PandoraPartyProject

シナリオ詳細

護衛依頼のウラ/オモテ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●A面
「よくぞ来てくださいました」
 依頼を受けたイレギュラーズは、豪華な一室に通される。
 ひげを蓄えた油断のない男が、イレギュラーズの顔を見回した。
 依頼人、辺境伯モンドールである。
「お集まりくださいました皆さん、依頼をお引き受けしていただく、ということでよろしいでしょうか。前金はお支払いいたしますが、秘密だけは守っていただきたい」
 最後の念押しだった。
 イレギュラーズたちはまだ、何をするのか知らない。依頼はローレットを通して引き受けたが、依頼内容は口頭で説明する、とのことだった。
「実は……私がお願いしたいのは、品物の強奪です」
 緊張が走る。
「お待ちください、正義がないわけではないのです。品物はもともと私のもの。しかし、だいぶ前に盗賊に奪われてしまい、それが市場に出回ってしまって……。
ずっと品物を探し、なんとか行方を見つけたは良いものの。相手方は盗品とわかっていながら、いくら払うと言っても譲ってくれません。ですから、多少乱暴なやり方ではありますが、それを奪っていただきたく思います……。手筈は、こちらで整えております。狙いは、今日の夕方。馬車がちょうど、ここを通る瞬間です」
 簡単な地図が示される。
「一番重要なのは、この依頼があまり公にはできない依頼だ、ということです。たとえ、取り戻すのに失敗したとしても……。こちらの関与であることは、相手方に知られてはなりません。
……この条件でお引き受けくださるのであれば……どうかよろしくお願いします。その品物は、母の形見の手鏡なのです」

●B面
「全くもって、物騒な世の中ですよ、ええ」
 太った商人は汗を拭いた。
 依頼人、ガメル。交易を主にして生計を立ててきた、油断のならない商売人である。
「最近、盗賊団の動きが活発でしょう? 正直言って、こっちも商売あがったりって現状なんです。いくらか上乗せして護衛を雇ってでも、品物を守り通さないことには、商売もやってられない次第でねえ……」
 依頼内容は、品物の護衛。
 街道をゆく馬車を護衛して、品物を守り通すのが任務である。
「品物は、交易品が主です。陶器、芸術品、美術品などなど。商売柄、人に恨まれることも多くってねえ。まあ、そんなわけですから、よろしくお願いしますね」

●???
「いやはや、実に愉快ですな」
「ええ、ほんとうに」
 辺境伯モンドールと、商人ガメル。大量のご馳走を前に、二人は優雅にワインをあおっていた。
 方や、冒険者に品物の護衛を依頼した商人。方や、奪取を依頼した辺境貴族。
「さあ、今回もどっちが勝つか賭けましょうぞ」
「ははは、お人が悪い。どうせ貴殿のことですから、腕の良いものを雇われたのでしょう? 性格が悪いですな、ほんとに」
「いやあ、あなた様ほどでは、ははは」
 そう、彼らは、わざと同時に相反する依頼をし、その成り行きで賭け事を楽しんでいるのだった。
「どうせどっちかは『失敗』するんです、100パーセント、我々が損をすることはないわけですな」

GMコメント

●目標
 モンドール、またはガメルの依頼の成功、……ではない!
 A班B班双方の誤解を解き、依頼主をとっちめる。
 通常通り依頼を達成してしまった場合は『失敗』となる。

●状況
 A班、B班、それぞれ別の依頼人から別の依頼を受けている。
 ※人数比自由、班が偏った場合はモブがいます。

A:荷物の奪取
 辺境伯モンドールから依頼を受けた。
 街道を走る馬車を襲撃し、荷物を奪い取るのが任務。
・狙いは『銀の手鏡』。
(形見だというのは本当なのだが、それは口実にすぎない。盗賊に奪われたという話はデタラメ)。
・顔を隠すことを命じられている。
・無抵抗の場合は命をとるなと命じられている。

