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シナリオ詳細

おとぎの世界の性転換ミラー

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●真実の鏡と対をなすは
 さあさあそこの紳士淑女さま、望みの姿はありませんか?
 華奢で今にも身体の線が折れてしまいそうなほどの儚い美少女や、見上げる者を圧倒するほどの大男! 何を着ても様になる美女になってウィンドウショッピングしたり、絶世の美少年になって道行く者を振り向かせたいとは思いませんか!
 その望み、すべてこの『虚像の鏡』が叶えてみせます! たとえ性別が違う姿でもまったく体格の違う姿であったとしても、貴方の望みの姿に変身させてあげましょう。方法は簡単、私の前に立って姿を鏡に映し、貴方の理想の姿を言葉に出すだけ!
 ええ、ええ。すべてこの私にお任せください! お代なんていりません、タダです! すべて私の魔法で叶えてみせましょう! もちろんリピーターは大歓迎!
 ああ、ただしずっと理想の姿のままでい過ぎて本当の姿を忘れてしまってもそれはお客様の自己責任ですので、あしからず……

●虚像の鏡のイレギュラー
「この鏡にも困ったものだわ……」
 ぱらりと頁をめくりながらポルックスは溜息を吐いた。
「ああ、来たのね」
 イレギュラーズの訪れに気づいたポルックスが顔を上げる。
「実はあの御伽噺に出てくる真実の鏡に兄弟がいるって知ってた?」
 リボンで飾られた綺麗な金髪をポルックスは揺らす。
「真実の鏡と対をなす虚像の鏡。その虚像の鏡がちょっとお調子者で、困っちゃうの」
 そう言ってポルックスは内実を語り出した。
 そこは虚像の鏡が支配する『虚栄の世界』。とても発展した豊かな世界で、人々は誰もが裕福で自由に買い物や食事をし、着飾っていた。
 ある日虚像の鏡が何かのきっかけで封印が解けてしまったのか、鏡は気軽に人々に魔法をかけ出した。それは人々の姿を変える魔法。その魔法は本当に人の姿を自由自在に変えられて、十二時を過ぎたら解けちゃうなんてお約束もなくて、理想の姿になれた人々はそれまで以上に幸福になれたような気がしていた。
「けれどね」
 ポルックスはそこで真剣な顔になる。
 誰もがずっと魔法をかけられた理想の姿に変わり、人々は互いに互いが誰なのか分からなくなってしまった。恋人や家族すらも分からなくなり、人々の関係性は消えてしまった。それでも人々は理想の姿のままでいるのを止められないどころか、気分に合わせて何度も虚像の鏡に新しい姿に変えてもらうようになっていた。
 その内に、その世界の人々はすべて自分の本当の姿が分からなくなってしまったのだった。
「だから、ちょっとこの鏡さんにお灸を据えてきてくれる?」
 あ、とポルックスは付け足す。
「もちろん鏡さんを油断させる為にポータブル鏡さんを使って変身してね! せっかくだから今とは違う性別になっちゃいましょう、それがいいよね!」

NMコメント

 どうも野良猫のらんです、よろしくお願いします。
 今回は性転換して街中を歩けるシナリオです。

 『虚栄の世界』の中に入り、旅人として城下町に入るとポータブル虚像の鏡を町の人に渡されます。これは手鏡の見た目をしていて、虚像の鏡の分身で自我のないただの道具です。ですが変身機能はばっちりで、ポータブル鏡に顔を映してなりたい姿を呟けばその通りに変身できます。
 ポルックスの思い付きで、いえ、鏡を油断させて城内に侵入する為にイレギュラーズの皆さんには異性に変身してもらうことになります。どんな体型で、どんな髪型でどんな服装の異性に変身したいかご自由にプレイングにどうぞ。(性別がない方は男性になるか女性になるか選べます)プレイングに記載されなかった箇所に関しては「元と同じ」と判断します。
 虚像の鏡の本体はお城の玉座に飾られています。ですが、真っ直ぐそこに向かわずに城下町で遊んでみてもいいです。カフェでお茶をするのもいいですし、ポータブル鏡で服も変えられますがあえてショッピングしていろいろ服を着替えてみてもいいかもしれません。あるいは姿が違えばいつもと同じことをして時間を過ごしても楽しいかもしれません。
 お城に向かうとすぐに虚像の鏡に会う事ができます。なにせ人々に魔法をかけまくっているので、自由に人を通しているのです。なので、思い思いの方法で虚像の鏡にお灸を据えてあげましょう。鏡の魔法でいかに弊害が出ているか切々と訴えてもいいですし、実力行使で攻撃して反省を促しても構いません。ちなみに虚像の鏡は変身魔法に特化しているので、ほとんど反撃はしてきません。

