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シナリオ詳細

<Gear Basilica>スラムへ特攻する巨大兵器

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ゼシュテル鉄帝国首都、スチールグラード。
 この地で突如として、巨大古代兵器が暴走する事件が起こっている。
 その兵器は、歯車大聖堂(ギアバジリカ)と呼ばれ、無数の村や周辺の古代遺跡などを『捕食』する能力があり、自らを巨大な聖堂へと作り替えながら荒野を移動していた。
「どうやら、そのギアバジリカが首都スチールグラードへと進撃を始めたようです」
 水色の髪を揺らす海種の少女、『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)がローレットでイレギュラーズ達へと今回の事件について説明を行う。
 余りにも巨大な、歩く要塞ギアバジリカ。
 これに取り込まれ、洗脳された狂気の兵団『スネグーラチカ』も存在している。
 もはや一つの軍隊と化した自律兵器は今、国を喰わんと襲い掛かろうとしていた。

 対する現状の鉄帝には海洋王国外洋遠征への護衛艦隊、幻想及び天義への国境維持部隊などと大事に追われ、ギアバジリカなどに対抗する為の部隊はすぐに用意できぬ状況にある。
「ただ、鉄帝は闘技場に集まる参加者達を中心として、個人としては戦える人が少なくありません」
 鉄騎種の多いこの地では、スラム民や村人、クラース納屋・ズヴェズダー教団員、大事には当たっていない個々の軍人など、戦力として戦うことのできる者はいる。
 彼らの依頼を受け、ギアバジリカを止めることが今回の依頼となる。
「ギアバジリカは道中、様々な集落で略奪を行い、物資を補給しながら、無数のモンスターや兵隊を繰り出してきています」
 幸い、今回アクアベルが討伐を依頼するギアバジリカは己の身体の強化を優先されており、部下を一切連れてはいない。
 その分、聖堂となりかけている古代兵器の戦闘能力は非常に高くなっており、この討伐は急務となっている。
「幅30m、高さ10mほどの兵器が様々な物資を飲み込みながら、スラムへと突撃してきます」
 両腕での叩きつけ、自らの体をつかんで瓦礫の雨として投擲、両手を叩きつけての地響きといった攻撃で周囲を破壊している。
 タイミング的に、スラム入り口まで突っ込んできている為、ギアバジリカを事前に食い止めるのは難しそうだ。
 内蔵された……というか、自ら精製した連装ビーム砲や大砲を使い、周囲を破壊してくるギアバジリカを破壊したいのだが。
「さすがに大きすぎる相手ですからね……」
 現地に向かったタイミングで、スラムの男性10名程度がギアバジリカを足止めしてくれている。
 戦闘に参加していないスラム民女性らは攻撃を行わないものの、後方支援として弾薬補給、傷の手当などに当たっており、場合によっては戦闘不能になった仲間の介抱にも動くようだ。
「できるだけ、彼らを助ける為に、ギアバジリカを破壊したいところですね……」
 彼らの助けを借りれば、破壊までの所要時間は確実に早くなるが、当然ながら、重傷者が多数出てしまうのは間違いない。
 一方で、最初から彼らを離脱させれば、討伐までの時間が増し、スラムへの被害は拡大してしまう。
 どちらを選ぶかはイレギュラーズ次第。うまく立ち回り、双方の被害を抑えたいところだ。

「あとは、討伐後にスラムの人々へとサポートがあればと思います」
 破壊したバラックの修復、スラムの人々への炊き出しなど、やることはたくさんある。
 滞在時間の制限はあるが、一晩くらいであれば問題ないはずなので、できる範囲で助けてあげるとよいだろう。
「以上です。大変ですが、どうぞ、よろしくお願いいたします」
 アクアベルは丁寧に頭を下げ、この1件をイレギュラーズ達へと託すのだった。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様、こんにちは。なちゅいです。
 <Gear Basilica>の全体シナリオをお送りします。
 鉄帝のスラムを襲おうとする歯車大聖堂(ギアバジリカ)の討伐を願います。

●目的
 歯車大聖堂の撃破

●敵……歯車大聖堂
 横幅30m、高さ10mほどある自律移動要塞型古代兵器です。
 建物や機械の寄せ集めの様なジャンクとなっており、様々な物資を体に取り込み、さらに、自らの体を作り替えようとしているようです。
 現状は太い両腕とキャタピラを備え、戦車を感じさせる容姿をしております。
 並々ならぬ体力、気力を持っていますが、移動、行動するだけでもかなりの燃料を必要とするようです。