B:荷物の護衛
 商人ガメルから依頼を受けた。
 街道を走る馬車を護衛し、盗賊から荷物を守り抜くのが任務。

●襲撃作戦
 A班は夕方ごろ、見通しの悪い場所を通る馬車を襲撃することになっている。
 馬車は1台。
 どのような手段で襲撃を行うかは任されている。

●補足
・襲撃時の戦闘を1から回避するのは難しい。
・A班、B班ともに裏事情を知っているモブが数人存在する。状況をよく観察すれば、違和感が生じるだろう。

●依頼人の居所
 辺境伯モンドールと商人ガメルは街のはずれのモンドールの屋敷にいる。
 別荘には使用人や私兵がいる。
 依頼が終了したら、各々、依頼の品を持って報告する手はずになっている。

 結果を報告すれば、成功した側には成功報酬が支払われる。
 屋敷の手前で使用人に報告すれば、使用人が金を支払って、イレギュラーズたちは帰されるだろう。使用人に判断できないことが起これば、使用人は主人に指示を仰ぎに行く。

<モンドール&ガメル>
彼らに大した強さはない。戦闘能力がないので、人を呼ぶ。内通者やイレギュラーズから特別な報告がない限りは、 モンドールとガメルは油断しきっている。

 出会え出会え! ……金で雇った私兵を呼び出し、攻撃させる。大した強さではない。

●報酬
なお、今回の依頼が成功した場合は、ローレットが両名に対して何らかの措置をとり、報酬はそこから支払われるものとする。

  • 護衛依頼のウラ/オモテ完了
  • GM名布川
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年04月04日 21時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

日向 葵(p3p000366)
紅眼のエースストライカー
郷田 貴道(p3p000401)
竜拳
オクト・クラケーン(p3p000658)
三賊【蛸髭】
ミスティカ(p3p001111)
赫き深淵の魔女
長月・秋葉(p3p002112)
無明一閃
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
オリーブ・ローレル(p3p004352)
鋼鉄の冒険者
御屋敷 寝子(p3p004915)
妖艶な猫又

リプレイ

●襲撃依頼
「まっさか襲撃の依頼を受けちまうとは……顔まで隠して、これじゃホントに悪党っスね」
 『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366) は、覆面を受け取りながらも複雑そうな表情を見せる。
「新作スイーツの試食会に応募したはずなんだけどなぁ……」
「かかっ、いいじゃねえか」
 『蛸髭』オクト・クラケーン(p3p000658) が軽快に笑った。
「しっかし、今回の襲撃……ひぅ、ふぅ、みぃ。……人が少なくねぇか?」
「ん? あれ、本当だ。今回は随分人数が少ないな」
 集まった中で、まともな”戦力”と呼べそうな者はたったの4人ほどしかいない。
 ディープシーたるオクトの目が、真意を問うように依頼人モンドールを見つめた。それも一瞬のことで、すぐに面白がる気配に紛れてしまう。
「まっ、知り合いが居るだけ助かるし、良いか」

「母ちゃんの形見か……。やれやれ、盗みだなんだは好みじゃないんだが、そういうことなら仕方がないな」
『ボクサー崩れ』郷田 貴道(p3p000401)は、依頼に乗り気というわけではなかったが、事情を聞いて一応の納得はした。
 決して正義漢ではないが、情には厚い男だ。
「あの……、ないのであれば、武器をお持ちしましょうか?」
「? ああ、必要ない」
 使用人に問われ、短く答える。貴道にとっては、鍛え上げられたその拳こそが武器だ。

「女は見られて輝くもの……顔を隠すのは不本意だが、命令ならば仕方あるまい」
『妖艶な猫又』御屋敷 寝子(p3p004915)は美しい黒髪を束ね、獣の耳を頭巾の下に隠した。髪を束ねるわずかな所作でも、匂い立つような色気がある。
 なぜか直視してはいけない気がして、使用人は慌てて目をそらした。覆面をしてもなお、切れ長の目は相当な美形であることを伺わせる。
「ときに……盗品の強奪ならば、正々堂々やってしまっても良いのではないか?」
「我々にも、立場と言うものがありますからな」
「貴族と言うのは、なんとも面倒くさいものだな?」
 不意に誰かが扉をノックした。
「少々お待ちください。隊商のほうで、ルートの変更があったようです……大筋に変更はありません。タイミングがやや異なることになるでしょうが……」
「ふむ、今回のやつらはなかなか侮れんな……」
 モンドールは考え込むようなそぶりを見せる。
 特別なツテがあるのか、はたまた、なにか裏があるのか。
 あえて誰も聞かなかった。……はぐらかされるのがオチだろう。
「それでは、手筈通りに」
 僅かに芽生えた疑念を胸に、イレギュラーズは行動を開始する。

