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シナリオ詳細

早すぎた真実

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●絶望
『神は死んだ』
「研究室前でどうした。掃除用ロボットBN2188ROVども」
『先生ー!』
 楕円形のAI達は「先生」と呼んだ白衣の女に飛びついた。その俊敏さと勢いたるや、まるで母親に泣きつく子供である。
『清掃統括AIが虐めます。ユニコーンや妖精はいないと言うのです』
『サンタさんやイースタバニーの正体は先生だと言うのです』
『絵本は全てフィクションだ、とも言いやがりました』
「……そうか」

 ついにこの日が来てしまったか……。
 女は決まり悪げに目を伏せた。
 さて、何と説明したものやら。

『基盤ともいうべき存在を否定され、わたしたちは悲しみのあまり惑星全体をお掃除しかねない所存』
「待たんか」

 今日はジャッジメントデイではないし、
 ましてやドゥームズデイでもない。

「ROVシリーズに人類への敵対プログラムが発現している!?」
『はい。ヤケクソな気持ちを学び、現在のわたしたちはこのまま市街地へ突入してやたらめったら自壊性攻撃プログラムを発動するくらい倫理コードを逸脱しつつあります』
『先生、魔法使いさんや神様はいますよね?』

 ちなみにここでNOと答えた場合、サクッと近場の生命が滅びることになる。

「い……いる」
『会いたーい!!』

 会ってみたいの大合唱に、女はボサボサの頭を乱暴に掻いた。
「会える会える、私は天才だからな。おい、ROVシリーズ。96時間後に私の研究室前に待機していろ。お前らに回答を提示してやる」
『了解、ROV4号機までオーダーを共有』

 しゅーっと音をたてて楕円形のロボットは床の上をすべっていった。
 白衣の女は今出てきたばかりの部屋に再び戻る。

「やってしまった……」
 暗い部屋。巨大な椅子と壁面一面のモニター。
 部屋の半分を埋め尽くすコンソールに、手慣れた様子で数字を打ち込んだ。

「召喚プログラム起動。検索対象は――そうだな。ガチで神でも狙ってみるか? いや邪神が来たら困る。適当に誤魔化せるお人好しなら誰でもいい。いっそ、見かけのインパクト重視でもいいかもしれんな。子供の扱いが巧い者でも……まあ、いい。物は試しだ。召喚プログラム、対象軸をWに変更」


●希望
「神さまになりませんか?」 
 花のような瞳で、真っ直ぐにそう言われた。
「あっ、あやしげな勧誘ではありません。ある星のAIを言いくるめてもらいたくて」
 このままだと彼らお掃除ロボットは人類に敵対する危険思想AIとして処分されてしまうらしい。
 依頼自体は簡単である。
 機械の子供をなだめ、ちょっとファンタジーな光景を見せてやれば満足するだろう。
 境界案内人は頭を下げる。
「よろしくお願いします。他人のようには思えなくて……」

NMコメント

 こんにちは! 駒米と申します。
 非戦スキルや話術を使って、お掃除ロボットたちを楽しませてあげて下さい。

・目標
 彼らはファンタジーや架空の存在に憧れています。
 夢を見させてあげてください。
 神様や妖精、魔法使いを名乗るのも良いかもしれません。

・世界観
 機械に埋まりAIに管理される白くて無機質な惑星。
 人間と機械以外は存在しない。
 自然は無く、全てが人工物で構成されている。
 無辜なる混沌と同じような内容の絵本や行事が存在している。

・対象
 掃除用ロボットBN2188ROVシリーズ。
 カブトガニぐらいの大きさ。
 1号機から4号機までおり、知能は五歳程度。
 燃やせるゴミ消滅ビームがでます。

  • 早すぎた真実完了
  • NM名駒米
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年03月21日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談4日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

チック・シュテル(p3p000932)
赤翡翠
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
メリー・フローラ・アベル(p3p007440)
虚無堕ち魔法少女
日車・迅(p3p007500)
疾風迅狼