・剛腕振り回し……(A)物自域・弱点・ブレイク
・瓦礫の雨……(A)物遠域・足止・反動
・連装ビーム砲……(A)神遠貫・万能・連
・歯車大砲……(A)物遠列・業炎・飛
・大震動……(A)神遠域・万能・体勢不利・防無
・稼働し続ける歯車……(P)50%の確率で再行動・BS回復・ダメージ・ロスト

●NPC……スラムの人々
○戦闘員×10人
 スラムに住む少年~中年男性(全員鉄騎種)10名ほどがギアバジリカ破壊に協力してくれます。
 自らの体術やハンマーなどの鈍器、バズーカなどの重火器を使って足止めをしていますが、彼らだけでは厳しい状況です。
 戦闘不能となった際は非戦闘員に抱えられて戦線を離れ、以後復帰しません。

○非戦闘員×20人
 主にスラムに住む女性達です。
 戦闘員となるスラム民の後方支援に当たります。攻撃はせず、弾薬補充、手当、介護などに動き、戦闘員が戦闘不能になった際に介抱し、戦線から離脱させます。

●状況
 鉄帝内のスラム目がけ、歯車大聖堂が突っ込んできます。すでにスラムの人々が応戦を開始しております。
 多少のバラックの破壊はやむを得ないと割り切るしかありませんが、物資を略奪などして燃料としてしまいます。
 燃料は『誰かが大切にしたもの』であればあるほど良く、それを炉に溶かすことでエネルギーとしています。破壊されたバラックにも大切な物はあると思われますので、できるだけ被害を食い止めたいところです。

 事後は破壊されたバラックを立て直すなどすると、人々が喜びます。
 建築技術などに自信がない方は汁物などを炊き出しすると、今回の被害に遭ったスラムの人々は喜ぶと思われます。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • <Gear Basilica>スラムへ特攻する巨大兵器完了
  • GM名なちゅい
  • 種別EX
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年02月28日 22時15分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費150RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

アルプス・ローダー(p3p000034)
特異運命座標
セララ(p3p000273)
魔法騎士
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)
灰雪に舞う翼
グドルフ・ボイデル(p3p000694)
弓削 鶫(p3p002685)
Tender Hound
リナリナ(p3p006258)
湖宝 卵丸(p3p006737)
蒼蘭海賊団団長
カンベエ(p3p007540)
大号令に続きし者
リズリー・クレイグ(p3p008130)
暴風暴威

リプレイ


 鉄帝の町を通り、スラムへと駆けつけるローレットのイレギュラーズ達。
 すでにスラム入り口付近で始まっていた戦いを視認し、天義出身の騎士『死力の聖剣』リゲル=アークライト(p3p000442)は安堵する。
「良かった……間に合った」
 現状、外側からのスラム入り口付近でスラム民が巨大な物体の侵攻を食い止めている。
「スラムをまもれえええ!!」
「俺達の住処を、やらせるかよ!!」
 スラムは働ける男手は出払っていることも多く、数少ない居残り組の男性が総出で壁を作って食い止めていて。
「踏ん張りな。突破されたら再度だよ!」
「弾薬や回復薬はまだあるわ。欲しければ遠慮なく言って!」
 また、彼らのサポートへと動ける女性達が当たっていた。
「死者は出ていない。これ以上、被害を広げてなるものか!」
 リゲルはそう意気込むものの、そう簡単にはいかぬ事態だ。
 スラムに侵攻してきているのは、一見すれば両手を生やした戦車とでも言うべき容姿をした「建物」。
「ヒーロー達、歯車大聖堂(ギアバジリカ)は思い出を食うデカブツです」
 ピンクの髪の少女をアバターとした自立自動二輪車、『二輪』アルプス・ローダー(p3p000034)が言うように、多数の瓦礫や機械を破壊し、特に人の大切なものを糧とし、稼働する古代兵器である。
「大切な物を燃料にするだって? そんなことは絶対に許せないよ!」
 大きなリボンが特徴的な『魔法騎士』セララ(p3p000273)が迫りくる前方の物体に憤りを見せていた。
「久しぶりの大型兵器破壊ですか」
「あのゴリゴリした巨大物体がスラム突っ込む! スラム、ゴリゴリ崩壊! ソレ良くない!」
 犬の耳と尻尾を生やした旅人、『Tender Hound』弓削 鶫(p3p002685)が今回の任務を端的に話すと、野生娘の『天然蝕』リナリナ(p3p006258)が大声で猛る。
「デカブツをブッ壊すだけの簡単な仕事ってか? 悪くねえ、むしろ望むところだ」
 まるでライオンのタテガミのように白髪、もみあげ、髭を生やした『山賊』グドルフ・ボイデル(p3p000694)が山賊の剣を手に吠える。
「おめえら、気合入れていくぜえ!」
「おー、デカブツ倒すゾッ!」
「鉄帝のヒトたちを守るためにも、この機械の塊……ギアバジリカ? をやっつけないとね!」
「スラムを襲う歯車大聖堂を食い止め、やっつけるんだぞ!」
 グドルフが喝を入れるのにリナリナが合わせ、鷹の飛行種の青年、『猫さんと宝探し』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)が意欲を漏らし、湖賊を名乗る水兵服姿の『蒼海の漢』湖宝 卵丸(p3p006737)も迫る巨体討伐に本腰を入れる。
「ここは派手に行きましょう。ええ、鉄帝らしく」
「鉄帝の平和を守るため、魔法騎士セララ出撃だー!」
「ココがおかわりし放題の店でないことを教えてやりましょうか!」
 鶫、セララ、アルプスローダーが一斉に声を上げ、周囲の建物を喰らう歯車大聖堂へと立ち向かっていくのだった。


