あなたの描くデートを教えて

オープニング

●初めての
　手作りチョコを持ってバレンタインに告白してから、仕事の邪魔をしないように彼の休みの日に会って。
　だけどそれは水曜日なので学生であるエリカは授業があって、あって話が出来るのは授業が終わってからのわずかな時間。
　ドキドキして幸せだけど、もっと一緒にいたいし、話したいと思うのはわがままだろうか。
「デート、いつできるのかな……」
　告白の後、いつデートできるか分からないけど。なんて言われたけど、付き合い始めて二か月目。初デートを夢見るのは良いだろう。
　そんな風に悩んでいたら、パティシエからではなく、彼の妹からメールが届いた。
『再来週の土曜日、店休みにするからデートのお誘いしてみたら？』
「！？」
　突然の連絡に一人赤くなったり青くなったりしていると、もう一件メールが。
『再来週の土曜日妹が抜けられない用事があるっていうからお店休みにしちゃった。良かったら初デートどうかしら？』
「ふわぁ！？」
　恋人であるパティシエからデートのお誘いに、今度は思わず声が出た。
　震える手でメールを打つと、エリカは思い切って送信ボタンを押した。
　返事は、もちろん喜んで！

「よかった。これでやっとデートに行けるわ」
　バレンタインに予想外の告白をされたパティシエ。
　好意を抱いていた相手なので、オネェであることと、仕事の都合でデートは行けるか分からないと伝えた上で自分で良いのかと聞けば、エリカは顔を真っ赤にして何度も頷いた。
　その姿が可愛くて、その場でOKを出したのは記憶に新しい。
　自分の休憩時間をずらしてエリカと会う時間作ったけど、それは一日長くて二時間ほど。
　仕事が終わるのは深夜の時間帯なので、終わってから会うのも難しい。
　ずっとエリカを待たせているのは心苦しかった。だからその分初デートは記憶に残るとびっきりのデートにしようと決めていた。
「でも……どうしましょう。普通のデートってどんな所に行くのかしら……」
　パティシエ一筋でやってきた彼は、出かける＝他の店で食べ歩き。
　流石にデートで食べ歩きはどうだろうと思い、頭を悩ませるのだった。

●デートコースはどこに行こう
　もぐもぐとマカロンを食べながら、フェリーチェは目の前にいる人に聞いてみる。
「デートに行くならどこがいいと思う？」
　どういうことかと聞けば、初デートでどこに行けばいいのか悩むカップルのお手伝いだと帰ってくる。
　町は色んな施設が揃っている。
　その中であなたが恋人と行くならどんな場所に、どんなコースで行くだろうか。

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第2章

第2章 第1節

「みんな、色んなデートを考えてくれたり、教えてくれて有難いわね」
「デートって、相手のことを知るにはピッタリなんだね！」
「自分のことを知ってもらう場でもあるわね」
　お互いのことを分かり合って、ドキドキしたりワクワクしたりする特別なイベント。
　あの子は動物園に連れて行ったらどんな反応をするだろう。
　ショッピングではどんな店に目を引かれるのだろう。
　甘いもの以外は何が好きなんだろう。
　考えるだけでわくわくするし、喜ぶ顔を想像すると胸の奥がふわっと暖かくなる。
「お茶の時間からはどんなコースがお勧めかなぁ？」
　ワクワクとした表情で見上げてくるフェリーチェに、どんなデートをお勧めしよう？

＊

　後半は夕方（昼下がり）～夜までとなります。
　NPCは案内人のフェリーチェと、依頼人のパティシエがおります。
　二人に絡んでも良し、二人っきりで楽しんでも良しですので、皆さんの考える昼下がり～夜にかけてのデートを楽しんでください！

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第2章 第2節

　夜はちょっぴりロマンチックにいきたいなー。というアニーの言葉で、静まった湖のある公園へやってきた零とアニー。
　零は星空を見ながら食べるディナーを考えたけど、アニーの笑顔に勝てるはずがない。
「あ、ボートがある！　乗ってみようよ！　ゴーゴー！」
「湖のデートも良いな！」
　夜になると花火が上がると言う。それを湖の上から見るのもロマンチックだろう。

　小さいけど向かい合って座れるボートを見つけたアニーは、期待の眼差しで零を見た。
「向い合せで乗れるボートに乗ろう！」
　キラキラとした眼差しのアニーの提案を断れるだろうか。否、断れるわけがない。
　動かし方を簡単に練習すると、零は乗り場で待っていたアニーに手を伸ばす。
「お待たせ、アニー」
　ランタンの優しい灯りに照らされた零の笑顔と自分に差し伸べる手に、アニーはドキドキしながら自分の手を重ねた。

　アニーが座ったのをみて、零は湖の中心に向かってボートを漕ぐ。
　うっかり転覆しない様に緩やかに。
　そんな零をみながら、アニーは膝を抱えて幸せに頬を緩めた。
（今は私が零くんを独り占め……。これなら零くんをずっと見ていられる）
　少し揺れながら、だけどゆっくりと湖の中心着くと、二人揃って町のほうを見る。
「間に合ったかな」
　ほっと息を吐くと、町のほうで花火が上がる音がした。
「おっ、始まった！　こんな風に花火見る事無かったけど良いもんだな……」
　夜空を彩る花火を見上げて、アニーはほぅ。と息を吐く。
「花火っていつ見ても素敵よね。
　あ、みてみて零くん！　水面にも花火が映ってる！」
　夜空と水面に映る花火に興奮していると、花火の合間に零の呟きが聞こえた。

