PandoraPartyProject

シナリオ詳細

鬼子の復讐

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ある夜に
 昔、鬼子と言われた子供がいた。
「――復讐は終わったのか?」
 彼は三つの時に捨てられた。母から侮蔑の眼差しを向けられて。
「あぁ。何もかも終わった」
 父にも容易く見捨てられた。お前は生きているだけで不吉を呼ぶと、お前は悪魔だ鬼子だと。
 山に運ばれ木に縛られ。殴られ蹴られ放置されて三日三晩。
 死を目前に、しかし奇跡的な『出会い』が彼の命を繋ぎ留めて――
「全て焼いた……あぁ何もかも終わったのだ。俺の復讐は」
 数十を超える年の果てに、彼は報いを返しに来た。放った火が全てを呑み込み消していく。
 かつて少しだけだが己がいた家は今ぞ消滅しているのだ。当然だが思い入れはない。ただ、ようやく成し遂げたのだという思いだけが胸の内に溢れていて。
「……お前に拾われなければ命はなかった。世話になったな」
「礼はいらんよ。私がお前を助けたのはただの気紛れだったからな」
 そんな彼の背後にいるのは女だ。人の姿をしているが『人』ではない。本人曰く『魔物』であり、場合によっては人を喰う事もあるという。彼が過去、打ち捨てられた山を住処にしていただけの『山の魔』という存在。
 その場で喰わず、救ったのは偶々だと言葉を紡いで。
「よし。では終わったのなら帰ろうか。私達の家に――」
「いや俺はこのまま旅に出ようかと思う。お前にこれ以上迷惑を掛ける訳にはいかん」
「そう…………えっ?」
 踵を返そうとする山の魔――に対して、男はそれとは別の方向へ歩を進めようと、したら。
「い、いや待て。ちょっと、そんな突然……え、なんで? なんでっ?」
「前から考えていた。俺の存在はお前の平穏を乱している。迷惑はかけられない」
「ままま待ってくれそんなことは無い。待て。おい、待て、待てって!!」
 背後から抱き掴まれた。背に顔を、腹を両腕で完全にロック。
 それでも進み続けようとする男に山の魔は引きずられながら。
「と、とりあえず落ち着いて一旦帰ろう。な! 私達の家に帰ろうッ! 疲れたろ!?」
「いや別に。それよりもお前が落ち付け。一体どうした」
「たたた頼む――! 待ってくれ――! 捨てないでくれ――!!」
 ええい、誰もいないからいいが誤解されるような事を叫ぶな。こうも落ち着かない様子の相方は見た事が無い。なんなのだ自分が去る程度で。俺よりも長く生きている魔の者だと普段自慢げに話しているではないか。もう少し立派に魔物していろ。
 ――と、そう口にしようと思ったが。

 捨てないで――

「……やむをえない、か」
「ふぇ?」
 その言葉を無下にするわけにもいかず、男はひとまずとばかりに帰路へと着く事にした。
 山の魔が普段住処にしている、故郷よりも長く過ごした住処へと――

●ブリーフィング
「――先日、家が一つ焼失した」
 ギルド・ローレットの一室。そこでギルオス・ホリス(p3n000016)は語り出す。
「これはその家に住んでいた唯一の生き残りからの依頼でね。ある男を殺して欲しいんだそうだ」
 曰く。先日の夜に突如として襲撃を受けた。突然の出来事に成すすべもなく妻は殺され、子は足の骨を折られ。終いには放たれた火に全てが焼かれそうになったが――なんの奇跡か、己だけが辛うじて助かった。
 その後は救助の手すら待たず。ありったけの金銭を握りしめ、ローレットを目指して。息も絶え絶えに今朝方辿りつき。
「……結局その人は死んだよ。辿りついた後、僕に依頼の内容を話して……糸が切れたようにね」
「復讐してくれ、と。そういう事か?」
「有り体に言うとそうだね。直接の目撃者が全員死んでるから情報の整理が中々難しいんだが……依頼なのは間違いない」
 ただ。
「……気になる話もある。僕が調べた限りでは、どうもこの家の者は過去に……子供を捨てているらしい」
「子供を?」
「眼の色が両親どちらでもなかったらしくてね。鬼の子が生まれたと騒いで山に捨てたとか」
 まさか。その程度で? 一つの命を?
 しかも鬼の子とはなんだ。鬼そのものがどうこうではなく、自らの子を別種族に例えるとは――
「是非はさておこう。糾弾する相手ももういない。で、なんでこんな話をしたかっていうとね」
 一息。
「近隣の目撃者の話によると、不審な二人組が山の方へと歩いて行ったんだそうだ」
 そしてその内の一人。目標となる男の顔は。
「似ていたそうだよ。焼かれた家の家長に――依頼人に、ね」