 スラムの入り口で立ち往生している状況の歯車大聖堂。
 動くだけでも相当のエネルギーを必要とする相手だが、横幅30m、高さ10mと巨大な相手な上、こうしている間にも瓦礫を炉に入れて燃料としている。
 そんな敵は両腕を振り回し、さらに地面を叩いて周囲を大きく揺さぶってきていた。
「いけええ、叩き潰せえええ!!」
「「おおおおおおおおおお!!」」
 相手の攻撃を堪え、スラムに残っていた男達がハンマーや銃砲を叩き込み、歯車大聖堂の破壊を目指す。
「飲む暇ないだろうから、薬ぶっかけるよ。しみるのは我慢しな!」
「はい、替えの武器です」
 回復に当たったり、武器や弾薬を運んだりしているのはスラムの女性達。
 例え、表立って道を歩ける力量がないとはいえ、強者こそ全てという土地で生き抜いている彼らも決して自力がないわけではない。
 近づいていくイレギュラーズ達は改めて、その攻防を直に確認して。
「スラムの住民も協力!?」
 リナリナはキャタピラ状になった足に轢かれぬように頑張ると、肉を食って気力を漲らせていく。
「……街は皆で守るもの。そうだよな」
 この戦いを目の当たりにし、リゲルは思わず奮い立ってしまう。
 非戦闘民ですらも逃げずに脅威へと立ち向かうスラム民に、大柄で豊満な肉体を持つ『荒熊』リズリー・クレイグ(p3p008130)が豪快に笑う。
「これも鉄帝の気風って奴かね。いいねえ、嫌いじゃないよ」
「臆するどころか自分で武器を取り立ち向かう、その意気や良し!」
 近世時代の侠客を感じさせる和服姿の『名乗りの』カンベエ(p3p007540)もリズリーに合わせて白い歯を見せる。
 どこで聞いたか、鉄帝人頭に火薬が詰まっていると形容された言葉があながち間違いではないのかもしれないとカンベエは感じて。
「だが、ここではそれがいい」
 そんな鉄帝人を、彼は微笑ましげに見つめる。
「悪趣味な骨董品にくれてやるには惜しいってもんさ」
 リズリーの本音に同意するカンベエは前方にいる鉄帝民へと叫びかける。
「傷も勝てば怪我の功名、名誉の負傷! 向こうが殺す気で来るなら都合が良い、死ぬ気で戦いましょう鉄帝の民!!」
 それを決起として、イレギュラーズ達は次々に叫びかける。
「ここまでよく持ちこたえてくれた。後は俺達に任せてくれ!」
 リゲルが戦いを続けるスラム民へと続けて声をかければ、非戦闘民として援護していた女性達が口々に礼を告げつつも、戦い続ける男性達を気に掛ける。
 戦いに集中し続ける者も少なくなく、皆手分けをしてスラム民へと声をかけていく。
「『誰かが大切にした物』が敵の餌になるのでなるべく物を退避させて、その後に戦闘を手伝って欲しい」
 スリックタイヤを履き、万全の準備でこの戦いに当たるアルプスローダー。
 彼女は素早くスラム民に近づき、数人単位で指示出しを始める。
 まずは、スムーズに戦線の引継ぎをせねばならない。
 その為、グドルフ、アクセルらは着の身着のままで応戦している状況のスラム民に、大切な物の避難などを呼びかける。
「お気に入りのぬいぐるみとか、家族の思い出の品、へそくり……とにかく大事な物を持って、助け合って退避するんだぞ」
 卵丸もまた呼びかけつつ、スイッチする形で一旦スラム民をこの場から離脱させる。
 セララがまずは周囲へとセララフィールドを……保護結界を展開して、スラムへの被害を抑えようとすれば、鶫は次なる攻撃の為にと眼力で相手の動きを見定める。
 主だって皆が注目するのは、キャタピラのようになった足。
 そのベルト、クローラーというべきか、その部分を切断できれば、進行を食い止められるのではと、鶫を始めとしたイレギュラーズ達は見ていた。
 そんな中で、リナリナだけは別の場所に注意を払う。
「おー、リナリナ、あのデカい腕気になった!」
 彼女はあの巨大の両側面から生える両腕の片方をもいでしまえば、全体のバランスが崩れるのではと考える。
「デカブツ、デカいだけにバランス崩せば、影響もデカいハズだゾッ!!」
 その為に、リナリナは片腕の肩や肘に狙いを定め、集中攻撃を試みることにして。
「おー、リナリナ決めた! とにかく腕1本もぎ取る!! 行くぞ、おー!!」
 イレギュラーズ達はスラム民と入れ替わる形で壁をなし、敵の全身をブロックする。
 とりわけ、今回のチームで盾となるのはリズリー、グドルフの2人。さらに、カンベエが彼らをカバーすべく身構える。
「ここは人々が生活する大切な場所だ。正義の海賊としてこの暴挙、見過ごすことは出来ないんだからなっ!!」
「………………」
 言語を操る口を持たぬ歯車大聖堂は何も語らないが、連装ビーム砲を突き付けてくるあたり、聞く耳も持たぬか、理解してなお攻撃を仕掛けてくるかといったところだろう。
「…………」
 皆が応戦を始める中、アルプスローダーは態勢を整えながらも動かず、じっと攻撃の機を待っていたのだった。


