シナリオ詳細
伝承の傭兵団と一戦交えろ!
オープニング
■時は群雄割拠
昔、昔。その国では何人もの英雄が、疲弊し困窮した民を憐れみ。もしくは機能していない国政を見限り、天下を治める為に。いくつもの勢力に分かれて戦いに戦いを繰り返していた時代がありました。
立つ英雄あらば、英雄に付き従う将あり。そして、独自に技術を磨き、腕を売って故郷の人々を養う傭兵団も数多く。
その中の一つ。南の国で生まれた傭兵団は、独自の技術を磨き上げ名を馳せました。
彼らが目をつけたのは『銃』。その世界、その国では外より伝わったばかりの新兵器。ほとんどの英雄がそれには目をつけず、昔ながらの戦を繰り広げていた最中。
彼らはそれに目をつけ。これならば非力な者でも技術さえ磨けば戦える、腕を売り込めると日々努力し、研究し。最初は無名の傭兵団でしたが、次第に戦場にいない日はないとまで言われるほどの一団へと成長を果たしました。
金さえ積めば、昨日の敵が今日の友、逆もまた然りというのが傭兵の常。しかして彼らも義理や人情がない訳ではありませぬ。
ある英雄が、宗教一派に立ち退きを命じた際に。彼ら傭兵団は金を積んだ英雄ではなく、金のない宗教一派に味方をしました。昔、自分たちが無名だった事に世話になった。その恩を返すべく。
彼らの働きもあり、その宗教一派はその地に留まる事に。めでたしめでたし。
で終わらないのが戦の世。それを恨みに思ったその英雄は。彼ら傭兵団の故郷を、力なき人々を。全て焼き尽くしてしまいます。
火が全てを。小さな営みを。ささやかな幸せを全て全て飲みこんで。
傭兵団が知らせを聞き故郷にかけつけた時には既に遅く。笑顔で帰郷を喜ぶ人もなく、美しい山も見る影ない裸山に。五月蝿かった犬や猫や、少しばかり恐怖の対象だった熊や猪。
そこは命の一つも残らぬ、地獄も地獄。
■かくして人は鬼になる
「……というのが、今回伝わる伝承さ。つまり、敵は誰かわかるね?」
集まったイレギュラーズを前に、境界案内人のカストルはどこか表情暗く説明する。
それはそうだ。今回の敵には、何の罪もない。ないが……これから罪を重ねようとしているのだ。
「この伝承にある傭兵団は、その英雄に敵討ちを狙うも返り討ち。その死後もずっと悔いを遺して成仏できず。時が経って英雄はいないのに、実体をもって人々を襲い、地獄を再現しようとしているんだ」
今駆けつければ、最初に遭遇するのは皆になる。まだ間に合うんだと悲壮な願いを胸にカストルは願う。
「どうか、彼らを悪霊にせず。英雄のまま死なせてあげて。彼らは絶対、故郷の人々にとっては英雄だったはずなんだから……」
- 伝承の傭兵団と一戦交えろ!完了
- NM名以下略
- 種別ライブノベル
- 難易度-
- 冒険終了日時2020年04月16日 22時05分
- 参加人数4/4人
- 相談4日
- 参加費100RC
参加者 : 4 人
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参加者一覧(4人)
リプレイ
■お調子者は……
ヒュウ、と男が口笛を吹く。復讐の為にと歩き始めた男の前に姿を見せた見た目麗しき4人の女性に顔を綻ばせる。
「これはこれはお嬢さん方、この色男に御用かな?」
銃を肩に担ぎ、お調子者特有の笑みを浮かべながら口にするは伊達男。これが彼本来の性格なのだろう。しかし、時が経てば……。
「そう、アタシ達はアンタを止めにきた!」
『Ende-r-Kindheit』ミルヴィ=カーソン(p3p005047)が二刀を引き抜き、叫ぶ。復讐に走る気持ちはわからないでもないけれど……もう、終わってしまった事。彼も、故郷の人も、復讐相手すら存在しない世界では。
「どうしても先に行くというのなら……」
仲間たちより一歩前に出る 『業炎壁』ヒィロ=エヒト(p3p002503) は決意を胸に。後世にまで伝説となって名を残す彼を、果たせない復讐に身を落とす彼を止める為に。何より、仲間と守るべき人を護る為に!
