PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ゴブリンの棲処

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●馬と老人
 馬車屋の老人が、馬のいななき声によって目を覚ました。
「なんだね?」
 時計なる利器あらば、0時をしめすであろう、夜更けのことだった。
 老人は田舎の馬車屋である。
 幾年もの昔から、陽が昇るのをみては馬を引き、陽が沈むのをみては床につく、波乱も刺激もない人生を苦もなく生きて、今日の白髪に至った一般人だ。
 老人は、見えなくなりつつある目をこすった。
 野生動物対策のベアートラップに何かかかって、馬め、おどろいたか? と考えながら、火口箱に手をのばす。
 すると、また、いななきが聞こえてきた。
 ただのいななきではない。
 おそろしげな声で、悲鳴と形容できる、耳に残るような声だった。
「ジュリエット号!」
 老人はベッドから跳ねあがり、馬の名を叫んだ。先立った伴侶の名をつけた大切な馬だった。
 ただ事では無いことに気がついた。
 手近にあった椅子を握りしめ、寝間着のまま寒空の下へ出る。
 右手側にある馬小屋へと駆けて、馬小屋の戸をあけ放った。
「――っ!」
 老人の目に、愛馬のシルエットが見えた。横たわっていた。
 床一面に鉄臭い液が広がっている。
 暗闇に目をこらすと、愛馬の周囲で、腰ほどの背丈の何かが複数うごめいている。
 うごめくもの達からは、咀嚼音と水音がした。
「きさ……ジュリエ――」
 声を絞り出そうとする老人の右耳に、うなり声が入った。
 同時に、生暖かい感じがした。何者かの吐息だ。
 口臭。すえた臭いが鼻孔をくすぐる。
 老人がその方向をむいた瞬間――大男が何かをふりおろしてきた。
 月光がさした。
 老人は、ふりおろされてくる物がピッチフォークだと理解した。
 大男の目は濁った金色だった。瞳孔は細長い。緑色の肌が見えた。頭髪は無い。
 老人は、自身の頭部が破壊される音を聞いた。
 視界が鉄臭い液で濁るのを見た。
 思考がみだれ、次に意識は永遠にとだえた。


●ゴブリンというもの
 彼らは物事の解決方法を知っている。
 それが最悪で最低で非道徳的な方法でも、彼らは躊躇などしない。

                   ――――『ペテン師』アレス・D


「南のほうにある小さな村の近くに、ゴブリンが住み着いたみたいなのです! 犠牲になった人がいるのです!」
 ユリーカ・ユリカ(p3n000003)が持ってきた依頼書は、ゴブリンのせん滅という目的のものだった。
 幻想にはよくある話である。
 時期は冬。軒下につららが5寸ほど伸びていてもおかしくない時分。およそ冬を越すための食糧が不足したと推測される。
「村から半日ほど歩いたところにある洞穴を棲み家にしている事は、わかっているみたいなのです」
 昔は貯蔵庫として使っていたらしく、村人から簡単な地図を頂戴していたようだ。
 入口からすぐにY字で二手に分かれる。
 左はすぐに行き止まり。右は広めの空間があるらしい。
「問題は、目撃情報が無くて、数が不明なのです……」
 ユリーカが申し訳なさそうにうなだれた。
 特異運命座標《イレギュラーズ》の一人が前向きに質問をする。
「犠牲者は? 現場はどうなっている?」
 ユリーカが顔をあげて語る。
 犠牲者は老人と馬。襲われたのは夜間。
 現場は老人の住まいから右にすぐの馬小屋。老人と馬の細かい残骸が見つかったが、遺体は無かったようだ。
 おびただしい血痕から、殺害されたと断じられ、村の青年団の調べで、近辺にゴブリンが目撃される。
 結果、ローレットに依頼が飛び込んだ経緯だ。
 現場は――残骸こそ片づけたらしいが――血痕は拭いていない状態にしているという。
 かの洞穴に這入って戦うならば、地の利を取られる。敵が何匹いるのか不明。暗闇で何をされるか分からない未知こそ危ういと怪しまれる。
「期限は?」
「なるべく早くだそうです!」

