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シナリオ詳細

春うらら、やってきたきたスプリンGUY!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●世間はすっかり春ですね
 冬の寒さもようやく緩んで、そろそろ春の陽気という言葉が聞かれるようになった頃。
 幻想領内でも辺境に位置する小さな村が、今、存亡の危機に立たされていた。
「来たぞーーーー!」
 村人の一人が鍬を手に大きな声を出した。
 その声に、女子供は急いで家の中へと入り、男たちは彼と同じように武装して構える。
 村の入り口近くに集まった男たちは、皆一様に緊張をその顔に浮かべながら、景色の向こうを見やる。
 平原には、春だからだろう、花が咲き乱れていた。
 色とりどりの花が、つぼみから開いて鮮やかに景色を彩っている。
 寒さはもうなく、流れる風からしてあたたかい。
 春。
 それを実感せざるを得ない。
 だからこその、村人たちの緊張なのである。
 特に、最初に叫んだ男。この村の村長でもある彼は、自分の村を守るために必死の形相を浮かべていた。
 春だ。春が来てしまった。
 そう、昔から春といえばやってくるのは決まっている。
 ――スプリンGUYだ。
「はぁぁぁるがきぃぃぃぃたぁぁぁぁはぁぁぁるがきぃぃぃぃたぁぁぁぁ!」
 来た。
 来てしまった。
 春と共にやってくる恐怖の使者。
 春を司る精霊とも、災害が具現した存在とも、単に頭がおかしいアレとも呼ばれる謎の存在!
 頭に朗らかな一輪の花を咲かせた、全身桜色のナイススマイルマッチョメン!
 群れで押し寄せるそれこそが恐怖の春モンスター、スプリンGUYである!
「うおおおおお、村を守れェェェェェェェェ!」
「「「おおおおおおおおおお!」」」
 だが、彼らの健闘もむなしく、村には今年も大量の花粉症患者があふれることとなるのだった。

●春の陽気でアレですね
「春の訪れとともにどこからともなく現れて、村や町に群れで押し寄せて体から発する強烈な花粉で人々を花粉症に追い込むニヒルなスマイルのピンク・ザ・ナイスガイがスプリンGUYなのです」
 『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)が行なった冷静な説明を聞いて、集められたイレギュラーズのうち数人は「お前は何を言っているんだ」というツッコミを出しかけてそのまま飲み込んだ。
「ええと……」
 しばし、言葉を選ぶ。
「ピンクなのか?」
「ピンクなのです。頭の先からつま先まで完全に見事な桜色なのです」
「人型なのか?」
「人型なのです。見事に均整の取れた体つきなのです」
「マッチョなのか?」
「マッチョなのです。ムッキムキの逆三角形でガッチガチのマッスルなのです」
「ナイスガイなのか?」
「ナイスガイなのです。いつでもスマイルを崩すことのない、ハゲ頭に花が咲いているナイスガイなのです」
「…………」
 イレギュラーズたちは黙り込む。
 ここは『無辜なる混沌』。
 ここは『無辜なる混沌』。
 ここは『無辜なる混沌』。
 ――よし!
「それにしたってヒドイだろ!?」
 心の中で無理やり自分を納得させても、結局出てきたのはツッコミでしかなかった。
「確かにふざけた外見ですが、被害は結構バカにならないのです!」
 そのスプリンGUYなる存在、体から花粉をまき散らす能力を持っており、その花粉を吸いこんだ者はもれなく花粉症に苦しむことになるという。
 最低でも春が終わるまで、花粉症にさいなまれるというのは確かにキツイ話であった。
「スプリンGUYはまるでそれが自分の仕事だといわんばかりに人がいるところにやってきて花粉を巻き散らしてどこかへと去っていくのです。しかも花粉を巻き散らす邪魔をされると怒ってプロレス技をキメてくるのです」
 もうなんでもありだな、この世界。
 今更過ぎる事実を、イレギュラーズは再確認した。
「今回は毎年被害にあっている村からの依頼なのです。どうか、スプリンGUY撃退をお願いするのです!」

