アーカンシェルときわめて危険なピクニック

オープニング

●遭遇の第一章
　タンポポの綿毛のようにふわふわと飛ぶ妖精。
　身長３０センチほどで、髪の代わりに花の花弁がついた、どこか甘い香りのする精霊種であった。
　彼女は焦った様子で空へと飛び上がろうとした……が、それをむんずと掴む人間の手。
「こいつがナントカの門から来たっつー妖精かい」
　毛むくじゃらの手であばれる妖精を引き寄せ、鳥かごの中へと放り込む男。
　彼だけではない。周りでは同じように鳥かごをもった男達が、逃げ惑う妖精を網や電撃魔法で捕まえてはかごの中へと放り込んでいた。
　そんな中で、捕獲作業には加わらずひとりぱちぱちとそろばんをはじく眼鏡の男。
「最近じゃあ奴隷商売もキツくなってきたからな。ここらで一丁、新鮮な商売を開拓しようってンですわ」
「フン。売れればなんでも構わんよ」
「いやいやぁ、そこは『お主もワルよのう』と言ってくださいよ」
　眼鏡のおとこは嫌らしく笑い、鳥かごの中で暴れる妖精に顔を近づけた。
「かわいらしいお嬢さんたちじゃあないですか。好事家に高ぁく売れますよ？　ヘンテコな首輪できたねえガキを売ってたのがあほらしくなるほどにね」
　ケタケタと笑う男たち。
　陰謀は、悪事は、まかり通ってしまうのか。
　妖精達はこのまま、鳥かごごとどこかへ売り飛ばされてしまうのか。

　否！　そんな未来は否定できる。
　なぜならば。
　そこへ今、『あなた』が駆けつけたがゆえに。

●前日譚
「皆さん！　深緑の妖精さんから依頼が届いたのです！」
　時を遡ること一日前。
　ローレットの酒場に依頼書を振りかざして『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)が飛び込んできた。
　彼女はあなたに気づくと、子犬のよにぱたぱたと駆け寄ってきた。
「あっ、いいところにいたのです！　急ぎのお仕事なので、すぐ深緑にとんでほしいのです！」

　ユリーカが話すには、深緑の奥深く、『妖精郷アルヴィオン』より来たという妖精のひとりからローレットへ護衛依頼が舞い込んだという。
「アルヴィオンには『妖精郷の門（アーカンシェル）』というものを通してのみ行き来ができて、門は『そこから来た者』しか入ることが出来ない仕様になっているそうなのです。
　むこうの妖精さんたちはピクニック気分で門の周りに特別な花や木を植えて楽しく過ごしていたらしいのですが、ちょっと調子にのって遠くまで出て行ったらうっかり帰れなくなってしまったということらしいのです」
　身体の小さな妖精たちにとって深緑の大部分を占めるという森林迷宮はあまりにも広大だ。
　しかも森の中にはモンスターが出現することも多いという。
　情報屋のツテで道を知っているローレットが、その案内と護衛を受け持つということになったらしい。

「妖精さんたちとは決まった場所で待ち合わせているのです。
　最近は森の中で密猟なんかをはたらく『森賊』も出るらしいので、気をつけてくださいね！
　妖精さんたちがいっぱいいるのを見つかったら、彼らに捕まっちゃうかもしれませんから」
　まさかこの一言が、本当になろうとは……。

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第3章

第3章 第1節

「ぷっはー、やっとついたよー」
「人間の足だとあの距離もあっという間なのね」
　ようやくアーカンシェルまでたどりついたイレギュラーズたち。
　彼らの肩やフードやスカートや耳の谷間にはいっていた妖精達はぽーんと飛び出し、ほこほこと暖かい花園へと降り立っていく。

　花園は不思議な場所だった。
　見たこともない花があちこちに咲き、冷たいはずの空気を暖めている。
　オレンジ色の光がぽわぽわとあたりと照らし、モンスターはそれを嫌がって近づいてこないのだという。
「「門も無事ネ。コレならいつでも帰れそうだワ」」
　中央には虹色の水たまりがあり、どうやらそれが妖精郷へと続く門であるらしい。
「けどせっかくここまで送ってくれたんですもの。ゆっくり休憩していきましょ？」
　妖精達はお花のうえに腰掛けると、パッと手を開いてみせ……。
「それで、えっと……なにか美味しいもの持ってない？」
　照れ笑いをうかべた。

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・プレイング受付時間
　第三章公開時点～2020/02/26 18:00

・描写人数
　6～8人、抽選式。

　第三章からの参加も歓迎しております。
　その場合、第一～二章から居合わせていて自分の担当の妖精さんがいる扱いになります。
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第3章 第2節