●ポータブル虚像の鏡
 虚像の鏡が人々に広く流布させている道具。町の人のほとんどはこの手鏡を使って毎日変身しています。
 この鏡に虚像の鏡本体の自我が宿ったりすることはありません。その代わりこの手鏡を割っても本体に影響はありません。

●虚像の鏡
 お城の玉座にいます。もともといた王様も自分を忘れてしまったので、虚像の鏡がそこに収まりました。
 すっかり油断して、ポータブル虚像の鏡を使用した人間は誰でも自由にお城に通しています。
 純粋に人間を幸福にしてあげたい一心で魔法をかけ続けているだけなので、やり方次第では反省して人々にかけた魔法を解いてくれることでしょう。
 反撃の手段を持ってないので、攻撃を受ければ簡単に鏡が割れます。鏡が割れると虚像の鏡は痛みを感じるようです。完全な破壊はしないであげて下さい。

●サンプルプレイング
 普段背が小さくて不便な思いをすることが多いので、身長2mの大きな男の人に変身したいと思います!
 髪はモヒカンでサングラスを付けて、肩にトゲトゲのパッドを付けた状態でバイクを乗り回します! 「ヒャッハー!」とか言いながらブンブンとバイクを走らせ、そして街中で困っているお年寄りなどを見かけたらバイクから下り、荷物を持ってあげるなどして親切にしてあげます。何せ普段筋肉が足りなくて力になれず、歯がゆい思いをしているので!
 お城へはそのままバイクで突撃して城門を破壊、そのままの勢いで「大切なのは人と人との絆なんだー!!」と虚像の鏡に殴りかかって説教します! 鏡もきっと反省してくれますね、一件落着!

  • おとぎの世界の性転換ミラー完了
  • NM名野良猫のらん
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年04月10日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ジル・チタニイット(p3p000943)
薬の魔女の後継者
ヴォルペ(p3p007135)
満月の緋狐
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
夏宮・千尋(p3p007911)
千里の道も一歩から

リプレイ

●Mirror, mirror on the wall――――
「どんな姿にも変身できるなら別に異性にならなくてもいいような……」
 ポータブル虚像の鏡とやらを手にしてそうぼやいたのは、『凡才』回言 世界(p3p007315)だった。
 他のイレギュラーズも皆同一の手鏡を手渡されていた。
「おにーさんの女体化なんて何百年かに1回はあるからね。慣れてるよね」
 世界とは対照的に平気な様子で手鏡を手にしたのは『満月の緋狐』ヴォルペ(p3p007135)。真紅の切れ長の瞳が特徴的な男だった。
「変わりたい気持ちは私にもある。だが己の芯を見失うなど、あってはならない」
 静かにこの世界の現状を愁いる少女が一人。『千里の道も一歩から』夏宮・千尋(p3p007911)は普段から鋭い視線をより一層険しくしていた。多くの人間が気軽に変身できる快楽に耽溺しているという事実が衝撃だった。千尋にとっては変化とは現実を受け止めた先にあるものなのだから。
「こういう時は変に飾り立てずに、ありのままの僕がそのまま」
 『薬の魔女の後継者』ジル・チタニイット(p3p000943)は気軽に手鏡を掲げると、自分の変身したい姿を鏡に告げた。鏡よ鏡よ鏡さん、という具合で。でもちょっと背は欲しい、というお願いも付け加えて。
 束の間、ジルの姿が光に包まれる。光が収束すると、そこには変身し終えたジルの姿があった。
 宝石を梳ったかのような煌めく髪が枝垂れる。元のジルと同じく角も爪も瞳も宝石で出来たその身体は、しかしはっきりと元とは違っていた。肩幅の広がった体躯、白い首筋に見える喉仏。何よりジルが望んだ通り、3フィートほど高くなった背丈が元の姿との違いを明確にしていた。
「僕、イケメンになってしまったっす」
 ドヤ顔をしたジルの声は1オクターブほど低くなっていた。
 男性と化したジルが纏う雰囲気は、一種の妖しい美しさすら醸し出していた。