●護衛依頼
(盗賊から商品を守り抜く、内容は在り来りなんだけど……どこか引っ掛かるのよね)
 見た目にして10歳程の少女。『赫き深淵の魔女』ミスティカ(p3p001111)は恐ろしいまでに冷静に場を眺めていた。
(この手の依頼は裏があってもおかしくない、特にあの手の依頼人の言うことは、ね)
 つらつらとしゃべる依頼人は、商人らしくよく弁の立つ男のようだった。その言葉に何かを隠している。……そんな気がする。
 経験が告げる。この依頼はどこか、警戒してしかるべきものらしいと。

「行先は、モンドール伯の屋敷か」
『千法万狩雪宗』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831) は思慮深く地図を吟味する。今回のルートには、問題点が多かった。
「ここは見通しが悪い。盗賊団が活動的になっている状況下で、ここを通るのか?」
「変更はできないの? 例えば、そう、こっちならまだましだと思うけれど」
『無明一閃』長月・秋葉(p3p002112)がすっと地図を指す。汰磨羈が頷いた。
「えぇと……少々お待ちください……そうですな、こちらのルートならば可能です」
 マシにはなったが、それでもやはり隙はある。
「ここはどうしても通らなくてはいけないのか?」
「ええ、そうしていただけると」
「ふむ。事情があるなら仕方ないが……」
 それ以上は言わず、汰磨羈は黙った。
(ローレットから出るイレギュラーズは4人だけ。そして、見通しの悪い道を通る、か。恨まれる事が多いと不安がる割には、随分と余裕を見せるものだ)
 その沈黙の理由が、秋葉にもよくわかる。
(今回の依頼……随分とキナ臭いわね……護衛の仕事にしてはまた襲ってくださいというような感じの時間で街道を通るみたいだし……)
「……」
『特異運命座標』オリーブ・ローレル(p3p004352) は、窓に寄りかかり、注意深く同行者と屋敷の使用人を観察していた。
 使用人が何か言いつけ、書簡を持って走っていった。
 このタイミングで。誰に? いったい何を?

 その答えは分からない。
 今は、まだ。

●向かう馬車
 馬車が街道をひた走る。

 秋葉は後ろからの襲撃を警戒しながら、馬車の後ろで流れゆく景色を眺めている。 汰磨羈は前方を見渡し、風の音に耳をそばだてている。オリーブはクレイモアを手に微動だにしない。
 護衛の各々は、それぞれに口数が少ない。

「ねえ」
 ミスティカが、御者に尋ねる。
「依頼者は『人に恨まれることも多い』と言ってたけれど、今回運ぶ品物は『盗品』なんかじゃないわよね?」
「……ははは、そんなことねえですよ」
 返答が少し遅かった。嘘、ではないかもしれない。だが何かありそうだ。
 ミスティカはふうんとそっけない返答をして、さりげなく同行者を観察する。1人は問題ない。通常の反応だ。ただ、何気なさを装って武器の手入れをする男は、ミスティカと御者とのやり取りを注意深く聞いていたに違いなかった。

 襲撃組は、打ち合わせ通りの地点で馬車を待っていた。
 寝子がぐいと杯を煽る。またたび酒だ。
「お酒っスか」
「カカッ、剛毅だねえ」
「この方が勘が働く。汝らもどうだ?」
「いいねぇ……どうせキナ臭い依頼だ」
 オクトが言う。
 どうせ飲むなら血液かなと、口には出さずに葵は思った。元の世界で、彼は半吸血鬼であり、今でも血を飲むことができる。
 寝子が気分を高揚させると、猫の六感が疼く。風の音よりもか細い、五感では感じ取りようもない感覚。
「何かありそうだ」
 貴道の言葉通り。
 ……一波乱ある。寝子にはそういう予感がした。

