シナリオ詳細
フェアリーズと魔法の鏡
オープニング
◆
いつだって世界はキラキラと輝いていた。
ヒラヒラでフリフリでフワフワが最高にキュート&プリティ!
なのに気が付けばいつの間にかここはとっても静かで寂しい世界。
仲間は沢山いるのに物足りなくて仕方ない。
もうあのキラキラを味わえないの? そんなの嫌だ!
◆
「異世界の危機にハッピーエンドを綴る為! 境界案内人・子羊、参上!」
カウンターの上でビシッとポーズを決めた子羊が、10秒ほど静止したあと無言でカウンターを降りる。
そうして何事もなかったかのような顔をして一冊の本を取り出した。
大きな鏡の周りを妖精達が舞う可愛らしい表紙。
「今回みんなに紹介するお仕事は、ヒラヒラでフリフリでフワフワになってもらうお話だよ!」
「はい?」
集まったイレギュラーズの一人が思わず聞き返した。
「ヒラヒラでフリフリでフワフワになってもらうお話だよ!」
子羊も負けじと笑顔で同じ言葉を繰り返す。
舞台は小さなミラーハウス。
人々に忘れ去られたそのミラーハウスの中には、かつて沢山のショーで活躍するモデルたちを映してきた魔法の鏡が使用されている。
モデル達の魅力を更に引き立たせる為に作られたその鏡は、それ映すことを生き甲斐として存在していたのだ。
今は誰も訪れない何も映さない小さな世界。
魔力を込めて作られた鏡は意思を持ち、飢えた願いは徐々に歪んでいっている。
このままではミラーハウス自体が世界に悪夢を齎す存在に変わってしまうだろう。
「今ならまだ間に合うよ。鏡の欲求をたっぷり満してあげて!」
子羊の説明に誰かがそっと手を挙げる。
それはミラーハウス内でファッションショーをすれば良いのか?と。
「もちろん、キラキラな格好をすれば鏡も喜ぶと思うけど、キラキラに飢えた鏡は映った者を好きに着せ替えさせてしまうんだって。」
例えばジャージで鏡に映ろうが、フリフリでヒラヒラなドレスに変わり、そこに男女の差すら存在しない。
しかも鏡の中の着飾った自分はランナウェイでスポットライトを浴びるがごとく周囲の鏡の中を移動していく。
人によっては、普段しない格好をして満面の笑顔を振りまく自分を鏡が満足するまで多方向からひたすら見せつけられる悪夢がそこにある。
「みんなには『鏡が満足すれば魔力を失う能力』が付与されるから大丈夫だよ。」
何が大丈夫かは分からないが、子羊は笑顔で頭を下げた後一言付け足した。
――――頑張って耐えてね☆
- フェアリーズと魔法の鏡完了
- NM名桃缶
- 種別ライブノベル
- 難易度-
- 冒険終了日時2020年03月24日 22時10分
- 参加人数4/4人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 4 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(4人)
リプレイ
◆
「諸君! ゴッドである!」
カッ と神々しいまでの光と効果音を背負った『例のゴッド』御堂・D・豪斗(p3p001181) が忘れ去られて廃墟と化したミラーハウスの前で仁王立ちしていた。
「フリフリでヒラヒラでフワフワ……イルミナに似合うかはわかりませんが、ミラーハウスの欲求を満たすために精一杯頑張るッスよ!」
「フリフリなんて着たことないけど、いい機会になりそう。元の世界じゃ雑誌で見るだけだったし。」
そんなゴッドを眺めながら『blue』イルミナ・ガードルーン(p3p001475)と『星』茅原 箏勿(p3p007958)がミラーハウスの扉に手を掛ける。
鍵すら掛かっていなかったそれはギッと鈍い音を立てたが、すんなりとイレギュラーズへの道を開いた。
「中に入れば良いんッスかね?」
「そうだね。早く満足してもらえるよう頑張らないと。」
少し面倒ではあるけれどと箏勿が言えば頑張るッスよ!と今度は鼓舞するようにイルミナが続ける。
「ふっふー、こういう場にはあまり出たことがない私だけれど、色々着るのも皆のショーを見るのも楽しみ!」
『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837) がウキウキしたように先陣を切って中に入れば、薄暗いミラーハウスの中はイレギュラーズの来訪を歓迎するかのようにパッと明るく華やいだ。
ひとりでに閉まる扉はホラーを感じるが、ミラーハウスの中はまるでステージのようにキラキラと沢山のライトが反射して輝いている。
「なるほど、ファッションショー・インザミラー!
