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シナリオ詳細

<サイバー陰陽京>錦に紛れる儀式

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●蒼穹を泳ぐ錦の魚ゞ
 徒党が箱を持ったまま駆け出した。後ろには警備隊が追いかけてきている。階段を駆け上がり、屋上のコンクリートの上を、靴底がすり減ったスニーカーで蹴った勢いのまま、隣の建物に飛び移る。

(逃げ切ったか?)

 ふっ、とテロリストが笑みをこぼした直後、今まさに階段を降りようとしていた扉から、8人程の警備隊がゾロゾロとやってきた。

「無駄だ! お前達はすでに囲まれている!」

 警備隊に銃口を向けられた男達がポケットから何かを取り出して地面にぶつけると、派手な音とともに、もくもくと煙が広がっていく

「なっ、爆弾か!? 総員、防壁を張れ!」

 警備隊が爆音に怯んだ隙を狙い、テロリスト達は箱を開封する。煙が晴れていく前に、ただのこけおどしだと気付いた警備隊がテロリスト達を取り押さえていく。

「残り時間は30分。見つけ出せるなら見つけ出してみろ! ふはははははっ!」
「なっ……!」

 ……だがしかし、先ほど開け放たれた箱の中から踊り出た4匹の錦鯉型ドローン達が空中に泳いで行くのを、警備隊は見送るしかなかった。テロリスト達の高笑いが響く。


●疾ゞに解決する為に

「テロリストの一部を捕獲したんはええけども、警備隊も肝心なトコロ、抜けてはりますなぁ」

 やれやれといった様子で、目を伏せ、境界案内人のオハナは扇を開き、口元を隠す。立太子の記念パレードが催される際に同時多発テロが行われるという情報を得ていたが、間一髪、犯人こそ捕らえられたが計画は阻止できなかったのだという。
 今回取り押さえられたテロリストが目論んでいたのは、皇太子を守護する防壁でもある陰陽結界を、結界決壊術でもって破壊し、暗殺を援護するというものだった。
 成功すれば、皇太子を狙いやすくなるということだが、簡単に壊れるほど柔な結界ではない。故に、移動祭壇を作り上げ、儀式を行い、確実に破壊出来るほど迄、威力を高める為、呪具を内蔵させた錦鯉型ドローンを空に放ったのだ。

「厄介な事に、パレードは景観を損ねないように錦鯉型のドローンによるカメラで中継されてるさかい、外見で判別するのには時間がかかるどす」

 放送会社が提供している錦鯉型ドローンより、ほんの少しだけ塗装の色が違ったり、泳ぎがぎこちないらしいが、よく目を凝らさないとわからないらしい。偽装に力を入れたが故に、ドローンそのものの耐久性は低いようだ。

「逃げ出した呪具の錦鯉型ドローンは4匹。ぜぇんぶ見つけ出して30分以内に壊さんと、自動で儀式が行われるっちゅう話どす。もっとも、壊されればその分だけ破壊される確率は減らしいけども、悪い可能性はなるだけゼロにするのがええと思います。
 なにせ、皇太子を守る最終防壁である結界が破壊された場合、それだけテロリスト達は皇太子を狙いやすくなってしまうどすからなぁ」

NMコメント

 御機嫌よう。〈サイバー陰陽京〉連動シナリオ企画に参加した蛇穴 典雅です。陰陽大好き! ミヤビサイバーなシナリオ書きたい! ……と暴走した結果、空を泳ぐ錦鯉を出すことになりました。錦鯉っていいですよね。
 今回のシナリオでは1匹捕まえるごとに、結界が破壊される確率が25%減ります。逆に1匹残しておくだけで25%も破壊されるリスクがあります。ご注意を。
 破壊は通常攻撃で充分ですが、空を飛んでいるので飛行手段か遠距離攻撃による手段をお考えください。
 プレイングの他にもいくつかの非戦スキルは錦鯉型ドローンを発見する行動にボーナスを与えます。是非ご活用ください。