●2点が交錯する
 日は傾き、時刻は黄昏時。
 空がゆっくりと暗闇へと変わりゆく。
 馬車の車輪がきしむ音。
 道はぬかるんでいて、見通しは悪い。

「索敵方向を分担するぞ。死角を作るな」
 汰磨羈が先頭に立ち、高らかに宣言をする。
 車輪が小石をはねた。
(今か)
 寝子の放ったオーラが縄の形をとり、馬車に絡みつく。マジックローブ。
 馬車が急激に揺れ、隊商の1人が体制を崩した。
「来たわね」
 ミスティカの始まりの赤が避けられない開戦を告げる。
 2本のカットラスが、夕日にきらめいて赤く輝いた。潜んでいた木から、オクトが素早く馬車に飛び移る。
 車体がぐらりと揺らいだ。馬車が止まる。
「全力で防ぎ切れ! 崩れなければ、奇襲の意味は無くなる!」
 汰磨羈が叫び、襲撃からの体制の立て直しを図る。
「おっと。やれやれ、たまきが居るじゃないか……こういうケースもあるとは聞いていたが」
 貴道は、友人と争うことに溜め息を吐きつつ、気を取り直してナックルをはめる。
「この全部の荷物はしっかり守るわよ!」
 秋葉は打刀をかざし、寝子のマジックローブを切り伏せた。
「なかなかに手強そうな護衛だな? まあいい、荷物をよこせ命までは取らぬ」
「あんですって~!」

「お相手願います」
 オリーブが勇ましく前に出る。チェインメイルが輝いた。
「ふんっ!」
 貴道はこぶしを固め、思い切り振りぬいた。受け止め切ったオリーブは、続けざまに防御を集中させる。
 元より、貴道には殺すつもりは皆無とはいえ、良い防御だ。
 オリーブは反撃するそぶりを見せたが、寝子から呪術が飛んでくる様子を見、防御態勢に移ったようだ。
 もう少し本気を出してもよさそうだと思い、貴道は拳に力を籠め、一撃を放った。
 オリーブが受け止めきるという確信があった。受け止めた。
 金属と鋭い打撃がぶつかる音が響き渡る。
 ミスティカの術式が、貴道を牽制する。
 いったん間合いを取る。
 それにしても……。戦いのさなか、貴道は思う。汰磨羈の判断は適格だ。
 相手の実力にはバラつきがある。戦いなれていないものを上手く背後に隠しつつ、明確な指示を飛ばしている。
 つくづく、敵として巡り合ったのは残念だ。
 ミスティカは疑念を抱いた。
 ミスティカの攻撃に、貴道は的確に反応した。
 行き当たりばったりの犯行にしては、相手の盗賊の腕が立ちすぎる。……統率がとれている。

(におう、におうぞ、違和感を感じてるのはワシだけじゃなかろう?)
 秋葉が銃に持ち替え、銃身で呪術を受け流す。扱いの難しいカスタムハンドガンを、的確な射撃で返してくる。距離をとったままなのは、相手も何か感じているからか。
 この戦いは、なにか仕組まれている。そんな予感だ。

 戦場は、実力差のある者たちの動きで大きく2つに分かれていた。
「うおおおおっ……!」
 護衛組についてきた一人が、震える手で弓を引き絞ろうとする。葵が素早く駆け寄り、姿勢を低くした。一瞬相手を見失った男は、風を切るような蹴りの音を聞いた。
「ひっ……」
 正確無比な葵の蹴りは、弓だけを弾き飛ばしていた。
「攻撃をやめるっス、出来ないならホントに蹴る」
 本気では、なかった。今の蹴りが?
 まるで相手にされていない。男は矢を置き、降参の構えをとる。
「無駄なことしなくて済んで、よかったっス」
 葵は駆けだ、別の一人を相手取る。

