PandoraPartyProject

シナリオ詳細

素敵な樹液を採りに行こう

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●恵奈紋の木
 幻想某所の村の名物に、樹液ドリンクというものがある。採取の最盛期は寒暖の差が激しい春先。
 この樹液が採れるエナモンノキが多く生える村には、こんな由緒が伝えられている。

 かつて、ここが村ではなく集落程度の規模だった頃。遠い遠いところ――別の世界から、一人の山伏がやってきた。
 山伏は見知らぬ世界に来てしまったことに驚き、元の世界に帰る方法を探したものの……最終的には集落の娘を娶り、ここに腰を据えて生きることに決めた。
 子宝にも恵まれ、この土地での生活にも慣れてきた頃。まだ里の者も知らない薬草や果物はないかと、集落近くの山へ分け入った山伏。

 そこで見つけたのが、滋養豊かな樹液を流す木である。
 たまたま、冬ごもりに失敗した熊が幹に傷をつけたらしい。その傷から染み出す樹液は、これまで口にした何よりも甘く、そしてみるみる力が湧いてきた。
 山伏はこの木に『恵奈紋』という名を付けた。恵み豊かで、奈(カラナシ)のような味がして、熊の爪痕が紋のようであると。

 集落の人々は山伏の発見に喜び、滋味深き恵奈紋の樹液を飲んでは湧いてくる活力でもって集落の開拓を進めた。そうして、数年の後には集落は村へと発展したのだ。
 山伏はその他にも薬草の知識にも詳しく、人々の悩みをよく聞いた人格者だったが故に皆の推薦を受けて初代村長に就任した。

 現在ではエナモンノキの樹液の滋養強壮効果は幻想国内のみならず他国にも知れ渡っており、村の財政を潤す特産品である。
 特に、徹夜してでも研究を進めたい練達の研究者からの需要が高いとか。

【出典】『ウマい!!レガド・イルシオンご当地グルメ百選』
                      メフ・メフィート美食同好会 著

●樹液ドリンクを飲みに行こう
「皆さん!エナモンを飲める任務ですよ!」
 元気よく話を切り出したのは『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)
 エナモン、似たような響きをどこかで聞いたことがある気がするが。

 ユリーカは説明を続ける。エナモンノキ、という木から採れる樹液をエナモンというのだそうだ。
 甘くてフルーティー、滋養強壮に効果があるという樹液は、この時期が採取の全盛期なのだという。煮詰めれば甘いソースにもなり、王都では高級コース料理で肉に合わせることもあるという。飲むと不思議と目が覚めるため、学徒のお供でもある。

 ただ、一つ困ったことがある。村の若者は進学や就職で皆王都やその近郊へ行ってしまったため、残った中高年では重い瓶や採取用器具を運ぶのも一苦労なのだそうだ。
「そこで、イレギュラーズの出番なのです!」
 力のいる樹液の採取や加工作業を手伝って欲しい、という村からのSOS。報酬は樹液ドリンクやシロップの飲み放題食べ放題、パンケーキ付き。

 樹液採取の流れとしては、まず幹に孔をくり抜いて、採取用のプラグを挿す。
 その下に丈夫な瓶を固定して、溜まるのを待つ。
 採取した樹液は、近くの小屋で煮詰めてシロップやソースに加工する。ドリンクとしての瓶詰めもここで行われる。
 特にイレギュラーズの手がいる事を具体的に挙げると、
・樹液の溜まった瓶を回収する
・新しく設置する瓶を運ぶ
・樹液を煮詰める鍋をかき混ぜ続ける
 ということがメインになってくるだろう。

「村の人も分かりやすく教えてくれますから、指示通りにやればまず間違いないはずなのですよ」
 と、ユリーカが補足する。ただ、その後に続いたのは少し不穏な話で。

「一つ気を付けてほしいのですが、去年秋の山が不作だったせいで冬眠できなかったヒグマが今も里山をうろうろしているらしいのです」
 つい最近も、この近辺で特に警戒されている個体が里山を歩いていたという目撃情報があるという。
 採取中の樹液を狙ってくるか、煮詰めている甘い香りを嗅ぎつけて小屋を襲撃するのか、タイミングは全く読めない。

 この季節のクマは凄く怖いので、その準備もしておいて下さいね。と、ユリーカは村までの地図を手渡すのだった。
「あと!ボクにも樹液ドリンクよろしくなのですよ!」

GMコメント

皆様、非常~~にお久しぶりです!冬眠から目覚めた瑠璃星です。
今、カナダではメープルシロップの採取が真っ盛りだそうですよ!

