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シナリオ詳細

<サイバー陰陽京>皇太子暗殺計画

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●吉日
 その日、『八紘』世界は全てが祝賀ムードに覆われていた。血で血を洗う第三次世界大戦の結果、唯一の覇者として君臨することとなった国家、『キョート』。その元首にして最高の陰陽師たる『帝』によって、一つの宣旨が下されたのだ。

「……今日の『立太子の宣旨』と、同時に発表された後日の『立太子の礼』を経ることで、『体仁(なりひと)』親王殿下は正式に皇太子としてお認めになられはります。宮内庁の発表に拠りますと、これを受けて体仁親王殿下は、立太子の礼の後のこととして『洛外』地区での記念パレードと、各地方への御巡啓の御意向を側近らにお伝えになられはったとのことどす」
 ニュースはそのように伝えるが、実のところその発表自体は、誰もが予想するものであったと言えよう。大規模な交通規制を伴う立太子記念パレードの開催は、とうの昔に関係各所へと打診され、了承されていたものだ。帝の宣旨のタイミングが“下々の者”の都合で決まるようなことはあってはならないが、帝が“民への配慮”を行なうことは、今や当然の慣例だ――しかし。

●仕事(ビズ)
「つまりはそれは、反政府組織のテロリストらもパレードの開催に気付いてはった、言うことどすな」
 指先に黄色い電子の揚羽蝶を乗せ、境界案内人オハナは坂東訛りのピジン京言葉で語る。陰陽術により空中に浮かぶ都市『洛中』より出て来ぬ帝の顔に泥を塗るには、此度の立太子パレードはまたとない機会であったに違い、と。工学と情報技術がどれほど発達しても、洛中を守る陰陽結界は破れない……その一方でパレードは、それと比べれば遥かに弱い結界でしか守られていないのだ。
 狙いは、太子か? 沿道の人々か?
 いずれにせよ反政府武装勢力『白峯』は、無辜の民を傷つけても構わぬという選択をした……同じく政府の方針に不満を持つ超巨大企業、『徳大寺重工』からの極秘裏の物資援助を受けて。
「事前に情報を察知出来たことだけは、不幸中の幸いどすなぁ」
 オハナは微笑みさえ浮かべてみせた。即ち、彼らの卑劣なテロ計画は、未然に防ぐことが出来るということだ。現段階で判っているのは幾つかの襲撃ポイントだけで、具体的な手法までは不明だが……どこを狙っているのかさえ解っていれば、君たちならきっと上手くやってくれるはずだ。

NMコメント

 サイバー陰陽小説『ネオホーゲン』の世界へようこそ。椎野です。
 『八紘』は、『キョート』と呼ばれる国家が地球上の全てを統治するサイバーパンク世界です。舞台となる『洛外』地区の上空には陰陽術に守られた空中都市『洛中』が浮かび、地上には無数の企業アーコロジーが林立する……そんな中で人々は、金と権力にしがみつきながら生きているのです。

●今回の舞台
 襲撃ポイントは幾つかあるようですが、本ライブノベルで扱うものは『五条大橋』と呼ばれる巨大コンクリート橋です。警察による事前調査により、この橋に爆発物等の仕掛けがないことは確認されています……が、白峯は、水中に潜んだ工作員に潜対空ロケット砲を打ち込ませることにより、皇太子をパレード列と参列者もろとも川中に転落死させようと目論んでいるようです。
 他の襲撃ポイントに関しては、同時公開のライブノベルをご覧下さい。

●必要な行動
 何にも増して、水中の工作員を発見することが最も最優先です。五条大橋の下を流れる川は広く深い上に水質が悪く、ただ目を凝らした程度では水中を見通せません。視界が悪いという条件は工作員も同様なので、最悪、彼がロケット砲発射のため水面付近に顔を出した瞬間を狙ってもいいのですが……。
 しかし、仮に工作員を発見できたとしても、周囲には彼を妨害から守るため、別々の場所にスナイパーが2名配置されています。彼らが陣取っているビルを特定する工夫があったり、彼らの通信や視界を遮る手段を講じていたりすれば、より確実かつ安全に事を運べるに違いありません(パレードは普通のスナイパー程度では貫けない結界で守られているため、スナイパーの対処は必須ではありません)。