●過去
 おお? なんでこんな山の中に子供が縛られて……
 ええい、くそ。死んだ人間なんて好みじゃないんだぞ! 誰だ私の縄張りに不法投棄したの……
 ……いや、ん? お前まだ生きてるのか。
 はは、凄いなその傷で。んー……
 よし決めた! これも何かの縁だとすれば、お前を非常食用に救ってやろう!
「たっぷり感謝しろ――私は『山の魔』! お前の名前はなんという!?」

 それが初めての出会いだった。

GMコメント

 この依頼は目撃者が少なかった事により情報が必ずしも万全ではありません。
 ただop・下記内容に関しましては全て情報として活用して頂いても構いません。


■勝利条件
 「鬼子」の撃破。

 
■戦場
 山の中。蔦すら茂っている一軒家が存在しています。
 その中にターゲットはいる模様です。外で戦うか、中で戦うか、火を放つか。
 依頼開始時はこの家は発見できているものとします。(探索の必要はありません)
 時刻は選択可能とします。(朝・昼・夜)


■鬼子
 名は無く、自身も「鬼子」と名乗っている男。
 依頼主の発言からギルオスが考察した結果、徒手空拳で戦う模様です。
 実力はイレギュラーズの皆さんとほとんど変わらないか少し強い程度だと思われます。


■山の魔(山魔)
 ある山を住処にしている魔物。外見上は人間の成人女性とさほど変わりません。
 人里離れた所でひっそりと暮らしていましたがとある人間を偶々拾ってからは心境の変化が訪れた模様です。
 ギルオスの調査の結果、過去には行商や人を喰らって暴れていた過去が判明しました。

 その頃の情報を推察すると総合戦闘能力は鬼子を間違いなく超えています。
 
 高攻撃力・高防御力が特徴で、反面機動性に関しては劣悪のレベルです。
 魔法の類を使って複数人を攻撃可能ですが、これが範囲としての攻撃かは不明です。過去は単独での戦闘でしたので。
 これらは全て過去のデータからの推察ですが今も大きく変わっている訳ではないと思われます。

  • 鬼子の復讐完了
  • GM名茶零四
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年03月29日 21時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (8人)

メド・ロウワン(p3p000178)
メガネ小僧
ポテト=アークライト(p3p000294)
優心の恩寵
シフト・シフター・シフティング(p3p000418)
白亜の抑圧
ウィリアム・M・アステリズム(p3p001243)
神威の星
神巫 聖夜(p3p002789)
O. R. C.(p3p004042)
豚か?オークか?いやORCだ!
朱洛院 奉明(p3p004795)
朱き洛印
アンネリース(p3p004808)
炎獄の魔女