GMコメント

春ですね。天道ですが、シナリオです。
字余り。

◆成功条件
・スプリンGUYの撃退

◆敵
・スプリンGUY×5
 スプリンGUYは低回避高耐久のモンスターです。
 能力としては花粉を飛ばす能力とプロレス技を使ってきます。
 花粉を吸いこんだ場合は一時的に花粉症を発症してしまいます。
 頭にきれいな花が咲いています。

◆舞台
・農村から少し離れた春の平原
 ちょうちょが飛び、色とりどりの花が咲き乱れています。
 広いので遮蔽物などはほとんどありません。

  • 春うらら、やってきたきたスプリンGUY!完了
  • GM名天道(休止中)
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年03月28日 21時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヘルマン(p3p000272)
陽気な骨
ウェール=ナイトボート(p3p000561)
永炎勇狼
Remora=Lockhart(p3p001395)
Shark Maid
朝長 晴明(p3p001866)
甘い香りの紳士
ぺリ子(p3p002675)
夜明けのハイペリオン
雫(p3p002862)
生き人形
朝比奈 愛莉(p3p003480)
砂糖菓子の冠
ルア=フォス=ニア(p3p004868)
Hi-ord Wavered

リプレイ

●春のお茶会
 春うらら。
 花畑には黄色い菜の花。
 飛んでるちょうちょもふわふわと。
 景色はまさに百花繚乱。冬とかもうどんだけ前のの話だっけ、というレベルである。
 そこにはいっぱい人がいた。もちろん、イレギュラーズ達である。
「名付けて、『晴明スペシャル』!」
「ドンデンドンデンドンデン!」
 懐から自分が調合した茶葉を出して得意げに言う『Red hot toxic』朝長 晴明(p3p001866)と、そのあとでルア=フォス=ニア(p3p004868)。
 茶葉は、花粉症対策として晴明が調合してきたものだ。
 自分が持ってきた茶器を使い、『Shark Maid』Remora=Lockhart(p3p001395)が皆の分の茶を入れる。
 花畑の一角に大きなシートを敷いて、イレギュラーズは輪を作って皆でお茶を楽しんだ。
「お、このお茶美味いなー。骨なのにしっかりわかるぜ」
 『陽気な骨』ヘルマン(p3p000272)が、湯呑一杯分のお茶をガブ飲みした。
 骨なのに食事もできる彼だから、骨なのに花粉症になる可能性もあって、対策用の茶を飲んでいる。
「しかし花粉症というのはそんなに厳しいのだろうか?」
 お茶を飲みつつ、疑問を口にする『迷い込んだ狼と時計』ウェール=ナイトボート(p3p000561)に、ルアが答えた。
「地獄」
「そんなに」
「そんなに」
 コクコクうなずくルアの隣に座っている『砂糖菓子の冠』朝比奈 愛莉(p3p003480)が、小さく苦笑し、
「まぁ、お仕事が終わったらブルーベリーパイとか作りますから」
 ブルーベリー。
 それもまた花粉症に効くといわれている果物だ。
 ルアが「うむ」と一際深くうなずく。かなり、そのパイに期待を寄せているようだ。
「花粉、ね。……そもそも私は人間ではないから今まで気にもしてこなかったけれど」