　おねがい、と首をかしげる双子妖精のスミレに対し、『ガスマスクガール』ジェック（p3p004755）はフコーとガスマスクの中でため息をついた。
「逆に聞くケド、スミレちゃん。
　アタシがお菓子を持ってるヨウに見えるカイ？」
「「持ってないの？　ニンゲンはみんなキャンディやビスケットを持ち歩いてるって聞いたケド」」
「キャンディやビスケットが食べられない人類モいるんだよ」
　トントンとガスマスクのフィルター部分を指で叩くと、ジェックはそのままころんと寝そべった。
「ホラ、イイコだから花の蜜デモ飲んでなさい」
「「えー……」」
　などと言いながら、スミレたちはジェックの両肩を枕にしてころんと寝そべりはじめた。
　アーカンシェル周辺に広がる『花の結界』はほんのりと暖かく、地面から熱が上がってくるようだった。
　おふとんのひとつもかけていないのに、身体がぽかぽかと温かい。
　うつらうつらと目を閉じるジェックの横で、スミレたちは片手間にフィルター部分に『thank』『you』と青い色液で落書きをした。

成否

成功

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第3章 第3節

　頭に赤い薔薇の花をそなえ花弁のようなドレスを纏った妖精が、『お人形さんと手品師』黒影 鬼灯（p3p007949）のつれた人形の横にストンと腰掛けた。
　人形より一回り小さい程度だろうか。色合いが似ているせいで遠い親戚のようにすら見える。
『鬼灯くん！　お弁当を持ってきていたでしょう？』
「そうだったな嫁殿。母上から弁当を預かっていたのだった」
　腹話術で語りながら鬼灯はニコニコと弁当包みを取り出した。
「あら忍者さん、お母さんにお弁当を作って貰ったの？」
「ふふ、『母上』といっても俺の頼れる部下の事だ。ややこしくてすまんな」
　包みを開くと、甘めの卵焼きをはじめとして好きなおかずがぎっしりと詰まっていた。
　が、中にふと見つけるブロッコリー。
「うっ……緑のモサモサ……」
『好き嫌いはいけないわ、鬼灯くん！　ほら、あーんして？』
「ぐぬう……」
　ブロッコリーを無理矢理（？）食べさせられる鬼灯を観察しながら薔薇妖精は卵焼きを抱えてもぐもぐやりはじめた。
「仲良しっていいことね」

成否

成功

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第3章 第4節

　手のひらくらいに大きなチューリップの花に腰掛けて、タンポポ妖精のポポポはうーんと背伸びをした。
「ポポポ、おつかれさまっ。綺麗な場所だねえ」
「そーかしら？　私にくらべたらゼンゼンよ！」
　両手を腰に当て、えっへんと胸を張ってみせる妖精。
　と思ったら、ぐうと妖精のおなかが鳴った。
「……うう。おなかすいたわ」
「そういうことなら、ボクにおまかせ！」
　ハルアはリュックサックを下ろすと中からパンを取りだした。
「わあ！　知ってるわ、それは……えっと……ナニコレ？」
　かじりつこうとしてあんまりに堅いゼシュテルパンに引くポポポ。
　ハルアは『だよね』と苦笑してポケットを叩いた。
「なにかいいもの……ほらきたっ」
　そういって取り出したのはチョコレートの塗られたビスケットだった。
「からの、プレゼント！」
「ヤッホー！」
　ももももってほっぺを膨らませてかじるポポポ。
「ねっ、ボクおにゅーの靴を買ったの。空を飛べる靴なんだ」
「ももも……も？　『妖精の靴』じゃなくて？」
「そ、魔法の靴。今度一緒に飛んでみたいな。いい？」
　ポポポはうーんと考えてから、ビスケットをかじった。
「じゃあ、またコレをくれたら飛び方を教えてあげるっ」

成否

成功

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第3章 第5節

「うぃーん、がしゃ、ういーん、コゼットロボ、目的地に到着したよ」
「ごくろーなのよっ」
　シロツメグサの妖精『シロ』がコゼットの耳の間からぴょーんと飛び出し、とても小さな白い傘をさした。
　ふーわふーわとゆっくり降下するシロ。
「素敵な乗り心地だったわ。またよろしくなのよ」
　ふふーんと上機嫌のシロを手のひらに着陸させ、コゼットもまたその場に腰掛けた。
　ほんのりと甘い花の香りと温かな地面。
「ここが、アーカンシェル？」
「げんみつにはその周りにつくった結界なのよ。暖かいでしょ？」
「そうだね。ぽかぽかして……」
　お昼寝するのに丁度よさそう……といいながら仰向けになってみると、シロはコゼットの胸元にぺふんと座った。
「それよりお菓子っ」
「うーん……クッキーでいい？」
「クッキー大好きなのよっ」
　わーいといって二つに割れたクッキーを半分だけもふもふやって、もう半分をコゼットの口にねじ込もうとしてくる。
「一緒にたべるのよ」
「うーん……うん、おいしい……ぐう」
　ほっぺにクッキーのかすをつけたまま、コゼットは暖かさのなかに目を閉じた。