●本ライブノベルの特殊ルール
 データは通常のルールに従い解釈されます。
 ただし皆様は、自身が『電脳体である』として、物理空間ではなく電脳空間上に存在することもできます。その場合、皆様のデータは電脳戦用アバターとしてのものだということになります(物理存在としてのデータがどうなっているのかは、ご自由に決めて構いません)。
 今回は使う必要はないルールですが、上手く活用できれば物事が有利に進むかもしれません。

  • <サイバー陰陽京>皇太子暗殺計画完了
  • NM名椎野 宗一郎
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年03月10日 22時10分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

シグ・ローデッド(p3p000483)
Knowl-Edge
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ
水瀬 冬佳(p3p006383)
水天の巫女
リコシェット(p3p007871)
跳兎

リプレイ

●憎しみの足音
 彼方より聞こえる笙の音色が、厳かにこの街の祝賀ムードを盛り立てていた。いつもは奴隷じみた企業への忠誠と富への信奉に余念のない人々でさえ、普段、洛外では省みられることなき雅の文化に今日ばかりは思いを馳せて、我々は偉大な文化の担い手であるぞと、自己欺瞞にも似た優越感に浸る。
 ならば、彼らが気付くことはないだろう……その空虚な自尊心の足許に、踏み躙られた者らの骸が転がっていることに。その骸が今秘かに起き上がり、自らに喰らい付かんと欲していることに。
 が……だとしても打ち捨てられた者らの憎悪を、為したいがままにする訳になどゆかなかった。
「サラエボですか、ここは」
 呆れたように眉根をひそめる『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)。『地球』、或いはそれと相似の時間軸を有する世界群の出身者であれば、西暦1914年6月の銃弾を知らぬ者は居まい。今、電子の海に潜り込んでじっと様子を窺っている『水天の巫女』水瀬 冬佳(p3p006383)もそんな一人であって、テロリストどもの計画を耳にした時、革命運動などをする輩は似たような発想に行き着くものだと顔をしかめたものだった。
(まさか、このテロが原因で世界規模の戦争に発展したりはしないとは思いますが……)
 そう信じたくはあるものの、肝心の電脳空間は既に何者かによって手が加えられ、至る所で情報分断が引き起こされている。尤も、その程度では冬佳の逆工作を阻めはせぬのだが──彼女は他ならぬテロリストども自身による通信を監視して、来たる時に備えているのだから。

 五条大橋の下を流れる鴨川は、今日も灰緑色に澱んでいた。ほんの僅か先さえ見えない、顔を近づけるだけでも嫌悪を感じさせるようなどぶ川は、けれども汚染耐性に強い鯉たちばかりが、我が物顔で泳ぎ回っている。
 その中に……『跳兎』リコシェット(p3p007871)の使い魔の鯉まで混ざっていたことを、テロリストどもは決して見抜けぬだろう。そして鴨川が半ば死の川に近いという事実が逆に、彼ら鯉たちが悠々と泳ぐ音とも、遠くから響く船の音とも違う、異質な呼吸音を辺りに響かせるのだ。
(今……泡を吐く音が聞こえたな?)
 使い魔の聴覚がそれを聞き取ったのを知ると、リコシェット自身も意を決し、我が身が汚れるのも構わず川に飛び込んだ。思えば、随分とこの世界とは長い付き合いになったものだ……この世界で過ごした楽しかった日々の記憶を、敢えて大衆に囲まれ動きの鈍くなっている時を狙った卑怯なテロにて台無しせんとする白峯ら。これがそんな彼らを止める好機だと思えば、多少のことに怖気づいている暇はない。