●不思議の国の偽物の町
 その姿のまま情報収集など行うのだから、妙な視線を集めるのは道理だったかもしれない。
「そこの御方、僕になにか出来る事あるっすか?」
 ジルは手鏡を見つめてくるりくるりと姿を変えては溜息を吐いている市民を見つけ、声をかけた。
 市民はジルと目が合うと、釘付けにされたかのように固まってしまった。
 それもその筈だ。いくら姿を自由自在に変えられると言っても、宝石が人の形をとって動き出したかのようなジルのような人物には滅多にお目にかかれない。加えて一見して性別不詳の妖艶さは、簡単には真似しがたい絶妙な均衡で醸し出されていたのだから……。
 声をかけた市民だけではなく、道行く人々がジルのオーラに惹かれて注目し出す。
「は、はは、ちょっと僕、用事を思い出したのでそれでは……!」
 視線に恐怖を覚え始めたジルは、適当なところで退散したのだった。

 時を同じくして衆目を集める人間がいた。
 背中まで伸びたワイン色の髪を揺らして、その美女は颯爽と街中を歩いている。ルビーのように紅い瞳を持つ高身長の女はヴォルペの化けた姿であった。髪と色の合ったスリーピースは、今は豊満な肉体に合わせて曲線を描いている。
 とはいえ、色気漂う美しい女という程度ならばこの城下町では珍しくもない。それでも視線を集めたのは、ヴォルペの持つ超然とした雰囲気によるものだろう。恍惚とした溜息が周囲から聞こえてくるようだった。姿を変えるだけでは実現できない美があることをヴォルペは体現していた。
 一人の市民が手鏡でここ一番であろう美男子に姿を変えると、ヴォルペをお茶に誘った。
「悪いけど、偽りの姿に喜んでるようなお子様精神に用はないんだよね」
 ヴォルペはそのナンパを一蹴した。
「まるで箱庭。夢の世界。けれど偽物ばかりなんて、本当につまらない」
 此処は何処を眺めても偽物ばかり。
 飽いた彼は、否、彼女は町の中心である城へと足を向けたのだった。

 一方で平和な時間を楽しんでいる者もいた。
 髪がいささか伸びた程度の姿変化をした世界だ。それでも顔の輪郭や体型が仄かに女性らしい繊細さを帯びた彼に、ボブカットの髪が色気を与えていた。
 今、世界はフリルのように可愛らしいクリームで彩られたショートケーキにフォークを突き立てている最中だった。
「普段スイーツ店になんて足を運べないけど……」
 スイーツ店巡りをしておくべきだと思った自分の考えに間違いはないと世界は確信した。折角の寄り道を世界は大いに満喫していた。
 一見地味だがよくよく見れば美しい顔立ちの女性がご機嫌でスイーツを楽しんでいる。傍からはそのように見えただろう。
「うん、なかなか楽しいな」
 なんだかんだと言って異性に変身したことを世界は堪能していた。

「変身、変身か……うーむ。悩む。着飾るのとは違うのだろう?」
 最後まで思い悩んでいたのは、この世界の在りように憤然とした思いを抱いていた千尋だった。
 結局、千尋は知人の姿を模倣することにした。兄貴分の肌の白い痩身の青年であった。
「やあ僕は千尋。よしな、こほんっ、よろしくね!」
 千尋は兄貴分を真似て声を出すと、ぶるりと肌を粟立たせたのだった。その多大な違和感は千尋にとって許容しがたいものであった。見た目をころころ変えるなど……と千尋は愁眉を寄せた。
 だが、一度決めたら最後までやり通すのが夏宮の女というものだ。そう決意を新たにした千尋が向かう先はもちろん、虚像の鏡が玉座に君臨するという城だった。

