PandoraPartyProject

シナリオ詳細

地上げへの報復

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●地上げの被害者
 幻想領内、それなりに栄えている街での話である。
 発展していく街にはありがちな、地上げがここでも行われていた。
 最後まで抵抗していた住民も、度重なる嫌がらせに負けて先日その土地を売り渡したばかりだった。
「親父、見ててくれ。絶対、俺があいつらに仕返ししてやっからな……」
 地上げが完了し、その一画には貴族向けの大きな病院が建てられ始めている。
 その工事現場の近くに佇み、密かにそう呟く男性がいた。

 地上げ自体は、貴族が行ったわけではない。
 この街では有名な商人が貴族にいい顔をするために計画し、土地を無理矢理買い占めたのだ。
 最初は金を払い、新しい家と土地を用意するから土地を明け渡すように迫り、それで首を縦に振らなければ嫌がらせが始まる。
 金さえ払えば何でもする、そういう連中を使って住民達に嫌がらせをした。
 もちろん、公然の秘密である。
 商人は表向きクリーンなイメージを保ったまま、汚い仕事を裏の連中に任せて貴族から感謝され、今まで以上に悪どい商売を続けようという魂胆なのだろう。
 違法スレスレ、時には違法行為も平気で行って今の地位を築いたというだけあり、最低の商人である。
 そんな地上げの中で、病に倒れそのまま亡くなった者もいた。
 元々が年老いて体が弱っていた者にとって、地上げによるストレスはとてつもない負担になっていたのだろう。
 みるみるうちに体調は悪化し、息子の看病の甲斐もなくこの世を去ったという。
 病院が建てられている場所で、商人への復讐を誓っていたのが、その息子なのだ。

●放火の依頼
 ローレット本部を訪れたイレギュラーズを迎えたのは、『黒猫の』ショウ(p3n000005)だった。
「やあ、依頼を受けに来たんだろう? 今回のは少し、変わってるかもしれないな」
 そう言ってショウから紹介されたのは、商人の地上げが原因で命を落とした父のため、商人に復讐したいという男性からの依頼だ。
「かなりひどいことをして手に入れた土地に病院を建ててるみたいだが、これを焼き払えってことらしいね」
 病院を焼き払う。
 それだけ聞くと、かなりひどいことをしようとしているように聞こえる。
 もっとも、まだ建設途中である。
 男性の依頼は、この病院を開院直前に焼き払ってほしいということのようだ。
「開院直前なら、診察に必要な道具や薬が運び込まれてるはずだろう?どうも、そういうのも含めて焼いて欲しいみたいだ」
 その方が商人の懐が痛むだろうから、というのが理由らしい。
 貴族向けの病院ということなので、設備や薬も高価な物が多いだろう。
 それを全て焼け、ということなのだ。
「良い行いとは言い難いが、依頼者の気持ちも分かる。君もそう思えるなら、受けてあげて欲しい」
 ショウからそう言われたイレギュラーズは、受けるかどうかを真剣な表情で考えるのだった。

GMコメント

 閲覧ありがとうございます、文月です。
 今回は商人が作った貴族向けの病院が開院する前に焼くのが目的です。
 以下、補足となります。

●注意
 この依頼は悪属性依頼です。
 成功時の増加名声がマイナスされ、失敗時に減少する名声が0になります。
 又、この依頼を受けた場合は特に趣旨や成功に反する行動を取るのはお控え下さい。

●成功条件
 ・病院を焼き払う
  焼け残らないように徹底的に焼いてください
 ・巻き添えを出さない
  中、周辺に人がいないかの確認はしっかりと。焼くのは夜がオススメ

●病院についての確定情報
 ・かなり広い
 ・3階建て
 ・貴族向けなので色々豪華
 ・開院前なので警備員はいないものとする
 ・医師など職員はまだ誰もいない
 ・入院施設あり
 ・街中だが、近くに建物はない(公園が隣接していて昼間は子供が多いが夜はほぼ無人)