成否

成功

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第3章 第6節

「まあまあ！　綺麗な場所ですわーーーー！」
「まぶしー！」
　満面の笑み＆満開キラメキのタント。くるくるヘアーの中にくるまって遊んでいたヒマワリ妖精のタネガシマが、ちっちゃいサングラスを取り出して装着した。
「おてんとさまの光溢れる素敵な場所ですわ！　居るだけでしあわせな気持ちになりますわね！」
「せやろー？」
　妖精はしゅるしゅると髪の中から出ると、空中をてくてく歩くフリをしてタントの前へとやってきた。
「そんな時こそ美味しいモノを食べたくならない？」
「おいしいものですの？　……ええ、ええ！」
　タントはぱちんと両手を合わせ、肩掛けポーチの中から一個のカップを取り出した。
「たららたったた～、『クリオネプリン』～」
「わーい！　……プリン？　プリン！？　あの！？」
「あのプリンですわ！」
「やったぜー！」
　タントの目の前で踊り始める妖精。
　負けじとタントも踊り出し、二人してくるくる回り始めた。
「さあ、パーティーですわー！　見ている人を元気にするタント様ダンスのお時間ですわよー！　オーッホッホッホッ！」

成否

成功

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第3章 第7節

　背中の羽をぱたぱたとやりながら歩く『特異運命座標』シルキィ（p3p008115）。
　胸に抱えていたコットンフラワーの妖精『コットン』がふわあとあくびをした。
「ねえー、こんどこそもうお昼寝していいー？」
「そうだねぇ。今度こそ大丈夫だと思うよぉ」
　シルキィは暖かいアーカンシェル前の結界内に座り込むと、七色に広がる花々を見回した。
「綺麗なところだねぇ」
「そうでしょー。お昼寝にはぴったりだよ。でも、その前に……」
　きゅるるーとなり始めたおなかをさすり、コットンはシルキィのポシェットをじっと見つめた。
「何か甘い物がたべたいなー」
「そういうことならぁ……」
　ポシェットに手を入れ。
「じゃじゃーん。ましゅまろセットぉー」
「おー」
「つづきましてぇ、お菓子の詰め合わせぇー」
「おー」
「からのぉ、グナグルゥッシャガオゥー」
「…………お？」
「…………ん？」
　グナグルゥッシャガオゥーをシャッてしまいなおしてポシェットを閉じるシルキィ。
　取り出したクッキーを半分に割って、シルキィとコットンは一緒に体育座りをしてお菓子を食べ始めた。
「綺麗な所で食べると、いつもより美味しく感じるんだよねぇ。不思議だよねぇ？」
「ねぇ？」
「今度は、危なくない時に一緒できたらいいねぇ」
「ねぇー」

成否

大成功

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第3章 第8節

「ぶはははっ、ここまでお疲れさんだったな皆の衆！」
「いえーい！」
　緑の三つ編みのような髪型をしたブタクサ妖精がぴょーんと飛び上がり、『妖精の胃袋を掴んだ』ゴリョウ・クートン（p3p002081）の頭の上に飛び乗った。

「ここからは！」

「俺が！」

「腹いっぱい飯食わせてやるぜぇ！」

　三行でマイキッチンをこしらえたゴリョウは、早速豚汁やなんかを振る舞い始めた。
「あ、おはぎお土産に持ってくかい！
　ここまで色々と大変だったろうが、良い思い出作ってってほしいかんな！」
「おはぎぃー！」
　たーべるーといって貰ったそばから食べ始めてしまう妖精。
　オイオイと言いながらも、ゴリョウは新しくおはぎを笹の葉に包み始めた。
「その『妖精郷アルヴィオン』てのはどういうところなんだ。米とか喰うのかい」
「コメ？　さー？　とりまご飯に困ったことはないかなー。ウチのまわりは毎日ごろごろして暮らしてるよ？」
「そういうもんかい……」
　ゴリョウキッチンが妖精達のみならず仲間のおなかも満たしているその一方。
　『闇之雲』武器商人（p3p001107）と『皆の翼』ヨタカ・アストラルノヴァ（p3p000155）は木百香の妖精を花の椅子へとおろしてやると、彼らもまた腰を下ろした。
「無茶をしすぎだ……今度こそ、ちゃんと身体を休めてくれるんだろ……紫月」
　ここへ来るまでにだいぶ無理をしてダメージを引きつけてきた武器商人をちらりと見るヨタカ。武器商人はヒヒと笑って返した。
「無用に傷つこうとまでは思わないとも。それにしても、随分と陽気な所に出たね」
　懐から蜂蜜の小瓶や大福を取り出して妖精にあげる武器商人。
　ヨタカはそんな様子に一旦安堵して、背負っていたケースからバイオリンを取り出した。
「ふふ……さぁ、つかの間のパーティーの始まりだ……」
　『おや、我(アタシ)の小鳥が歌ってる』とくつろぐ武器商人の横でヨタカが美しい音色を奏で始める。
「傍で一緒に聴こう？
　可愛い隣人を連れて小鳥の傍で寛ぐとしよう」
「ことり？」
「そう、あのコは我(アタシ)の小鳥なんだ。
　りんごと蜂蜜の瞳に、阿古屋の髪に、綺麗な歌声で大層可愛かろ？気に入っても、持ち帰ってしまっては駄目だからね」
　そんな冗談を言って、ちいさな観客達と共に花園の演奏会を楽しんだ。
　仲間達も踊り出し、歌い出し、その日は夜がくるまでフシギなパーティーは続いた。

成否

成功