 動き出した古代兵器【歯車大聖堂】は止まることなく破壊を続け、破壊したモノを糧としながらもさらに破壊の限りを尽くす。
「…………!!」
 自ら建物を壊して、生じた瓦礫を投げ飛ばしてくる敵。侵攻を食い止める前衛陣を飛び越え、瓦礫の雨は距離を取るメンバーへと降り注いでいく。
 できる限り散開して敵の範囲攻撃に備えていたメンバー達だったが、敵は通路の両サイドを破壊しかけて攻め入っている状況。
 やはり、通路の狭さがネックとなる部分もあり、十分に散ることはできなかったようだ。
 後方で退避を促し続けていたリゲルや、敵へと距離を取って狙撃に当たろうとしていた鶫などが被害に遭ってしまう。
 中には、スラムに住む鉄騎種達も数人が瓦礫の雨を浴びていた。
 だが、彼らはすぐさま互いの傷をチェックし、傷薬を飲ませに向かわせる。
 上手く戦線を持たせ、誰も倒れずにすんでいたスラム民だが、どれだけ戦線を持たせられるかはわからない。
 後はローレット所属のイレギュラーズの力を見せつけたいところだ。
 遠距離から敵を狙っていたアクセルもまた、瓦礫の雨に巻き込まれていた。
 次なる攻撃で多数の仲間やスラム民を巻き込まれるよう距離を取ったアクセルは、空中へと破壊のルーン『H・ハガル』を描く。
 その直後、歯車大聖堂の真上へと不可避の雹が降り注ぎ、その体を凍らせてしまう。
 同じく、声掛けに当たっていた卵丸も瓦礫を浴びてしまっていたが、彼も歯車大聖堂の討伐に動き始めていた。
 まずは全体作戦の通りにキャラピラ部分を狙い、卵丸はキルデスバンカーに虹の如き七色を纏わせて波を割る様な虹色斬撃を飛ばす。
 スラムを飛ぶ煌めく虹が歯車大聖堂の体を裂き、僅かだが態勢を崩す。
 ぼやぼやしていれば、その破損すら炉に瓦礫をくべて強引に破損部位を強化という形で繋ぎ止めてしまうと思われる。
 態勢を整え直した鶫も、機動力削減の為に片側のキャタピラ上部を射程に収めて。
「履帯無しで動く戦車という例もありますが。少なくとも、踏破性はガタ落ちする筈です」
 鶫は召喚術と錬金術とを合わせたスキル『天之瓊矛』を行使し、バックパックと共に2m級霊子砲を召喚して霊子ビームを発射する。
「部品の留め金とかを狙って行きたいね」
 相手の身体はかなりの部分がジャンクで構成されており、継ぎ目となる部分は非常に多い。
 セララはまず、宣言通りに留め具となっている部分を見定める。
 しばし、正義の心を聖剣ラグナロクに託した彼女は狙った場所を十字に切り裂いていく。
「…………」
 手応えは十分。セララの刃は確実に狙った部分を切断していた。
 しかしながら、敵はその巨体もあってかまるで揺らぐ様子はない。
 ジャンクの身体であるが故に、多少の破損は他の部位で十分補えてしまうのだろう。
「トツゲキ、るら~!!」
 一方で、ジェットパックで歯車大聖堂の上部から攻撃を仕掛けるリナリナ。
 彼女はただ、手にするドリルで空を切るだけだったのだが、なぜか向かって左側……右腕の肘関節部内側を抉っていく。
 一撃で壊れるほど柔ではなさそうだが、それでも、リナリナは腕の動きが不自然になったのを見逃さず。
「おー、もっと行くぞー!」
 1人、遊撃に当たるリナリナは気合を入れて腕の破壊を目指す。
 そして、正面、グドルフ、リズリーは力ずくで歯車大聖堂の全身を食い止めていた。
 これだけ巨大なナリをした相手だが、素早く攻撃してきている。
 後手に回ったグドルフは咄嗟の判断力と火事場の馬鹿力を呼び覚ましてから、勢いをつけてから敵の脚部……キャタピラへと回し蹴りを叩き込んでいく。