  • <サイバー陰陽京>錦に紛れる儀式完了
  • NM名蛇穴 典雅
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年03月07日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)
氷雪の歌姫
ヨルン ベルクマン(p3p006753)
特異運命座標
ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)
私の航海誌
奏多 リーフェ 星宮(p3p008061)
お嬢様の恋人

リプレイ

 警察雅楽隊が美しい列をなし、笙の音色で先導する。美しい音色と共に、ゆっくりと澄み渡るどこまでも青い空に、錦鯉が泳いでいた。この世界にも放送局というのはあって、どの放送局がもっとも素晴らしく生中継できるかを争っている中、もうひとつの争いが始まろうとしていた――。

 外側から内側へ徐々に包囲網を絞っていくように、浮かんでいる錦鯉を確認していくのは、イレギュラーズ達4人であった。彼らはオハナに話して手配してもらったスマートフォン型の無線機の他に『サイバーゴーグル』や、パレードの雰囲気を阻害しないまま機動力を高めるべく騎乗する白馬『ラニオン』、そして意思疎通を図るための『ファミリアー』のハトを連れていた。

「エコーロケーションを使ってみましたが、周囲の人から『不自然な錦鯉型ドローンを見かけた』というような話は上がっていませんわね」
「なるほど、よっぽどうまく隠したんだね」


 『氷雪の歌姫』ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)の言葉に、『特異運命座標』ヨルン ベルクマン(p3p006753)は興味深そうに頷いた。この『ドローン』と呼ばれるものは少しばかり懐かしい。彼の故郷である森にはたまにではあるが、このような感じのものがあった記憶がある。もっとも、それらは錆びていてこのように煌びやかなものではなかったが。

 一方で『虹を齧って歩こう』ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)は『ドローン』と呼ばれる存在を初めて知ったのもあり、最初は一体何なのかと首を傾げていたが、オハナの詳しい説明のおかげで、今はそれが何かを理解していた。

「それにしてもテロリストも最後の最後に面倒なものを残したね……。1機でも残ってると厄介だし全部見つけて破壊しないといけないな」

 僕にできうることをやっていこうかなと意気込むのは『虚空』奏多 リーフェ 星宮(p3p008061) である。

 4人はスマートフォン型の無線機の使い方をオハナに教えてもらった後に、お互いに頷き合うと散会し、『錦鯉型ドローン』を探し始めた。

 はじめに見つけたのは、『閃緑の目』を所持していたメリルナートだった。人混みの中で『パルティシオン=エグゾセ』を纏うと、ふんわりと浮上しようかとも思ったが、人の目があると不安に思えば、建物の影からゆっくり飛び立ち、少しぎこちなく尾鰭を動かし、蒼穹を揺蕩う『錦鯉型ドローン』に近づいた。
 どうやら逃走する、などのプログラムは搭載されていないらしく、簡単に捕まえられた。他の放送局が空に放っている『錦鯉型ドローン』と違って、カメラが搭載されていない他、不気味な起動音が耳に触る。
 見た目が愛らしいだけに『なんだかちょっぴりかわいそうだけど、仕方ないですわよね……』とメリルナートは眉を下げたあと、氷水晶で出来ている槍を使って串刺しにし、破壊する。歯車が地面に散って、駆動音が止まったのを聞き届けたあと、スマートフォン型無線機に向かって語りかける。

「こちら、メリルナート! 1匹目を捕獲しましたわ!」
「了解! こっちも1匹見つけた。今、ウィズィが追っているよ」

 応答したのは、ヨルンである。彼は高いビルに登り、そこから空中を泳ぐ『錦鯉型ドローン』を観察していた。そのうちの1体が、なんだか色合いが少しばかり他の『錦鯉型ドローン』とは違い、淡い色をしているのに気がついて、彼は鏡を反射させ、ファミリアーにコンタクトを取る。