「私の名はオリーブ・ローレル! ゼシュテル鉄帝国を守るものです!」
 戦場の渦中で、オリーブが高らかに名乗り口上を上げる。兜の下から響くくぐもった、しかし一本通ったはっきりとした声が響き渡る。
 もっと、もっとだ。もっと本気を出してもいいかもしれない。
 貴道は再び拳を振りぬく。
 向かってきた一撃を、オリーブは受け止める。崩れた姿勢を即座に持ち替えし、重い防具を利用してショルダータックルで返す。
 防戦一方ではない。攻撃で返してきた。
 撃てば響くような攻防。

 荷物に斬りこんでいったオクトの強烈な一撃。まっすぐ来るように見えて、ぐるりとカットラスは弧を描く。
 まともに受けきるのは無理だ。ならば、受け流す。汰磨羈は制式霊光器・両剣型甲種を振りぬき、両端に光刃を形成した。
 一撃、そしてもう一撃。
「かかっ、今のを防ぐとは良い護衛じゃねぇの」
 僅か、戦闘を面白がるような気配。
 この太刀筋、戦い方。双方に覚えがある。
「待て。その体躯、カットラスの二刀、その太刀筋――」
「御主、まさかオクトか?」
 奇しくもミスティカの遠術を避けた拍子に、覆面がはらりと落ちた。
「やめだ、やめ、いったん攻撃の手を止めろ!」
 オクトの合図で、襲撃犯は攻撃をやめた。護衛班も手を止める。

●停戦
 日の落ち、すっかり暗くなったかというころ。
 襲撃班は全員が武器を下ろしはしないが、とりあえず攻撃はやめている。
 各々が覆面を外す。
「秋葉嬢、仙狸厄狩嬢にミスティカ嬢じゃねぇか!?」
「あら……オクトさんだったのね……」
 蓋を開けてみれば、知り合いの多さに手を叩く。
「おいおい、護衛がローレットたぁ、嫌な偶然だな!」
「『偶然』が重なったにしては出来過ぎね」
 ミスティカの言う通りだった。
「俺達の目的は……あっー、なんだっけか? なんだっけ?」
 後ろを振り返ると、貴道が答える。
「HAHAHA! 銀の手鏡だ、手鏡! 大事なとこだぞ、忘れちゃ締まらないぜHAHAHA!」
「そうそう、銀の手鏡、銀の手鏡だ、ソイツを寄越しな。そうすりゃ、命も他の品も要らねぇ、このまま去ってやる」
 わずかに芝居がかった調子で、この場にいる全員に聞こえるように。
「誰の依頼だ?」
「依頼人の意向だ、ソイツはそうそう言えねえが……」
「形見を取り返しにきたんだぜ!」
「形見か。形見を取り戻す為とはいえ、この手段では相応のリスクが……穏便に買い取るというわけにはいかなかったのか?」
「……あ? 待てよオイ」
 葵が待ったをかける。
「アイツ手鏡にはいくらでも払うって言ってたっスよ。なんでそっちの商人は商売あがったりとか言ってんスか、バカみてぇな金額提示してさっさと売れよ」
「何かがおかしいな。依頼人の名を明かしておくべきか……モンドールだ」
「ん、何だ。モンドール伯からの依頼? 譲って貰えなかった? おかしな話だな。……これは、当人に問うべきかな」
 生じた違和感が、徐々に具体的な形を帯びていく。
「……いや、そもそもホントにこれは偶然なのか? わざと鉢合うようにしたんじゃなくてか?」
「となれば……2勢力をぶつけて高みの見物となれば賭け事の類か」
「なんだと?」
 オリーブの声が低くなる。
「つまり……私たちのような人を戦わせて楽しんでるような下種な人種だった……と。許せるわけはないわね。もしそうなら、ローレットから何かしらあるだろうけど……気に食わないわね……とっちめて二度とこんなこと出来ないように脅h……」
 そこまで言ってから、秋葉はコホンと咳払いをする。
「戒めないといけないわね」
「一度私たち以外全員を拘束させてもらうのはどうかしら。逃げるなら……容赦なく攻撃させてもらうわ」
 秋葉が言う。事情を知ってる人間が居るかもしれない。
「警告はしたわよ」
 秋葉が静かにカスタムハンドガンを振りぬいた。護衛組の1人が逃げようとしたのだった。精密射撃。急所を外し、足をかすめていた。
 戦意を奪うには申し分ない早業だ。
 幾人かが観念してうなだれる。
「ここを通る事を知っていた。ならば、荷物の届け先も知っているのだろう?」
「私達は盗賊の『処分』については何も言われていないけど、貴方達はどうされたいかしら?」
「見たところ、問うべきはこ奴だな」
 寝子はゆっくりと1人に歩み寄る。
「必要以上のダメージ回復。張り合いのない攻撃。……弱い抵抗。最初から命までは取らぬと”知っていた”な?」
「あ、あ、あ……」
 寝子はすっと、男の頬に手を滑らせる。
「何、悪いようにはしない……協力してくれればな」