リプレイ


 例えば。手紙で呼び出される者と言うのは如何なる人物であろうか。
 警戒心が薄い者? 疑問を抱かぬ白痴の者?
 それらであれば『そう』であるかもしれないが『彼』は少なくともそのどちらかでもなかった。誰ぞと知らぬ手紙が届けば不審に思う程度の知は勿論あって――だが。
「こちらに接近してくる足音が聞こえます。数は……」
 一つ。他の介在せぬその音を『メガネ小僧』メド・ロウワン(p3p000178)は確かに聞いた。聞き耳による優れた聴覚からの情報だ。間違いない彼は、
「『話があるから一人で来い』――としたけれど確かに、一人で来たようだね」
「……貴様が。いや貴様らがあの手紙の差出人か」
『炎獄の魔女』アンネリース(p3p004808)の出した手紙の通り応じたようだ。
 ファミリアーによる鳥の顕現、それを介して手紙を届けて。とはいえ鬼子がその呼び出しに素直に応じた理由は概ね二つある。一つは手紙の差出人の名前を依頼主の家名にした事。
 その名は彼にとって無視しがたいモノだった。生きている筈がない、と思いながらも誰が、どういう意図で――となる想いは拭えない。そしてその想いを抱いた以上確認しに行かざるを得ない訳だが……ここでもう一つの理由。
「山魔の気配は……感じませんね」
 彼が山魔にこの事を話す事もなく一人で来たのは、彼女を巻き込みたくなかったからだ。『始祖』神巫 聖夜(p3p002789)は己が直感を用いて、近くに山魔がいないか軽く確認をするが特に反応は無い。
 山魔の平穏を願うが故にこそ。彼女が『とある理由』により家を離れた瞬間に届いた手紙といい、タイミングを計られている事を察した鬼子は家を出た。彼女に話さず、気取られることもなく。
「俺に何の用だ?」
「……人を呪わば穴二つ。復讐を成すからにはその覚悟、あったのだろう?」
「……成程。どれかが生きていたという事か」
 誰とは言わぬ。『どれ』という。それが彼にとっての『あれら』の価値観。ぞんざいに『朱き洛印』朱洛院 奉明(p3p004795)の言葉への返答とする。奉明はそんな返答に眉すら動かさない。あるいは動かさぬように努めているのかもしれない。
 どうであれなんであれ。事は為さねばならぬのだから。
 呼び出しの最中は自身のギフトの効果で何らかの探知無効化――による存在察知を懸念し成り行きを見守っていたが、事ここに至った以上はもういいだろうと判断して言葉を紡いだのだ。
「『因果応報』とも、な。報復は道理だ。ここにて全てを終わらせる……」
「……思う所はある。だけれども、見逃すことは出来ない」
 因果応報――何かをすれば何かが巡ると『星を追う者』ウィリアム・M・アステリズム(p3p001243)は言葉を紡ぐ。ここに自分達がいるのはそういう事なのだと。
 されど、そもそもこの事態が起こった原点に関してを想えば『慈愛の恩恵』ポテト チップ(p3p000294)も些か思う所が無い訳ではない。それでも依頼は依頼。復讐の連鎖は終わらせねばならぬと心に刻んで。
「本機にはそちらの事情を鑑みる意思はない。ただ要求された案件を遂行するのみ」
 一方で『白亜の抑圧』シフト・シフター・シフティング(p3p000418)には連鎖も過去も興味なく。ただ目の前に『殺害対象』がいるという現実だけを捉えて。
「殺害処分要求を実行する。疾く、死を」
「……アイツのいないタイミングをよく狙えたものだ。俺だけが狙いだったのだろうが」
「ぐへへ。なんだぁ? お前、自分だけ呼び寄せられたのが偶然だとでも思ってんのか?」
 鬼子の言葉に反応したのは『豚か?オークか?いやORCだ!』O. R. C.(p3p004042)である。そう、元より鬼子にだけ手紙を送るという事が成功するだろうか? 家と言う狭い空間。山魔に悟られず鬼子だけに存在を知らせる……並大抵の事ではない。
 だから手を打ったのだ。先に述べた『とある理由』というのが彼の手で。
「あの山魔とかいう奴は今頃、俺の罠にかかって……へへっ」
 その時、下唇が乾いたので舐めた。向こうから見たらなんだか捕らえた獲物を想像して舌なめずりした様に見えなくもないかもしれないが、唐突に下唇が乾いただけで他に意図はないので仕方ない。鬼子の眉が一瞬顰められた気がするがそれも気のせいだろう。
 ともあれその策だが、少し離れた地点に狼煙を焚くというモノである。無論その火は放置した上で、だ。不審に思った山魔なり鬼子なりが様子を見に行けばどちらかが離れる事になる。そしてそのタイミングで手紙を届ければ――気取られることは無い。最低でも嫌がらせにはなる。
 実際。『山の魔』と称される彼女は山の事に機敏であり、自ら様子を見に行くと言って、だから。