 言いつつもしっかりお茶を飲んでいる『生き人形』雫(p3p002862)が、心底不思議そうに首をかしげた。
「一体、どんなものかしら」
 その疑問にも、ルアが答えた。
「地獄」
「そんなに」
「そんなにそんなに」
 コクコクうなずくルアの向かい側に座っている『夜明けのハイペリオン』ぺリ子(p3p002675)も、
「すんごいしんどいらしいからね!」
 などと言ったりするのだが、彼女自身は花粉症になったことはない。
 さてこの花畑、近くに小さな泉があるのだが、
「持ってきたバケツはー?」
「こっちに重ねてあるよ」
 イレギュラーズ達は歓談の最中、依頼人のいる村から借りてきたバケツに泉の水を汲んでいった。
 広いシートの面積のおよそ半分が、水の満ちたバケツで占められる。
 やがてお茶がなくなる。
「あー、いいお茶だったなー」
「村の人が持たせてくれた果物も美味しかったですね」
「儂は帰ってからのブベパイも楽しみじゃがのう」
「何ですか、ブベパイって……」
「ブルーベリーパイって長いもんなー、確かに!」
「もっとマシな略し方……」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁるがきぃぃぃぃぃぃぃぃたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
 来た。
 来てしまった。
 ついに、今回の標的が。
 花畑の向こうから、ワッサワッサと目視できるレベルで花粉を振りまきまくっているピンク色のマッチョ人影×5。
 脳天花咲きスプリンGUYだ!
「「「はぁぁぁぁるがきぃ「「「待ってたぜ、この瞬間(とき)をォォォ――――!!!!」」」
 スプリンGUYの雄叫びをさらなる雄叫びで塗り潰したイレギュラーズは、全員がゴーグルとマスクで完全武装していた。
「あー、キツい、これは確かに視覚への暴力だなー!」
 ゴーグル越しにスプリンGUYを見た晴明の感想が、まさに皆の総意そのものだろう。
 スプリンGUYは構うことなくその鍛え上げられた肉体(細胞壁あり)から迸る汗の代わりに花粉を散らすが、
 しかし風に乗った花粉はイレギュラーズの方ではなく、GUYへと戻ってくる。
「残念でしたね、こっちは風上、そっちが風下です」
「花粉対策、完璧だね!」
 雫が言うと、ペリ子が腕を組んで勝ち誇った。だが戦いはまだ始まっていない。
 だが、対策はそれだけでゃない。
「それ今だ、ぶっかけちまえー!」
 ヘルマンの号令で、皆がスプリンGUYにバケツの水をぶっかける。
「はるがっ!?」
 スプリンGUYが驚愕する。
 濡れた体では、花粉をまくことができなくなってしまう。
 ここまで含めて、まさに完全無欠なイレギュラーズの花粉対策であった。
「はぁぁぁぁるが、きぃぃぃぃたぁぁぁぁぁぁぁ!」
「はるがきた!」
「はるがぁぁぁぁ、きたぁぁぁぁぁぁ!」
 ピンクのマッチョが顔に怒りの形相を浮かべて抗議する。
 なかなか異様な光景だ。
 ピンクの仁王像による集団クレームを想像していただければ、この風景の幾分かは伝わることだろう。
「知ったことか、焼き払えぇぇぇぇぇぇ!」
「「応ォォォォォォォ!」」
 だが、地獄の花粉症地獄を前にして、イレギュラーズ側に遠慮も容赦もありはしなかった。
 春一番、お花畑でスプリングプロレスリング多分三十分かからないくらい一本勝負。
 ファイッ!

