ


 イレギュラーズ達を乗せた中型船は船乗りの操船の元、一路アクエリア島へと立ち寄る。
 海洋王国軍軍艦2隻と合流した後、船は絶望の青後半の海に向けてさらに出港していく。
「絶望の青……」
 アクエリア島よりさらに沖、水平線を見つめる『大いなりし乙女』ミィ・アンミニィ(p3p008009)は感慨深さを感じる。
 旅人であるミィはこの世界に来たばかりの頃、ただ皆の無事を祈ることしかできなかったが、今なら多少なりとも直接力になれるはずだと確信する。
「ついに絶望の海の攻略も後半戦に突入……」
 深手を負っていた『異世界転移魔王』ルーチェ=B=アッロガーンス(p3p008156)も状況を見て参加を決めていた。
「やれやれ、ようやく後半戦ってとこか……」
 なかなか新天地は見えず、『濁りの蒼海』十夜 縁(p3p000099)も溜息をつかずにいられない。
「いい加減、どでかい海洋生物ショーは見飽きてきたんだがなぁ」
 今回戦うのも、どでかい狂王種。邪魔である以上倒すしか道はない。
 なお、イレギュラーズの半数、王国軍もかなりの数がすでに死を招く廃滅病に侵されている。
「確かに死が目前に迫ってくるのは怖いさ」
 その1人である『ムスティおじーちゃん』ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)は元々齢が80を超える高齢者。それだけに、常日頃から身近に死を感じる状況に慣れているという。
「早く恐怖から解放されるように、頑張るよ!」
 彼が戦う理由、それは若く未来ある子達が自分と同じ思いをしない様にする為だ。

 さて、ローレット、王国軍混成隊となる3隻の船。
 イレギュラーズ達はそれぞれ、狂王種の早期発見に努める。
「海底からの攻撃に気をつけてね」
 『大号令の体現者』秋宮・史之(p3p002233)は仲間達に注意を促しながらも、自らは狂王種への有効な攻撃ができるブルーノートを所持しつつ、敵の強襲に備える。
 彼はさらに、スキルと海ブドウの力で空中と水中を合わせて移動しながら索敵を行っていた。
「スポンジの狂王種、いつ来るんだ?」
 『天然蝕』リナリナ(p3p006258)がそんな疑問を仲間達へと投げかけるが、それに答えられる者はいないようだ。
 スポンジ……海綿動物のような狂王種もいるのかもしれないが、今回はあくまで巨大ダコの姿をした相手である。
「いくらか撒き餌を落としみましょうか!」
 『名乗りの』カンベエ(p3p007540)は試しに事前に仕入れていた撒き餌を用意し、周囲を警戒する。
「船の前方へ周囲を警戒しましょうか!」
 そう主張するカンベエは言葉通り、基本的に進行方向に注目する。
 海面へと落ちていく撒き餌に注目する縁。
 件の蛸に出くわすまではと奇襲に備える彼はそこだけでなく、海面から目を離さないようあちらこちらを見回していた。
 ミィは感情探査を行うことで、敵意を探知感情として討伐対象の索敵を続ける。
 合わせてミィは一応と、自らを対象とした非戦能力を無効化することで相手の強襲に備えていた。
「海の端ッコってどうなってるんだ? やっぱり崖っぷち? 海水落下?」
 皆気を張り詰めて狂王種の接近に備える中、リナリナが原始人的な発想を交えて素朴な疑問を口にする。
 さすがに彼女に説明する時間は現状ないので、後でと銘々が言い聞かせるのだが。
「おー、もしも敵、真下から船団の真ん中にいきなり出現したら危険?」
「「!!」」
 真下から接近してくる物体に皆、危機感を募らせる。
「船を進めて、全速力で!」
 海底から何かが近づいてくるのを察した史之の言葉を受け、船乗り達が急いで船を進めていく。
 同じく、敵と立ち向かう布陣の都合もあり、王国軍の船2隻も合わせて前方へと向かう。
「おー、よくわからないけど忙しそうだな!」
 きょとんとするリナリナが周囲を見回す間、『光鱗の姫』イリス・アトラクトス(p3p000883)は先程まで船がいた領域に現れる巨大な物体に些か目を丸くする。
 難を逃れた船が反転するのに合わせ、海中から8本の脚をそれぞれ浮上させてきたのをルーチェは視認して。
「おー、アレ知ってる! 今日が死ぬ100日目のタコ!」
 リナリナがどこかで仕入れた情報が微妙に間違っているのはさておき。
「馬鹿でかいタコときたであるか……」
「船を沈めに来る頭足類とか定番もいい所だけど、大きいのってそれだけで脅威よね」
 淡々とした態度で、イリスは海上へと姿を現した狂王種の姿を仰ぐ。
 まるで海に現れた赤い島。
 もっとも、怪しくて上陸など考える者はいないだろうが。
「デビルフィッシュ!」
 それに、カンベエがやや興奮して。
「焼くか蒸すか、はたまた煮るか! 悩み所です!」
「赤いたこたこ! 最近有名? 死ぬとみんな感動!」
 なお、リナリナが主張する感動とは、感動は海の幸として頂くことでその味に、ということらしい。
「アクエリアで多少の食料備蓄はあるとはいえ、保存食ばかりは飽きますからねえ!」
「蛸飯にするとおいしいんだけど、でかすぎるみたいだから大味すぎて食用には向かないかな?」
 珍味に唸るカンベエに対して史之が軽口を叩きつつ、珊瑚のネクタイピンに触れて緊張を解く。
 女王から授かった珊瑚の一欠片を加工して、彼は大切にしていたのだ。
「……よし、がんばるぞ」
 一頻り精神集中した史之は女王陛下の為、この海を希望の青に塗り替えるべく奮起する。
 縁もそれを目にして、王家秘伝のパイをタダで食べさせてもらったことを思い返して。
「……さーて、そんじゃ手始めに、化け蛸退治で景気づけといくかね」
 百人力とまではいかぬが、おっさん一人分はと真面目に働こうと縁はやる気を見せる。
「どれだけでかかろうと魚は魚、タコはタコ! 征服するはわしらだと、思い知らせてやろうか!!」
「「おお!!」」
 その縁に続くようにカンベエが檄を飛ばすと、史之の要望を受けて自分達の後方へと移動していく王国軍の兵士達が大声を上げて戦意を高ぶらせる。
「うむ。誰であれ、邪魔をするものは消し炭にするまでよ」
 ルーチェも自らの身体へと流れる赤い血潮によって力を高めてから仲間に同意し、尊大な態度で巨大ダコへと言い放つ。
 そんな仲間達や王国軍が廃滅病に侵されている事実を、ミィは再認識して。
「彼らには時間がないのです! 一分一秒でも早く、失せなさい……!」
 巨大ダコへと各自仕掛けていくメンバー達。
「おー! ご飯……じゃなくて、せんとー開始なのか?」
 きょろきょろと周囲を見回していたリナリナもまた戦いに参加すべく、背負ったジェットパックで空中へと飛び立つのである。