よいよい、ゴッドも人の子らの手で様々なアートにドローイングされたものよ!」
ちゃんと着いてきてた豪斗。
◆
まあまあ! 素敵なモデルさんたち!
いいわね、いいわね! あなた達みんなキュートでクールでキラキラしてる!
でもまだ足りないの もっともっと ヒラヒラでフリフリしましょ!
まるでアナウンスのように響いた不思議な声と共に、鏡の向こうには4人と同じ姿が現れる。
まだ服装は何も変わっていないが、見つめる先の彼等はまるでモデルのようにくるりとターンを決めた。
「……うーん。流石に実際に着てくる勇気はなかったので、鏡さんに映すだけッスけど……」
空と水の色を宿した髪と瞳が鏡の中でキラキラと光を反射して揺れる。鏡のコーディネートにお任せしようと両手を広げたイルミナの動きに合わせ、鏡の中のイルミナの衣装に変化が起こった。
「どうッスかね、似合うものでしょうか!」
機械的なスーツは全体をレモンイエローに変え、淡いクリーム色のフリルが肩や肘などをまろく包んで柔らかさを演出する。腰に付いた同じ色の大きなリボンはまるで水中を泳ぐようにふわりふわりと浮かんで流れては、木漏れ日差す水辺のようにキラキラと煌めていた。
「こう、自信満々に歩いてるイルミナの姿を見るのが割と複雑な心境ッス……!」
あまり色々な服を着たりする経験はないからと鏡の中の自分に見入っていると、まるで妖精のように青い半透明の羽を広げた鏡の中のイルミナがぱちんとウインクして歩き出す。その普段の自分では決してやらないようなウォークに思わずイルミナは両手で顔を覆った。
「どーれーをー着ーよーうーかーなー。
鏡さん鏡さん、貴方は何が良いと思いまして?」
楽しそうに問うヴァレーリヤに反応し、鏡の中のヴァレーリヤは嬉しそうに沢山の衣装を並べたてる。
その中から一つ、黒基調で大人っぽさとエレガントさを備えた総レースなドレスを手にくるりとターンを決めてポーズを取った。
シニョンに纏めた髪は黒薔薇とレースのリボンで飾り、オペラグローブを付けた手が恭しくたっぷりとレースの重なったスカートを持ち上げて優雅に礼をする。
その胸元では赤い十字架がアクセントのようにキラリと輝いたのを見て、ヴァレーリヤは手を叩いて歓声を上げた。
まるで夜空を鏤めたかのようなキラキラが周囲を演出している。
「とにかく衣装は、うん。色が重要かな。髪がこの色だし、かぶらないように白か黒がいい。
形は……とりあえず、ミニスカートはなしで。膝下くらいがちょうどいいはず。
あ、あと帽子もあるといい感じになるかも。うん?イメージできたら鏡の前に立つだけでいい?」
鏡の前でうんうんと唸っていた箏勿へ、鏡の中の箏勿が身振り手振りで呼びかけた。彼女が描いたイメージを一つ一つ具現化するように、鏡の中から光が零れる。
「うわぁホントに一瞬だ。しかもイメージ通り。これが鏡の力……」
真っ白な雲を思わせるふわふわの生地に縁を飾る細かいフリル。繊細な植物の刺繍が施された膝下のストッキングには水晶に似た輝きのビーズがキラキラと光っていた。
「問答無用で着せ替え人形にされるのか……しかもこれ変わるのは鏡の中だけなんだ。」
無事な体を見下してホッと安堵の息を吐きながら視線を戻せば、鏡の中の箏勿がスキップでもしそうな軽やかさで歩き出していた。
「ゴッドのイメージもフレンズによってさまざま!
今のゴッドワールドではインターネッツによってメディアの拡散も早く、ゴッドヴィジュアルのイメージも固定され、この姿がデフォルトとなってきたが……
ミラーよ!ユーの望むようなレースがラージサーブされたドレスも、ゴッドのウェアーの一部だ!」
鏡に負けないテンションで両手を上げた豪斗をそのまま映していた鏡の中の豪斗が、まるで神の降臨を思わせる眩い黄金色へと輝いた。
砂金を縫い込んだようにキラキラと輝く生地はたっぷりのレースが合わさり、日の出の海のように波打っている。体のラインに沿うようなマーメイド型で両肩から腕に掛けては繊細な刺繍のレースが伸びていた。
「ふむ、見たまえエンジェルズ!ゴッドのキュートな姿を!