●その他
 口調や性格等が分かりやすいよう書いていただけたりしますと、大変助かります。アドリブ不可と記載がない場合は高確率でアドリブが入りますのでご注意ください。
 皆様のご参加、お待ちしております。

  • 地上げへの報復完了
  • GM名文月
  • 種別通常(悪)
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年03月28日 21時50分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ジュア(p3p000024)
砂の仔
竜胆・シオン(p3p000103)
木の上の白烏
シュバルツ=リッケンハルト(p3p000837)
死を齎す黒刃
エリク・チャペック(p3p001595)
へっぽこタンク
アルク・ロード(p3p001865)
黒雪
極楽院 ことほぎ(p3p002087)
悪しき魔女
黒鉄 豪真(p3p004439)
ゴロツキ
レ・ルンブラ(p3p004923)
影狼

リプレイ

●開院する前に
 強引すぎる商人の地上げに報復するため、8人のイレギュラーズが集まった。
 人々を癒やすはずの建物が、人々の犠牲の上に建っているのは何とも皮肉な話である。
 事前に話し合った結果、決行は夜となった。
 『通り魔』シュバルツ=リッケンハルト(p3p000837)や『黒雪』アルク・ロード(p3p001865)は昼間のうちに周辺の下見を行うべく、病院を訪れていた。
 散歩するふりをして周辺をぶらぶらと歩き、地理を頭に入れていく。
 シュバルツは帰った後、着火のためにライターや度数の高い酒などを用意して夜に備える。

 夜、人々が寝静まった頃。
 8人は病院横の公園で一旦集まり、最終確認を行ってから病院へと向かう。
 連絡役を買って出た『木の上の白い烏』竜胆・シオン(p3p000103)が面識のあるアルクとシュバルツに声をかける。
「今回もよろしく……」
 2人は軽く手を上げて応えてくれた。
「汚れた病院を熱消毒……焼いたくらいじゃ治らないかもですねぃ」
 そんな風に呟いたのは、『へっぽこタンク 』エリク・チャペック(p3p001595)だ。
 夜の闇の中、白い壁が浮かび上がるようにも見えている病院を少し離れた場所から見上げ、目を細める。

 病院に着くとシオンはそのまま飛翼スキルで飛んで3階に行き、持ってきた大太刀で窓を叩き割るとガラスで怪我をしないように気を付けながら中へ入った。
 ガラスの割れる音が周囲に響いたが、誰も出てこない。
 念のためアルクが聞き耳スキルで確認するが、大丈夫そうだ。
 音で起きても、押し込み強盗には巻き込まれたくない等と思っているのかもしれない。
 この病院に対し、建てている商人や貴族以外はあまり良い感情を抱いていない。
 皆、商人が行った地上げの噂を知っているからだ。
 この感じだと、少しくらい音がした程度では誰も様子を見に来ないだろう。
 『砂の仔』ジュア(p3p000024)が超嗅覚スキルで、病院の周囲に人がいないかを改めて確認する。
 誰もいないようだ。
 1階ではシュバルツがギフトの神出鬼没を使って自分の肉体を幽体化させて玄関ドアを通り抜け、内側から鍵を開けて仲間達を中に入れる。
 深夜とは言え、外でのんびりしていては目撃されてしまうかもしれないので、できるだけ素早く行動する。
 中に入ると、開院前だからか真っ暗だった。
 『影狼』レ・ルンブラ(p3p004923)、エリクは準備していた松明に火をつけ、アルク、ジュアはカンテラの灯りをともし、明かりとして使う。
 その後、予め決めておいたグループに分かれた。
 1階担当はシュバルツ、アルク、『ゴロツキ』黒鉄 豪真(p3p004439)、2階担当はジュア、エリク、3階担当はシオン、『瓦礫の魔女』極楽院 ことほぎ(p3p002087)、ルンブラとなっている。
 ことほぎは、3階へ向かう前にファミリアースキルで犬を召喚し、見張りとして外に出しておく。
 全員が所定の場所へ向かう間、人がいないか慎重に確認しながら進む。

