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シナリオ詳細

狼が来たぞー!!

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

■狼少年の物語
「狼が来たぞー! 狼が来たぞー!!」
 ある平穏な村にて。毎朝そんな風に叫びながら村中を駆け回るはた迷惑な少年がおりました。
 最初は村の人々もその言葉を信じて、狼に怯え家に閉じこもり鍵を閉めて恐怖に震えていましたが、すぐに少年が嘘を言っているとバレて誰も信じなくなっていきました。
 しまいには鶏代わりの時報扱いです。
「なんだ、あいつが騒いでるって事はもうこんな時間か」
「そろそろ畑に出る準備をしようかね」
 といった具合です。
 ところが、いつまで経っても。雨の日も風の日も雪の日も。少年はその嘘をやめません。
 何故ならば。彼の父親は勇敢な猟師で。ある日山を騒がせる狼を退治するといったきり帰ってこなくなったのです。
 だから、村に狼が来たぞと叫べば。いつか父親が帰ってきて退治してくれると信じて。昨日も今日も、そして明日も少年は叫び続けます。
 けれども。父親は帰る事なく。母親は父親の姿を再度見る事なく病に倒れ世を去ります。それでも、彼は叫び続けます。やめれば、父親も死んでしまうと思って。

 そんなある日。いつものように少年が村を駆け巡ろうとしたところ。本当に狼が現れました。普通の狼よりも一回り大きく、口周りが真っ赤に染まった狼です。
 これは不味い。自分は逃げ切れない。でも村の人だけは絶対に助けたいと、決意を込めて少年は叫びます。
「狼が来たぞーっ!!」
 ところが。誰も逃げません。なんだ今日もかと皆が思っていたのです。
 嘘を繰り返しているうちに、人々の信用をなくしていた事に気づいた少年ですが時既に遅し。逃げる事もできず少年は狼に食いちぎられ。村の人々もその狼が率いる群れにより襲われていきます。
 事切れる直前に、少年は最期に思います。
(皆、俺を信じないから死んだんだ。なら、次に生まれ変わるなら……俺が本当の狼になってやる)
 そうすれば、父に会えると信じて。

■その思いは歪んで叶う。
「少年の最期の願いは叶ってしまったんだ。とても歪んだ形で」
 イレギュラーズを集めたカストルは、沈痛な面持ちでそう語る。
「次に彼が目覚めた時は人の姿のままだった。けれども異変にすぐ気づくんだよ。夜になると……彼自身が狼に変化していたのだから」
 狼男。どこかの伝承にもある妖怪、モンスターの一種だ。昼は人間に紛れて暮らし、夜は狼に変身して人間を襲う凶暴な種族。
「普通の狼男なら昼は人間だから安全だと思うでしょ?ところが彼は、もう一つ能力を持ってしまった」
 昼の間は自己防衛の為にか、それともかつての自分の業を他人に背負わせる為にか。周囲の人々を自分そっくりの姿に変え、嘘しか言えない身体にしてしまう、と。
「見分けがつかないが弱い昼。見分けはつくが強い夜。どちらで戦うかは皆に任せるよ」
 どうか、彼に安息を。そうカストルは頭を下げて締めくくる。

NMコメント

 3月のシナリオは出したのに4月のシナリオは出してませんでした以下略です。
 なので遅れましたがエイプリルフールシナリオです。ガチ戦闘ですけど。
 以下敵詳細
■狼青年×1
 青年時の姿の時はとても貧弱なステータスです。ちょっと強い一般人程度のステータスしかありません。特別なスキルもたった一つを除いてもちません。
 但し夜になると狼の姿となり、物攻、回避、反応、機動力、EXAに優れ、各種スキルも解禁という強敵となります。
 共通の弱点は、HPが並で防技抵抗が貧弱な事。
 P狼が来たぞー!!:昼専用スキル。戦場にいる全員が狼青年の姿と同じになり、『嘘』しか喋れなくなるフィールドスキル。なお青年自身には効果を及ぼさない。解除方法は夜になるか狼青年の絶命のみ。
 P野生の目覚め:夜専用スキル。【暗視】【ハイセンス】【ステルス】【不意打ち無効】【乱れ無効】【足止め無効】の複合スキル。太陽が昇ると解除される。
 A疾風の体当たり:超遠攻撃。素早く戦場を駆け抜ける体当たり。【万能】【貫通】【移】
 A食いちぎる:至近攻撃。鋭い牙で噛みつき食いちぎる。高威力、【防無】
 A闇夜の奇襲:戦闘開始時のみ一度きりの至近攻撃。超高威力、CT100、FB0【魔凶】但し【不意打ち無効】【超聴力】【超嗅覚】【ハイセンス】のいずれかを持つ者が一人でもいれば無効化可能

 以上となります。
 昼、夜どちらで戦うかはご相談の上でプレイングに明記下さい。ばらけた場合は多かった方に。同数だった場合は自動的に夜となります。よろしくお願いいたします

