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シナリオ詳細

<虹の架け橋>可愛い妖精と迷宮攻略!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 深緑を中心に混沌各地に伝わる妖精伝承。
 妖精達は古来より、妖精郷の門……アーカンシェルを通じて、常春の都『アルヴィオン』からやってきていた。
 気まぐれな妖精も多く、時には人々と交流し、時にはいたずらをして伝承の中に溶け込んできたのだろう。
 だが、先日よりこのアーカンシェルを魔物が襲撃し、妖精達が助けを求めてくる事件が頻発している。
 深緑の迷宮森林警備隊も平時の魔物討伐で手いっぱいだったこともあり、ローレットが事件を解決して、アーカンシェルを防衛。イレギュラーズ達は妖精達をアーカンシェルへと送り届けたり、親睦を深めたりしてきた。
 なお、その魔物達は人為的(魔為的と指摘する声もある)に造られたと思われる手合いであり、その背後に魔種が絡んでいると見られている。
 また、魔物達が交戦時、イレギュラーズの血や髪などを採取するという不可解な事件も発生していたのだった――。


 深緑より、ローレットへと悪い知らせが届く。
 なんでも、各地にある妖精郷への門(アーカンシェル)が、一斉に破壊される事件が発生したというのだ。
「魔種がアーカンシェルを強引に突破して、アルヴィオンに侵入してしまったようだな」
 幻想、ローレット。
 『海賊淑女』オリヴィア・ミラン(p3n000011)が集まるイレギュラーズ達へと今回の事件について説明を行う。
 イレギュラーズ達が解決した事件によって守り抜いた門はどうにか無事だが、余波を受けて門の機能は全て停止してしまっている。
 この為、妖精達は故郷へと帰還する道を失ってしまっており、以前、オリヴィアが紹介した事件で助けた妖精の少女エーヴィもまたその1人だ。
 現状、エーヴィは故郷に戻れず困り果てており、草むらへと隠れて魔物の強襲から逃れているのだという。他の妖精達も集落へと厄介になったり、複数で身を寄せ合ったりして不安な日々を送っているはずだ。
「ところで、グリムアザースの吟遊詩人ライエル・クライサーがこんな術詩を考案したって話がある」
 それは、アーカンシェルが通常『ショートカット』している古代の大迷宮『ヘイムダリオン』への道を切り開く歌。
 門の前で歌う、または楽曲として演奏することで、『ショートカット』を解除して『正規ルート』へ侵入出来る効力があるのだそうだ。
「その話をしたら、妖精はものすごく感謝していたな」
 アーカンシェルが破壊されている状況の中、イレギュラーズ達が守り切ったアーカンシェルからアルヴィオンへと戻る可能性が生まれたのは、非常に大きいのだろう。
「あと、この事件を引き起こしているのが魔種っていうなら、アタシ達の本業だ。……そうだろう?」
 イレギュラーズ達が頷いたのを確認したのを確認し、オリヴィアは満足そうに説明を続ける。

 大迷宮『ヘイムダリオン』には、以前イレギュラーズ達が救った妖精郷の門……アーカンシェルから突入することになる。
 門の周囲の木陰に妖精エーヴィが身を隠しているので、彼女と合流して迷宮へと突入したい。
「そのエーヴィが術詩『虹の架け橋』を歌うことで、通常ルートへの入り口が現れるはずだ」
 ヘイムダリオンの内部は複雑怪奇で、入り口も雰囲気もバラバラなのだそうだ。雰囲気としては『果ての迷宮』を思わせる構造をしている。
 深部に『虹の宝珠』があり、それを入手することで更なる深部への道が現れる。
 これをたくさん集めることで、アルヴィオンに到達するのだという。
「ダンジョンは様々な罠が仕掛けられている上、魔種の放った錬金術モンスターが徘徊しているようだよ」
 一つ一つはさほど対処が難しくない罠や魔物。
 だが、罠も複合して仕掛けられている可能性があるし、魔物もグループで襲ってくることがある。
 障害も重なれば困難が伴ってしまう。丁寧に対処してヘイムダリオンを突破し、アルヴィオンを目指したい。
「以上だ。……アンタらの健闘を祈っているよ」
 そうして、オリヴィアは説明を締めくくったのだった。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様、こんにちは。なちゅいです。
 妖精エーヴィと共に、『大迷宮ヘイムダリオン』の攻略を願います。