●問答無用で燃やす
 上階から順に火をつける作戦となっているため、まずは3階担当の3人が行動を起こす。
 先に中へ入っていたシオンは、既にいくつかのドアを大太刀で斬って薪代わりに集めて来ていた。
 ベッドのシーツや布団、カーテンなども集められ、何箇所かに分けて積んであった。
 さすがに貴族向けの病院というだけあって、どれも高級そうだ。
 布は絹製のものばかりで、見るからに質が良さそうである。
 ドアも良い木材を使って意匠も凝っている。
 商人は相当お金を使ってこの病院を建てたようだ。
 貴族に胡麻をするのも大変である。
 病院だというのに、そこかしこに高級そうな調度品も揃えられていた。
 いくつもの絵画や陶器など、美術品も多い。
「美術品は足が付きやすいんだよなァ……! クッソ、我慢だ我慢!」
 ことほぎが売れば金になるであろう美術品を恨めしそうに見ながら、煙草に火をつける。
 火種としていつでも使えるよう準備しているのだ。
 ただ仕事中に一服している、というわけではない。
 3階にあるのは入院患者のための病室と看護師の詰め所、備品や薬品の保管室だ。
 備品、薬品の保管室のドア以外は開院前だということもあり、鍵はかかっていない。
 ルンブラが備品、薬品の保管室のドアを解錠し、風通しを良くするために各部屋の窓を全て開けていく。
 ことほぎは薬品の保管室からアルコールを探し出し、シオンが集めておいたシーツなどの布類を裂いて染み込ませ、燃えやすいように準備を整える。
 枕も中身を出し、よく燃えるように辺りに撒き散らしていく。
 中にはふかふかの羽毛が入っているので、火をつければきっとよく燃えるはずだ。
「あ、待って……それ欲しい……」
 ことほぎが枕を裂いて中身を出そうとしていると、シオンが止めた。
 枕を持ち帰ろうと、いくつか確保していたシオンだが、ことほぎが今まさに裂こうとしていた枕も欲しいようだ。
 同じような枕が多いが、枕好きなシオンにはちょっとした違いによって欲しいものとそうでないものがあるのだろう。
「あ? どうせ燃やすんだし、構わねェか。ほらよ」
 ことほぎがシオンに枕を投げてよこす。
 上手くキャッチすると、シオンは感触を確かめるように頬ずりしたり枕をぽふぽふと軽く叩いたりしてから満足気に頷き、他の枕同様抱え込む。
 ことほぎは更に、壁や床もバキバキに壊して燃えやすいようにしていく。
 ルンブラは、窓を開け終わるとシオン達がいるのと反対側から火をつけ始めていた。
 ことほぎがアルコールを染み込ませた布類を他の部屋にも撒いていく。
 シオンが枕を抱えつつ見回っていると、途中でギフトの第六種不明症状が発動してしまった。
 貴族達のために用意されたふかふかのベッドで寝てしまったシオンに、他の2人は気付いていない。
 シオンは火種を持っていなかったので、ことほぎとルンブラが手分けして火をつけていく。
 ことほぎは火をつけ終わると、途中で確保した見舞い客用の椅子に媒体飛行をかけ、窓から飛んで逃げる。
 逃げるとは言っても、燃え残りがあった時のためにそのまま空中で待機している。
 ルンブラはというと、火をつけるとすぐに2階へ下りていき、鍵がかかったまままのドアがあれば解錠しようと探すが、2階を担当していたメンバーが壊した後だったので、火をつけるのを手伝うことにした。
 病院の3階は、燃え始めた火によって昼間のように明るくなっていた。