●春のプロレス
 スプリンGUYについて説明せねばなるまい。
 まず、ピンクである。
 そして身長は2mを超えている。
 体重は1tちょっとである。
 それでも機敏に大胸筋をピクピクさせているのは、鍛え上げた細胞壁の力だろう。
 なお、分類上は植物に分類されるが緑ではないので光合成はできない。
 その表面はツルッツルで、よく見ると陽光を照り返している。油を塗ったボディビルダーがバグったカラーリングである。
 全身には産毛を含めて一切の毛が無く、脳天には花が咲いている。
 チューリップだ。
 そして顔にはいつでもギトギト爽やかスマイルが浮かんでいるが、起こるとそれは仁王になる。
 常にポーズをとっており、全身から花粉をまき散らす性質を持っているのは周知の通りだ。
 ここまでが、スプリンGUYの外見と能力のおおよそのデータである。
 そして上記に記した情報は花粉飛散以外は大体どうでもいい。
 重要なのは、彼ら(?)がプロレス技の達人であるという事実の方だ。
 仁王化したスプリンGUYは、まさに春の嵐そのものと呼ぶ他ない。
 近づいた者には伊勢湾台風クラスのジャイアントスイング。
 そして空中に放り投げての断頭台・オブ・ヘルが待っている。
 そのプロレスラーぢからたるやプロレス界レジェンドのジャイアントホースエリアを超え、アントニオボアウッドを超え、レジェンドオブレジェンド・パワーロードマウンテンすら超えかねない勢いである。
 極限を超越する、スプリンGUYのプロレスぢからパゥア!
 その丸太の如きピンク色の腕に捕まった者は、もはや二度と抱擁を気持ちよく思うことはできなくなる。なーい」
 ある側面では、人生が終わりを迎えてしまうほどの衝撃!
 奇跡!
 覚醒!
 スプリンGUY!
「うおおおおおおおおおお、絶対に近づけてはならんのじゃあああああああああ!」
「「「いえすまむ!」」」
 だが近づかなきゃ話にならないのであった。
 花粉まくヤツ絶対殺すんじゃよ儂ウーマンことルアを先頭に、遠距離攻撃を使える者は最初から全力全開だった。
「マギシューマギシューマギシューマギシュー!」
「マギシューマギシューマギシューマギシュー!」
「マギシューマギシューマギシュー黒百合どーん」
「遠術遠術遠術遠術遠術遠術遠術遠術遠術遠術!」
「魔弾魔弾魔弾魔弾魔弾魔弾魔弾魔弾魔弾魔弾!」
「衝撃の青衝撃の青衝撃の青衝撃の青衝撃の青!」
 どかーん。
 ちゅどーん。
 ずごごごごー。
 爆炎。爆炎。また爆炎。
 スプリンGUYが魔法弾幕の中を身体張る系芸人よろしく駆け抜けようとするが、
 ばごーん。
 ちゅどどーん。
 どががががーん。
 はるがきたぁぁぁぁぁぁぁあべしっ。
「わー、やることなーい。ねぇねぇウェール、ジャンケンしない?」
「ペリ子、今俺たちは仕事中のはずだが?」
「何もしないで見てるのも仕事なの?」
「…………」
「最初はグー!」
「待て、そのタイミングは卑怯だぞ!」
 こうして、ペリ子とウェールがアイコ八連チャンののち後出し云々で揉め始めたころ、大体みんなの魔力が尽きた。