●目的
 アルヴィオンへの到達

●敵……キメラ
 いずれも全長1m程度。
 無尽蔵に小動物の頭と動物を組み合わせたような姿をしております。
 基本、10体前後のグループで行動しているようです。
 魔種に操られているようですが、今回その姿を確認することはできません。

○サソリの下半身をもつネズミ
 ネズミの牙も、蠍の尻尾も毒があるようです。

○猿の頭を持つオオカミ
 煌めく瞳で凝視しつつ、鋭い爪で薙ぎ払い、食らいついてきます。

○鶏の頭を持つカラス
 妙な鳴き声を上げ、急降下して襲ってきます。

●NPC
○妖精……エーヴィ
 身長30センチぐらいの精霊種、12,3歳くらいの少女。
 青い服を纏った金髪の彼女で、魔法による簡単な回復支援は可能です。
 ただ、戦いは不向きですので、基本的には護ってあげてください。

●状況
 拙作『キメラ群がる妖精の門』にて護った妖精郷の門から、大迷宮『ヘイムダリオン』へと突入、踏破を願います。
(該当のシナリオを読む必要はございません)
 妖精エーヴィと語らいながら、多数の罠が仕掛けられている石造りの迷宮を進みます。
 電流床、槍衾、落とし穴、落石といった罠があちらこちらに張り巡らされております。
 場合によっては複合して発動する罠もあり、エーヴィをうまく守ってあげる必要があります。
 罠と合わせ、多数のキメラが襲ってきます。一度に襲ってくる数は10体前後、基本は1グループでの襲撃です。

●備考
 このシナリオではイレギュラーズの『血』『毛髪』『細胞』等が、敵に採取される可能性があります。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • <虹の架け橋>可愛い妖精と迷宮攻略!完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年04月25日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ドラマ・ゲツク(p3p000172)
蒼剣の弟子
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
リリー・シャルラハ(p3p000955)
自在の名手
フルール プリュニエ(p3p002501)
夢語る李花
シュリエ(p3p004298)
リグレットドール
レイリー=シュタイン(p3p007270)
ヴァイス☆ドラッヘ
羽住・利一(p3p007934)
特異運命座標
カナメ(p3p007960)
毒亜竜脅し

リプレイ


 深緑、森林迷宮の奥。
 ローレットのイレギュラーズ達は、以前の依頼において防衛した妖精郷の門……アーカンシェルへとやってくる。
 小人の少女『緋色の翼と共に』リトル・リリー(p3p000955)が草むらに隠れていた妖精エーヴィを発見し、再開を喜び合っていたようだ。
「遂に魔種がアルヴィオンに侵入してしまったのか」
 銀髪の騎士、『死力の聖剣』リゲル=アークライト(p3p000442)はこの状況を憂いながらも、保護したエーヴィを見下ろして。
「エーヴィ、大丈夫さ。この迷宮を抜けて、妖精郷の平穏を取り戻そう!」
「ええ、よろしくね」
 笑顔で元気づけるリゲルの右手の指を妖精の少女は嬉しそうに握手していた。
「ふむふむ、要はダンジョンを攻略すれば良いんだにゃ?」
「魔物とトラップを抜けて、宝珠を集めて目的地へ到着ー、でいいんだよね?」
 金髪猫耳の少女、『爆殺人形』シュリエ(p3p004298)、トナカイの獣種の『優しいカナ姉ちゃん』カナメ(p3p007960)が続けて仲間達へと問う。
「うん、こういう迷宮って何が起こるか楽しいよね」
 金髪ウェーブヘアの女騎士、『展開式増加装甲』レイリ―=シュタイン(p3p007270)はわくわくして隅々まで探検したいと目を輝かせるが、目的と安全を最優先にと自制する。
「ただ、迷宮攻略は迂闊な行動が危険を招くから緊張するな」
 精悍そうな見た目だが、やや目つきの悪さを感じさせる『特異運命座標』羽住・利一(p3p007934)だが、彼もまた妖精達が故郷に帰れるようにと全力を尽くす構えだ。
「やっぱりトラップだから、引っかかったら痛い事してくれるのかな……えへへ……♪」
 ただ、カナメは危険もひっくるめて迷宮探索が楽しみなようだ。
「オッケーオッケー、プリティーなわらわに任せると良いのにゃ!」
「妖精さんたちの為にも頑張っていこうね☆」
 胸を叩くシュリエや気合を入れるカナメの姿に、エーヴィは非常に心強さを感じていたようだ。