　光の花が咲き乱れる。
　空の花火は華やかで、湖に映る花火も幻想的で、花火の音が体に響くのも零が好きな感覚だ。
　だけどそれより、花火が映るアニーの瞳が、いや、アニー自身が――
「……好きだなぁ……」
　花火と花火の合間の、音のない時間。
　その時間に思わずそう呟くぐらい、零はアニーに見惚れていた。花火よりも何よりも、一番素敵だと想った。

（零くんの呟き、どう受け取ればいいのかな……？）
　驚き目を見開きながら、じわじわとアニーの顔が赤くなっていく。
　夜空に咲く花火と水面に映る花火に包まれて、まるで夢の中みたいで現実感がない。
「……夢じゃないよね……？」
　零の頬にそっと手を添え、そのぬくもりこれが現実ということを確かめる。
「夢じゃないよ。
　オールがなければ、君を抱きしめたいぐらいだ」
　精一杯の勇気を出して安心させるように言うと、アニーはふにゃりと笑った。
「よかった……夢じゃない……」
　安心したアニーは、零の頬を小さな手で包み込んで微笑んだ。
「零くん……大好き……」
　花火に消えてしまいそうな小さな声。だけど零の耳にはしっかりと届いた。
「……俺も、大好き、だ。アニー」
　花火なんて関係ないぐらい、零はアニーに惹かれているから。

成否

成功

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第2章 第3節

「デートは相手ありきです。どこに行くか、どんなデートにするかを決める際には相手を思い浮かべて考えてみましょう」
　リゲルの言葉にパティシエはほうほうと頷いた。
「例えば？」
「例えばポテト――俺の妻ならほのぼの楽しめる場所が良いでしょう。
　花を見たり動物と触れ合ったり、子供達と遊んだり。素朴な場所が落ち着けるかもしれない。
　フェリーチェなら美味しい物が好きだろう？　なら一日中何処へ行こうとも、美味しい物がある場所を選ぶな。
　例えば今からスイーツビュッフェに行くのはどうだい？　なんてな」
「行く！」
　スイーツビュッフェに反応したフェリーチェは、それが例えだとわかってしゅんと肩を落とした。
　それを見て、パティシエがお勧めのデザートを注文する。
「美味しそう！」
　苺がたっぷり乗ったタルトを前に機嫌の直ったフェリーチェにほっとすると、リゲルはパティシエとの話を再開した。
「エリカさんは、貴方に惚れている。なら何処へ行こうと喜ぶ筈」
「そ、そうかしら……」
「大丈夫です。自信を持って下さい。
　その上で貴方ならではの選択を引き出すならば、貴方は食べ歩きで最高の店を知って来た筈。
　貴方が間違いない！　と思える店でディナーを楽しむのは如何でしょう？
　最高の料理と共に最高の一時を紡げると思いますよ」
　パティシエらしさを出しつつ、エリカが喜ぶデート。
　そんなプランを提案するリゲルに、パティシエは有難うと笑顔を見せた。

成否

成功

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第2章 第4節

「お待たせしました……！」
　可愛く着飾って、小走りにやってきたエリカを見てパティシエは笑顔を浮かべた。
「大丈夫。約束の時間はまだよ」
「でも……！」
「あら、あたしはエリカちゃんを誘った側よ？　エリカちゃんより先に来るのは当たり前」
　ぱちりとウィンクするパティシエに、エリカの頬が赤く染まる。
「約束の時間より少し早いけど、お店はもう開いているもの。早速行きましょう？」
　手を差し出せば、エリカは恥ずかしそうにおずおずとその手を握る。

　まずは動物園で可愛い動物を見ながらエリカの緊張を解きほぐす。
「見てください！　ふわふわです！」
　エリカは可愛い動物が好きなようで、まだ短時間しか公開されていない赤ちゃんライオンを見ては悶えている。
　もちろんふれあい広場ではうさぎやモルモットを見て目を輝かせていた。

　ランチは可愛らしさを重視しつつ、味も定評のあるところで。
「エリカちゃんは可愛いものが好きなのね」
「はい！」
　可愛い動物たちの話で盛り上がりながらランチを食べ終えたら、今度はショッピング。
　エリカはどんなものが好きなんだろう。と思いながら、ショッピングモールをぐるっと回る。
　途中で休憩を兼ねてお勧めのカフェに行けば、そこで働く知り合いにからかわれたり。

「恥ずかしい思いさせてごめんなさいね」
「だ、大丈夫です！　恥ずかしいより、嬉しかったから……」
　今まで二人が付き合っていることを知っている人は少なかった。
　その上エリカの友達は半信半疑だったので、からかい混じりとは言えおめでとうと言ってくれたのは嬉しかった。
「エリカちゃん……」
「パティシエさんのことも、今まで知らなかったこといっぱい知れたし、今日は嬉しいがいっぱいです！」
　顔を赤くしたまま笑うエリカに、パティシエも微笑み返す。
「あたしも、エリカちゃんに喜んで貰えて嬉しいわ」

　最後はお勧めの店でディナーを。
「ここはあたしのお気に入りなの」
　そう舌が肥えたパティシエが言うだけあって、その料理も絶品だった。だけど、最後に出てきたデザートだけは、一番とは言えなかった。
「どれも美味しかったです。でも……」
「でも？」
「デザートは、パティシエさんが作ったケーキのほうが美味しいです」
　その言葉と笑顔に、パティシエは嬉しそうに笑うのだった。