 さすがに重さもあってか、クリーンヒットとまではいかないが、敵の動きは一時停止する。
「…………!」
 それでも、キャラピラは回転し、力技で前進しようとしてくる。
 リズリーは歯車大聖堂を止める為、動力を伝達しようとする露出した歯車へと手近な瓦礫をかませて。
「……っ! 舐めんじゃ、ねえぞッ! ガラクタァッ!」
 力任せにその歯車の回転を止め、リズリーは敵の動きを阻害していく。
 これだけ邪魔をされれば、敵もかなりうっとうしそうに両腕を振り払いながらも、上部の歯車を回転させて大砲を突き出す。
 その両腕の攻撃に対し、グドルフはしっかりと反撃を叩き込んでいく。
 さらに、大砲はリズリーが抑えてくれていることをカンベエは確認して。
「このカンベエの命は良く燃えるぞ! 貴様にこれが奪えるか!」
 名乗りを上げ、フル稼働して連撃を叩き込もうとする敵の注意を強く引く。
 連続殴打に加え、発射された砲弾の直撃をもろに受けたカンベエ。
 非常に威力の高い攻撃を連続して浴びた彼は何とか堪えていたが、かなり苦しそうだ。
 その時、突撃してくる青い彗星。
 相手の注意が仲間に向いている状況で、アルプスローダーが一気に力を解き放ったのだ。
 非常に高い反応力を活かした彼女の一撃で、その巨体が動きを止める。
 敵の正面にまで近づいていたアルプスローダーは恍惚状態に陥った敵目がけ、続けざまに青い彗星となって突撃していく。
「…………!?」
 渾身の連撃を受けた敵が我を取り戻すが、全身の崩壊が予想以上に早まっていたことに戸惑いを見せていたようだ。
 しかしながら、見た目にはさほど大きな崩れが見られない状況なのだから恐ろしい。
 そこで、駆けつけたリゲルも攻撃に加わって。
「力を合わせれば、きっと大丈夫! 皆でこの街を守りましょう!」
 すでに仲間達が交戦している状況へと割り込むリゲルは、まずは足止めをと銀閃煌く不殺の剣を真横に叩き込む。
 度重なる攻撃によって態勢を崩しかけていた歯車大聖堂がようやく後方へとその巨体を大きく吹っ飛ばす。
 徐々に相手の全身を痛めつける状況で、リナリナも右腕の攻撃を続けていて。
「おー!」
 戦う度に力を増していたリナリナは直接、喰らいついて噛み砕いてしまう。
 ぷらんとぶら下がる腕に、リナリナは嬉しそうににやつき、今度は本命の肩へと視線を移していた。
 さらに下、キャラピラ狙いのメンバーも攻撃にも力が入る。
「人々の生活の場に、これ以上踏み込ませないんだからなっ」
 狙ったキャタピラへと、卵丸はキルデスバンカーを突き出し、歩みを止めようとする。
「……小さな穿ちだって、何度も繰り返せば」
 杭を打ち込み続ければ、弱くなって重量を支えられなくなり、破断しないかなと卵丸は考え、さらにバンカーを打ち込む。
 アクセルも現状、大砲の直撃を受けずに済んではいる。
 仲間を巻き込まぬ位置取りを続け、アクセルは激しく瞬く神聖の光を敵に浴びせかけ、動きを止めようとする。
 再度、そこで鶫が召喚した霊子砲からビームを撃ち出し、キャタピラ上部の履帯を切断してしまう。
 動輪にそれが巻き込んで動作不良を起こすと、セララが先ほどのリズリーの行動も見ていたようで、逆側のキャタピラのローラーへと廃材を突っ込んで。
「これでどうだ!」
 再び聖剣を十字に切りつけ、こちらも完全に履帯を切り裂いてしまう。
「!?!?!?!?」
 両方のキャタピラを破壊され、動けなくなってしまった歯車大聖堂へ、イレギュラーズ達はさらに攻撃の手を強めるのである。