 その後、エーヴィに大迷宮『ヘイムダリオン』への道を開く為、エーヴィが事前に聞いていた歌を口ずさむ。
 メグ・メル リグ・イル 喜びヶ原にかかる橋。
 ラグ・リル マグ・ミル 常春の国へむかう橋。
 すると、光を放っていた門の中に地下へと降りる階段が現れる。
 イレギュラーズ達は早速階段を下りていき、迷宮へと突入していく。
 少し進むと、足首に届くほどの長さがある桃色交じりの金髪ツインテールを持つ、『夢語る李花』フルール プリュニエ(p3p002501)が大きな穴の開いた通路の向こう側に魔物の集団が歩いているのを発見して。
「あらあら、ここにもキメラがいっぱいね」
「こんな所にまで人工物の魔物が! 妖精郷に危機が迫っているようです」
 ウェーブがかった長い白髪の『蒼剣の弟子』ドラマ・ゲツク(p3p000172)がこの状況に危機感を募らせる。
「さそりねずみにさるのおおかみ、にわとり……からす? なにこれ。これほんとにどーぶつなの?」
 いやだな、なにかと、リリーは露骨にキメラに嫌悪感を示す。
「だめよね、ここを通しては。守りましょう、この場所を」
 フルールは愛しい真紅の焔の鳥型の精霊フィニクスに燃えカスにするよう頼もうと思ったが、不要な交戦は避けるべきと判断して止めていた。
「妖精さんは古くからの隣人。この迷宮を急いで踏破して、救援に向かいましょう!」
 ドラマの言葉に皆頷き、迷宮の奥へと歩を進めていくのである。


 所によっては植物の根が飛び出す石造りの迷宮の中、イレギュラーズ達は足音を立てて歩く。
「カナたちすごい冒険してるーって感じだね♪」
 古い造りの迷宮が一層雰囲気を醸し出し、カナメは目を輝かせる。
 しかしながら、『大迷宮』には不安要素も少なくない。
「どの程度の規模か分かりません」
 迷宮の規模が判明していないこともあり、ドラマは道中で補給できる軽食などの準備を十全に行っていた。
 また、先程遠目で見かけたキメラのグループには細心の注意を払わねばならない。
「日々の鍛錬で、守られるだけの自分ではなくなりました!」
 そう自信を見せるドラマは最前線に立ち、先を急ぐ。
 盾役となるレイリーも並び立ちつつ感情探査を行い、キメラの敵意を感じ取ってその接近を事前に察知しようと努める。
 最後尾はリゲルが預かっていた。
 彼は暗視や透視といった手段で周囲を探り、とりわけ前方のレイリーと情報共有して不要な戦闘を避ける。
 利一もカンテラで薄暗い通路を照らしつつ、ハイセンスと暗視も駆使して五感全てで索敵と罠発見に集中する。
 半数あまりのメンバーが罠の解除、回避に注力していたが、利一も索敵と合わせて不自然な形で仕掛けられた罠の発見にも当たる。
「罠の発見から解除まで。一家に一台シュリエちゃんにゃー」
 ゲームのように回復アイテムはないと言うシュリエは、トラップもエンカウントも最小限にと語っていた。
 気づく為のきっかけとして、壁や床の構造、色の違い、物音。
 不自然な天井の膨らみはいかにもな危険信号だ。
 索敵を仲間に任せていたシュリエは、天井を任せていたシーフぴよちゃんに発見してもらう。
 重みで天井が落ちていたのは、どうやら落石の印らしい。
「壁に沿って歩くのにゃー」
「フィニクスも手伝ってもらえるとありがたいですが。良いですか?……ふふ、良い子」
 決して壁も安全ではない為、念の為とフルールがその壁の周囲を飛び回る。
 壁がフィニクスの体を覆う炎によって焦げていく様子をメンバー達は目にして。
「フィニクスには誰も触っちゃだめよ? 燃えちゃうから」
 フルールが注意を促すと、仲間達はそれを了承しながらも焦げ付いた壁を手前を歩いて落石をやり過ごす。
 なお、フルールはこの地に住まう土や岩の精霊の力を借り、落石が落下しないよう天井を補強してもらっていたようだ。
「ファミリアーのみんな、まけてはいられませんよっ」
 リリーは使役していた烏2羽へと呼び掛け、先行させる。
 烏は迷宮を飛び回り、壁から放たれる槍衾を起動させ、素早く避けてみせた。
「さすが、からすさんすごい!」
 大活躍のファミリアーに、リリーはエーヴィと喜び合っていた。