「遠からんものは音に聞け、近くば寄って目にも見よ! ボクこそは音に聞こえた『業炎壁』ヒィロ=エヒト!」
「……しょうがねーな。趣味じゃーないんだが……やるってんならこの色男、相手になるぜ」
ヒィロの名乗りに、髪をぼりぼりと掻いて困った表情を浮かべ。しかしてそれは一瞬、次には銃を肩から下ろし、銃口をヒィロに定める男の顔は……狩人のそれ。
狙い通りに事は動く。『見敵必殺』美咲・マクスウェル(p3p005192)は、凄腕揃いの仲間達。そして目の前の男にも負けないようにと、自らに課した役割を果たすべく精神を集中させる。
(私は狙撃手ではなく砲手。一人ならば絶対に勝てない相手かもしれないけど……不得手を補ってくれる仲間がいる今ならば!)
ヒィロのすぐ隣では、ミルヴィが己を強化すべく聖なる躰を降ろし、精神のリミッターを外している。開戦は思いの外静かで。それが恐ろしい。
「怨みの連鎖が続き、英雄が悪鬼へと変わり、災厄をもたらすようになるとは……人の怨みっていうのは恐ろしいものですね」
なれば成すべきは。彼を英雄のまま死なせる事。そして、自らが行うべきは。
桐神 きり(p3p007718)は、ぐるりと戦場を見渡し、一人頷く。彼女が行うべきは、仲間を癒やす事。倒れさせない事。
ああ、簡単な事ですね。と納得し。妖刀より力を放ち、銃を構える男へ放つ。対する男は微動だにせず、その妖気を受け入れ。ほんの少し苦悶の表情を浮かべるも、銃口はヒィロに向けて。
「……えっ?」
「あー、やっぱり美人と子供は撃つ気になれねぇな。……俺は、嬢ちゃん達に用はない。そこをどいてくれないか?」
彼が放った弾丸は、ヒィロの前の大地に突き刺さる。予想外の行動に一瞬呆気に取られる一行だが……憂いと、内に秘めた激情を表す男に、返す言はただ一つ。
「言ったでしょ! アタシ達はアンタを止める!」
「この先へは行かせないよ!」
道を開けぬ見た目麗しき姫君達に。男は、どこか嬉しそうに。しかし悲しみを瞳に宿して。再び銃口と瞳をヒィロへ向けた。
■鬼ニ至……
「そこだっ!!」
意識を切り替えた男の放つ弾丸は3つ。未来を予測しているとでも言うのだろうか、並の腕前ならば当てる事もかなわないだろうヒィロの身のこなしにいとも簡単に当たっていく。
「く、ぅ……!流石、だね!」
負けじと戦闘本能を全開に、しかして大切な人より教わった、ヒィロだけの特別な魔法を力に。限界を僅かに超えたヒィロはまだ笑う。
そう簡単に勝てる相手じゃないとはわかっている。ボクが撃たれるのは想定通り。だって……ボクには!
「そこっ!」
男の狙いがヒィロに集中している間に、至近距離までに駆け寄ったミルヴィが。月光の軌跡をもって二刀で男に斬りかかる。
再びのヒュウ、という口笛。やるねぇ、と男が称賛する。しかしミルヴィの表情は固いままで。
「大丈夫ですか?」
少し離れた後方から、きりがヒィロへ治癒術を施していく。完全に傷は塞がらないが、血の流れは止まった。大丈夫だよ、ヒィロの声が響く。
「逃さない、ここっ!!」
男がミルヴィの剣撃に見惚れたのを確認し、美咲が自身の魔力を魔眼に宿し。虹の狭間に見える闇の中心に男を見据え、力を解放する!