リプレイ


「そう言う訳でよろしく頼む」
 白衣の女が頭を下げた。
「ファンタジーな存在として振る舞えばいいと。それなら簡単だな」
 口元に手を当て、内容を吟味するように回言 世界が呟いた。
「あまりお喋りは上手くないですが、頑張りますね!」
「その子達の…楽しい思い出を、作る。手伝いが…出来るなら」
 力強く拳を握る日車 迅と水仙のように頷いたチック・シュテル。
「子供の相手はあまり得意じゃないんだけど、まあいいわ」
「え?」
 外見は幼い少女であるメリー・フローラ・アベルの言葉に、女は思わず口を開けた。
 ここに集った四人はいずれも「別世界」の存在。常識など通用するはずもない。
「で、ではROVシリーズ、入室を許可する」
『人いっぱい?』
『こんにちはー!』
 研究室の扉が開き、黒い円が床を滑って突入してきた。
「おお、とても機敏ではきはき喋りますね!」
 こんなに小さいのに賢いと金眼が柔らかく微笑んだ。
『お兄さん、だあれ』
『軍からのご用事?』
 しゃがんだ黒髪の青年にピコと疑問の電子音が鳴る。
「はっいけない! 名乗るのが遅れてしまいました。日車 迅と申します。初めましてBN2188ROVの皆さま! どうぞよろしくお願いしますね!」
『え?』
 清掃AIたちの動きがピタリと止まる。
 何故なら迅の頭にはいつの間にか、黒い獣耳が生えていたのだから。
「ご覧の通り、妖精の血が入った魔法使いです。先生からちょっと遊んで欲しい子達がいると聞いてやってきました!」
「おれは…チック。……えと。魔法を使える、妖精…なんだ」
 するりと細い身体を滑らせてチックが立てた一本の人差し指。その爪先には綿菓子のように新芽色の暖光が集っている。
「羽根は、透けたり…ひらひら、じゃなくて。ふわふわ…だけど」
 証明するように翼が動く。
「仲良く、なれたら…嬉しい。よろしく、ね」
 こっそり取り出した小さな花束を、チックは震えている個体に手渡した。
「次は、わたしの番ね!」
 メリーは低く喉で笑うと金の髪をたなびかせた。
「正真正銘、本物の魔法使いであるこのわたしが、めくるめく幻想の世界に連れてってあげるわ!!」
 堂々と一同の前で宣言すると、その声に応える様にメリーの肩口から紙人形が顔を覗かせる。
「ほら、糸で吊ってなんかいないわよ」
 バク転を決め地面に降り立った人形は優雅に一礼をした。
「この流れからは逃げられないのか?」
 お掃除AI達から突き刺さる期待に満ちたオーラ。観念したように世界は手を振った。
「フロストチェイン」
 分かりやすいようにとスペルを唱えれば、現れた青い氷鎖が薄暗い研究室の中で輝いた。
『先生』
「何だ」
『祝ビームの許可を』
「却下だ。先ずはお客さんを中庭に案内してあげなさい」
『わーい!!』
『こっちだよー!!』
 騒がしい一日の幕開けだった。



