ヨコハマスクランブル

オープニング

●第二の横浜
　練達南部に存在する港街。住民となったウォーカーたちのもった偶然の共通認識から『練達ヨコハマ』と呼ばれたその街で、ＡＩ暴走事件が勃発した。
　これはその状況を、情報屋たちからの話から推測したものである。

　写真兼目覚まし時計とかした名ばかりのスマホが、光さすマンションの一室にアラーム音を響かせる。
　布団から伸ばした手探りでアラームをとめ、もう五分と頭のなかでつぶやいた……その途端。
　野外でドンという衝撃音がした。
　畳の床に敷いた布団越しにもはっきりとわかる振動。割れんばかりに揺れる窓。
　掛け布団をはねて起き上がった際に目に入ってきたのは、窓のそとを茜色に染める光だった。
　黒く巨大な煙が空に広がり、それを突き破るようにオレンジの炎が膨らんでいく。
　一瞬遅れるように、二度目の音と衝撃が窓をうった。
　ああ、光は音より早く届くのだなあなどと。考える余裕がどうやらあったようだ。
　なぜなら窓どころか壁まで吹き飛び、自らもまたなすすべなく吹き飛んだがゆえである。

　練達ヨコハマの港に建設された五棟からなる赤い煉瓦の倉庫群は望郷の念からか赤煉瓦倉庫と呼ばれた。
　その倉庫群のうち四棟が爆発するという事故が発生。近隣の家屋を吹き飛ばし、港の機能を麻痺させた。
　無論、この混沌の世に国まで作った練達の民である。港がひとつ爆発した程度で甚大な被害にはならない。犠牲もそれなりに出てはしまったが、この件はただの事故として粛々と処理される……はずであった。
　その裏にある組織の影が動いていたと気づくまでは。
「『Ｒ財団』といってね。世界中に武器の販売を行ってるアールインダストリを主体とする組織さ。この企業がペーパーカンパニーを通して練達の港街におろしていた作業ロボットが大量の船舶用燃料と共に自爆した。これが事件の真相だったわけさ」
　練達では式神並に作業能力をもつロボットがおおく流通し、ローレットでもロバロボットの存在は有名である。そうしたロボットにくらべ半分以下の価格で販売され、しばらくの間普及してしまったのがＲ０１汎用作業ロボットである。
　キャタピラとホバーによって移動する脚部と人間に似た両腕。人間にややにた頭部をしてはいるが、真っ白い球体にライトが二つついているだけのものである。
「おっと、過去の暴走事件をわざわざ振り返ろうっていうんじゃないよ。
　さっきも言ったよね。このロボットは『普及してしまった』って。
　もし意図的に自爆テロが行われたのだとしたら、それが知られたいま……ロボットたちはどうすると思う？」

●ロボット湾岸暴走事件
　作業ロボットＲ０１は練達ヨコハマ港街にて一斉に暴走。
　意図的に武器を取り、人間への攻撃を始めた。
「幸か不幸か、戦闘用のロボットじゃあないからね。手近にあった武器を使ったり、人から奪った武器を用いることはあるけど、基本的な戦闘力は低いみたいだ。
　練達の自警組織も動いてるけど、なにせ急なことだし倉庫の後処理に人手をとられたばっかりだ。手が足りないらしくてね。
　そこで僕らの出番ってわけさ。行ける人からすぐに出発してくれ。
　行くべき場所を教えるから、暴走してるロボットを破壊するんだ」

---

第1章

第1章 第1節

第一章のプレイングを受け付けています
受付時間：OP公開時～2020/03/29 15時予定
採用人数：7人前後予定
＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝

---

第1章 第2節

　音、光、衝撃。
　爆発したガソリンスタンドの道路脇で、すすのついたアルプスローダーはフウと息をつく……ようなモーションをした。コミュニケーションアバターにはノイズがはしり、いまにも消えそうだ。
「僕の接近を感知してスタンドを爆破したようですが、一足……いや、反応速度にして558足遅かったですね」
　あちこちの瓦礫から、自動車の清掃や給油を担当していた作業ロボットが現れ、レンチや灯油缶をもって包囲を始める。
　が、彼らが一斉に殴りかかろう――とした時にはもうアルプスローダーはそこにいなかった。
「言ったはずですよ。558足遅いと」
　既に包囲を離脱していたアルプスローダーの車体がロボットのボディに直撃し、まるで弾丸のようにロボットが吹き飛ばされていく。
　自動販売機に激突したロボットはバチバチとスパークをあげ、赤く点滅した目から光を消した。
「こ、こりゃあいったい……」
　スタンドを経営していたであろうおっさんがすすだらけで出てくるが、そんなおっさんの腰をガッとやってシートにうえに担ぎ上げる。
「さあ乗ってください。ここから離れますよ！」
「えっきみだｒ」
　答えは聞いてない！