◆任務内容
 幻想国内、とある村近郊の森でエナモンノキの樹液採取のお手伝いです。作業内容は上記オープニング内のものとなります。
 冬眠できなかった熊も周囲をうろついているため、これの対策もお願いします。
 空腹で狂暴になっているため、無対策ですと確実に不意打ち、もしくは急襲されると考えて下さい。

◆場所
 村近郊の森。山のふもとなので傾斜が結構あります。足元の準備はご万全に。
 加工のための小屋も森の中です。

◆敵
 ヒグマ『デカいクソババア』
 冬眠をしていなかったメスのイルシオンオオヒグマです。体高3m。
 クマとしては高齢のようですが、年を感じさせぬ力と獰猛さ、長寿からくる老獪さを備えています。
 デカいクソババアという個体名は近隣の山麓一帯の猟師達が自然に呼び始めた物。
 村近くの里山が去年の秋不作だったので冬眠せずに、腹をすかせたまま冬山をうろついていたようです。
 スキル【動物疎通】があればある程度の対話は可能ですが、彼女との交戦を回避できるかは内容次第。

◆情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • 素敵な樹液を採りに行こう完了
  • GM名瑠璃星らぴす
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年03月04日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (8人)

ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)
月夜の蒼
レナード・バニングス(p3p004694)
バーニング・レオ
ティリー=L=サザーランド(p3p005135)
大砲乙女
リナリナ(p3p006258)
湖宝 卵丸(p3p006737)
蒼蘭海賊団団長
ラヴ イズ ……(p3p007812)
おやすみなさい
ロロン・ラプス(p3p007992)
ひとかけらの海
ハロー・ハロウ(p3p008053)
アイドル系運び屋さん

リプレイ

●往こう雪道
 ローレットから来た8人の若者(?)が歩くのは、まだまだ雪深い道。もう少し先に、今回の目的地がある。
 幻想の山岳地帯にも程近いエナモン村。海洋の異変や鉄帝の戦災とも無縁な、のどかなド田舎。

「さあ、アウトドアだ。」
 声も高らかに、白銀の馬と共に進むのはルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)。力仕事とは無縁なインドア派な才媛といった風情の彼女だが、そこはそれ。
 頭を使ってテキパキとやれば、効率よく村人を手伝えるだろう。必要なものは、交流がてら貸してもらえば良い。
「襲撃しに来るヒグマとも、平和的に交流できればいいのだけれど……」
 ラヴ イズ ……(p3p007812)が、どことなく心配そうに口にした。どこかのタイミングで、やってくるとは聞いてはいる、が。

「エナモンかぁ」
 レナード・バニングス(p3p004694)の呟きが、まだ寒い冬の里山にこだまする。
「そういや、俺の世界にも似たような名前のドリンクがあったような……」
 一瞬思い出す、黒と緑の缶。だが、まあいいやと思考を切り替える。
「シロップってことはパンにつけて食えば美味そうだぜ」

 ちょっとだけ持って帰ろうかと話すレナードの言葉に続いて、ティリー=L=サザーランド(p3p005135)も頷く。
「エナモンノキの樹液、私も一度シロップを食べたことあるけど本当に美味しいのよね。とっても甘いし、一口で何日も動けるし」
 訓練の前によくいただいていたわ、と、懐かしそうに微笑むティリー。
 淑やかな印象すら与える彼女。だが、そこは幻想貴族の中でも武家に近いサザーランドの息女である。エナモンシロップの甘味は、厳しい鍛錬のお供でもあった。
「おー、樹液ドリンク!? ソース!?何だソレウマイのか?」
 甘いシロップについて語るティリーの言葉に反応したのか、リナリナ(p3p006258)がピョン、とポップアップ。
「ええ、美味しいわよ」
 ティリーからおいしい、という言葉を聞いてテンションを上げるリナリナ。 
「ウマイんだなっ!!作るの手伝う! 手伝う! リナリナ、手伝うゾッ!!」