「OK、ヨルンさんナイスサポート! 激渋っ! Step on it!! さあ! 行くよラニオン!」

 ファミリアーのハトがくるっぽーと鳴いて合図をする。ウィズィニャラァムは鏡の反射に気がつくと白馬『ラニオン』の手綱をしっかりと握り、アブミを踏んで腹を軽く蹴れば、『ラニオン』は飼い主の意図を汲んで素早く風のように駆け出した。
 緩慢な動きで泳ぐ『錦鯉型ドローン』に追いつくのは簡単であった。けれど、距離がある。ヨルンははじめ、そのナイフでどうやって打ち落とすのかと不安に思っていたけれど、ウィズィニャラムは心配しないでと笑い、誤魔化された。

「OK、いきますよ!‪──‬貫け、私の、コーラヴラヴ!!」

 そう、これが彼女の伝家の宝刀『コーラヴラヴ』である。巨大テーブルナイフ型に押し固めた感情のオーラで一気に錦鯉型ドローンは綺麗さっぱりと三枚おろし。爆音を出すまもなく、プシュウと煙を上げて地に落ちていった。

「どーですか、当たりですかヨルンさん!」
「ナイスショット! こっちからも見えてたよ」

 さて、残りは2匹だと、息巻く一同だったが、なかなかそれが見つからない。制限時間は30分。刻一刻と迫りつつある制限時間に、焦燥感が昂ってくる。

「こちらウィズィニャラァム! 南にいるけどこっちにはいないよ!」
「こちらメリルナート! 北! こっちにもいませんわ!」
「こちら、ヨルン。……残るは東と西だね。西側を見ているけど、まだ見つからないや、ごめん」

 どうしよう、もしも、見つからなかったら――。そう誰かが呟いた刹那、凛とした声がスマートフォン型無線機から響いた。

「……東側、奏多。発見した。これより討伐を開始する」

 その言葉に、ぱぁっとメリルナートとウィズィニャラァム、ヨルンの表情は明るくなった。

「やるじゃん!」
「了解! そっちは任せた!」
「西側は3人で探しておきますわ!」

 さて、任された奏多は、万が一を考えて『アーリーデイズ』でもって、長い過去を持つ奏多がもっともコンディションの良かった瞬間に合わせ身体能力を向上させる。

「落ちろ」

 彼が呟く。その悪意が、『ファントムチェイサー』が文字通り『錦鯉型ドローン』を追従し、飲み込むようにして破壊する。

 ――これで、あと1体。

 けれど、残酷にも時間は過ぎていき、破壊手段こそ持っていたが、索敵技術が偏っていたイレギュラーズ一同は最後の1匹を見逃してしまった。



「3……2……1……」

 刑務所の中、テロリスト達が口角を上げる。彼らは『錦鯉型ドローン』が4匹のうちに3匹をも破壊されているのを知らない。そわそわと警備隊が右往左往するのを見て刑務所で笑っていた彼らだったが、いくらカウントしても、街中やテレビでざわめきの起こらないパレードに眉を顰める。

「なっ、……なんでだ!?」
「やった。オハナのチームがやってくれた!」

 これで、結界は保たれた。万が一襲われたとしても、首の皮1つ繋がる状況に持っていけるだろう。 
 街中ではそんなことを知らない人々が、偽物の『錦鯉型ドローン』が破壊された音を花火、あるいは祝砲かなにかと勘違いしていたせいか、特にパニックになることもなく、また、メリルナートがカメラの死角になるように注意して動いたのもあって、誰もテロリスト達がテロを目論んでいる、なんてことに気がつく様子はなかった。



「1匹逃したのは残念だったどすなぁ、でもなんとか……運良く、儀式は失敗したみたいでありんす」

 オハナの言葉に、イレギュラーズはホッとした。かくして、依頼は成功と相なったのである。


 ゆぅらりゆらり、と『錦鯉型ドローン』は空を泳ぐ。あの中にまだ1匹、儀式用の呪物を宿したものがいるのだ。時間があれば取り除けた産物。いつか、機会があったら、取り除いてみせる、と固く心に誓いながら、イレギュラーズは一度、オハナの指示のもと撤退を始めた。

 ――なにしろ、テロはまだ、始まったばかりなのである。

成否

成功

状態異常

なし

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