  • 狼が来たぞー!!完了
  • NM名以下略
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年04月18日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談4日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ロゼット=テイ(p3p004150)
砂漠に燈る智恵
ミルヴィ=カーソン(p3p005047)
剣閃飛鳥
ソア(p3p007025)
無尽虎爪
メリー・フローラ・アベル(p3p007440)
虚無堕ち魔法少女

リプレイ

■狩猟者
「……かすかに音がする」
 昼と夜でまったく違う姿を見せる男。そんな存在に対し、イレギュラーズが挑むのは夜の戦い。本来であれば狼の狩猟フィールドとなり、一方的に獲物は狩られるだけの存在。だがしかし、此度集いし四人はただの獲物ではない。言うならば、狩猟者と狩猟者のぶつかり合いだ。
 耳を済ませる『躾のなってないワガママ娘』メリー・フローラ・アベル(p3p007440) は、全ての五感を耳に託すつもりだ。カサ、と草をかき分ける音がする。すぐ近くで誰かが息を吐く。音で、状況がわかるなら、目はいらない。
 逆に、極限までに目を強化するのは、『雷虎』ソア(p3p007025) と『Ende-r-Kindheit』ミルヴィ=カーソン(p3p005047) 。メリーが指差す方向に視線をやり、目を凝らす。明かりがなくとも、彼女たちには昼の如く見える狩猟場。確かにそこに、背を低くし草むらに姿を隠す、狼のような者の姿が確認できた。
 そして……。
「きたっ!!」
 『探究者』ロゼット=テイ(p3p004150) は、彼の者と同じく獣の本性を持つ者。野生の本能は、先に一撃貰えば負け。奇襲を貰えば負け。だからこそ、生存本能が叫ぶ。『奴が来た、避けろ!』と。
 一人でも発見できれば奇襲は失敗に終わる。しかしてこの四人は全員が対策を用意した。なればこそ、当然。闇から飛び出す狼の一撃は空振りに終わる。
 彼の本能が叫ぶ。こいつらは普通ではない。只の獲物ではない。
 グルゥゥゥ……と。口の端から苛立ち、警戒。色んな感情が混ざった吐息を漏らす彼の姿は、上半身が狼、下半身が筋骨隆々な人間と。まさしく狼男。
「狼になった狼少年かあ」
 間近でその姿を確認したロゼットは、嘘はつくものではない、と思考する。
 哨戒役が嘘をつけばそれは当然価値のないものへとなり。積み重なれば信用など、ない。だから彼がこうなったのは当然の帰結だろう、と。
「……優しい嘘が、招いた事、カ」
 奇襲を防いだ体勢そのままに、己の身体能力を強化するミルヴィは、どことなく苦々しい表情でそう呟く。
 嘘はたしかにいけない事だけど。彼は自分と母親を守る為についたのだ。その罰がコレだなんて、余りにも悲しすぎる。だから、終わらせる。
 手元に魔法陣を浮かべ、同じく自身を強化することに務めるメリーは、ふと思う。
(私は、元の世界ではワガママを貫いて殺された。嘘を貫いて殺された彼は……もしかしたら)
 そこまで考えて頭を振る。余計な事を考えれば狩られるのは自分だと叱咤して。
 ソアは、奇襲を防いだ時から。否それよりも少し早く。彼から視線を外す事をしなかった。何故ならば、彼女の視線は武器だから。胆力と魔力とを瞳に乗せ、視線として放ち。これから狩られるのは貴方だと、言外に宣言する。
「グッ!?」
 これにはさしもの狼も不意を突かれる。視線だけで、身体が竦む。動くのを拒否する。狩られるのは自分だという思考が、脳内を支配していく。
「グガァァァァアア!!」
 苦悶の叫びが暗闇を支配した。

■捕食者
 精神をやられた狼が、鋭き爪で己の瞳を刺す。それだけで慣れないものには凄惨な光景だが。彼の中では合理的な判断であった。
 あの目は見てはいけない。見てはいけないなら、目がなければいい。目がなくとも、己には鼻と耳がまだあるだろう!
 だがイレギュラーズは。そんな彼を黙って見てる程甘くない。ソアとミルヴィは距離を詰め。ロゼットとミリーは魔力を練る。逃さない、と意志を込めて。
「いくヨ!」
 ミルヴィの両手に握られた2つの曲刀が、空に浮かぶ月を虚空に描く。変幻自在の切っ先は、狼の腹を、肘を切り裂く。が、何かおかしいと彼女は気づく。
 そう、目を潰したのだ彼は。それはつまり、ミルヴィの姿に、剣撃に見惚れる事もない。
「そこまでして……」
 夜の間は本能が強まるのか。目は潰れたというのに、放たれる敵意は、殺意は。衰えるどころか強まるばかりだ。
「こっちも!」
 ミルヴィに続き、ソアも。牽制というには生ぬるい威力の二撃を、狼の足に向けて放つ。ぐらり、と身体が揺れるが踏みとどまる。
 そう簡単に狩られてたまるか。狩られるのは貴様らだ。
 そんな意志が、漏れ出してくるようで。
「だけど、この者は……君に狩られてやる義理はないんだよ」
 闇夜に溶ける悪意の刃を狼に向けて放ち。ロゼットは想う。彼はもう理性などない、本当の化け物。同情すべきではないとわかってはいる。
 しかし、何故だろうか。ほんの少しばかり、彼の生を想うと……。
「いっけぇぇえ!」
 今の狼と同じく、敢えて目を捨てて戦うミリーが。彼の吐息を頼りに魔の雷を魔法陣より放つ。既のところで大地を蹴り回避しようとする狼だが。足を焼かれた。痺れる。
 だけども、今ので。全員の位置はわかった。匂いは覚えた。声は覚えた。不意を突くつもりが不意を突かれてしまったが。
 ここからは、捕食者の時間だ。