●こうして幕は下ろされる
「モンドール様! ゴルドー様!」
 屋敷に使用人が飛び込んできた。どうした、と問う前に、扉がぶち破られる。寝子のマジックローブにからめとられ、使用人はその場に崩れ落ちる。
「ぐえっ……」
「あ、あなたたちは……!」
 目の前にいたのは、イレギュラーズたちだ。それも、両方の。
 事態が露見したと察した二人は青ざめる。
「ほぉ……譲ってくれない筈の商人と仲良く宴とはビンゴってところか? 俺達も参加していいか? ……落とし前をしっかりとツケた後でな」
 オクトのすごみに、二人はじりじりと下がる。
「い、いえ、これはその……」
「私兵! 私兵は何をしている!」
 慌てて後ろから飛び出してきた私兵たち。しかし、イレギュラーズたちの敵ではない。
 秋葉が軽々と打刀を振るう。ミスティカの遠術、寝子の呪術がそれぞれに私兵を倒した。
「俺の前を通れると思うのか!」
 まだ追いすがる私兵の前に、オリーブが立ちふさがる。
「安心しろ。殺しはしないさ」
 葵はボールを取り出し、そっと空中で手を離す。戦闘中にしては、不思議な動作だ。
「だが―ー蹴らせては貰うぞ!」
 二人の依頼人は思わず目を見張ったが、しかし、ボールは一直線には飛ばない。
 葵のボールは勢いをつけて壁にぶつかる。跳ね回るボールは私兵の隙間をかいくぐり、ゴルドーの顔面を直撃した。
「ぐえっ」
「……ちょ、跳弾!? なんだ!?」
 モンドールが慌てているうちに、ボールは再び葵の足元へと転がっていく。エースストライカーたる葵のコントロールは、正確無比というほかない。
「もう一発いくか?」
「ひぇええ……」
「HAHAHA! 反省しろとは言わない、ただ反省させて下さいというまで殴るだけさ!」
 貴道がぐっとこぶしを構え、葵が蹴りの姿勢を見せると、兵士たちは慌てて武器を捨てた。

「まったく、賭けなんざキックオフのコイントスだけで十分だっつーの、くだらねぇ」
 イレギュラーズたちが辺りを制圧するころには、モンドールとゴルドーはすっかり平伏していた。
「この程度の嘘で騙す心算だったなら、商人として見積もりが甘過ぎたわね」
 ミスティカはモンドールの目の前に手鏡を置いた。最初から大切な品ではない。そう思いながらも、モンドールの手がとっさに伸びた。
 そこに映っていたのは、情けない自分の姿。思わず目をそらす。
「下らない賭けに形見が使われて、母親はあの世でどう思っているかしら。これはその罰が下ったと、恨むなら、己の浅はかさをせいぜい恨みなさい」

 これに懲りた二人は、二度とローレットをたばかろうとは思わないに違いない。
……あとの始末は、ローレットがつけてくれることだろう。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

実力者vs実力者が見たいという一心で作成したシナリオでした。
読みあいぶつかり合う様子が見られて感無量です……。
お疲れ様でした。
機会がございましたら、また一緒に冒険いたしましょう。

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