 カツッ、カツッ……。
 明らかに足音が違えば、それだけで警戒心も高まる。
 前方の床に何かあることを察したカナメは思わずその床へと歩み寄ろうとして、いやいやと首を横に振る。
「痛いのは好きだけど、みんなに迷惑はかけられないしー?」
 そこで、こんなこともあろうかとカナメは小石を取り出して前方へと投げつけると、激しい電流が前方一定区間の床を駆け巡り始める。
 上手く罠を避けるイレギュラーズに、エーヴィは頼もしさを覚えていたようだ。
 そこで、手帳に道を記録していくリゲルは破ったマントを飛び出した植物の根に巻きつけ、導とする。
「大事な森を傷つけてはいけない」
 そこで、リゲルは別ルートからの侵攻を提案し、一旦この場は引き返すこととする。
 さすがに、これだけのメンバーがあれば、不意に罠にかかる可能性も低そうだとドラマは考えつつ。
「……この罠を利用して、魔物を引っ掛けるのに利用したりは出来ないでしょうか?」
 罠対策とキメラ討伐の両方を一気にできるような状況はないかと、ドラマは思案していたのだった。


 そうして罠を解除、あるいは避けつつ進むイレギュラーズ達だったが、次なる苦難が彼らを襲う。
「……何か来るよ」
 リゲルはすぐさま後方から接近している集団に気付き、周囲の壁、天井の崩落を懸念して保護結界を展開する。
 明らかな獣臭を感じていた利一が一行の中央に位置取りつつ、不安がるエーヴィの姿を気にして。
「私達が守るから安心してね」
 自分の身を守ることを優先してくれたら大丈夫という利一の言葉に、エーヴィは小さく頷いた。
 接近してくる地を駆ける集団。頭は鼠、胴体はサソリというキメラだ。
 幸い、敵は直線上の前方から駆けてくる。
 リゲルはすかさず抜き身で断罪の斬刃を放ち、鼠サソリの体に斬撃を浴びせかけた。
「基本、石造りで保護結界があるなら、遠慮はいらないわね」
 これだけの状況であれば、運が良ければ一撃で一掃できそうだとフルールは笑って。
「焔よ華開け。すべてを呑み込み紅く朱く咲き誇れ」
 発する炎はまさしく炎の花となり、向かい来るキメラ達を包み込む。
 手前の1体だけでなく、大きく炎を燃え上がらせた1体があっさりと絶命してしまうが、それでもフルールは手応え十分。
「これでだいぶ楽に掃討できるんじゃないかしら」
 地を駆ける8体のキメラは全員が体に火傷を負っている状態だ。
「さぁ、こちらへ来い、キメラども」
 レイリーが向かい来る敵へと、名乗りを上げて引き付けに当たる。
 チュ、チュウ……。
 一応、鳴き声は鼠らしいキメラ。
 集まって近づいてくるそれらは、シュリエにとっては手玉でしかない。
「一気に纏めて攻撃するにゃ!」
 その手に火焔の大扇を生み出したシュリエは、一気に敵を薙ぎ払っていく。
「雑魚乙!」
 半数を床に転がし、シュリエは鼻を高くする。
 残る4体を、それぞれ近距離で対するメンバーが相手に向かう。
 ドラマは温存を考えつつ、敵が接近するまでの間は書物に巣食う不可視の悪魔の腕で敵の気力を吸っていたが、近づいてきた相手には素早く蒼い刀身を一閃させ、首と胴体を切断してしまう。
「動物と動物がくっついちゃって、なんかもう、気持ち悪いなぁ!」
 改めて、近場でキメラの姿を見て嫌悪感を示すカナメ。
 思った以上に素早い敵からサソリの尻尾を喰らってしまうが、カナメはなぜか恍惚とした表情をしながら、軽槍で連続攻撃を浴びせて丁寧に追い詰める。
 逃さぬようにと配慮したカナメはトドメに、狂熱的なダンスで相手する鼠サソリの体力を削ぎ落とす。
 距離を置いて敵と対していた利一も敵が残り少ないこともあり、「因果を歪める力」で単体を狙い、キメラの体を完全に破壊してしまう。
 残り1体はリリーが相手取る。
 いつものようにと式符から生み出した冥闇の黒炎烏に一度その体を穿たせると、噛みつきを上手く防いでからリリーは書物を広げる。
 噴き出す靄から現れた鎖と首輪で繋がれた巨大な狼のような獣へとリリーが魔法で毒と炎を纏わせると、獣は一気に鼠サソリを噛み砕き、この場から消え去っていく。
 敵を倒した……と気を緩めた時こそ、罠は恐ろしい。
 そこで、利一が頭上を気にかけて。
「落石だ」
 それを聞いたリゲルは小石のつぶてが降ってくる落石箇所を発見し、黒星では間に合わないと判断してエーヴィを守る。
「あ、ありがとう」
「小さい身体は人より脆いのではと心配になってしまうな」
 多少傷ついてしまったリゲルへと、エーヴィは治癒術を施していくのである。