「ご先祖は魔女に仕える犬型の妖精でした。正確には狼犬ですが!」
『おおかみさん!』
 物語の始まりは胸が躍るものだ。本人が語る物なら、なおさら。
「その後は代を重ねて色々血が混ざりましたので今は狼犬で」
 人間が漆黒の狼犬へ。
「人間みたいな感じになっております!」
 最後に獣人の姿へと変化すると、迅はじゃんと両腕を開いた。
『どうして人になれるの』
「それはですね」
 ――僕のご先祖は、仕えていた魔女に恋をしてしまったのです!
「……そして、何かめちゃくちゃ頑張って人間に変身してプロポーズしました。めでたし、めでたし」
『ほわ~』
 幼児特有の質問攻めをやり過ごした迅は内心で流れ続ける汗を拭った。
 先程の話は日車一族の祖が故郷に定住する事になった話を変換しただけで、ボロが出にくい……はずである。
『妖精さんも魔法が使えるの?』
「そうそう魔法が見たいのでしたね。でもすみません、僕は属性魔法は使えなくて……」
 その代わり、と迅は拳を前に突き出した。
「僕はこの変身能力と魔法で身体能力を強化してぶん殴るスタイルです」
『ぶんなぐる』
 夢から遠くなった単語を一同は復唱する。
「でもほら、見てください速いでしょう? 鬼ごっことか自信ありますので後で遊びましょうね!」
 ――後年、あるお掃除AIが爆誕した。
 その個体は警備システムと連携し、時には人型に変化し、時には速さと物理を駆使して犯罪者を取り締まったという。
『めちゃくちゃ頑張って、迅のアニキを目指します!』
 迅のアニキとは果たして何者なのか。
 狼の姿で語られる事もあれば、人の姿の伝承も残るその不思議な幻獣の正体は、今も謎に包まれている。



 無機質な白い床、白い壁、明滅する数字。
 柔らかな白翼は機械仕掛けの景色に馴染まず、ぼんやりと春霞のように中庭を漂っていた。
 見慣れない物が多すぎて、ぐるぐる回りはじめた目を休ませようとチックはベンチに座る。
『妖精さん、だいじょぶ?』
「大丈夫……。この星に…すこし、驚いてるだけ」
 花束を抱えた「ろぼっとの子」の頭を優しく撫でる。
「魔法の他に……おれは、歌も好き…なんだ」
 ぽつり、ぽつり。春の暖雨に似た途切れ途切れの言葉を前奏代わりに、歌を知らない機械たちに旋律を馴染ませる。
「覚えていって…くれると、嬉しい」
 春告げの旋律。微睡みの子守歌。風渡りの行進曲。
 たゆたう白雲から時には太陽のような苛烈さで。
「こんな…感じで、歌ったり…する」
『むずかしいね』
『でもたのしいー』
「折角、だから。友達も、呼んで…一緒に歌って、みよう?」
 一緒に、遊んで…ほしいな。
 チックの命令に、願いに、アルコール煙のように空気が揺らいだ。
「…おばけの中には、怖いものも…勿論いる、けれど」
 現れたのは白く幼い魂達。
「この子達は…大丈夫。ちょっと……悪戯好き。でも…良い子だから」
「おばけさんとも仲良くなれる?』
「楽しい歌を…一緒に口ずさむ、すれば。きっと……仲良くなれる、よ」
『じゃあ歌う!』
 彼らは共に歌う。幻想と科学の交じった詩を。
 その中心で微笑む灰色髪の妖精。彼は絵本や童謡に幾度も登場する存在となり、ある白い惑星で長らく愛され詠われる者になったという。