GMコメント

 Celloskiiです。
 作戦や方針は統一した方が良い結果になると思います。
 以下詳細。

●注意
 ・ヒロイックに戦えるかはプレイング次第です
 ・趣旨は『犯人は分かっている。隠れ家もわかる。何をされるか分からない』です。

●目的
 勝利条件:ゴブリンのせん滅
 失敗条件:何もしなければ、村長が報酬を渋り始めるのは到着してから3日後。失敗となります。
      せん滅せずに帰還しても失敗です。

●状況
 リプレイは、事件があった村から始まります。
 どこで戦うか、いつ戦うかも任されています。
 ゴブリンがいる洞穴は半日ほど歩いた地点。洞穴の入り口付近は雑木林。茂みあり
 洞穴内部の地図は獲得済み。
 洞穴に侵入し、10mほど進むとY字に分かれています。左はすぐに行き止まり。右は広けた空間に続いています。

●PL情報
・夜行性のゴブリンです
・現場にいたゴブリンの数(これが全てとは限りません)
 ゴブリン×4
  不浄の刃   【毒】【猛毒】 ある対策によってBSを軽減/無効化出来ます
  暗視      暗闇の中でも、昼間のように視界を確保できます。

 ????×1
  不浄の刃   【毒】【猛毒】 ある対策によってBSを軽減/無効化出来ます
  暗視      暗闇の中でも、昼間のように視界を確保できます。

・昼夜問わず、洞穴付近に見張りのゴブリンが1匹
 特異運命座標を視認すると大声を出して、中にいるゴブリン達に知らせます。
・内部は、左の道にいくと????がいます。現場にいたゴブリン4匹は右の広間です。

  • ゴブリンの棲処完了
  • GM名Celloskii
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年01月23日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

リオネル=シュトロゼック(p3p000019)
拳力者
恋歌 鼎(p3p000741)
尋常一様
新納 竜也(p3p000903)
ユニバース皇子
ヴィンス=マウ=マークス(p3p001058)
冒険者
パン・♂・ケーキ(p3p001285)
『しおから亭』オーナーシェフ
七鳥・天十里(p3p001668)
九条 侠(p3p001935)
無道の剣
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式