「――――ふぅ」
 愛莉が額を伝う汗を腕でグッとぬぐい、焼け野原を化した元花畑を見て一言、
「よし、やりすぎました!」
「花粉症じゃからね、是非もないよね!」
 花粉まくヤツ絶対絶対生かして帰さんよ儂ウーマンことルアもこの焦土化にはご満悦。
「立派なお花畑だったのに……、残念ですね……」
 Remoraの、そんな真っ当な美的感覚に則った言葉に対して、晴明はあっけらかんとこう返す。
「焼き畑の面積が増してよかったんじゃね?」
 この男、情けも容赦も全くなかった。
 商人だから仕方がないね!
「でよー、ピンクのアレはどうなったのよ?」
 骨ことヘルマンがスプリンGUYを探してみると、焦土に咲き誇る五本のチューリップを見つけた。
「あれか?」
「あれだな」
「あれじゃろうなー」
 イレギュラーズ達がそろって警戒する。
 一方で、ペリ子とウェールの後出し騒動はそろそろ法廷で争うレベルに至っていた。
「後出ししたよね? 絶対したよね?」
「していないと言っただろうが! 大体俺が後出しをしたという証拠がどこにある!」
「ボク見たー! 見ましたー! ウェールが僕が出したパーの後にグーをチョキにしたの見たからねー!」
「原告の証言などあてになるわけがないだろう! 俺は動かぬ証拠を出せと言ってるんだ! さもなくば証人!」
「ウギギ……、そうやってむりやりうやむやにしようたってダメだからね! ボク見たって言ったし!」
「はー!? 俺がいつ後出ししたってー! いつー! 何年何月何日何時何分何秒にー!!?」
「今年今月今日さっき時さっき分さっき秒ー! 後出ししたってばー!」
「子供か」
「「ごふっ」」
 雫、快刀乱麻の一声であった。
「「「はぁぁぁぁぁぁるがきぃぃぃぃぃぃぃぃたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」」
 そしてスプリンGUY×3、いきなりイレギュラーズ背後から出現!
「オイ待たんか、あっちのチューリップは!?」
 ただのチューリップです。
「やけにバイタリティ溢れるチューリップ共めがぁぁぁぁぁぁぁ!」
 花粉まくヤツ絶対絶対絶対灰燼に帰して風に撒いてやるよ儂ウーマンことルアもこの登場には発狂寸前。
「ところであいつら縮んでね?」
「あ、本当ですね」
 気づいたのはヘルマンで、確認したのはRemoraだった。
 細い。
 さっきまで、筋骨隆々・迸れパトス・唸れマッスル・軋みをあげて吼えろトルク!
 ――だったスプリンGUYがッ、
「全然細くなっているわ。まるで『運動に目覚めて筋トレに励む虚弱な一般人。鍛え始めて二週間目』くらいの細さね」
「何でそんな具体的なん?」
 表情を一切変えずに言う雫に、ヘルマンは実に的確な指摘を送る。
 雫は無視した。
 イレギュラーズの意識が、やせ細ったスプリンGUYの方に向く。
 一方で、ペリ子とウェールの後出し紛争はウェールからペリ子への賠償金としてブベパイ二切れを支払うことで合意がなされ、ここに歴史的和解は成立した。
 もちろんどうでもいい話である。