●潜むものたち
 どこかどろっとした水を蹴り、聴覚だけを頼りに水面の下を泳いでゆくと……あちらもその水音に気が付いたのか、刃物か何かを抜く音がした。それ以上のことはリコシェットには判らない……代わりに、冬佳が全てを傍受している。
『異音1。状況をチェックされたし』
 そんな音声パケットが川からどこかへ向かおうとするのを捕まえて、冬佳は然るべき時間を待機する。それから……狙撃手の声に偽装して、こんなパケットを川へと返す。
『異状見当たらず。引き続き警戒し待機されたし』
 スナイパーからも見えないのであれば仕方なかった。工作員はサイバーイヤーの指向性を上げて、リコシェットの立てる水音に意識を傾けねばなるまい……それにより、別の接近者を見落とす可能性を理解していたのだとしても。
 実際、『艦斬り』シグ・ローデッド(p3p000483)が、秘かに彼の下へと忍び寄っていた……が、仮に冬佳とリコシェットの作戦がどこかで見破られていたのだとしても、工作員が彼の存在に気付けたかどうかは判るまい。
 何故なら、シグの今の姿は魔剣『ローデッド』である。余程注意深く辺りを観察していれば彼の表面がぬめる泥に覆われておらず、その重量感にもかかわらず川底を転がるように動く奇妙な剣の存在に気付けただろうが……誰がそこまで慎重に、視界の曇った川底を徹底的に漁るだろうか?
 だから魔剣による不意打ちの一撃は、深々と工作員の背中に突き刺さった。
『やられた!』
 工作員の電子の悲鳴はやはり冬佳により握り潰されはしたが、すぐにスナイパーらは非常事態に気付いたことだろう……物理的な視覚に囚われぬ超常視覚の持ち主であるローデッドが盲目同然の工作員へと一方的な刺突を繰り返し、工作員が堪らず川面の上に姿を現したが故に!
「暗殺者ならば、己への暗殺の試みも、警戒しなければならない……そう思わんかね?」
『!? ここだ! ここに敵が!!』
 ローデッドが剣の姿のまま囁けば、工作員はそれに言葉を返す余裕もなく電脳空間上で叫んだが、彼の示した座標は冬佳によってほんの少しだけ歪められ、スナイパーに向かって送り込まれた。リコシェットから幾分離れた水面を貫いた弾……それが作った水飛沫の形を観察すれば、それが事前に寛治が現地協力者たちを使って見繕っていた狙撃点候補のうちの一つの方角であることが明らかとなる!

「地図を見るだけでも、目標に対する射線が通る狙撃ポイントを、距離・高さ・角度から絞り込める。それが橋脚などという障害物に近い場所なら尚更です」
 住民たちがパレード沿道に向かったために伽藍堂になったビル屋上の背景に、すっかり同化したまま。寛治は静かにスーツの内ポケットに手を差し込むと、取り出したオートマチック拳銃の安全装置を外して斜め前方に向けた。

 パシュン。

 サイレンサーを通した発砲音の後、辺りに飛び散る真っ赤な飛沫。
 念のため、もう1発……背景から滲み出るように歩みを進め始めた寛治の顔には表情らしき表情が浮かんでおらず、至近距離からさらに追加の2発を心臓へと叩き込む。
「バイタルサイン……なし。Clear」
 そう彼が通信機に向けて報告したならば、通信機からも受信のサインが光り、もう一方のスナイパーが異状に気づいたらしいという冬佳からの情報を告げた。
「Affirm」
 一旦、銃弾の残数と安全装置のかかり具合を確認すると、寛治は再び沈黙の中へと身を躍らせる。そして、川側の一角が赤く染まったビルの屋上を後にした。