リプレイ

●すえた臭いの馬小屋 -First day of grief-
 寂れた村だった。
 馬車屋があるというからには街道沿いにある。しかし、恩恵は微々たるもの怪しまれた。
 日は照っている。
 村は丘のような地形の上にある。ここから西の空の向こうに、切り立った山が脈を作っている様子がうかがえる。山の向こう側がバルツァーレク領。間にはどの領にも帰属していない空白地帯の森が見下ろせた。
 移動用の馬車を降りて、村長への挨拶を済ませる際に 一日目は準備として使うことを伝えた。
 特異運命座標《イレギュラーズ》は、それぞれ別行動をとった。
 『探索者』ヴィンス=マウ=マークス(p3p001058)と、七鳥・天十里(p3p001668)は、殺害現場の調査に向かった。
 村の中では寂れた雰囲気で、陽気な景色などまるでない。しかし天十里は朗らかにいう。
「ゴブリン退治! すごいなー、マンガやラノベでしか見たことないもんなー。どんな姿なのかな、ちょっとわくわく」
 対してヴィンスは天十里を少し見て視線をすぐに正面へ戻して応答する。
「初めての仕事だ。確実にこなしておきたいね」
 四つ辻にさしかかると臭気が鼻をくすぐった。
 すえた臭いがした。
 向こう側に馬小屋のある民家がある。あれが犠牲者の家である事は迷わなかった。
 早速、調査に行く。
 馬小屋の中には悪臭がこもっていた。
 片付けたと聞かされた肉も残っていた。不真面目な仕事である。
 ふと、ここで、別の民家の窓から視線を感じた。
 ヴィンスと天十里が、ふと見ると、村民だ。
 目と目が合う。よそ者を見るような目をしていた。
 窓は、ボロのカーテンで閉められた。
 村に漂う閉塞感――良い気分ではない。
 『千法万狩雪宗』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)と『尋常一様』恋歌 鼎(p3p000741)は、ゴブリンの巣穴と目される洞窟へと行く。
 小動物を使役して偵察を行える鼎。汰磨羈は鼎の護衛としてついてきている。
 鼎は蛇を召喚した。
 五感の共有を可能とするため、偵察に用いる策だった。
「終わりか?」
 と汰磨羈。
「後は洞窟でもう一度使う予定かな――五感を共有するのは変な気分だね。視点が違うし感じ方も違う。ドローンみたいな感じか」
「そういう感覚か。VRのような?」
 汰磨羈は妖怪の跋扈するスペースオペラと形容できるような世界の出身である。
 ドローンもVRも解釈は余裕だ。
 距離にして半日ほどかかるため、日が西の山脈に隠れる時分には引き返した。
 途中、汰磨羈は事件現場を見てから帰るといった。
 他の特異運命座標たちは、宿泊場所で鋭気を養っていた。
 『無道の剣』九条 侠(p3p001935)は自らの腰の抜いて、鋼色の刃をじっと眺めている。
 そこへ『特異運命座標』新納 竜也(p3p000903)が、木材を持ってきた。ボロ布と油壺もだ。
「それは?」
 と侠が問うと。
「灯りだ。松明を多めに持っていきたい」
 竜也が村長に、ギフトのユニバースオーラを当てて調達したものである。
 村長から村民へ。
 この手の閉鎖的な村は、高貴なるものに頭を下げる。宇宙的カリスマ感によって、現地調達が容易となった。
「そうか」
「……」
「分かった、手伝う」
 と、無言の宇宙的カリスマ感によって、侠も松明づくりを始めた。
 調達しやすくなったのは食材もしかり。
 食事当番を引き受けた『『しおから亭』オーナーシェフ』パン・♂・ケーキ(p3p001285)が食事を持ってきた。
 村人から分けてもらったものと、携帯食料を合わせたものだ。
「トウモロコシのポタージュ。干肉入りだ」
 昨年の八月にランチで冷製ポタージュを作ったが、今は冬。身体を暖めるものがいい。
 サイコロ状に切った干肉を、カリカリに焼いて、ポタージュに浮かべ、塩味を効かせたものだ。
「おお! よし、メシ食うかメシ!」
 外の寒気の中で気合いを入れていた『拳力者』リオネル=シュトロゼック(p3p000019)であったが、漂ってきた匂いに、たまらず戻ってきた。
 次に、殺害現場の調査を終えたヴィンスと天十里。天十里は清潔な水と容器を抱えている。
 少し時間が開いて、鼎が戻ってきた。
 最後に、汰磨羈。
 ヴィンスと天十里と別に、殺害現場に寄ってきた。
 パンが作ったポタージュに舌鼓をうつ。
 夜襲を警戒しながら、交代で見張りを行いながら身体を休めた。


●軟泥の放棄洞-Second day-
 蛇がするりと行く。
 夜に。
 腐敗臭が立ちこめる洞窟の中を真っ直ぐいく。
 しばらく行くと、道は左右に分かれる。
 人の目に見えないものを探知できる器官を持つ種の蛇は、視覚の映像面では不利だが、練達でいう赤外線カメラのような映像をとらえる。
 それを、術者の瞼裏に映じる。
 左の通路の先には何もいなかった。『彼等』は夜、動いているようだ。夜行性のようだ。
 右は?
 広間に一つの大きな影。顔にデキモノがびっしりと生じている大型のゴブリンが、にちゃにちゃと何かを貪る。取り囲むように1,2,3,4の小さな影。
 ――否、5、6の影。
 ここで映像は途切れた。


●二日目-Second day, Overcast-
「ゴブリンが7匹。大型のゴブリン――ホブゴブリンっていうのかな? ファンタジーだね。1匹いる」
 と鼎が言った。
 夜が明けない内に出発し、やがて鼎は解き放っていた生物の視野を取得した。
 途切れた、ということは後ろにもいたか。蛇がやられたか。喰われたか?
「ホブゴブリンか」
 と、ヴィンスがフムと漏らす。
「殺害現場にいた数より多いな」
 発見したゴブリンの痕跡は、小型4匹と大型1匹。されど現場調査は無駄ではなかった。
「だが、盗まれていた農具と数と合う。行き渡って武装していると見て良い」
 続けて、天十里が補足する。
「害獣を捕らえるトラバサミも無かったよね」
 天十里は、村人から水と容器を借り受けるときに、犠牲となった老人は害獣対策の罠を使っていた話をきいた。
 結果、罠に精通しているヴィンスが設置の痕跡をとらえ、失われていることに気がついたのだ。
「この世界の、多少の知恵のある獣という認識――は改めるべきだな」
 と竜也が呟く。ゴブリン。
 知性があるゴブリン。自分の世界の宇宙ゴブリンとの関連性が気になるところである、と考える。
 パンが「甘くねぇな」という。
「想像以上に狡猾だ」
 自らの見た目は無辜なる混沌基準でも「美味しそう」な部類。
 今回の顛末。食い詰めて腹を空かせている部分は、自分がいた世界における飢餓族のごとし。
 敵は農具を使う、罠を使う。道具を使う。もしもクロスボウなどの兵器であったなら、毒物であったなら。
 おそろしい相手となっただろう。
 先頭を歩いていたリオネルが振り返る。
「向こうさんも生きるためなんだろうがな。やられちまった方もいるし、これ以上の被害0で一掃といこうぜ」
 発光をまとい、自らの左掌に、右拳をぶつける。夜の森のパシっと音が響いた。

