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シナリオ詳細

<Kirschbaum Cocktail>海は桜色に染まって

完了

参加者 : 12 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 どんぶらこ~、どんぶらこ。

 それがどこから流れてきたのか、誰にもわかりません。
 栓を開けると、中から『春らしい、豊かな香りと独特の甘さ』のある液体が入っていました。
 きりっと冷えた炭酸水やミルクで割って、おそるおそる口をつけてみるとあら不思議。
 世界中がキラキラと輝いて、じいさんもばあさんも、お肌つやつやの幸せ顔に。
「おいしいな」
「おいしいね」 
 旬の魚と合わせれば、もっともっと美味しく感じることでしょう。もっともっと幸せな気持ちになれるかもしれません。
 でも……。
 いま、村に残っているのはじいさんとばあさんたちだけ。若者はロマンを求めて冒険にでています。旬の魚を獲ろうにも人手がありません。
 幸せムードはたちまち四散、みんなシュンとしてしまいました。
「これで漁を手伝ってくれる人を呼ぼう。これはきっと……これを使えという海の神さまの思し召しにちげぇねえだ」
 誰かがそういいました。
「そうだ、そうにちげぇねえ」
「そうです、そうしましょう」
 波打ちの音に、じいさんとばあさんたちの声がかぶさります。
 そうです。これを使わない手はありません。
 これで人手不足も解消です。
 じいさんとばあさんたちは、たまたま漁村に手紙を届けにきた運び屋さんに頼み込み、ローレットで依頼を出してもらうことにしました。


「みなさん、お忙しいところ申し訳ないッス。ちょっと足を止めて、あたしの話を聞いて欲しいッス」
 ローレットの前で声をあげ、依頼を受けにやってきたイレギュラーズたちを呼び止めたのは【運び屋】ミント・シルフィードだ。
「実は、海洋のとある漁村のみなさんが大変困っているッス。『絶望の青』攻略に若者や働き盛りの人と船をわんさと取られて、今が旬の『桜タイ』と『桜エビ』を取ることができなくなっているッスよ」
 『桜タイ』とは、鱗が花弁の形をした薄紅色の鯛のこと。
 『桜エビ』とは、尻尾が花の蕾のような薄紅色のエビのこと。
 どちらも今頃から夏の走りにかけて、海洋の海のごく一部で採れる海の幸だ。
 季節が過ぎると、タイの鱗は角が取れて丸みを帯び、色も赤くなる。エビは五枚が重なった尻尾から、花が散るように一枚、また一枚と抜け落ちて、最終的に二枚だけ残り、色も赤くなる。
 味?
 味は時期を過ぎても変わらない。ただ見た目が変わるだけのことなのだが……。
 ようするに、時期を過ぎるとダダの『タイ』と『エビ』になってしまい、価値が落ちて収入が激減、漁村民が生活に困るという話だ。
「そんなわけで、誰か漁を手伝ってもらえないッスか?」
 では、依頼を受けるイレギュラーズが漁を手伝うことによって、どんな得があるのかというと。
 待っていましたその質問、とミントはニッコリした。
「桜リキュールで作った飲み物と『桜タイ』や『桜エビ』で作った料理を一緒に食べると、とってもハッピーな気持ちになれるそうッスよ。恋の花咲くこともある、とか?
 漁のお手伝いをしてくれた人に、漁村のおじいちゃんおばあちゃんたちが特別に飲み物と料理を振舞ってくださるそうッス」
 もちろん、ほんの気持ち程度だが、お礼もちゃんと出る。
 やれ局地嵐(サプライズ)や狂王種(ブルータイラント)、廃滅病などなど。何かと殺伐としている今日この頃、ちょっと一息ついて、みんなとノンビリほんわかするのもいいかもしれない。
「ちょうど、海岸に一本だけ生えている桜の大木が、花を咲かせ始めているッス。漁を手伝った後は、海の見える丘でお花見……。どうッスか、みなさんご一緒に?」

GMコメント

●依頼内容
漁を手伝ったあと、みんなで楽しくお花見。

●書式
グループで参加の場合、必ずプレイングの冒頭に【グループ名】を描き込んでください。
おひとり様でご参加の場合は、タグをつける必要はありません。
以下、次の中から一つを選び、プレイングの作成を願います。

 ・【桜タイ】漁のお手伝い …… このあたりの海は一本釣が主流。
 ・【桜エビ】漁のお手伝い …… 手網ですくいあげられます。
 ・料理を作るお手伝い …… 『桜リキュール』『桜タイ』『桜エビ』がメイン食材。
 