 歯車大聖堂は歩みこそ止めたが、依然として武装はほとんどが健在だ。
「……、…………!」
 両腕で地面を殴りつけ、振動によってこちらの体勢を崩してこようとしてくる敵に対し、遠くから何かが飛んでくる。
「間違ってイレギュラーズを狙うな!」
「敵の頭上へ弾丸を叩き込め!!」
 続々と、イレギュラーズ達の前衛メンバー後ろに、壁をなすように再びスラムの男性戦闘員達が壁をなしていた。
 彼らはこちらの前衛陣が邪魔にならぬよう援護射撃に徹してくれていた。
 その様子に、グドルフ、リゲルが笑みを零しながらも、なおも応戦を続ける。
 歯車大聖堂は態勢を崩しており、吹っ飛ばして押し戻しもできるようになってきている。
「一気にいくぜ!」
 グドルフは一度自重を乗せたドロップキックを叩き込み、態勢を崩した歯車大聖堂を大きく後方へと飛ばす。
「よし、デカブツはもう動けねえ、後は炉だ!」
「炉は……」
 グドルフが叫び、リゲルが透視で敵の内部を探りながらも、星凍つる剣の舞を浴びせかけていく。
 敵は周囲に瓦礫がないところまで押し戻された状況。
 動きたくともキャタピラを破壊され、その強化もできない。状況としては詰みに近いはずだ。
 後は自壊を待つこともできるが、そこからビーム砲や大砲を撃たれてはたまらない。
「ぶっ壊してやるよッ……!」
 カンベエのカバーに甘えながらも、リズリーは念の為とブロックの態勢を取り続けながらも、動けるときには全力で炉を包む部分を殴りかかっていく。
 敵はまだ攻撃態勢を解いてはいない。連装ビーム砲に貫かれながらも、カンベエは叫ぶ。
「まだ戦える者は大切な物があるなら、死んでも離すな! 喪失は死と同義と思え!」
「おうともさ!」
「イレギュラーズに続けええ!!」
 カンベエは銃弾、砲弾などで援護してくれるスラム民へと呼び掛け、応戦を続ける。
 だがしかし、敵も死に物狂いで攻撃を行ってくる。
 さらに叩き込まれる大砲を身体で受け止めたカンベエは意識を失いかけながらも、パンドラの力を使ってその場に踏みとどまった。
「わしもこんなところで、死ぬわけにはいかないですからね!」
 カンベエはこの依頼を聞きつけ、トンボ返りで鉄帝へと一時的に戻ってきただけ。
 海洋では、見るべき絶望の青の果ての道をもうそこまで、つかみかけている状況なのだ。倒れるわけにはいかない。
 直後、アルプスローダーが青い彗星となって連撃を加える。
「この攻撃がまかり通るのは、カンベエさんに守って戴けているからですね!」
 全力で攻撃を叩き込める場を作ってもらったことを、アルプスローダーは喜ぶ。
 しかし、連撃もここまで。
 気力はこれ以上続かず、あとはヒット&アウェイで攻撃を繰り返そうとアルプスローダーは考える。
 それでも、アルプスローダーの攻撃は相当歯車大聖堂にとって、大きな痛手となったはず。
 キャタピラを切断され、全身を大きく崩した敵は攻撃手段をも少しずつ奪われてきていた。
「お前の相手は卵丸なんだからなっ!」
 後方のスラム民に意識がいかないよう、卵丸は相手を引きつけながらも、素早さを活かして突撃して。
「喰らえ、音速の一撃だっ!」
 速度を力に変え、卵丸はボロボロになってきていた敵へと杭を叩き込んでいく。
 ぼろぼろといえば、リナリナは執拗に敵の右肩の関節を狙っていた。合間に、アクセルも援護攻撃を行っていたようだ。