 夜が明け、日が昇る。
 寒気が霜をつくり、霜が日に当てられて転がり落ちてくる。
 転がり落ちた水滴が幾万も土壌に染みて、染みた地は軟泥となる。
 軟泥を歩く、にちゃにちゃと耳障りな音、不愉快な泥の臭気が鼻をくすぐる。
 やがて問題の洞窟へとたどりついた。
 見張りのゴブリンがいる。人類の腰ほどしかない背丈。緑の肌。金色の目。顔面にはびっしりと吹き出物があって、目は飛び出ているようにギョロギョロと動いている。
 人間基準ではおよそ醜悪と評することができる見た目である。
 得物は鎌だ。刃に付着するサビと液。食事にでも用いたからか。
 汰磨羈が面々を見渡す。
「半ば、強行軍になってしまったが、それしきで参る面子では無いだろう?」
 竜也が応じる。
「任務を滞りなく遂行してこそ、超銀河宇宙帝国が誇るコズミックアーミー」
 侠も腰に下げた得物を握る。
「この手の事は慣れている。だが、1から修行し直す心算で戦うつもりだ」
 ヴィンスは銃の安全装置を外す。
「罠は任せてもらおう」
 天十里も同様。容器と水を用意して、周辺の索敵を行う。
「悪いことする奴らだもんね。とっとと退治しちゃわないとね」
 索敵により、少なくとも周囲に何も居ないことはわかった。逃げたゴブリンも居ないように思える。
 作戦開始。
 鼎が2回目のファミリア―を使って蛇を侵入させる。
 ヴィンスの弾丸、牽制のように、ゴブリンの肩を撃つ。
 ほぼ同時に、汰磨羈が茂みから飛びだした。
 柄側にも刃が伸びる特異な形状の得物を地面と水平に構え、そのまま真っ直ぐ、ヴィンスが撃った所を貫き、岩壁へと縫い付けた。
 ゴブリンはおそろしい悲鳴を上げた。
 侠が茂みから出て、闇が深い洞窟の前で迎撃の構えをとる。竜也も同じ。
 リオネルの拳がゴブリンの顎を削り裂く。
 パンの菓子細工の如き剣が一閃。ゴブリンは汚い液をまき散らしながら、その場で果てた。
 かくて悲鳴を上げたゴブリンであったが、加勢のゴブリンが来る気配はない。
「やすやすと地の利を手放さないか」
 と侠。
 今の悲鳴で、中にいるゴブリンどもは警戒態勢に入ったとあやしまれる。
「残り7匹かな!」
 と天十里がニコニコ言った。