 巨大なタコの姿をした狂王種レッドデビルは早速、向かい来る船を……人間達を海の藻屑とすべく太い脚を差し向けてくる。
「水中は特異なフィールドだし、そっちから攻めて脚を狙ってもいいかな」
 海種のイリスが水中へと飛び込む中、縁もまた海に飛び込む準備をしていて。
「援護は任せたぜ、お前さん方。いっちょうド派手にぶっ放してくれや」
 縁は士気向上の為、一度振り返って王国軍の船へと声がけしてから海中へと潜っていく。
(視界に入らねぇようにすりゃぁ、睨まれたり墨をぶっかけられることはねぇ筈だ)
 後ろから聞こえてくる王国軍兵士の叫びを耳にしながら、水中を泳ぐ縁はレッドデビル頭部からの攻撃を受けぬよう、頭の後ろ寄りへと回り込んでいく。
「おー、食材たこたこ! げーむおーばー!!」
 リナリナも敵の頭上へと位置取り、うねうねと吸盤の付いた8本の脚に着目する。
 それぞれが四方八方バラバラに動いてはいたが、いくら全部が個別に動くにしても決定的なことにリナリナは着目して。
「たこたこは目2つに意識は1つ。攻撃精度に絶対バラツキでる!」
 縁もそうだが、リナリナも呼称たこたこの視界外へと常に回り込み、蹴りを叩き込んだ直後に爆撃を浴びせていたようだった。
 爆撃と言えば、王国軍も砲撃を行い、支援はしてくれるが、彼らの船がタコ足に絡まれぬようイレギュラーズ達は率先して攻め込む。
 ムスティスラーフもまた自船と合わせ、タコ足の絡みつきを警戒しながら本体である頭を狙う。
「……今だ!」
 ただ狙うだけでなく、ムスティスラーフは相手が足を延ばしてきたタイミングで大きく息を吸い込み、むっち砲を放つ。
 放たれた緑色の砲撃はタコ足2本に穴を穿ち、さらに本体にもしっかりと抉り込んでいく。
「かばわれてる分の仕事はして見せるさ」
 ムスティスラーフはカンベエの位置を気にしつつ、さらなる砲撃準備に動いていた。
 そのカンベエは基本的に、リナリナとムスティスラーフのカバーに当たる。
「基本はこれですね!」
 とはいえ、タコの後頭部に位置取るリナリナがカンベエのカバー範囲から外れていたことで、他メンバーを守ることもしばしば。
「わしを殺さねば死ぬるは貴様ぞ! カンベエが命、食らってみせい!!」
 自らの再生力を高め、カンベエは自らを鼓舞する。
 向かい来る脚の叩きつけ、締め付け、それに時折向けられる本体の睨みつけと、連続して引き付けに当たる。
「ともかく! 最後まで倒れぬ!!」
 自身が倒れれば前線が崩れ、後ろに攻撃が及ぶと確信するカンベエ。
「なんと、なんと心踊る!」
 だからこそ、カンベエは盾役の任に身も心も昂らせていた。
 ミィもまた大装甲を構えて仲間の守りに当たる。
 ただ、序盤は仲間の傷もさほど深くないこともあり、迫りくる足に攻撃が届くと判断すれば、ミィも意を決して審判の一撃を撃ち込み、脚を弱らせようとしていた。
 そんな仲間に守られながらも、船上から攻撃するイレギュラーズ達。
「邪魔な足には同士討ちでもしてもらおうか」
 史之はこの絶望の青に住む狂王種を……正確にはその足複数を狙って、絶望の海を歌い聞かせる。
 彼自身も罹患していた廃滅病ほどではないにしろ、冷たい呪いがそれらの脚へと纏わりつき、同士討ちを始めることもしばしば。
 理性など存在しない脚を、うまく行動を誘導できればこちらのものだ。
 史之は仲間に頭の対処を任せ、できる限り脚の無力化するよう立ち回る。
 時折、脚同士が絡み合うのを確認したルーチェも、頭部を捉えながらそれらの足を狙って。
「余の魔力、その身で味わうとよいぞ……!」
 彼女は自らの口の中へと全身の魔力を収束させ、全てを薙ぎ払う光の奔流として発射していく。
 かなりの力を持つ狂王種とて、無傷とはいかない。
 ルーチェは魔力ある限り、2発目、3発目と砲撃を繰り返して脚の破壊を狙う。