※桜の大木の下で行うお花見は全員参加です。

●NPC
以下のNPCは呼ばれない限りリプレイには出てきません。
シートを広げたり、ローテーブルを出したり……お花見の準備をしています。
 
・【運び屋】ミント・シルフィード

●その他
未成年者が飲む『桜リキュール』入りドリンクは、すべてノンアルコールになります。
年齢不詳、見た目がお子様な方々も、摩訶不思議な力によって、手に取る飲み物はすべてノンアルコールになります。
あしからずご了承くださいませ。

※『桜リキュール』の効果は、イベントシナリオ毎に異なります。

  • <Kirschbaum Cocktail>海は桜色に染まって完了
  • GM名そうすけ
  • 種別イベント
  • 難易度VERYEASY
  • 冒険終了日時2020年03月31日 22時20分
  • 参加人数12/∞人
  • 相談8日
  • 参加費50RC

参加者 : 12 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(12人)

エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)
波濤の盾
十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
奥州 一悟(p3p000194)
彷徨う駿馬
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)
灰雪に舞う翼
カイト・シャルラハ(p3p000684)
風読禽
パン・♂・ケーキ(p3p001285)
『しおから亭』オーナーシェフ
十夜 蜻蛉(p3p002599)
暁月夜
リーゼロッテ=ブロスフェルト(p3p003929)
リトルリトルウィッチ
ミルヴィ=カーソン(p3p005047)
剣閃飛鳥
エル・ウッドランド(p3p006713)
閃きの料理人
長月・イナリ(p3p008096)
狐です

リプレイ


 はくようの甲板にて、エイヴァンが穏やかなこの海の向こうに思いをはせていると、手応えがあった。
 ぐっと竿をあげると、美しい桜色の鱗がひらひらと陽を浴びてきらめきながら水を離れる。
 ざっと見て五キロほど。みごとな桜タイだ。当初の目標はとっくに達しているが、こうなればがぜん欲が出る。この漁場なら十キロオーバーの超大物も夢ではないだろう。
 エイヴァンは糸をたぐり寄せて桜タイを掲げ持った。
「お?」
 ひらり。ぬれた鼻先に桜の花びらが一枚落ちる。
 崖の一本桜から、吹きおろしの風に運ばれて花が海へ流れ出したのだろう。
 自前のボードの上で釣り糸を垂れるリゲルも、海面を渡る薄紅の霧に思わず魅了された。
 檳榔子黒のマントに桜花がとまり、点々と陽炎のような儚い光を放つ。まるで新月の夜に光る星のように。
「釣りも久しぶりでワクワクしているけど、海からみる桜もワクワクさせてくれるね――と!?」
 かかったのは相手として申し分のない大物だ。次第、次第に、竿先を水面近くへ引き込まれてゆく。
 だが、ここで焦ったり怯えたりするとこちらの負けである。
 リゲルは心を鎮めると、桜タイの引きが弱まった一瞬を捕え、一気呵成に釣りあげた。
 カイトは桜タイから針を外すと、魚倉へ放った。
 紅鷹丸から陸へ顔を向ければ、高さ約十八メートル、枝張りは約二十メートルの堂々とした一本桜が崖の上にある。
 花見をしながら釣りができるとは、なかなか粋ではないか。
 音は春の日差しが美しく水面に輝いているあたりで起こった。桜タイの群れが、海面を漂う桜花に歓喜して海を沸き立たせている。
 自動的に紅鷹丸が魚群へ舳先を向けた。
「本領発揮だな?」
 活餌を慣れた手付きで針につけると、カイトは広げた翼いっぱいに潮風を受けた。
「はいはーい、今行くのよーっ!」
 釣りの経験もないし、勿論漁の経験もない。料理もやったことない。
 ないないづくしの自己紹介のあと、リーゼロッテは村で最年長の漁師が繰る漁船に、手伝いとして乗り込んでいた。
「お爺さん早速釣れたの!? すごいのよっ」
「お嬢ちゃんが可愛いから、桜タイが自分から釣ってくれって寄ってきたんだべ」
 えー、という声をちょっぴり桜色に染めて、リーゼロッテは漁船の縁から海へタモ網を出す。
「乱暴にならないようにそっと……獲れたっ」
 タモ網の中で桜タイが尾を跳ね上げ、キラキラした飛沫が上がった。