「ただいま――! いや迷惑な事だったよ山の中で狼煙放置なんてさ。たく、誰か知らないけれど山火事の危険性とか考えてな……」

 単身。山魔は狼煙の上がっていた場所まで行って、今家に戻ってきた所だ。
「あれ?」
 扉を開けた。
 そこに彼はいなかった。


 彼らの策は成功した。鬼子だけを呼び寄せる事に成功したのだ。
 直接人が出向けばそこで戦闘になったかもしれない。ファミリアーを介した故。山の魔を引き離す策を仕込んだ故。全ての要素が機能して――今ぞここに有意な戦況は造り出された。彼が居なくなったことに気付いた山魔がいつ来るかはともかくとして、だが。それまでは。
「優勢を維持――処分敢行する」
 シフトが機動。鬼子へと肉薄し、繰り出すは打撃技。
 長き腕が鬼子の首筋を狙う。容赦はしない。目的とするは殺害、その一点だけなのだから。
「ぬッ……!」
「大人しくしろ、なんて事は言わない。……精々抵抗すると良い」
 シフトの攻撃を鬼子は腕でガード、すると同時に。その脇腹へとウィリアムの魔術が放たれる。
 縄だ。オーラで出来たマジックロープが鬼子へと直撃する。事前に付与した神秘との親和性を向上させる魔道にもよって、その威力は飛躍的に上昇。
「三つの命を奪った以上、情けは掛けられません。必要も、ない」
「俺にとっちゃあバトルできりゃ文句はねぇがな……誰それ殺そうが復讐だろうが自由だぜッ!」
 更にそこへ聖夜とO. R. C.が追撃を仕掛ける。身動きのとり辛い所へ、踏み込んだ聖夜が武具として所持する触手にて一撃。後を踏まえぬ捨て身のそれは鬼子の芯を弾かんと強烈だ。
 身体が後方へ揺らぐ。と同時。O. R. C.のトンファーがその後頭部を撃ち抜いた。
 後方へ倒れかけていた身が今度は前へ。周囲を数の差から包囲されているが故の状況だ。前も右も左も後ろも。どこにも鬼子の優位となる状況は無く。
「チッ!」
 されど諦めず状況を打破せんと繰り出すは肘。全員を纏めて攻撃しうるような技能を鬼子は持っていない。故に地味であろうとも一人ずつ討とうと身を翻し、力を込めて周囲に挑む――が。
「――逃がしません」
 そこへメドの魔弾が降り注ぐ。そう、無論の事遠距離攻撃に徹する者もいるのだ。彼や、あるいはポテトもそうである。交わる魔弾は十字に至りて。鬼子の動ける範囲を更に絞っていく。
「……為すべき事を、為すさ」
 そして奉明も同様に。引き抜いた呪符の山は奉明の周囲を、円を描く様に舞って。
 指の動きと共に流れ飛ぶ。針の様に変じた符は毒の性質を得て、突き抜けるように鬼子へと向かい――直撃。されば。
「覚悟は、あったのだろう……?」
 先と同じ言葉を呟く。それは鬼子に対してか、それとも誰に対してでもなく空へと放ったか。はっきりとはしないが。
「ならば……例え畜生からの依頼とて報いは受けてもらう。お前は『そう』してしまったのだから……」
 奉明は確かに口を動かす。思わず零れ出た『畜生』という言葉は心の奥から出たそれかもしれない。迫害。軽蔑。なぜそうした。要ると思いて産み落とし、要らぬと断じ打ち捨てて。
 畜生。それ以降の感情を奉明は封じる。殺すのだ。鬼子と呼ばれた者を、淡々と。平静に。無情に。

 それが――っ……

 今ぞ求められる、役割なのだから。