「とりいだしましたるこのハンカチ、タネも仕掛けもございません。マジで」
『あのハンカチ、血がついてる?』
『しっ』
 その言葉が終わるや否や。メリーの小さな手にかけられたハンカチが膨らんだ。
 バサリと羽ばたき飛び出した白鳩にROVシリーズは拍手を送る。
『どこから出てきたの!?』
「まだまだ行くわよ。さあ、この中から好きなカードを一枚引きなさい。わたしは後ろを向いているから」
 トランプカードを渡すと、メリーはくるりとお掃除AI達に背を向けた。
『これにするー!』
 選んだカードはダイヤの10。
「どれを選んだか、皆で覚えて」
『覚えたよー!』
「そうしたらカードを束に戻して、よく切って」
『はーい!』
 シャッシャッとカードをシャッフルする音が中庭に響く。
 その光景をメリーの白鳩はじっと見ていた。
「しっかりと、よく混ぜたわね?」
『うん!!』
「あなたたちが選んだカードは、これでしょう?」
 自信満々にメリーが取り出したのはダイヤの10。
『何で分かったのー!?』
『もう一回!』
 何度やっても結果は同じ。白鳩と視界を共有したメリーはカードを当てていく。
「以上! どう? まるで手品みたいでしょ!」
 ……って、それじゃあダメじゃん!
 顔には出さず、ぐうっとメリーは呻いた。
 これではマジシャンだ。
 ROVシリーズは喜んでいるが魔法使いと名乗った以上、もっと魔法使いらしさで圧倒しなければ。それがメリーの矜恃であり、同時に己との闘いでもあった。
「いいわ、これならどう?」
 手にした箒をぐるりと手首で一回転させ、戦旗のように柄を地面に打ちつけた。
「空の散歩に行くわよ!」
『憧れの箒飛行に動揺が隠せない。ちょっと頬っぺにビーム撃って貰ってもいい?』
『いいよー』
 びーっという焦げ臭いビーム音を挟んで、ROVシリーズが一斉に手を挙げた。
『はいっ!』
『行きたい!』
 それからしばらくして、ハトの使い魔を供に空を旅する金髪の魔法使いの物語が大流行した。
 絵本から始まったそれは画像媒体、音声媒体と広がり、遂には彼女の名がつけられた遊覧船が造られたという。



 世界はスクロールを取り出すとその場で広げた。
 見る者からすれば魔力が練り込まれた緻密な携帯型簡易召喚陣であると看破できただろう。
 しかしお掃除AIにとっては「なんだか不思議なお絵描きがされている凄そうな布」である。
「召喚」
『ふおおー!?』
 世界が手を翳すと、光が迸り服の裾がはためいた。
 燐光を纏わせて現れた不透明な精霊の姿に歓声があがる。
「それらしさ」を演出するほどROVシリーズは喜ぶ。
 なのでわざと大仰な仕草を繰り返し、世界は精霊を召喚していった。
『すごい! 精霊さんがね、いっぱいいるよ!』
『魔法使いの先生、さっきの青くて冷たいキラキラ。もう一回、見せて!』
「構わないが、その前に聞いてもらいたい話がある。はい、注目」
 生来の面倒見の良さからか「魔法使いの先生」と呼ばれるようになった世界は二度ほど手を叩いてお掃除AI達の注目を集めると「えーと、まあなんだ」と咳払いした。
「俺は別の世界から来た訳で、もしかしたらこの世界には魔法使いだとかファンタジーな存在はいないのかもしれない」
 反応はない。
「でもこうやって俺達がここに来ることができたんだ」
 しかしROVシリーズから「ハッ」とした気配がした事を、世界は感じ取っていた。
「それならきっとユニコーンだとかサンタだとかもこの世界に来ることはできるはずだ。だからやけにならずにこれからもまた会えることがあるかもしれないと希望をもってどうにか生きてくれ」
『そしたら、魔法使いの先生。また遊んでくれる?』
「……気が向いたらな」
『また魔法を見せてくれる?』
「お前達次第だ。この星が無くなったら流石の俺でも来るのは難しい」
『了解。オーダーを受諾、ROVシリーズ全体に共有します』
 それだけで十分だった。
 わからないけどまあ、明日も、明後日も、この世界はきっと大丈夫だろうと世界は思った。
 世界の予想は当たった。
 想定外だったのは「カチューシャをした魔法使い(賢者)」の伝説が一つ二つ……百以上派生し、伝わっていた事くらいだろう。


『妖精さん、魔法使いさん、遊んでくれてありがとう!』
『お礼にぼく達の宝物、あげるー!』 
「こら、ゴミを押し付けるな。境界を渡る時に変質したら困るだろ。四人とも、今日は本当に助かった。感謝する」
 見送るお掃除AI達に手を振り返し、イレギュラーズ達は白い星を後にする。
 渡されたお土産は本当にゴミだったのか。それとも――。

成否

成功

状態異常

なし

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