「そろそろ始めましょう。みなさん、よろしくお願いいたします」
 買い出しから戻ったパンは、自ら作成したメニュー表を広げた。
 メニューは桜花の茶碗蒸しから始まって、桜リキュールを使ったスイーツと飲み物で締めくくられている。
 さすがは本職、本格的だ。
「桜エビは陽が暮れるこれからが本番。先に桜タイを使った料理から取りかかろう」
 パンは、買ってきた食材を野外に持ちだされた大テーブルに置くと、飾りにつける桜の塩漬けを作るため、一本桜へ花の採取に向かった。
「せやね。お魚とるは他の人に任せて、パンさんとうちらで料理のお手伝いしよか」
 割烹着にたすきをかけた蜻蛉が、頭に被せた三角巾をきゅっと結ぶ。
「蜻蛉さんキレ―! 名のある料亭の女将さんみたいっ♪」
 エプロンをつけながら、ミルヴィが褒めはやす。
「なにいうてんの。いややわ」とそっけなく返しながらも、蜻蛉も満更ではない様子だ。
「桜エビに桜タイですか……気になりますね! 食べてみたいので私も調理手伝いをします」
 エルは魔力コンロを野外に作ったかまどにセットした。こうすれば、ただの薪火のかまどよりもずっと火力が上がる。
「わざわざ持ってきてくれたん? ありがとう、エルちゃん。それじゃあ、みんなで頑張りましょか」
「はーい、頑張って沢山作ろうねっ♪」
 まずは下ごしらえ。三人で桜タイの鱗をとって、それぞれ料理の用途に合わせて切り分けていく。
「桜タイは、お刺身……にして。それから、鯛めしを」
「鯛めし用に切ったタイを焼きますね」
 エルがタイの切り身を焼く横で、ミルヴィがまな板を洗う。
「みて、本当に桜の花びらみたいっ♪」
 蜻蛉はたらいに手を入れ、底に沈んだ鱗を一枚つまみ上げた。
 桜花の形をした鱗を光にかざして珍しそうに見ながら、きれいね、と呟く。
「タイの切り身、焼けました。次はなにをしましょうか?」
「アラで出汁とって、お味噌汁を作りましょ。パンさんがスープを作りはるみたいやから、少し別にわけておいて」
 はい、とエルは気持ちよく返事して、鍋で湯を沸かし始めた。
「アタシは桜エビが上がってきたら、変わった形の尻尾を活かして……エンパナーダを作るっ♪」
「エンパナーダ?」
 それはどんな料理、という二人に、ミルヴィはイタズラ娘の笑顔を返した。
「出来上がってのお楽しみだよっ♪」


 ――豊穣祈願の稲荷神の名にかけて。
 イナリは、拗ねた目を己が作りだした式神へ向けた。
 意気込んで海に出たものの、まだ釣果はない。比べて式神はといえば、畑に植えてある大根か人参を引き拔くように桜タイを釣り上げている。
「もう! 稲荷神は五穀豊穣の農耕神、漁業は専門外だったのよ! 恵比須様を呼ぶからちょっと待ってなさい」
 桜花の雨が降りしきるなか、穏やかに揺れる小船の上でなにやら念じ始める。
「か、神降ろしを着信拒否するんじゃないわよー!」
 ぷんすか怒るイナリの横で、式神がまた一匹、桜タイを釣りあげた。
 青みを残した紫色が空を染め始めると、大量の桜エビが海面に上がってき始めた。
 透けたマリンブルーの海に漂う薄いピンク色の花弁を、宝石のような桜エビがついて動かす。まるで万華鏡のように目まぐるしく様相を変える海面は、人の手では決して作れない芸術だ。
 縁はぐいっと網を引いた。
「この通り年寄りなんで――とは、お前さん方の前じゃ流石に言えねぇな。大漁旗提げて帰ってきてやるから、旨い酒で労う準備をしておいてくれや」
 そう言って漕ぎ出した手前、船が沈むまで捕らねばと思っていたが……。
「こりゃ、心おきなく旨い酒が飲めそうだね」
 網を船に引き上げ、体が小せぇのや尻尾の欠けているやつをはねて海へ返してやった。
 一悟は空の上から網をうつ。
 矓に霞みながら暮れなずんでゆく春の夕暮れの海の美しさときたら。振り返れば、夕陽を浴びて色を濃くする一本桜が見えるし。
「マジ贅沢な眺め!」
 嘆息していると、崖の上に提灯の赤い光がぼつぼつと灯り始めた。夜の花見の準備は順調に進んでいるようだ。
 先に水揚げされた桜タイはどんな風に調理されたのだろう。そして、これから持って帰る桜エビは。
 パンが作る料理に思いをはせると、腹が大きく鳴った。
「腹減った! よーし、いっぱいとって帰るぞ」
 海面を覆う桜花の絨毯を裂いて、海賊船ツナ缶号が進む。大漁旗ならぬ海賊旗の下では、ニャーニャーと賑やかな声が上がっていた。
 キジシロが望遠鏡を覗き見みながら、船長のソマリに方角を告げる。
「ヨーソローニャ!」
「それはワガハイの台詞ニャ!」
 どうでもいいよ、と思いながらアクセルは、「もっと寄せて!」と声をあげる。
「クロ―、新しい桶を持って来て」
「ミャー」
 クロが運んできた桶に、手網ですくいあげた桜エビを移す。たった一杯ですぐにいっぱいになった。
「……すぐおいしく食べるからね」
 アクセルは桶の中でぴちぴちと跳ねる海の宝石をみて、じゅるりと涎をすすりあげた。