 その後、大迷宮の罠に対処していくイレギュラーズ達は、2グループ目のキメラ、鶏カラスの群れを退ける。
 度重なる罠に集中力も切れかけていた一行は、比較的広い通路で休憩を取ることに。
「私が周囲警戒を行いましょう」
 ギフトの降下で睡眠をほとんど必要としないドラマは、仲間達へ休むよう促す。
 しばし数人のメンバーが寝息を立てる間、なかなか見えてこない故郷に溜息をつく妖精の姿を見た利一が声をかける。
「エーヴィの魔法は頼りになるね、これから先もよろしくね」
「うん、ありがとう」
 笑顔でドラマの用意した軽食を口にする妖精の姿は愛らしい。
 束の間の休息を取る間、周囲を捜索するレイリーはこれまでの罠を振り返る。
「高低温、強風、状態異常……そういった関係の罠はなかったよね」
 比較的、罠の対処が楽なダンジョンに入ったことは僥倖と言えたが、ここにきて気になることが1つ。
 明らかに擦れた跡があるにもかかわらず、こちらから何かしても反応がない壁が近くにある。
 気の迷いかと考えていたレイリーだったが、そこで利一が耳を澄ませて。
「音が聞こえるな」
 獣臭や猿のような鳴き声を感じとる利一。
 休んでいたメンバー達も気を張り詰め、敵の接近に備える。
 先程レイリーが気にしていた壁が突然捲れ上がり、この場にキメラ……猿オオカミどもが飛び込んできた。
「「キキッ……!?」」
 ただ、敵も不自然なほどに驚いている。
「なるほど、一方通行の壁だったか」
 利一が言うのは、壁を通過すれば、元居た場所には戻れなくなるトラップだ。
 奇襲かと思いきや、期せずして敵を待ち伏せする形となったようだ。
 ドラマは至近での戦いとあって、蒼い刃で切りかかっていく。
 じっと見つめてくる気味の悪い相手の視線を遮るようにして、リゲルは名乗りを上げる。
「俺が相手になろう。かかってこい!」
 すると、見つめていたキメラと合わせ、数体がリゲルへと向かっていく。
「まずは目の前の敵を倒さないとね」
 カナメはこれまでの敵と同様に追い詰めての攻撃を行う他、攻撃パターンを変えて流麗に舞いながらも連撃を交えて切りかかっていた。
 敵が飛び込んできた状態だが、相手の虚をつくことができた珍しい状況。
 利一は敵の数を減らすことを優先しようと、仲間に当たらぬよう貫通する魔弾でキメラ3体を撃ち抜いて屠っていく。
 シュリエも相手が纏まっているのを見て、うねる雷撃を発して2体を地面に沈めてしまう。
「次こいにゃ! しゅんころしてやるにゃ!」
 気合いを入れるシュリエの少し後ろへとリリーが距離を取り、猿オオカミのひっかきから逃れる。
 スキルをローテーションして使うリリーはいつもの攻撃をと見せかけて。
「あたらしいきつねさんもだしてくよ!」
 新技のテストをと、リリーは召喚した大きな九尾の白狐をけしかけ、キメラの体を食らいつかせる。
 そのキメラは出血もひどく、そのまま命を落としてしまっていた。
 フルールも飛び掛かろうとしてきた敵1体を焔式で燃やし尽くす。
「一気に纏めて燃やし尽くした方が好みなのだけれど。仕方ないわね」
 さらに、フルールは状況を見て傷つく仲間の癒しにも当たる。
「少しは気休めになるでしょう」
 敵に引っかかれ、噛みつかれた仲間へと簡易治癒術を使うフルール。なお、彼女は自分自身の傷は大丈夫と小さく笑い、エーヴィの回復を辞していたようだ。
「心配はありがたいけどね」
「うん、気を付けてね」
 そんな様子を横目にしながら、レイリーは城の如く不動の構えを取り、防御に集中して戦線の維持に努める。
「覚悟するんだね」
 弱った敵を確認すれば、レイリーは素早く攻撃に転じ、意志抵抗力を破壊力に転化した大楯の一撃を叩き込み、脳震盪を起こした敵を一気に叩き潰す。
 さらに、リゲルが銀の剣で敵の胴を切り裂いてしまえば、残るキメラは1体に。
 素早くシュリエへと近づいた敵は、彼女の髪を1本拝借して逃げ出していく。
「困りますお客様! あーっ! テイクアウトは禁止ですにゃ!」
 細胞を採取など、絶対ろくなことに使わないやつだと、シュリエは本気で面倒がる。
「収集されてしまったら、嫌な予感しか致しませんね」
 ドラマは自らの素早さを活かして、逃げるキメラを追いかける。
「さすがに、誘導するには遠すぎないか?」
 利一も罠にはめることは想定していたが、少し距離がある。
「大丈夫。あそこに追い込めば……」
 しかし、相手は現状逃げの一手を打っているからこそ、ドラマは一気に追いかけつつ落とすことができると判断していた。
 なぜなら、メンバーは休憩前に丁度、再び電流床を発見していたのだ。
 そちらへとドラマはうまく敵を誘導して。
「…………!!」
 自分から罠にかかった鼠サソリを哀れと感じつつも、ドラマは仲間の元まで戻っていくのだった。