「正義の海賊として、村人さん達が困ってるのを放っては置けないんだぞ!」
 決してエナモンに釣られたわけじゃないんだからなっ!村人さんのお手伝いと熊対策なんだぞっ!と、ツンな言動をするものの、甘い物への期待が声音から滲み出ているのは湖宝 卵丸(p3p006737)。かわいい。

 ロロン・ラプス(p3p007992)と、ハロー・ハロウ(p3p008053)も順調な足取りで歩を進めている。……ロロンに関して言えば、飛び跳ねているという形容が正しいが。

 そして見えてくるのは【Welcome to ENAMON Village!】などとでかでか書かれた看板。
 ローレットからの手伝いを待ちかねていた人々が、村へ到着したイレギュラーズへ歩み寄ってくる。

「どうもどうもイレギュラーズの皆さん!私はこの村の村長、モンジロウと申します!」
 和洋折衷の山伏のような服に身を包んだ村長が、フレンドリーに名乗った。
 なんでも、今に至るまで村を潤す財源を発見した初代村長の業績を記憶するため、代々の村長は山伏風の伝統衣装を身に纏い「モンジロウ」の名を襲名しているのだとか。
「お恥ずかしながら、若者は皆王都に行ってしまいましてなぁ。お若い人のお手を借りられて百人力というものですよ!」
 それが名高きローレットであれば尚更です。と、上機嫌で笑うモンジロウ村長。
 確かに、出迎えに出てきた村人は中年やお年寄りが多い。流石に山間の村なだけあり、皆足腰はシャッキリとしているようだが。

「村長さん。ここで立ち話していても始まらないわ。お手伝い、始めさせて欲しいのよ」
「おお、そうでしたね!こちらが樹液の器材です。お願いしますよ!」
 ローレットを褒めちぎることに始まり、更には村の由緒まで話し始めた村長へ、ティリーがやんわりと遮るように話しかける。
 村長が指し示した倉庫には、空の大瓶や金属の鍋。

 早速、手分けして器材を運ぶ手段を整えるイレギュラーズ。

「アムドゥシアス。これ、よろしくね」
 愛馬に話しかけるルーキス。シロップ作りの器材の中でも、特に重量のある金属の鍋は彼に運ばせよう。
 ラヴがウィッチクラフトで絨毯を浮かせれば、村人の中からどよめきが零れる。

 幾人かの村人も、自分で持てるだけの瓶などを持ちつつ若い来訪者を先導する。
「こっちです。雪解けで足元がゆるんでいるかもしれないので、気を付けて下さいね」
 穏やかそうな初老の女性、村長夫人が先を歩く。
「マダム、荷物が重いでしょ?安心安全の可愛い僕にお任せさ!」
 ヒグマ襲撃への心配が拭えぬハローは、それとなく村長夫人の持つ荷物を肩代わりしながら彼女より前に出る。
 獣種である自分なら、不意打ちにも咄嗟に対応ができると、自信を持っての紳士的行動だった。

 村から歩き出して20分程経っただろうか、里山でも大分標高が高くなったなと思うところに、一軒の小屋が立っていた。目立つのは太い煙突。
「こちらが、シロップを煮詰める小屋ですよ。樹液をそのまま瓶詰めするのもここでやるんです」
 村長夫人が鍵を開けた先には、大きなかまどのようなコンロが複数。ここで大鍋を使って煮詰めていく、ということらしい。

 ルーキスやラヴの運んできた大鍋を設置して、多数の空き瓶も一度下ろして準備する一行。
「よしっ!手伝うゾッ!」
 リナリナの元気な声と共に、里山のより奥での採取作業がスタートした。