「悪は報いを受けるべし、ってのが世の中の常ってか……ぼくとしては君に思う所が無い訳じゃないけどね」
 それでも、と。毒符を引き抜く鬼子へと攻撃を重ねるはアンネリースだ。身に巻き付く黒き包帯が彼女の魔力を収束させる。
 彼女は本来他者の生き死ににそこまで頓着はない。かつての世界で体感した生死の狭間があまりに近かったが故だろうか。されど理不尽、不平等なる人生を過ごしたであろう鬼子に対しては些か似た『何か』を感じざるをえず。
「けどね――それでも君は殺すよ」
 放つ。巨大な魔力の放出はただそれだけで純粋な破壊力と――凶器となるのだ。
 急速に鬼子は追い詰められている。元より始まった段階から八対一。一個人としての性能も鬼子は決して彼らと比べて特別に優れている訳ではないとなれば尚更に。
「鬼子とは、なんですか?」
 瞬く間に傷を増やしていく鬼子へと語り掛けるは聖夜だ。
 鬼子は三人もの命に手を掛けている。許される事ではなく。故に、彼女は問わねばならない事があった。
「依頼主を、家の家主を、男性を。手にかけたのは貴方なのですか?」
「ああ、生きていたのはアレだったのか……そうさ。俺だが、それがどうしたッ!」
「――ッ、子までも殺めたのは何故ですかッ」
 幼き時。直接捨てた両親に留まらず『全て』に手を伸ばしたのは何故なのだ。必要はあったのか。そうまでしなければ恨みは止まらなかったのか。血が同じであれば全員殺すのか。
 教えて欲しい。鬼子と呼ばれ、理不尽があったからこそ抱いた怒りであったろうに。
「一体誰が――鬼子だったのです!」
 なぜ真に、鬼子となってしまったのだ。
 口淀む。ほんの僅か、ごく一瞬。聖夜は確かに鬼子の返答が遅れるのを感じて。
「……悪いな。これが依頼なんだ」
 直後。ウィリアムが鬼子の背後より接近。掌を彼の背に付ければ魔力を送り込む。
 それは再生能力の逆転。転じて破壊とする逆再生の力。鬼子の身を、内から破壊せんとして。
「……なんで復讐なんてしたんだよ」
 思わず漏らす。己が本心を。
「しなきゃならなかったのか。どうしても駄目だったのか? もう一人と静かに暮らしていれば……!」
 こうはならなかった筈なのに……!
 言葉を飲み込んで。これ以上は無意味だとウィリアム自身が判断する。事情を聴いただけならば救いたいと思っていたかもしれない。復讐が行われる前ならば、道は別にもあったかもしれない。されど復讐は行われ、そして自身も依頼を受けたのならば。
「……じゃあな鬼子」
 鬼子が吐血。もはや限度も限度か。ならばと瞬時に鬼子をへと近寄ったO. R. C.が、まるで背から抱きしめるかのように力を込めて。
「気にするな」
 鬼子が語る、言葉も聞かず。
「――お前達は悪くないさ」
 頭から地へと叩きつける。スープレックス、彼風に言うならばORCブリーカー。
 全力の力を込めたそれは骨をも砕く。命を、奪った。
「貴方の因果はここで回った。それだけです。それが、この場の全てです」
 止めの魔弾を放とうとしていたメドは、その死を確認する。
 これで良し。生かす道など元よりないのだから。では、山の魔が来る前に撤退を――
「……いや。少しだけ、向こうの方が早かったみたいだ」
 アンネリースが言う。ファミリアーを介して警戒網を敷いていたが故に。
 同時、メドの耳も『それ』を捉えた。