●My dear, you are the most fair.
 城の時計塔が夜の十二時を示して鳴る。それでも城内は舞踏会で明るいままだった。煌びやかな城で踊るは仮面を付けた美男美女。偽りの姿にさらに嘘を重ねる虚々実々の舞踏会であった。
 舞踏会に紛れ込んだイレギュラーズは、さほど時間をかけず虚像の鏡を見つけることが出来た。
「ああ、新しいご客人ですか! 楽しんで頂けてますか?」
 虚像の鏡は鏡面の内にぼんやりとした人面を映し出して笑った。
 鏡に恭しく礼をして近づいたのはヴォルペ。
 艶然と微笑んだ美女の紅色の目は笑っていなかった。
「鏡よ鏡……なあんて、お伽噺は好きじゃあないんだ」
 形の良い唇が紡いだ言葉に舞踏会が静まり返る。
 その異様な空気を物ともせず、だって悪い所を磨こうともしない怠慢さと他者への嫉妬しかないだろう、とヴォルペは続ける。
「誰もが磨けば美しくなれるのに、その努力を無為にする悪い子くん。偽物ばかり作っている君にはお仕置きが必要だよね。」
 ヴォルペの言葉は、舞踏会の人々の胸に深く突き刺さったようであった。
 もう夢から覚める時間だった。
「い、一体何を言っている……? だってニンゲンは皆悦んでいるのですよ、何が悪いというんですか!」
 唯一認めないのは鏡だけであった。いや、痛い所を突かれた自覚はあるのだろう。
 その態度を見て一同は実力行使に出るしかないと判断した。
「こんなことはやめなさいってことだよ!」
 その言葉と共に神子饗宴で仲間の力を引き上げたのは兄貴分の青年に化けた千尋だ。
 千尋扮する青年は間髪入れずに放った術で鏡を吹き飛ばした。
「ぎゃあああーーッ!? ……え?」
 突如として襲ってきた衝撃に鏡面が割れる覚悟をした虚像の鏡は、ぱちくりと瞬いた。痛みを覚えなかったからだ。
 ――――衝術。相手に苦痛を与えずに吹き飛ばすその術を千尋は次から次へと叩き込む。叩き込む。
「やめッ、待……っ」
 やがて虚像の鏡は玉座へとめり込み、身動ぎも出来なくなった。その頃には舞踏会の人々はとっくに逃げ去っていた。
 動けなくなった鏡を見て、世界は言い放つ。
「こんな鏡、もう割っちまった方が早いんじゃねえか」
 もちろんそれは脅しなのだが、虚像の鏡はその言葉に小さく悲鳴を上げた。
「好きに使えるというのはあまりいい気分がしないんだよな」
 竦み上がった鏡を世界はシニカルに見下ろした。
 無制限に変身できるというのは容易に犯罪に悪用できるし、自分が分からなくなる人間だっている。何事もほどほどにしておけよと言外に諭す。
 虚像の鏡はそれでも言い募った。
「けれど、魔法を解いたらニンゲンたちは生きる気力を失っ……」
 ガッ。
 鏡面すれすれ、玉座の背もたれに革靴による蹴りが捻じ込まれる。その威力は豪奢な玉座に罅を入れ、砕け散らせるほどだった。それは死の概念の無い鏡に死の恐怖を感じさせた。
「良い子になるなら、許してあげる」
 本物だけを嗜好するヴォルペのその言葉は本気だった。
「は、はいッ! 申し訳ありませんでしたッ!」
 虚像の鏡は鏡面に涙を浮かべて謝り倒した。
 反省した様子の鏡の前にジルが進み出る。ジルが取り出したのは城下町の人びとのありのままを纏めたメモであった。
「偶に変わるというのは面白いっすけど、毎日変わるとわけが分からなくなって仕舞うっす。なので、どうせ変わるのならば年に1回だけにして、その時はお祭りみたいに騒ぐっていうのはどうっすか?」
 宝石よりも明るく輝く彼の言葉に、虚像の鏡は目を瞬かせた。そんなことは今までまったく考えたことがなかった、という様子だった。
 楽しいことを全部終わらせるのはとっても辛い事っすけれども、ちゃんと決まりを作ってから楽しむ方が絶対いいっすよ! とジルは続けた。
「他人を変えてばかりじゃ飽きちゃうだろ? 今度はみんなの良い所を映す鏡に自分を変えてみたら?」
 千尋が兄貴分の口調を真似て諭す。
「分かった……今日限りで、ニンゲンにかけた魔法はすべて解く」
 鏡が項垂れると同時に、イレギュラーズの身体が光に包まれた。
 瞬間、彼らの姿は元に戻っていた。
「慣れないことはするものではないな」
 疲労を滲ませながらも、千尋は満足げに微笑んだのだった。

 かくして、偽物の世界に偽物はいなくなった。
 めでたし、めでたし。

成否

成功

状態異常

なし

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