●運ぼう蜜瓶
 村長夫人に案内されたのは、サトウカエデにも似たエナモンノキが並ぶ林。木には一本一本、大きな瓶が針金で括りつけられている。
 中には、ほんのりと蜂蜜にも似た色の樹液が満タンに溜まっていた。

「おー、この樹液の溜まった瓶をあっちの樹液を煮詰めてる小屋へ運ぶのか!」 
 リナリナ、理解が早い。
「お嬢さんご明察。これがちょっと重くて……」
 不甲斐ないわ、と言う村長夫人。
「大丈夫よ奥様。私達、そのために来たのだもの!」
 ティリーが自信たっぷりに言う。武門の娘たるもの、力仕事で人の役に立つのは本望だ。
 早速、手近な瓶を外して蓋をする。そして、空の瓶をセット。

「じゃあ、私は運搬をするわ」
 ラヴが浮かせた絨毯は、うまく瓶同士がぶつからない具合に包み込んでいる。
 ふよふよと宙に浮くそれは、ラヴが歩けば共に小屋へ。

「リナリナ、何往復でもやるゾッ!」
「僕だって負けないよ!」
「まあ!お嬢さん達、本当にお元気ね」
 若いって素敵ね、と、リナリナとティリー、それにハローを見て目を細める村長夫人。
 ジェットパックを装備したリナリナは一度に持てる数こそ多くはないものの、ハイペースで運搬をこなす。
 ハローは速さ任せで少し心許ないところはあるが、瓶を割らずに運べているようだった。

「銀河の~果てから~、やって来た~♪(キシャー!)甲羅の鋭い触手クマ~♪(キシャー!)じゅっ、じゅっ、樹液まみれ~♪」
「じゅっ、じゅっ、じゅえきまみれー」
 リナリナの不思議な歌が、雪残る春の林にこだまする。何故かそれを真似する村長夫人。

 そしてこちら、エコロケーションで警戒しながらも瓶の運搬を地道に手伝っている卵丸。内心、甘い香りに食欲をそそられているのだが、素直にそれを言えない。
 運ぶ瓶からはエナモンの香り。
「べっ、別に今から期待してるわけじゃ……」
 頬を赤らめながら否を唱える卵丸だが、その否へ否を重ねるようにお腹が鳴ってしまう。
「この年齢の男の子って、ふふ……」
 村長夫人、いい笑顔。

 次々に運ばれてくる、樹液で満たされた瓶。
 そのままの樹液をボトリングするのは村人に任せつつ、体力を要するシロップ作りはイレギュラーズの出番。
「へぇ、これが『スキル』ってやつか。スゲェな、魔法が苦手な俺でもこんな簡単に式神の使役が出来るなんてよ」
 レナードが使ったのは上位練達式。見るからに戦士めいて魔法とは縁遠そうな彼だが、此度使ったのは複雑な術式。だが、スキルの便利さに感動している暇はない。
「よーし、お前らよろしくな!」
 倒木や枯木を「もくじん」人型の木に変えて鍋の火の番をするよう指示を出す。いかんせん、元が木なのでヘラを持つ手がへっぴり腰なのが玉に瑕だが……。
 式神達がしっかり動き出したのを確認して、レナードは小屋の外の警備と瓶回収に加勢した。

 樹液をドクドクと大鍋に注ぐルーキス。この場を離れたレナードに代わり、簡単な指示程度なら聞くことができる「もくじん」達にも都度アドバイスを飛ばしている。
「こうやって大鍋かき回してると、悪役みたいだねぇ」
 実際炉端に立ってみると、煮詰まるにつれて粘性を増す樹液をかき回すのは重労働だ。確かに

「とっても別嬪さんじゃが……なんかこう……」
「ああ……なんかこう……」
 樹液を飲料用の瓶に詰めながら、ルーキスへは煮詰めたシロップの扱いを教えていた村人達がぽつりと呟く。
 美人だが、どこか魔女めいた雰囲気が滲み出る彼女が大鍋をかき回しているのだ。御伽噺の悪い王妃様に見えなくもない。
 周囲が使い魔めいた「もくじん」だらけ、火加減を計る精霊まで傍らに居るので尚更だ。こんなような構図のお菓子の広告が昔あった気がする……。