「キッ、貴様らぁアアアアア――ッ!!」

 膨大な魔力と怒りを身に纏いながらこちらを視認した存在を。
 山の魔――ここにあり。


「ぐ、へへ! やーと来やがったか! テメェとは一度ヤってみたかったんだ!」
 戦闘の話である。と、真っ先に山魔に対応したのはO. R. C.だ。
「この男たぁ(武術鍛錬が)お盛んなんだろ? その熱い情熱、俺にもちっとお裾分けしてくれや。さもねぇとよ――」
 無理やりにでも(大事な山が)燃える夜にしちまうぜ?
 まーた下唇が乾いたので舐めた。ら、元より怒りに満ちていた山魔は更に語気を荒くして。
「下賎な豚がッ! 骨の髄まで叩き潰してくれる! 地獄で悪魔の尻でも追ってろッ!!」
「お、ぉぉう? 怒ってるのは分かるがよ、なんで怒りがそこまで強くなる!?」
 一言足りなすぎるO. R. C.だがそれはギフトの効果も混ざっているので仕方がない。特段何かの状態異常となったわけではないが、その言動と効果に思わず山魔の狙いは彼へと向く。放たれた魔力の高速弾がO. R. C.の脂肪を穿って。
「山の魔の出現を確認……秘密裏の撤収は不可能か」
 ならば戦闘だ、とシフトは再なる戦闘態勢。出来得るならば山の魔とは遭遇しない内に撤収を行いたかった所だったが……戦闘の音を聞きつけてここまで来たのだろうか? いずれにせよ奴も来たのなら。
「本機は殺戮で凡てを均す。一と二に特段の違いは無い」
 急速接近。魔法の弾丸が身を掠めながらも、跳躍。山の魔の足を止めるべく放つは牽制攻撃。
「さて。こっちの方はちょっと簡単にはいかなそうだけど……」
 さればアンネリースも続く。彼女は接近せず、むしろ超遠距離戦の構えだ。
 一定の距離から攻撃に全霊を傾けた魔術を形成する。マギシュート。所持する技能の中で最長の射程を持つその魔法陣を起動させながら。
「私と魔力戦か、いい度胸だな小娘ェッ! その火傷跡全身に増やしてやる!」
「――あ、はははは――そぉう」
 山魔と撃ち合う。先の言葉に抱いた感情は深奥へ沈め。
 山中を舞台に木々の隙間を狙い撃ちながら、魔術の交差は激しくなる。
「逃がすかァお前ら全員殺してやる! 絶対に逃がさないぞ!」
 もはや無差別と言っていいほどに手当たり次第に魔法を放つ山魔。後の消費など考えていないのだろう。怒りに身を任せて全てを消し飛ばさんとしている。
「そうまで彼を思っていたのなら」
 そこへ。魔力の渦の中へと歩を進めるのは。
「なぜ復讐などに手を貸したのですか。止めようとは思わなかったのですか……!」
 聖夜だ。彼女は思考する。常に、鬼子達の事を。常に。
 なぜ止めず、挙句に協力までしたのだ。もしかすれば、止めておこうと口にしていれば今回の事態には発展しなかったのではないか? そして、それを言うのならば復讐の主犯である鬼子ではなく、それは――
「貴女だったのではないのですか……!」
 背水の構え。これより後に退く所なしと聖夜の戦闘能力は向上し。
 往く。奔流する魔力の弾幕の中に、己が拳で対抗しながら―― 一歩一歩確実に。
「……もう何もかも遅いが、その通り。鬼子のことが大切なら、数十年も復讐に費やさせず、もっと違う……幸せな道もどこかにあった筈」
 言うはポテトだ。彼女もまた、魔弾で山魔へと攻撃を仕掛けながら。
「復讐をすれば――連鎖が続くだけだ。だから今こんな事になっている」
「なぁ、本当に静かに暮らすという選択肢はなかったのか? お前達には……」
「ぬかすな、何も知らない連中が! 彼が、彼がどれだけ痛みを忘れていなかった事か!」
 転じて反対方向。魔力の縄で山魔を拘束せんとしているウィリアムの言に彼女は反発。
 過ごした日々が、逆に復讐へと手を貸す要因となったのだと。
「そうか、なら」
 救いたいなどとは、もう言えないのだから。
 後は押し切るのみ。山魔の魔力は現状のイレギュラーズ達よりも高い能力を持っているが、それでもやはり鬼子の時と同様八対一という戦力差はカバーしきれないようだった。これが例えば鬼子も含めた八体二ならば大分話は違ったのだが。
 それは彼らの陽動の仕方が見事に嵌ったとしか言えない。徐々に。徐々にではあるが山魔の傷が増えていく。このままいけば山魔が与えるダメージよりも早く彼女が倒れるだろう。
「――憎いですか? 僕達が」
 メドだ。彼は味方の損傷が大きくなったとみるや、攻撃を止めて回復行動へと務めていた。
 短い詠唱で即座に味方の傷を癒す。被害を押しとどめ、決して山魔に味方を奪わせなければ。
「なら僕に存分にぶつけるといい。その因果は僕が受けましょう」
「ほ、ざけッ――!!」
 何が因果かふざけるな! とばかりに怒りに染まった目は赤く。メドを捉えて魔力を抱く。
 だがその瞬間を。視線が一点にだけ集中したその瞬間を。
「結局……頼れるのはこの力だけ、か」
 奉明は見逃さなかった。放った呪符が山魔の身へ張り付けば。
「異国異郷なる地なれども、山界に神留坐す御身へ恐み恐みも白す――ッ」
 陰陽道ここに在り。挙げた祝詞に結んだ印が反応し。
 ――山魔の身体を、内より穿った。
「がッ……は!」
 その身が倒れる。渦巻いていた怒りの魔力が四散していく。
 まだだ。こんな程度で、こんな程度でまだ……と彼女の目は何よりも強く訴えるが。
「否。これにて仕舞いである」
 感情を抱かず。シフトが彼女の首を潰して――終わりとした。


「おーいてて。なんで割かし俺が狙われたんだ……」
 身に覚えがない、とO. R. C.は呟く。彼は言動も合わせて山魔にそこそこ狙われた側であり、些か深い傷を負ったようだ。動きは全く悪くなかったが、これは仕方ない。
 焼肉喰いてーと軽く呟く彼を背に。
「……ま。なんだかんだあったけれど、せめてお墓でも作ろうかな」
「そうだな……どうせならば二つ分。死後まで責められる事は無い」
 アンネリースは言う。せめて最後は『鬼子』ではなく『人』として、墓でも建てようと。
 されば同調したのポテトだ。植えた花。それを己がギフトの力で著しく成長させながら。
「――ぼくは君の事、忘れないよ」

 ここに復讐の依頼は終わった。

成否

大成功

MVP

なし

状態異常

O. R. C.(p3p004042) [重傷]
豚か?オークか?いやORCだ!

あとがき

復讐はどこかで終わらなければならない。

お見事でした。大成功となります。
見事な合致が嵌った結果です。素晴らしいプレイングでした。

ご参加、ありがとうございました。

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