……いや、ゴッド自身のことを言うよりもまずユー達を讃えねばな!」
鏡の中の4人はそれぞれイメージの違う衣装を身に纏い、スポットライトにも負けないキラキラとした輝きを放っている。
それは衣装から出るものか、それとも内面から溢れる魅力であるのかは鏡のみぞ知る。
それでは イッツ! ショータイム!
「ヴァレーリヤさんも、箏勿さんも……豪斗さんも。とっても素敵だと思うッスよ!」
鏡の中を自由気ままに歩き出した分身たちにイルミナが興奮気味に声を上げた。
大人っぽい仕草で裾の長いドレスを着こなすヴァレーリヤがターンを決めれば、絶妙に中の見えないポーズでジャンプした箏勿がセンターへと躍り出る。
「あ、ホントに鏡の中の僕が動いてる。あ、ねえちょっと、僕そんな風にはしゃがないんだけど!?」
踊るなら優雅にして!と本物の箏勿が鏡の前で得意の舞踏を披露すれば、鏡の中でも同じように踊り出した。
その周囲をふわりふわりと歩くイルミナの爪先が床を蹴ると同時に水の波紋のように光が広がり、神秘的な雰囲気が鏡の中に満ちていく。
「ゴッドはユーのデザイアを肯定する!
良きドリームライフを生きたものよ、シャイニーなドリームであれ!
さあ、ユーのセンスはこんなものではあるまい!
ゴッドのチャームをより高め、エンジェルたちをよりチャーミングにせよ!」
金色を纏った豪斗が愛らしいステップを踏んで一気に長いスカートを捲り上げる。するとドレスはまるで薔薇を詰め込んだような短いスカートに変化して愛らしさを一層増した。
「ひゅー! 決まってるー! 可愛いですわよー!」
外野から声援を送りつつわいわいしていたヴァレーリヤに鏡の中のヴァレーリヤがまるでダンスに誘うように手を伸ばせば、にんまり笑って頷いて見せた。
「みんなでランナウェイしたりするのも楽しいかも知れませんわねー!」
ノリノリで手を振って目一杯楽しむヴァレーリヤ(本体)
ひゃっほーう!と声を上げて二人のヴァレーリヤがポーズを決めると、イルミナがパチパチと盛大に拍手を贈る。
「ふふん、エレガントでしょうそうでしょう?もっと褒めて褒めてー!」
「ふむ、皆スペシャルなコーディネート!
いやはや、ゴッドはラッキー&ハピネス!ユー達と共にこのショーをエンジョイできることを誇りに思う!
ゴッドのシャインはゴッドを照らすとともに、エンジェルたちの姿をよりビューティフル&エクセレント&キュートにディレクションしよう!」
同じくテンションの高い豪斗が鏡の中のキラキラにも負けない後光を背負ってポーズを決める。
箏勿とイルミナが分かる?と顔を見合わせる中、感じるのよ!と大きく頷くヴァレーリヤ。
ヒラヒラでフリフリでフワフワでキラキラね!
ピシリ と小さく音がした。
鏡の中の光は段々と弱まり、キラキラと滴のような欠片が零れ落ちる。
ああ! 最高のショーだった!
満たされた声はパキパキと弾ける音に飲まれていく。
「さあミラーよ、次のコスチュームはまだかね!?
ショーのフィナーレにはまだアーリーだぞ!
ゴッドはいつでも人の子と共に在る!ゴッドウィズユー!」
「いやいや、待って下さいッス豪斗さん!」
「鏡は満足したみたいだから。」
ショーの終わりに不満げな顔をした豪斗をイルミナと箏勿が止め、ひと時の夢を思い返す。
「こういう経験も、偶には悪くありませんでしたわね。」
気が付けば廃墟に戻ったミラーハウス。
ヴァレーリヤは鏡と同じように満足そうな顔で微笑んだ。
素敵な夢をありがとう!
成否
成功
状態異常
なし
NMコメント
桃缶です。
どうぞよろしくお願いします。
◆依頼内容
ミラーハウス内で鏡の中のファッションショーが終わるまで逃げださずに耐える。
もちろん一緒になってキラキラしても構いません。鏡は喜びます。
◆プレイングについて
1、鏡の中の自分のフリフリでヒラヒラでフワフワな衣装を考える。
(記載がない場合は鏡の趣味で盛られます。本体は無事なので安心してください。)
2、鏡の中の自分に対するリアクションを考える。
(一緒にランナウェイして楽しんでも良いですし、ひたすら羞恥に悶えても良いです。)
場合によっては心に重傷のようなものを負う可能性があります。
みなさまと共にハッピーエンドを綴れますように。
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