完全に隙を突かれた形になった男は、魔眼の殺意に身体を貫かれ。瞳から血を流す。倒れそうになった身体を銃に預け、荒れた息を整え。叫ぶ。
「野郎ども、出番だっ!!」
その叫び声に呼応して。いなくなったはずの傭兵達の残滓が、確かな実体をもった弾丸を戦場に雨あられと降らして去る。
元より身軽なミルヴィと、限界を超えているヒィロは雨の隙間を縫ってかけるが。美咲ときりはそうもいかずに、頭を庇った腕よりぽたぽたと血が滴る。
それでも。
「この程度なら、いけますよね皆さん」
笑顔を浮かべるきりが天使の音色を紡ぎ、受けた傷をすぐさまカバーし。ヒィロとミルヴィが男を逃さないと距離を詰めて剣撃を繰り返し繰り出していく。
美咲は己の強みをぶつける為に。魔力を練り上げては放つ、を繰り返し。一見単純なように見える動きだが、一番効率的である。
「く、そ……!」
笑う余裕のなくなった男が、ヒィロの脇腹を蹴りつけ体勢を崩し。片手で突きつけた銃の引き金を放つ。
「かはっ!?」
並の腕前ならば。ヒィロにかすり傷をつけるのも不可能であっただろう。しかしてこの男は、復讐に取り憑かれし者は。並の優に4人前程の技術がある。怒りに忘れつつあるとはいえ、染み付いた腕前は枯れぬ物。
「まずいっ!」
「ヒィロっ!」
腹を押さえたヒィロの出血量に、放置はできないと即座に治療に移るきりと美咲。
更に追い打ちをかけようと弾丸を込める男に、ミルヴィが叫ぶ。
「アンタの相手はアタシ! こっちを見ろぉ!!」
嵐の夜のように激しく舞う二刀に、銃を盾にするが幾つかは傷がつく男が団子を頬張る。ごくん、と飲み込むと、少し冷ややかな声色で。
「悪いな……情熱的な夜は悪かーないんだが……!」
ミルヴィから視線を外し、ヒィロと、美咲と、きりと。全員の位置を確かめた男が銃を構え。腰を捻り、軸足を回す。
「そろそろ、本気でいくぜ……!」
振り回す銃から、何発の弾丸が放たれたであろうか。明確な殺意が込められた弾丸は、全員の身体を貫き体力を無情に奪っていく。
「っつ、ぅ……だけど、まだ、まだやれます……!」
血を流しながらも仲間を癒やすべく、天への願いを唄い続けるきり。そんな彼女に、男は非情に冷酷に、銃口を向けていく。口に咥えていた串を吐き出し、大きく息を吐く。
「まず……!」
男の視線に気づいたミルヴィが、ヒィロが射線上に割り込もうと身体を動かすより早く。男は引き金を引こうと指をかけ……。
「くっ……」
一発くらいなら、ときりを庇おうとしていた美咲が見たのは。苦悶の表情と呻きと共に。引き金を引くのを戸惑う男の姿。
最後に残った理性が、鬼に至ろうとしていた心を押さえつけ。
「すまねぇ……俺はやっぱり、美人と子供は殺せねぇ……けど、もうすぐ、俺は鬼になる」
だから、嬢ちゃん達。
俺を。
コロシテクレ。
■否、彼の者は英雄也
「その胸に燻る無念はボクが、ボク達が引き受けるから!」
男の最期の願いを耳にしたヒィロが、再び仲間の盾となるべく、そして男の魂を救うべく叫ぶ。この人は、やっぱり英雄だったんだ。そんな思いを胸に。
「大事だった過去を全て傷つけてでも……わかるヨ」
二刀で男の放つ弾丸を弾きながら、ミルヴィは静かに語る。己の大切な人もそうだったから。だからこそ、ここで全て吐き出して終わらせて欲しいと願い、曲刀を振るう。
「最期まで己を貫いたのはご立派です、覚えておきましょう」
力を奪う、血塗られた赤い剣をけしかけながら。先に見せた、男の悲しき笑顔を思い出すきり。あのまま撃たれていたら、恐らく自分はやられていただろう。なのに、彼は。己を貫いた。