●知られざる戦いの末に
 再び鴨川、五条大橋――。

 橋桁の下で繰り広げられる死闘の存在を、橋の上に並んでパレード列を待ち構える群集は気にも留めない。正確には幾人かは川面で上がる水音に気付きはしたが、すぐさま辺りをわあっという歓声が包み込み、彼らからすら真実を忘れ去らせてしまう。パレードを彩る警察雅楽隊の演奏はいまだに遠くに聞こえ、新皇太子も彼のパレード列も、広い道路の先に見えてきただけであるのだとしても。
 だから、流れ出た大量の血でさえも、誰にも気付かれはしなかった。濁り、腐臭を漂わす鴨川の水に、色も匂いも紛れたままで……。
 そうだ……血だ。ローデッドによる傷跡が至る所に刻まれた工作員の肉体からは、夥しい量の血が既に流れ落ちている。そして代わりに汚染された水が、その傷跡から彼を蝕まんとする……たとえ体内に毒物浄化サイバーウェアを埋め込んでいたとしても危険な兆候だ。工作員は這う這うの体で橋脚の基礎部へと手を掛けて、汚水と存在せぬ魔剣の遣い手の姿から逃れようとする!

 が……工作員は半ば瀕死に近い状態ながらも、腕に抱えたロケット砲だけは決して手放そうとしなかった。
「……ふむ。どうやら悠長にしている時間はなさそうであるな」
 思案するローデッド。だが彼が完全に基礎の上にまで出てしまったならば、ローデッドの地の利を生かした奇襲が役割を終えるばかりか、残るスナイパーによる支援の有効さも増すだろう――しかし。
「行かせるか!!」
 そんな声と共に何かが工作員に覆い被さって、彼を自身ごと汚水の中へと逆戻りさせた。続いて――水中で超音速の銃弾が発射された時特有の、泡が超速で広がり縮む打撃音がする。
 リコシェットだった。彼女はどうにか工作員を止めようとするが、慌てて届いた彼方からの狙撃が、お返しとばかりに彼女の肩を撃ち抜いている。それでも、何も知らない人々を傷つける卑劣な遣り口に対する彼女の怒りは燃え上がり、決して収まるところを知らない。
「仮に、どんな大層な目的があったって、大勢巻き込むような真似はさせない! 絶対に、パレードは邪魔させない!」
 大っきらいだ! 水中で工作員に馬乗りになったまま銃弾を叩き込み続ける彼女の様子は、ローデッドにはパレードの到着よりもよっぽど早く、遠方からの銃弾に儚く毀されてしまいそうにも見えた。
 仕方ない、さっさと決めさせて貰うとしよう。ローデッドの刀身が炎の如き破壊の力に満ちて、それがずぶずぶと川底の工作員へと差し込まれてゆく。次に彼が川の中から姿を現した時、その切先には真っ二つになったロケット砲の砲身が、これ見よがしに高々と掲げられている。

 橋の上は一際大きな歓声が包まれて、雅楽の演奏さえをも掻き消すかの勢いだった。自らの足元で起こっている出来事さえ知らない彼らではあるが、彼らがリコシェットの願った一市民なりの幸福を、手放さずに済んだことだけは疑いようもない。
 残るは、最後の仕上げだけだ。
(さて……随分としでかしてはくれたようですが、お蔭でどこに潜んでいるかがようやく判りましたね)
 とうの昔に吟味を終えた、電脳空間の中で幾度となく握り潰してやった通信内容をぱらぱらと眺めながら、冬佳はもう一度寛治へと通信を送付した。
(ええ。後は任せて下されば十分ですよ)
 “ギターケース”を担いで慌てて雑居ビルから駆け出てきた男に対し、寛治は立ち止まり、全く無造作に再び発砲。
「R.I.P.」
 再び歩き出した彼の姿は、煌びやかなパレード繰り広げられる沿道に群がる、人の垣根の中へと消えていった。

成否

成功

状態異常

なし

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