●人を肉と宝物としか見ていない -and Cake-
 洞窟へ這入る。
 特異運命座標の作戦は、左から探索して右へ行くものだ。
 同時に、挟撃対策として、竜也が最後尾。後ろからの警戒として、松明を道に落とし、光の揺らぎをセンサーとする腹づもりだった。
 リオネルが発光を用いて先頭。
 Y字地点にさしかかるった所で、ヴィンスがベアトラップを発見して対処した。
 パンは上を見る。
 特異運命座標には身長3mの者がいるが、たとえ彼等がここにいても、ギリギリと通れる程度には広さと見積もられる。
「左に3。右に4。いや、左が来た! ホブ――」
 鼎が言う。使役を用いた斥候、危機を察知せり。
 言いかけた所で。
『――GIaaaaaaaaa!!! Kiaaaaaaa!!!!!!!』
「ッ! 来たか。リベリスタ、九条 侠。相手になって貰うぜ、ゴブリン共」
 侠が動く。
 出てきたピッチフォークを受け止める。ホブゴブリンだ。
 饐えた口臭が眼前。鍔迫り合いの如くに至る。
「ゴブリンでも戦闘力はやっぱり侮れないか」
 左手の抜刀、二刀流。ピッチフォークを払いのけて右を突き出す。
 突きだして刺した――刹那、腿に痛みが走る。
「――ッ!」
 小柄なゴブリンだ。
 何かを帯びた農具の鎌が、侠の腿を斬ったのだ。
 これで踏ん張りが浅くなり、突きも浅くなる。
「多少大雑把でも、素早く綺麗にした方がマシでしょ!」
 天十里が清潔な水で、侠の傷を洗う。
 天十里の解釈は当たっていた。
 『この刃』は何かを刻んでいることだろう。何かの内容物も付着しているだろう。
 不衛生な物がやがて腐敗して毒素となる。この液が――たちまちに病を起こす液が、厄介であることを、侠の顔色の悪さを見て悟る。
 もう一匹のゴブリンが天十里にせまる。
 小柄を警戒していたパンが、割り込むように刃を跳ね上げた。
「オレはパン・オス・ケーキ! 飢餓族に至りし者よ! こい!」
 名乗りによって注意を引く。
 無辜なる混沌基準でも『おいしそうな見た目』のパンが注意を引くのだから、視線はパンへ向いた。
「右も来た」
 鼎の声が後ろの方からきこえた。
 想定される状況は簡単だ。このままでは前衛がY字の通路で挟撃される!
 リオネルと汰磨羈が即座に、右のゴブリンを迎えうつ体勢をとる。
「あちらは大丈夫か」
 汰磨羈、パンが名乗り上げたことを見て、侠とパンで抑えられると判断。
 リオネルも同様。
 リオネルが光を纏っている事から、飛びだしてきた緑の小躯と、汚物で錆びた刃に発光の光が反射したことを察知。
 二人は不浄の刃を寸前で防ぐ。
「今の叫びは合図ってわけか! さぁ、どんどんいくぜ!」
 握り込んだ拳で、ゴブリンを殴る。
 リオネルの拳は、大剣の如き斬撃を帯びている。最高に殴りやすい角度で入る。
 すかさず汰磨羈。リオネルが殴ったゴブリンを、両刃の剣にて、竜巻の如く切り刻む。
 最後尾に構えてた竜也は、迷わず右へと征く。
「挟撃には用意がある」
 地の利はゴブリンの側にある。こちらの有利はないと、考えを切り替える。
 前へ出て短筒から発砲。向こう側にいたゴブリンの撃つ。そのゴブリンが襲いかかってくるが、松明を捨てた側の手で刀剣をすらり。不浄なる刃を防ぐ。
「こちらにも来るか」
 後衛、ヴィンスと鼎。後衛に向かってゴブリンが1匹、ゴムボールのように跳ねてきた。
 ヴィンスが呟く。
 迎えうつも、不浄の刃。ヴィンスの肩口に突き刺さる。
「――ッ」
 苦痛の音を漏らさず、軽口で返す。
「『朝はタイプライターに吐き出し、昼はそれを掃除せよ』というがね。タイプライター代わりにしてしまって構わんだろう」
 蹴り上げる。銃弾を吐き出すの二連撃。二回の攻撃。
 後退する鼎。
 呪詛を帯びた矢を顕現させる。
「犠牲となった老人もこう思ったのだろうね。君達に向けられる恨みの分だよ」
 なんて生きてる限り恨まれるものだけどね? と続く。
「私は戦闘向きではないからね?」
「鼎君は何を言っているんだ」 
 かくて、状況は想定よりも悪い方向に進んだが、その対処も想定していた。
 左の3匹。
 ホブゴブリンを含む3匹は、侠、パン、天十里は侠の治療のために少し前へ出たが、天十里は抑える役ではない。諸共パンの口上が釘付けにしている。
 右の4匹。
 1匹は早々に始末して残り3。竜也、リオネル、汰磨羈で丁度だが、後ろに抜けた1匹がヴィンスと鼎に襲いかかった。
 天十里が、侠と同様に、用意した清浄な水でヴィンスを治療。
 乱された隊列は、これにて特異運命座標の想定通りへと戻る。