●春の謎は全て犯人はこの中に初歩的な事だブルーベリーパイ美味しい
 その事実に最初に気づいたのは、晴明だった。
「つまり、あのスプリンGUYは新芽だったんだよ!」
「「「な、なんだってーーーーーー!!?」」」
 皆が驚いた。
 背景には雷光が走った。
 一方で、ペリ子とウェールは支払う賠償金の値切り交渉戦に突入していた。
 もちろんどうでもいい話である。
「し、新芽とは一体どういうことじゃ、晴明!」
 ここで可愛い顔をM(マジで)M(無辜なる混沌)R(ルール無用だぜ)調にしたルアがすごい勢いで問い詰める。
 晴明のかけている眼鏡(対花粉用ゴーグル)が、怜悧な光を放った。
「見てくれ、辺り一帯を」
「辺りって……」
 言われた通りに辺りを見てみるが、焦げた地面が広がっているだけだ。
「焼けた地面だが、それがどうしたんですか……?」
 愛莉も理解できずに眉根を寄せている。
「パイ一枚半ー!」
「約束はパイ二枚だ!」
 一方、後ろでは値切り交渉戦が続いていた。
「ああ!?」
 そして突然、Remoraが叫んだ。驚きに愛莉がビクリと震えた。
「レモラ、さん?」
「そうか、そう、だったんですね……!」
「ミス・レモラは分かったようだな」
 小さく笑う晴明の前で、Remoraは目を見開いて懐から一枚の紙片を取り出した。
「皆さん、これを見てください」
「な、何じゃ物々しい……」
 ルアが紙片を覗き込み、書かれている文字を読み上げた。
「……茶器セット、八人分?」
「あ、すみません。これは今日持ってくるもののリストでした」
「そういう緩急の薄いボケ本当やめてくれないかのーーーーー!?」
 ルアが絶叫する横で、
「パイ一枚と八割と二割五分ー!」
「パイ一枚と九割と六割五分だー!」
 ペリ子とウェールの交渉戦はいよいよ「厘」の単位に突入しそうだった。
 もちろんどうでもいい話である。
「ところでレモラは結局俺らに何を見せようとしてたって?」
「あ、すみません。別にメモとかは関係ありませんでした」
「だからそういう抑揚のないボケを二連発とか本当やめてくれないかのーーーーー!!?」
 ルアがのどが擦り切れんばかりの悲鳴を上げている傍らで、
「はるがきた?」
「はるがきた!」
「はる! が! きた!」
 もやしっ子GUYたちは自分たちの中で誰がリーダーになるかを多数決で決めようとして、天下三分の計が成立しつつあった。
「パイ一枚と八割九分四厘三毛で!」
「パイ一枚と九割四分八厘七毛だ!」
 そしてこっちは「毛」に突入していた。
「――つまりは『焼き畑』。そういうことなのね」
 脈絡なく答えをかっさらっていったのは、そこまで沈黙を守り続けていた雫だった。
 晴明が、ニヤリと笑う。
「そう、俺たちの魔法によって焼き尽くされた花畑は焼き畑に等しい状態となった。同時に、あの攻撃でスプリンGUYは全て倒されていたんだ!」
「待ってください、じゃあ、あの三体のGUYは……?」
「いい質問だ、ミス・愛莉」
 晴明が眼鏡(ゴーグル)のブリッジ部分を指で押し上げた。特に位置は変わらなかった。
「スプリンGUYの特徴を見る限り、こいつらは推定植物だ。俺たちの攻撃によって倒されたGUY達は次代に己の役目を引き継ぐために種を残した。そして――」
「あーあーあーあー、そういうことかよ晴明!」
 ついに、ヘルマンも気づいた。
「パイ一枚と八割九分七厘三毛四糸六忽でー!」
「パイ一枚と九割一分五厘一毛八糸八忽だー!」
 そしてこっちは「糸」を飛び越え「忽」の単位に突入していた。
 もちろんどうでもいい話である。
「えーっと、ヘルマンさん……?」
「ここまでくれば分かンだろ。焼き畑になってるところにGUY共の種が落ちて、豊富な栄養によって促成栽培されたんだよ」
「……ああ! だから!」
「そう!」
 晴明の眼鏡(ゴーグル)がヌルーンと光る。
「つまりここにいるもやしっ子GUYは、スプリンGUYの新芽! 育って間もない子供なんだよ!」
「M(マジ)M(無辜なる混沌)R(ルール無用)だな!」
「M(マジ)M(無辜なる混沌)R(ロクに戦った覚えない)だわ」
「M(マジ)M(無辜なる混沌)R(林檎の季節ももう終わり)ですね!」
「M(マジ)M(無辜なる混沌)R(ロリ多くね? 多いよね?)じゃのう!」
「それはいいですから、やっつけません?」
「「「あ、はい」」」
 Remoraの冴え渡るツッコミであった。
 だが、事実さえ明らかになればもはやもやしっ子GUYは敵ではない。
 戦いは一方的すぎる展開で終わった。
 あえて戦闘の一部のみでも具体的に描写するならば、
 ガッシ、ボカ、GUYは死んだ。
 以上である。
 所詮、対花粉完全武装部隊と化したイレギュラーズの前に、もやしっ子などもやし未満でしかないのだ。
「ふー、終わった終わった! いいかげん、ゴーグルとマスクが苦しいのじゃよー!」
 全てのGUYを駆逐して、ルアが外に顔を晒して深呼吸する。
 マスクしながらの戦いはやはり苦しかった。他の皆も、マスクは外していった。だがそこに――、
「は、は、は……!」
 何と、倒れたはずのもやしっ子GUY、最後の一体が起き上がったのだ。
「何……!」
 イレギュラーズ六人全員が咄嗟に武器を構える。
「はいそれまーでーよぉぉぉぉぉぉぉ!」
 だがGUYは自爆した。
「「「爆発オチなんてサイテェェェェェェェェェェ!」」」
 晴れ渡る春の空に、巻き込まれた六人全員の声が大きくこだました。
「「「びぇっくしょい!」」」
 ついでに散った花粉の爪痕も一緒に響かせて。
 なお、値切り交渉は最終的にパイ一枚と八割九分九臨九毛九糸九糸九忽九微九繊で決着したそうである。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

こんなねたしなりおにまじになっちゃってどうするの 完

――というのは冗談ですが。
皆さんのプレイングが割とガチで無慈悲で面白かったです。
まさかこんな一方的な蹂躙劇になるなんて思っていませんでした!

次回のGUYをご期待ください。
それでは、お疲れ様でした!

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