 煮詰められる樹液の香りが、里山の林一杯に漂う。その甘い香りを嗅ぎ付け、大きな影が林に現れた。
 通常のヒグマの倍以上はある巨体。もっふりとしたシルエット。それは紛れもなく『彼女』である。

●交渉クマー
 察知したのはレナードと卵丸、ルーキスの操るカラスと、ラヴがさっきスカウトした野鳥のファミリア達だった。

「来たよー、食料ある人は準備お願いねー」
 ルーキスは「もくじん」の一体と火元を交代して外へ。入れ替わりに、村長夫人を連れた卵丸が小屋へやってきた。 
 村人達と村長夫人を、熊が来た里山の奥とは反対の村側へ退避させるため、ルートを塞ぐように護衛に回る。
 万一のことがあってはならない。そんなことがあっては、海の男の名折れだ。
「さぁ、早くそっちの方に逃げるんだぞ……大丈夫、熊は卵丸より先には、通さないんだぞ!」

『ごるるるるるるるるる』
「おぉ気が立ってるなあ」
 ルーキスが冗談めかして呟く。
 メス、即ち女性であるが、そうとは思えぬ低い唸り声を上げるイルシオンオオヒグマ、個体名【デカいクソババア】
 原始時代の知識を持つリナリナは、この個体との交渉の糸口に心当たりがあった。
 老獪な個体ならば人間を害した場合、己の身が危ないことを理解しているだろう。つまり、反撃こそしてくれど、先制攻撃の確率は低い。
 正しく対応さえできれば、危険度は格段に落ちるだろう。幸いな事に、動物の言葉が聞けるラヴとレナードがいる。

「こんにちは、“大きなお姉さん”!」
『アタシ、ハラヘッテル』
「お腹が空いているの?うふふ……実はね、私もなの」
 レディにババアなんてお名前は失礼よねと、微笑みながら話しかけるラヴ。

「うんうんババア呼びは失礼だよね、怒る気持ちもわかるよー」
 かなり適当な相槌を返すルーキス(実年齢秘密)。当然だが、彼女はヒグマの言葉は分かっていない。

「よう、バアさ……姉さん。腹減ってるんだよな?」
「リナリナも!これ!」
 デカいクソババア改め、大きなお姉さんの前に置かれるこんがりマンモ肉と、超栄養食ファットマンズカロリー。
 空腹では聞ける話も聞けないだろうというレナードの考えだ。交渉決裂で倒すことになっても後味は悪い。

『タベモノ……クッテイイノカ?』
「ああ、姉さんの分だぜ」
 袋のままだったな、と包装を剥いてヒグマに手渡すレナード。常人では怖くて出来ない行動だ。
 差し出された棒型の食べ物の匂いを嗅ぎ、毒ではないと確信して口にするヒグマ。
 一口で平らげたら、今度はリナリナのマンモ肉へ。

「お姉さん、お腹いっぱいになった?」
 マンモの骨に残った肉に齧り付く“お姉さん”へ、落ち着いて話しかけるラヴ。ヒグマはその様子がこれまで遭遇した人間――大体や弓矢や猟銃を持って、自分や子等を追いかけ回してきた連中と全く違うことに気が付く。

「私達、今樹液を集めているのよ。良かったらご一緒にいかが?」
「姉さんは力持ちそうだし、手伝ってくれたら助かるぜ」
『ゼンブクレ』
 ヒグマの即答へ、やんわりとラヴが
「全部はだーめ。でも、仲良くするって約束してくれるなら、たっぷり貯めたのをお渡しできるわ」
「タダとは言わねえ。ちゃんと手伝ってくれた分はしっかり支払うぜ」