 左はパンが二匹を掃討。
 侠が相対するホブゴブリン。削りは十分に入った。
 その間に右で、リオネル、竜也が目の前のゴブリンを倒す。
 汰磨羈が竜巻のように後ろへと戻り、後衛にいった1匹を惨殺。
「あとはデカブツか。遣り甲斐がありそうだよ!」
 汰磨羈の得物がヴォンと機械音を鳴らして、投擲されてきたピッチフォークを折った。
「この世界に来て命のやり取りは初である以上、いろいろなものは計らねばならない――良い機会だった」
 竜也の太刀、ホブゴブリンの右肩から腹までを切り下す。
「オラァァァァァ!! ボサっとしてっと即死だぞンのヤロウ!」
 リオネルのドロップキックがデカブツに刺さる。
「ホブゴブリン。後は君で最後だ」
 パンが背負う大剣、上から下へ振り下ろされて左腕が飛ぶ。
「むー、こんな慣れないマスケットじゃなくてリボルバーが欲しい……」
 天十里の弾丸。
「これが供養になればいい」
 ヴィンスの弾丸。
 急所を狙った弾丸が二つ。ホブゴブリンに突き刺さる。
 決着は早かった。
「……斬り捨てる!」
 侠の鋼色の刃。リオネルの発光にきらりと煌めく。
 右手の一刀両断。伏せた体勢から右足を軸にして、左手、下から上へ切り上げる一刀両断。
 二連続の斬撃が狡猾なるゴブリンたちの首領を真っ二つにした。


●帰路
「因果応報だな。こういう輩の行く末は、この世界でも同じという事か」
 ホブゴブリンの死体に向かって、汰磨羈が一言加えた。
「ふう、これで初仕事完了かな?」
 鼎は医療知識を活かし、敵が死んでいることを確認する。
「ねえねえ、応急処置ってどうすればいいの?」
 天十里が鼎を呼ぶ。医療知識あるなら、と刃で刺された者へ応急処置をしてまわった。
「形見の一つや二つは出て来るかも知れないからな」
 処置が終った侠が、右の通路の奥へいった。
「なるほどな。アンタ、オレも行くぞ」
 リオネルが光源として、ついていく。
 広間へ行くと、無残な遺体が見つかった。
 食い荒らされている、馬と老人。
「非道い状態だな」
 侠は、老人と馬の形見――村長への報告のための証明の品――として、馬の手綱を得る。
 ジュリエット号と書かれた手綱は、老人の人生そのものであったのだろう。
 竜也が推測する。
「ゴブリン基準でも、可食部分が残り少なかったようだ。今夜あるいは明日の夜、また村に犠牲者がでていたかもしれないな」
 危ないところだった。と特異運命座標たちは感想を共有した。

 村へ戻る。
 村長に報告して帰路へつく。
 ここに、よくあるゴブリンの事件は終わる。
 成功を収めたが、村人達の余所者を見る目は、最後まで変わらなかった。
「感謝しろとは言わないが、道具を貸してくれたのは運が良かった」
「食材も分けてもらった……良いトウモロコシだ」
 馬車の中でヴィンスが言う。パンが応答する。
 パンが作った温かいポタージュは、どこまでも優しかった。
「~♪」
 ヴィンスが木の匙で頂く。
 ハードボイルドでありたいと考えるヴィンスだが、美味いメシには、少し口角が上がるようだ。


成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 Celloskiiです。
 結論的に快勝です。
 基本的な能力は通常ゴブリン相応に設定した「弱い敵」でしたが、冒険的要素を詰め込んだクエストでした。以下の要素に対して対策がありました。

・現場にいた敵の数よりも2匹多い → ファミリアによる偵察
・暗闇 → 発光スキルと現地調達の松明
・不浄な罠 → 罠対処スキルで解除
・毒、猛毒 → 清浄な水を用意
・見張りに大声を上げさせると、中が警戒態勢。Y字通路で奇襲を受ける→奇襲の対策あり

 おびきだして外で数を減らす策こそ上手くいきませんでしたが
 特に厄介な以下の部分に対応出来ていたと思います。
 「常に暗闇BSを受けて戦闘」
 「罠によって前衛が弱った時にY字通路で奇襲、先制、一斉攻撃される」
 「不浄な刃による強力な攻撃」

 お疲れ様でした。
 記念に称号「冒険者」を発行しています。ご確認ください。

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