●燃えていく病院
 3階でことほぎ達が燃やす準備を整えていた間、2階でもジュア達が病院を燃やすための準備を進めていた。
 2階も3階と同様に入院施設として使う予定だったのだろう。
 同じようなつくりになっている。
 ジュアは燃えるのに時間がかかりそうな大型の家具を壊していく。
 ベッドや備え付けのタンス、病室には不要そうな調度品などだ。
 壁にかけられていた絵画も、額をキャンバスごと床に叩きつけて割り、薪代わりにする。
 エリクは窓を開けて回りつつ、薬品棚を探す。
 アルコールがあれば、布に染み込ませて燃えやすくしたいからだ。
「なんかこう、すごい犯罪臭がしますねぃ。まあ、そりゃそうか」
 大体の窓を開けきると、薬品の保管室のドアを叩き壊しながら独り言を漏らす。
 ジュアも家具を壊しつつ、各部屋の窓を開けていく。
 天井に設置されている小さめのシャンデリアは、ノービスロングボウによる精密射撃で撃ち落とし、割れたまま放置する。
 上階が燃え始めるまでは火をつけないで待っていたジュアだが、超嗅覚で3階から木や布などが燃える臭いを察知すると、部屋から出て廊下で大きめの声を出し、エリクに3階が燃え始めたことを伝えた。
 これを聞き、エリクが松明を使ってカーテンなどに火をつけ始める。
 ジュアはカンテラから燃料を床や周囲に撒いて、燃えやすくする。
 絨毯には念入りに燃料を吸わせてやる。
 カンテラの燃料だけでは量が全然足りないので、薬品の保管室からアルコールを取ってきてこれも撒いてしまう。
 そうしている間にも、3階はかなり燃えて階段から上がるのは難しい状態になっている。
 気付けばルンブラがエリクを手伝って火をつけて回っていた。
 ジュアはギリギリまでアルコールを撒き、中心部から火をつけて回る。
「そろそろ撤退しよう」
 2階につけた火も大きくなり始めている。
 とにかく煙がすごく、このままだと煙のせいで動けなくなってしまう。
 そこまで来ると、ジュアが他の2人に声をかけ、跳躍スキルを使って窓から飛び降りた。
 エリクも窓から飛び降りる。
 窓を開けて回っている時に、地面が柔らかそうなところを確認しておいたので、そこをめがけて飛び降りたのだ。
 2階でもそれなりに高さがあり、変な落ち方をしてしまえば一生動けなくなる可能性もある。
 が、そこはさすがイレギュラーズである。
 上手く足から着地した。
 しかし、いくら柔らかい地面とは言っても、足を怪我してしまった。
 すぐには動けず、骨が折れたかヒビでも入ったかもしれない。
 もっとも、一般人なら上手く飛び降りることもできず、折れるのは足だけではすまなかっただろう。
 ルンブラはまた階段から下りようとしたが、3階から火が回っている上に2階でも火が燃えている状況では階段までたどりつけず、仕方なく窓から飛び降りることになった。
 エリクを手伝っていたのもあり、エリクが飛び降りた近くから飛び降りたのだが、エリクと同じように足を怪我してしまう。
 近くにいるエリクと目が合うが、お互いに何も言えないまま、怪我の痛みに耐えるのだった。

 一方、3階で眠ってしまったシオンは、周囲が燃える臭いと音で目を覚ました。
 かなり火が回っている。
 慌てて窓から飛んで逃げたが、窓へ行くまでに煙を吸ってしまい、火傷も負っていた。
 喉がやられたのか、しばらく声を出せそうにない。
 だが、枕はしっかり抱えて無事だった。

●たき火と化す病院
 2階まで燃やし始めた時点で、3階は結構な燃えっぷりになっていた。
 夜なので、少し遠くからでもよく見える。
 近くに住む人々は、ガラスが割れる音で何割かが起きていたのもあり、窓の外で燃え盛る病院を見て驚いていた。
 とは言え、まだ病院に来てまで野次馬をしようという者はなく、ベッドから出て自宅の窓から様子を窺っている者がほとんどだ。