 敢えて水中から攻撃を仕掛けていく海種の2人。
 イリスは仲間が貫通攻撃を放ったのを確認し、射線の邪魔とならぬよう立ち位置を気にして。
「まあ、脚の足止めかしら」
 序盤は船が沈まないように警戒しつつ、海上に姿を現した脚へとイリスはぶつかり、船から離れるように、また仲間達が攻撃しやすいように誘導していく。
 一方で、敵の後頭部へと陣取る縁。
「視界に入らねぇようにすりゃぁ、睨まれたり墨をぶっかけられることはねぇ筈だ」
 彼もまた頭を巻き込まないよう注意しながら脚を自身に引き付け、船を壊されないよう立ち回る。
 ただ、そこは狂王種。体に似合わぬ素早い動きで締め上げようとしてくる。
 それもあって、縁はできるだけ多方向に泳ぎ回り、脚同士の絡みつきを狙う。
 捕まられそうになっていた彼の援護をとルーチェが飛行して船から飛び出し、魔力撃を見舞って脚1本を破壊した。
 だが、素早く飛んでくる別の脚の対処が遅れたルーチェは強かに空中で叩きつけられ、パンドラの力でなんとか意識を保っていた。
 なお、縁はその間に上手く2本を絡め、水の中でも赫々と燃え続ける炎で足を弱らせていく。
 イリスはそのうちの1体へと齧りつき、完全に動きを止めてしまう。
「うーん」
 その味を噛みしめるイリス。
 決してまずくはないが、焼くなり調味料をつけるなりしていただきたい味である。
「廃滅病にかかったタコじゃなければいいのだけれど」
 その辺りは目を瞑りつつ、次の足の撃破をイリスは目指す。
 なお、もう1本は再び絡みかかられそうになっていた縁が再度【龍神之燈】を浴びせかけて撃破していたようだった。