「脇の下はデリケートに違いないゾッ!」
 肩上部は装甲がかなりがっちりとしており、リナリナはその下部、護りが薄い部分を殴り続ける。
 すでに肘は壊れて、ぷらんぷらんと揺れている。ガードもままならないはずだ。
「るららぁ~~~!!」
 全身の力を雷撃に変換し、リナリナはハンマードリルを思いっきり脇の下へと打ち込む。
「仕上げ、るら~!」
 仲間達が攻撃を続ける中で、リナリナはぷらんぷらんと振り子のように揺れる手を抱え、思いっきり自身の体を回転してねじ切ってしまう。
 両腕で釣り合いが取れていた敵の身体が大きく左へと倒れかけた。
 剛腕での一撃はこれで防げたが、まだ敵の砲撃や左腕での攻撃は生きている。
 やはり、炉を壊さねば歯車大聖堂は止まらないと、皆、認識を新たにして攻撃を続ける。
「取り込んだものを溶かしているのならば、相応の熱が漏れ出ている筈……」
 温度視覚で炉の場所を突き止めた鶫は、そこ目がけて電磁加速式重穿甲砲『金之弓箭』から砲撃を撃ち込み、炉の損壊を目指す。
 続けて、リゲル。
 現状相手は何か燃料になるものはないかと、彼は左手で必死に何かをつかもうとしている。
 ならばと、リゲルも胸元のネックレス『聖十字』を掲げて。
「これは亡き父上の形見であり、俺が当主の証として受け継いだものだ!」
 歯車大聖堂にとって、誰かにとっての大切な物であればあるほど、爆発的な燃料になるとのこと。
 そのネックレスにはリゲルの父、そして代々当主の想い、そして、リゲル自身の想いまで籠められている。
「燃料としては申し分ないだろう! ……渡すわけにはいかないがな!」
 抜き身で静かなる断罪の斬刃を刻み込み、リゲルは敵を追い込んでいく。
 右腕が壊れたことで、アクセルは全身の全ての力を魔力変換し、動力炉へと魔砲を撃ち込んでいった。
 燃費は悪い相手のはずだが、まだ体力を残すタフな相手。
「炉を狙えば、燃料ゼロに出来るかもだからね」
 集中攻撃をと、セララも透視で一度燃料の取り込み口を確認し、そこ目がけて攻撃を集中させる。
「皆の大切な物を守るため! 全力全壊! ギガセララブレイクッ!!」
 掲げた聖剣で呼び寄せた天雷を受け止め、セララは雷光を纏った全力の一撃で切りかかる。
 迸る閃光が炉を中心に撃ち込まれ、歯車大聖堂の全身にその衝撃が駆け巡る。
 グドルフが立て続けに神経毒が塗られた矢を射放ち、仕留めにかかる。
 さらにアルプスローダーがとどめをと仕掛けるが、気力が足りずに異常加速して体当たりしていく。
 衝撃を受けた歯車大聖堂の巨体は、明らかに崩壊を始めている。
 戦乙女の加護を纏った卵丸が崩れかけたその体目がけ、切る手素バンカーを突き出して。
「――ラ・ピュセル!」
「るらー!!」
 より亀裂が大きくなったところで、リナリナが急降下蹴りを叩き込み、一層崩壊を早める。
「…………!!」
 もはやなすすべのない歯車大聖堂へ、鶫が再度2.5m級展開式電磁砲を構えて。
「Jack pot――これで終わりです!」
 下手な砲撃は、相手の炉に瓦礫を落として燃料をくべてしまいかねない。
 鶫は炉の入り口を貫通するように、砲撃を放つ。
 眩い光がスラムから外へと駆け抜け、その光と共に炉の光が消える。
 ようやく、歯車大聖堂の全員がきしみ、土埃を上げてその場へと瓦解してしまったのだった。