 少し時間は戻り、病院の3階でことほぎ達が燃やす準備を始めた頃。
 玄関から入ってそのまま1階フロアを燃やすため、シュバルツ達も準備を始めていた。
 1階は主に検査や診察、処置のための部屋があり、病室はないようだ。
 処置室には薬品棚があり、ここにも消毒用のアルコールがいくつか置かれている。
 アルクは診察器具などを壊して回り、アルコールを見つけるとシュバルツや豪真の分も拝借する。
「いいもんあったから持って来たぞ」
 アルクがリハビリ室にいた豪真にアルコールの瓶を渡し、ついでとばかりに近くのカーテンを引きちぎると、カーテンレールまで外れてきた。
 が、アルクは全くお構いなしにカーテンをビリビリに裂いていく。
「オオ、助かる」
 豪真は瓶を受け取ると集めておいた布類にアルコールを振りかけ、燃えやすくする。
 アルクはそれを見ながら、裂いたカーテンをそのまま床に捨て、シュバルツを探すために部屋を出た。

 シュバルツは診察室にある器具などをナイフで切ったり、窓枠に思い切り叩きつけたりして壊していた。
 透視スキルで外に人が来ていないか、院内にも人が隠れていないかの確認もする。
 幸いなことに、こんな夜中に開院してもいない、貴族向けの病院に近づこうという者はいないようだ。
 院内も無人のようである。
 適当に物を壊すと、用意しておいた度数の高い酒を引火剤としてあちこちに撒いていく。
 少しでも火力が上がるように、燃えにくそうなところには入念に振りまいておいた。
 途中で持ち込んだ酒が足らなくなると、良いタイミングでアルクが顔を出し、アルコールを渡す。
「お、タイミング良いな」
「そりゃ良かった」
 嬉しそうにアルコールを受け取り、またそこらじゅうに撒いていくシュバルツに、アルクも笑顔で応える。
 やっていることが放火の準備なだけに、笑顔で話す2人が物凄く悪く見えてしまう。
 アルクはシュバルツから離れると、廊下のカーテンを引きちぎりつつ集め、適当に裂いてアルコールを染み込ませ、導火線代わりに使うために床を這わせていく。
 柱や階段も、その辺りにあった椅子を叩きつけて壊しにかかる。
 火がついた後、崩れやすくなるよう亀裂だけでも入れたいところだ。
 崩れてくれれば、周囲に燃え広がる危険性が下がる。
 椅子が壊れると、受診に来た貴族の目を楽しませるために置かれた鉢植え、絵画や花瓶、銅像などまで使ってようやく柱に小さな亀裂が入る。
 この頃、3階では火がつけられ始めていた。

 豪真は、入院患者のために食事を作る場所があるはずだと考え、調理室を探していた。
 一番奥にあった調理室を見つけると、中に入り用意してきたタンクを傾け、手近な鍋に油を注いでいく。
 これをコンロの火にかけ、放置しながら調理室の外、隣の部屋にも油を撒く。
 木製の家具を見つける度に、たっぷりと油をかけておいた。
「ソロソロか」
 適当なところで鍋の様子を見に行き、いい具合に燃え上がっているのを確認すると流しで水を汲んで、それをかける。
 水をかけると豪真は素早くその場を離れた。
 油が燃えているところに水をかけると、水は急激な膨張を起こして油をあちこちに飛ばしてしまう。
 このために水蒸気爆発に近い状態となり、炎は一気に大きなものへと変化した。
 コンロの周辺は瞬く間に炎に包まれていく。
 豪真はこれを調理室の入り口から覗き見て、満足そうに頷くと他の場所へも火をつけに行くのだった。