 交戦を終え、レイリーはキメラの死体を確認して。
「一体どんな術を使うか、検討もつかないけれど……」
 残念ながら、キメラからは魔種に繋がりそうな情報はほとんど得られずじまいだった。
「それはそうと、出口が近いみたいですね!」
 ドラマは嬉しそうに駆け出し、奥に安置されていた虹の宝珠を手にする。
 正八面体をしたそれを手にすると前方の扉が開き、柔らかく暖かな風が迷宮内へと吹き込んできた。
 すると、エーヴィの表情が一気に綻ぶ。
「帰ってきたよ。……アルヴィオンに」
 戻れないのではないかと考えていた故郷。エーヴィの目尻には涙も浮かんでいた。
「そういえば、聞いておきたかったのだけど」
 リゲルは安堵するエーヴィへと妖精郷の女王様のこと、そして魔種である片眼鏡の男について問う。
「ファレノプシス女王……無事だといいのだけれど」
 ただ、彼女は何も知らず、女王の身を確保した魔種についても知らないと首を横に振る。
 果たして、魔種の狙いは何なのか。
 その謎を解くべく、イレギュラーズ達は更なる情報を集めることにするのだった。

成否

成功

MVP

ドラマ・ゲツク(p3p000172)
蒼剣の弟子

状態異常

なし

あとがき

リプレイ、公開です。
MVPは罠にキメラを引っかけることを考えた上で、
実践させたあなたへ。
今回はご参加、ありがとうございました!

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