「おつかれさま。さあ、たくさん食べてくれ」
 パンが乾杯の音頭をとった。
「桜の下で飲めや歌えの宴会をするのは、神人共食の習わしからくるもの。田の神に豊作を願ってのことよ。海神のためじゃないわ」
 結局、一匹も釣れなかったと、イナリはむくれながら、パンが入れてくれた桜茶をすする。
「戦いは続くだろうが、穏やかな日が少しでも多く訪れますように」
 リゲルはミントと桜リキュールを使ったシャンパンで乾杯した。
「さあ、お爺様、お婆様。お座りください。配膳は俺とミントで……え? 一緒に……ありがとうございます。でも、俺は働いている方が性にあうのです」
 少し離れたところでは、カイトが蜻蛉たちの手料理に舌鼓をうっていた。
「鯛めし! 刺し身! 幸せ。とってもハッピー。これに桜リキュール加えたら、俺死ぬんじゃね?」
 もともと魚好きではあるが、夜桜の下で自分が釣り上げた桜タイの料理はまた格別だ。「死ぬとか……また、おおげさやね」
 蜻蛉は、桜リキュールで割った清酒を片手に、ほんのり上気させた頬を宴会の場へ向けた。
「ミルヴィちゃん、お味噌汁、おいしい?」
「めっちゃ美味しい。流石だねっ♪」
「よかった。エルちゃんが揚げてくれたエビフライ、美味しいわ」
「ミルヴィさんの作ったエンパナーダも最高です。カリっと揚がったトウモロコシの生地がエビの甘味を引き立てています!」
 リーゼロッテはアクアパッツァの大皿から、桜タイの身を取り分けた。一緒に漁をしたお爺さんの皿にも取り分け、食べる。
「シジミのダシにニンニクがきいていて、タイの身がホロホロっと崩れて……つまり、おいしいです!」
 ニャー、ミャー、と同意の声をあげたのは海賊船の猫たちだ。
「うん、おいしい。それに、タイの鱗もエビの尻尾も綺麗だけど、本物の桜はまた違うねー」
 ミルクで割った桜リキュールを飲み干すと、アクセルは余興でストラディバリウスを引き始めた。
「うまーい! やっぱ自分がとった桜エビは格別だな!」
 一悟は桜の下で胡坐をかきながら、桜エビの釜炊き御飯をかき込む。
「オーナー、おかわり!」
 夜をしみこませて色を増した桜花を、海から吹きあがる風が吹雪かせた。
「お前さん、ちゃんと花を愛でているのかい?」
 縁はエイヴァンに一献差し向けた。
「ん? 花を見ろって? いやいやよく言うだろ。花より団子ってな」
 豪快に笑いながら、エイヴァンは赤い杯を差し出す。
 縁がお湯割りされた酒を注ぐと、杯に入れた桜花漬がぱっと開いた。湯気とともに上品な甘い香りが立ち昇る。
「それにアンタの分まで食べないとな。出されたもんを残しちまったら、罰が当たるってもんだろう」
 桜花の匂いを嗅ぎ、水鏡の夜桜にも勝る美しさを杯の中に見つつ、縁は苦笑いした。

成否

大成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

漁は成功、村の人たちも生活の目途が立ったと大喜び。
作られた料理もおいしく、楽しい花見をみんなで過ごせました。
おじいさんもおばあさんも、感謝することしきりでした。
これもみなさんのおかげです。

ご参加ありがとうございました。

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