 飛び交う砲弾にバリスタ弾。
 遠方から王国軍もできる限り攻撃の手数を増やし、イレギュラーズを援護してくれる。
「外洋攻略! 皆で果たそうぞ!!」
 仲間のカバーを行うカンベエがスピーカーボムで兵士達を鼓舞する。
 そのおかげで、士気高く戦っていた王国軍に、カンベエは手前の足を狙うように促す。
 脚1本当たりの耐久力も微妙に高いが、それでも、すでに3本が無力化しており、彼は撃破できなくはないと判断していた。
 そんな中、カンベエの足へと絡みつく脚が1本。
 すかさず、ムスティスラーフが全身の筋力を魔力へと転化し、直接その足へと叩きつけ、爆破していく。
 残念ながら逃げられたが、その足はかなり傷んでいるはずだ。
「守られるだけじゃない、お互いに守り合うんだ」
 カンベエの守りを意識していたムスティスラーフだ。その感謝も込めて彼を助けに当たる。
 また、ムスティスラーフは一度倒れかけていたルーチェに祈りを捧げるべく息を整えて。
 落ち着いてスキルを発動させた彼は2本の角から蒼碧の光を放ち、癒しをもたらしていた。
「どうしても後ろの敵が離れない。コレ、ストレス!」
 なお、その間にリナリナは脚が落ちていくタコの頭の後ろに陣取り続け、敵をイラつかせる。
 その頭目がけ、彼女は手当たり次第攻撃を行い、先程爆破された脚が自分を狙ってきたことで思いっきり齧りつき、動かなくしてしまっていた。
「いいね、いいね、このまま押し切っちゃおう」
 これで脚は半分。史之は敵の頭に向かう仲間を回復させる。
 どうやら、墨は視界と動きを奪い、睨みは体を硬直させて呪いまで与えてくるようだったが。
「まかせて、万全の態勢にするよ」
 彼は大きな声で号令を発し、仲間が全力を出すことができるように支援していた。
 程なくして、脚数本を残したままで大きく怯んだレッドデビルの隙を突き、メンバーや王国軍は頭に攻撃を集中させていく。
 その最中、ミィが抵抗力を攻撃力に転化して力の限り叩きつけたところで、敵の態勢が完全に崩れて。
「……悪いな、大人しく死んでくれや」
 防御の構えを解いた縁は渾身の一撃を打ち込み、レッドデビル本体にとどめを刺す。
「………………!!」
 大量の墨を噴き出したレッドデビルは自身の赤い体と絶望の青を黒く染めながら、海の藻屑となり果てていったのだった。


 レッドデビルの頭を仕留めはしたが、タコという生物は頭が倒れても脚はしばらく動き続ける。
 脚が抵抗を止めるまでは油断を怠るわけにはいかない為、メンバー達は攻撃を続けることとなる。
 引き続いてルーチェも魔弾を飛ばしていたのだが、頭が力を溜めていて。
 イリスが縁やリナリナを、カンベエがムスティスラーフと史之のカバーへと動く中、ミィがルーチェのカバーに当たるが、2人纏めて船の甲板へと叩きつけられてしまった。
 ミィはパンドラの力で何とか立ち上がっていたが、ルーチェは再度甲板に伏して起き上がれずにいた。
「何せあれだけデカイ躰ですからねえ!」
 気を張っていても耐えられぬことのある状況に、カンベエがさらに注意を促す。
 あの太い脚1本に絡まれるだけでも、船は転覆の危険があるのだ。
 船から狙いをそらすべく、縁も海中から攻撃を続けて脚の気を引き、死後硬直が始まるまでの時間を稼ぐ。
 イリスもまた甲板にいる仲間が海中へと引きずり込まれぬよう配慮する。
 伸びてきた脚目がけ、イリスは構えた盾ごとぶつかって気を引いていた。
「たこたこ、食材!」
 空中から雷を纏ったリナリナがヒップアタックをしてタコ足を抑え、ムスティスラーフがそのタコ足を倒して被害の縮小をはかっていたようだ。
 王国軍ももうひと踏ん張りと砲弾、バリスタ砲を撃ち続けて脚の動きを止めようとする。
 とはいえ、疲弊は大きく、動けなくなっていた者もちらほらといたようで。
 史之は王国軍の様子も気にかけ、支援の声を掛ける。
「『体現者』の秋宮史之だよ。もう大丈夫」
 女王陛下の民は必ず守ると、史之は回復に当たっていく。
 脚の抵抗はそれほど長く続かない。
 その場のメンバー達が交戦していると、残っていた脚の動きが止まり、頭に引きずられるようにして海へと沈み始める。
「「おおおおおおおおおおお!!」」
 狂王種レッドデビルを完全討伐し、一行は勝鬨の声を上げる。
 ただ、その一方で、新たに廃滅病へと罹患する者の姿も。
 深手を負ったことで仲間の手当てを受けていたミィは、自らの身体にその兆候が表れていたことを自認する。
「廃滅病という病は厄介であるな」
 そろそろ、病の根源であるアルバニアが痺れを切らして出てきてほしい。
 仲間の容態を確認したルーチェは、そう希望してやまないのだった。

成否

成功

MVP

十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍

状態異常

ミィ・アンミニィ(p3p008009)[重傷]
祈捧の冒険者

あとがき

リプレイ、公開です。
MVPは脚1本と頭を撃破したあなたへ。
今回もご参加、ありがとうございました!

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