鬼に成る前に。
「引導、決着、介錯、供養。どういえばいいかわからないけど……終わりにしましょ」
引導を渡すべく、魔眼に魔力を。手向けだとばかりに、限界まで、限界を超えて蓄えていく美咲の目から、一筋の液体が流れる。それは涙か、血か。
「お前らぁぁっ!!」
鬼と成る男の咆哮に。同じく鬼の形相を浮かべた怨念達が、青白い弾丸を降らせていき。
その合間を縫って、ミルヴィの二刀が。悲しみの連鎖を断つべく弧を描く。
「美咲さんっ!」
「これで終わりだよ!」
ミルヴィに斬りつけられ膝をつく男。その隙を逃さないようにと、ヒィロが美咲に叫ぶ。頷きを返してから、魔眼の視線を男に向け。最期の一撃を。
「……ああ、悪いな嬢ちゃん達。……こんな形で夢が叶うたぁ……幸せ者だな、俺は」
地面に横たわる男が、安らかな笑顔を浮かべながら。四人の美女達の顔を瞼の裏に焼き付ける。
傭兵団の長でありながら、お調子者で女好きで、平和を愛した男は。女に看取られて世を去りたかった。
以前は叶わなかった願いが、歪んだ形でとはいえ叶った。
「本当、調子いいんだから」
命の危険まで感じたきりが、どこか呆れた様子でそう笑う。この男には、涙より笑顔が良いだろう、と。
「あなたは英雄だよ。鬼じゃない」
「もう、ゆっくり休んで、いいんだよ」
そっと男の顔に手をかざし、目を瞑るようにと。きっとこれで、天国にいけるだろう、と。美咲とヒィロが、優しく語りかける。
「生きてる間に踊りを見せて鎮めてあげたかったな……」
二度とその目を開けぬ男に、ミルヴィは涙と共に声をこぼす。
長であった男は、英雄だった。
故郷の人々には、傭兵団の団員達にとっては。紛れもなく。
これでようやく、男は。鬼に至らず、英雄のまま眠りについた。きっと、雲の上で、皆と気楽に笑っているだろう。
成否
成功
状態異常
なし
NMコメント
伝承シリーズ第四話。シリーズにしてないですけど。そんな以下略です。
今回の敵はかなりガチに強いです。油断召される事なかれ。
以下敵詳細。
■銃撃団の長×1
能力値は命中値がずば抜けて高く、CTも高め。他は全て平凡です。ですが、下記スキルの影響もあり、実際の攻撃威力はかなりのものと思って下さい。
銃装備の為射程はレンジ4まであります。
保有スキル
P傭兵団の長の心得:命中極大アップ。CT少アップ。【精神耐性】【全攻撃に万能属性付与】の複合スキル。
Pお調子者は鬼ト成リテ:FB値極大アップ。但しターンが進む毎にFBと命中値が少しずつ減っていきます。
P女好き:女性に対して攻撃時威力減少、命中減少。但しCTは攻撃時のみ大上昇します。男性、性別不明に対しては特に何も効果を発揮しません。戦闘開始から8ターンを過ぎると効果が消滅します。
P援護射撃:3の倍数ターン開始時にどこからともなく敵全員に対し銃弾が襲いかかります。命中極大減少補正、威力減少補正。
A蹴弾:至近単体攻撃。回し蹴りから零距離射撃に繋げる。【体勢不利】【失血】
A三連射:レンジ4単体攻撃。狙った一人に対し三発速射。【弱点】【出血】【流血】
A乱れ打ち:レンジ3全周攻撃。命中減少補正あり。
A団子が好き:隠し持っていた団子を食べるHPAP回復スキル。BS回復30。【副】属性。但し1戦闘中で2回まで。
以上となります。
彼が英雄となるか、悪鬼となるか。皆様にかかっております。どうか、よろしくお願いいたします。
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