■生
「い、つぅぅ……!」
 幾分か動きは鈍ったとはいえ。野生の狼の力を持つ彼の動きは鋭く、また風の如く速く。元来ならば先手を取る事に長けていた、ロゼットやミルヴィよりも、尚速い。
 斬りかからば、身を翻し返す爪で引き裂かれ。
 魔を放てば、集中する一瞬に姿を隠される。
 血の匂いが強くなる。これは誰の匂いだったか。狩猟者の、捕食者の。誰の匂いだっただろうか?
 男本人ですら、わからなくなるほどに。全員が傷ついていた。男も傷が増え、立っているのがやっとという有様だが。イレギュラーズも無傷の者はいない。
 ミルヴィの必死の奮闘で、ロゼットとミリーは軽傷だが。その分彼女の受けた傷は広がっていく。誰も、治癒術が使えない事が段々と重くのしかかっていく。
「こ、のぉっ!!」
 ソアの視線が、瞳が。再び男を捉えようと鋭く射抜く。目を潰してまで視線をあわせる事を拒否した彼が、本能のみでその視線から逃れていく。
 生きるのは俺で、喰われるのは貴様らだ!
 そう主張する咆哮が聞こえた。思わず、叫んでしまった。勝ち、生き残る為に。
「油断したわね!」
 幾度目かのミリーの雷が、ついに男の身体を貫いた。ようやく、捕らえた。音よりも疾く駆ける稲妻が、風よりも速い狼を喰らっていく。
「……君の負けだよ」
 自身の力を、限界の、更に限界を超えて解放したロゼットの魔力が。狼の、男の身体を切り裂き。
「今までの……お返しっ!」
 死を拒絶し生を縋ったミルヴィが、血に濡れた曲刀で狼の腹を貫く。その生命の輝きは、瞳を超えて直接精神を魅了していき、男の身体から力が抜けていく。
 まずい、死ぬ。最期に残った本能は生存。今夜は諦めて、身を隠すしかない。でも、どこへ行けばいい?どこもかしこも……血の匂いしかしない。
 その迷いが、決定的なものとなり。
「残念だけど……ここまでだっ!!」
 ふらふらと、目も鼻も利かなくなった男が。不用意にソアに近づく。トドメを刺すのを躊躇したのは一瞬。両腕に力を込め、迸る雷撃へと変えて。
 アォォォ……ン……。
 嘘に塗れ、血に溺れた男の生は、今度こそ終わりを告げた。



「……それは?」
「どこかにあるんじゃないかって思ってね。この者が探してきた」
 男の遺体を埋葬していた三人の下へ、ふらりと姿を消していたロゼットが戻ってきた。その手にあったのは一つの猟銃。乾き、こびりついて黒くなった血がついているのを見る限り。そして、山の中に落ちていた事から、恐らくは……。
「この人の、お父さんの……?」
 ミリーが、男を埋めた地を見つめる。確証はないが、きっとそうであって欲しいと。一抹の願いを込めて。
 ざく、と。地に猟銃が突き刺さる。これで、きっと。『向こう』で父と息子が、ようやくの再会を果たすだろう。
「……嘘なんて本当はこの世にないの。あるのは……生きた『真実』だけ」
 どこからかギターを取り出した、まだ傷だらけのミルヴィが。手向けとばかりに音を奏でる。
 今日は星が見えない。曇りかな。そう思いながらも、ソアは零す。
「さようなら、今度こそ家族一緒に……お父さんお母さんのところへ、きちんと行きなさいね」
「……これは、同情ではない」
 ないのだ。
 一つの命が生存競争に負けた。それだけなのだ。
 ただ、放っておくと。生存競争のバランスが崩れるから。だから刈り取った。
 自然の摂理。
 だけども、どこかやるせない。そんな気持ちがあるのは……何故だろうか。

成否

成功

状態異常

なし

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