『……ワカッタ。ソレ、ヤル』
 レナードがもう一つ頼むのは、山に他の危険が無いかというパトロール。
「樹液も増やすからさ。頼むぜ」
『イッパイ、クエルナラ』

「おー、クマー友達になったゾッ! 警戒終了だな!!」
 ヒグマとの交渉も平和に終わった。 一件落着とくれば次はお待ちかねの……
「皆仲良くパンケーキのお時間ね!あっ、ごめんなさい……」
 思いがけず大きな声を出してしまい、赤面するラヴだった。


●味わおう甘味
「えっ!?ローレットの皆さん、あのクマなだめたんすか!?」
「このクマ、頭も良いしちゃんと食べ物渡せば大人しくしてくれるぜ」
 ヒグマを連れてきたレナードとラヴに、吃驚仰天の村人。しかし、樹液目当てに勤勉に働く姿を見て村人の警戒も若干緩む。

 あらかたのボトリングや瓶詰めを終えて撤収するイレギュラーズと村人達。
 村への帰路で聞いた話によると、最大の出荷先は練達らしい。完徹のお供ということか。

 村に戻れば女子も男子もお待ちかねのご褒美タイム。
 一足先に帰っていた村長夫人が焼いたパンケーキがお待ちかね。お供はもちろん、作りたてのエナモンシロップと樹液ドリンク。
 シロップを垂らした紅茶も、程よい甘みが疲れた身体に染みる。

「んーっ!」
 ティリーはパンケーキを大きく切り分けてあむっと一口。
「やっぱパンに合うな」
 パンケーキではなく、パンを貰ってシロップに合わせるレナード。一瞬思い出したのは遠き故郷。

 鍋をかき回したルーキスは、肩をトントンと叩いて一休み。
「活動後の甘味はまた格別だわ」

「おおっ!ウマいゾッ!」
「甘いぞ!」
 リナリナや卵丸も、甘い物にほっぺたが落ちそうになる。
 ロロンは身体丸ごとでパンケーキとシロップを飲み込んで、ハローも甘い物を心ゆくまで楽しむ。

「おーい、姉さんも楽しんでるか?」
『ウマイ、アマイ』
 レナードが村長宅の窓から身を乗り出して話しかけるのは、一緒に村まで来たヒグマだ。
 遠巻きに村人がチラ見する彼女の口元は、シロップとパンケーキのくずでいっぱいになっている。

「やっぱり……採れたてのシロップ、美味しい!」
 甘味は乙女の友、甘い物は別腹。それにしても、お腹へ消えるスピードが大分早いような……?
(パンケーキ、食べ過ぎかしら)
 内心心配になったラヴは、食べてもいいのはあと3枚だと決める。キリ良く10枚。でももうちょっと食べたい……
(……こっそりお土産に頂けるかしら?)

 そうそう、この案件を持ってきてくれた情報屋にお土産も忘れずに。
 ルーキスとティリーは、ユリーカのための樹液ドリンクを貰っていく。
「情報屋も頑張ってるしね」
「そう!ユリーカの分もね!」

「いやぁ、クマまで手なづけてしまうとは、ローレットの皆さんはいやはや凄いお人ですな!」
「もしお嫌でなければ、来年もお願いしますね」
 お腹も満腹になったところで、お土産のドリンクやシロップを手に村を後にするイレギュラーズ。
 見送る村長夫妻の横では、でっかいヒグマも前脚を振っていた。
 食べ物と引き換えに働けば追われることもないし安心して暮らせると、レナードやラヴがよーく言い聞かせておいたとか。

 心行くまでエナモンジュースを楽しんだ卵丸だが、帰宅後あることに気が付いた。
「はっ…こんなに飲んだら今晩寝れなくなる?」
 結局、寝付けたのはニワトリが鳴きだす頃でしたとさ。

成否

成功

MVP

ラヴ イズ ……(p3p007812)
おやすみなさい

状態異常

なし

あとがき

皆様、お疲れ様でした。
ヒグマとも和解したため、今後は村おこしでクマっぽいゆるキャラを作るようです。
MVPは、女心(メス心?)への配慮もあり、交渉の要となった下さったマドモアゼルへ。

ちなみに、山を挟んで向こうには獣種と飛行種が多いアカウシ村という村もあるそうですよ。

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