成否

成功

---

第1章 第3節

「おいおいおいマジか！」
　グラインダーを拾い上げ、猛烈な勢いでホバー移動してくる作業ロボット。
　道路工事の現場監督をしていた男は自らの顔面が削られるさまを想像し恐怖した――が、それは現実にはならなかった。
　横から弾丸のごとく飛び出し、ロボットの顔面を膝蹴りによって吹き飛ばした『五行絶影』仙狸厄狩 汰磨羈（p3p002831）が現れたからである。
「久々に寿司を食いに来たというのに……全く」
「寿司ならまたおごりますよ」
　ステッキ傘をライフルのように構え、的確な二点箇所射撃によってロボットの胴体部分を破壊する『ファンドマネージャ』新田 寛治（p3p005073）。
「タカジさん、このロボットで間違いないですね？」
「壊してから言うのはヤバいっすわぁ」
　サングラスにスキンヘッドの男がロボットの残骸を確かめ、『Ｒ財団』のロゴがついたプレートをかざして見せる。
「間違いないっすわ。コアの位置も情報通りで……」
「混沌にスマートフォンを実現させようとして失敗した際の副産物……でしたかね。確か試験段階のエンネアコアＣＰＵだったはず」
「えー……俺より詳しい……」
　新田は眼鏡を光らせ、そして振り返った。
「赤煉瓦の爆発『事件』の時点で、『R』の動きを掴めなかったのは痛恨でしたね……。だが忘れるなよリッチモンド」
　『俺』はしつこいぞ。
「キメ顔のところ悪いが」
　汰磨羈は身をひねり、飛び、新たに近くの飲食店から包丁片手に飛び出してきたロボットの頭部を蹴り飛ばした。
「まだ掃除は済んでないようだ。おい、そこの現場監督。私がここで食い止める。御主は、逃げ遅れた者達を連れて避難しろ」
「は、はい！」
　慌てた様子で立ち上がる男。
　汰磨羈たちは新たに現れたロボットたちを前に、再び身構えた。

成否

成功

---

第1章 第4節

　ロボットの頭部が爆発する。
　もしこれをスローカメラでとらえたなら、斜め上から差し込んだライフル弾が抜けていくさまが見えただろう。
　牛丼ファーストフード店で寸胴鍋を振り回すロボットが同じように狙撃され、残ったロボットが首だけをぐるりと回して目を赤く光らせた。

「おや、こちらに気づいたね。接近中。ジェック、外してくれるなよ」
「ダレに言ってるの？ハズすわけないデショ」
　建物の屋上から狙いをつけていた『ガスマスクガール』ジェック（p3p004755）と、観測していた『虚言の境界』リュグナー（p3p000614）。
　わざわざ従業員用の出入り口をつかって店を飛び出し、こちらのビルへと走ってくるロボット……の頭部が砕け散る。
　と同時に、屋上階の扉が破壊され、数体のロボットが飛び出してきた。
「アララ、バレちゃった」
「時間の問題だろうとも」
　リュグナーは冷静に立ち上がると、振り向きざまに『アガレスの閉鎖』を発動。
　影から伸びた半透明な鎖が極めて正確にロボットの身体に巻き付き、内部の何かを焼き切っていく。
　と同時にジェックもまた振り返り、ライフルに特殊な弾を装填。
　ロボットの一体めがけて発射すると、途中で分離して複数のロボットたちを吹き飛ばした。
　リュグナーは鎖を消失させ、クククと小さく笑った。
「ふん、所詮は作業ロボットか。普及させるという目的には合っているが、我々のような者を相手にすることを想定出来ていなかったのだとしたら――考えが足りぬ」
「フウン……？」
　本当にそれだけかなあ？　というトーンで返事をかえすジェック。
「ああ、解っているとも。この程度、社会に対する『嫌がらせ』でしかない。
　それが目的なら粛々と処理するのみ。しかし手段であったなら……見極めねばならんな」
　つぶやいたその瞬間、隣のビルで激しい爆発が起きた。

成否

成功

---

第1章 第5節

「いやはや、作業用ロボットがここまで普及しているとは……やはり練達はこの世界でも一味違った所だね」
　腕のエネルギーラインを強く発光させ、『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ（p3p002101）は手のひらをかざした。
　うまれる小さなサークル。
　と同時にすぐ近くにあった『巨大水槽』の内側にもサークルが生まれ、ものすごい勢いで水が噴射された。
　『ようこそヨコハマ水族館へ！』と叫びながら鉄パイプを振り回していたロボットが吹き飛ばされ、柱に激突して砕け散る。
「ふむ、防水性には優れてないとみえる」
「いや、防水どころではありませんね……」
　ゼフィラの後ろを守るように剣を構える『死力の聖剣』リゲル＝アークライト（p3p000442）。
　同じく鉄パイプを振りかざしたロボットたちが襲いかかるが、彼らがパイプを振りかざすその一瞬で間合いを詰め、振り下ろされるよりも早く横一文字に剣を振り抜いていた。
　星が流れたような軌跡が描かれ、ロボットたちが真っ二つに切り裂かれていく。
「ロボットの反逆か……下剋上みたいなものじゃないか。
　世の中を豊かにするために生み出されたものが脅威となり襲い掛かるなんて、皮肉なものだ」
「『最新技術は社会をダメにするが、世界を豊かにする』……誰の言葉だと思う？」
　ゼフィラのつぶやきに、リゲルは首をかしげた。
「ええと……どなたです？」
「今考えた。私の言葉だ」
　そんなやりとりをしていると、すぐ近くのビルが爆発を起こした。
　あがる悲鳴。落下するがれきに潰されるロボットたち。
　リゲルは落ちるがれきに人々が潰されないように剣で切り払うと、ゼフィラに合図して走り出した。
「ご無事ですか？　安全な場所へお逃げください！　ここは俺たちが対処します！」

成否

成功

---

第1章 第6節

　ビルの爆発。その直後、中階から飛び出したパワードスーツの女がひとり。
「目的のものは手に入ったわ。ヨコハマを離脱する」
　女はスティック状の物体を腰のホルダーに収めると、黒いバイクに乗って走り出した。