 2階が燃え始めると、階段の方から煙が漂ってきた。
 これに気付くと、アルクも火をつけ始める。
 カンテラの燃料を窓際の床に撒き、マッチを擦って煙草に火をつけると、燃料の上に投げ捨てた。
 煙草を吸いながら、火が燃え広がるか見守る。
 用意しておいた導火線代わりの布を伝って、上手く燃え広がっていくのをある程度まで確認すると、窓を割って脱出する。
 窓から風が吹き込めば、火力が増すだろう。
 シュバルツも2階が燃えているのに気付き、用意してきたライターで辺りに火をつけまくる。
 適当に火をつけると、入ってきた時と同様にギフトを使い、壁を抜けて脱出した。
 豪真は身の危険も顧みず、逃げ場を見つけるのが困難になるくらいまで院内に居座り、火をつけまくっていた。
 火傷しても構わない、という勢いで火をつけていたが、火よりも煙にやられそうになり仕方なく脱出したのだった。
 火事で怖いのは煙なのである。
 煙に巻かれて意識がなくなれば、そのまま焼け死んでしまうからだ。
 呼吸が必要な種族である限り、どうにもならない部分である。

 外に出ると、アルクはそのまま病院を離れようとし、豪真はせっかく大きなたき火になっているから、と肉や野菜を焼いて食べようとしていた。
 しかし、少し歩くと地面に倒れたままのエリクとルンブラを見つけ、アルクがエリクを、豪真がルンブラを背負ってその場を離れた。
 いくら何でも、そのまま放置していては色々とまずいからだ。

●燃える病院を囲んで
 病院はかなり燃えていた。
 さすがに、周囲には多くの野次馬が集まりつつあったが、皆近づこうとはしない。
 近所から集まった中には、特に消火しようとする者もいなかった。
 しかし、病院が燃えていることを聞きつけた商人は違った。
 すぐに人を集め、消火に向かわせたのである。
 上から順に火をつけたので、3階が最も激しく燃えていた。
 消火にかけつけた人々を察知し、ことほぎが見張りに建てていた犬が吠える。
 これを聞きつけると、空中で待機していたことほぎはすぐに逃げた。
 いざとなったら、脅してでも人払いをしようとしていたシュバルツも、他メンバーがジュアしか残っていないことに気付き、共に逃げることにした。

 結果として、3階はほぼ焼け落ち、2階は半焼、1階は部分的にひどく焼けていたが焼け落ちるところまではいかず、消火されてしまった。
 意外と早く商人のところまで知らせが行ったので、消火も早くから行われたせいだ。
 警備員はいなかったが、さすがに街中なので人の目、耳はある。
 夜、静まり返った中では、大きな音を立てたのが目立ってしまったのだろう。
 目を覚ました住人の中に、商人と親しい者、恩のある者などがいたのかもしれない。

 後日、報告を受けた依頼主は不満を漏らす訳でもなく、感謝もしてくれていたが満足はしていない様子だった。
 建物全てをもっと燃やして欲しかったようだ。
 それでも、商人には金銭的にかなりのダメージを与えられたことは確かである。
 また、放火される程の恨みを買っていた、と世間ではしばらく噂されることになった。
 貴族達からも、しばらく冷たい態度を取られていたらしい。
 依頼は成功とは言えないかもしれなかったが、一定の成果は上げたと言えよう。
 焼け焦げた病院は、その後しばらく燃えた原因の調査のため放置されている。
 放火だろうことは間違いないが、どう燃えたのか、犯人は誰なのかなど、商人にとって解明すべき謎は多いのである。
 もっとも、誰が犯人かは分からないだろう。

成否

失敗

MVP

なし

状態異常

竜胆・シオン(p3p000103)[重傷]
木の上の白烏
エリク・チャペック(p3p001595)[重傷]
へっぽこタンク
レ・ルンブラ(p3p004923)[重傷]
影狼

あとがき

 大変お疲れ様でした。
 今回は私、文月の担当しましたシナリオにご参加いただきありがとうございました。

 残念ながら依頼主が満足できなかったため、失敗となってしまいました。
 しかし、彼の目的はいくつか達成されてはいます。
 皆様への感謝の気持ちは大きいようです。

 怪我をされてしまった方もいらっしゃいますが、少しでも楽しんでいただけましたならば幸いです。
 またの機会がありましたら、よろしくお願いいたします。

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