「「「おおおおおおおおおおおおお!!」」」
 歯車大聖堂を撃破し、喚起に沸くスラム街。
 そんな人々へと、リナリナはどこからともなく取り出した多数の肉を配っていく。
「おー、とりあえず肉食え! 肉!」
 皆、美味しそうに頬張ってはいたものの、その肉だけで食欲旺盛な子供を含めたスラム民全員はカバーできないと判断し、炊き出しを行うことに。
「……炊き出しや治療に必要な水を調達してきますよ」
 アルプスローダーは自慢の機動力を生かし、何往復でも運搬に当たる構えだ。
 炊き出しはカンベエがメインに当たる。
 とはいえ、簡単な汁物に硬いパンと鉄帝風ではあるが、スラム民は十分に満足してくれた様子。
「さあさあ、怪我の少ない者は食ったらバラックの立て直しです! 休むのは後々!」
 すでに、壊された建物の修繕や倒した歯車大聖堂の瓦礫の撤去へと皆動き始めている。
「バラックを全力で立て直すぞ!」
 セララは崩れた建物の片づけから着手しており、万が一倒壊に巻き込まれた者がいなかったかと透視を使ってチェックする。
 どうやら、非戦闘員だった女性達がうまく避難させていたらしい。
 また、リゲルは瓦礫に交じって拾得したものをアナザーアナライズで解析し、元の持ち主へと返していく。
 見た目はよくわからないものでも大切な物もあり、リゲルはスラム民に感謝されていたようだ。
 リゲルはその流れで、歯車大聖堂の瓦礫もちらほらとチェックする。
 散らばる部品は歯車や蒸気機関の一部など。後は取り込んだ建物や各地で取り込んだ武器や外壁などの素材がほとんど。
 残念ながら、大きな成果は得られなかったようだ。
 とはいえ、それらの素材はスラムにとって有用なものとなりうる。
「……そうだ、山ほど建材になりそうなもんもあるし、どうせなら前より立派にしない?」
 以前よりも強固でしっかりとした建物を作ろうというリズリーの提案に、スラム民も喜ぶ。
 冬ももう終わりに近づいてはいるが、風が吹き抜けるバラックよりも質のいい住居となるなら、スラム民も大歓迎である。
「遠慮は要らないよ。逃げずに立ち向かうアンタらの勇気には、然るべき報酬があるべきだからね」
 そちらには、リズリーが率先して住居の立て直しに当たっていく。
 アクセルは持ち前の運搬性能スキルをここぞと発揮する。
 翼を羽ばたかせ、邪魔な瓦礫を運び出すアクセルは実に頼もしい。
 グドルフもまた、崩れたその中にある使えそうな部品を奪取してかき集める。
「クソ疲れてる時に建て直しも頼まれるたあな。言っておくが、おれさまは高いぜえ。ゲハハハッ!」
 そうは言ってもグドルフはアニキカゼを吹かせ、気前よくバラックの修繕に尽力してくれていたようだ。
 日が暮れかけてなお、作業は続く。
 手伝いを名乗り出たメンバー達はその後しばらく、スラム街の人々と冬の寒さをものともしない住居造りに励むのだった。

成否

成功

MVP

アルプス・ローダー(p3p000034)
特異運命座標

状態異常

なし

あとがき

 リプレイ、公開です。
 MVPは反応全振りなあなたへ。
 初見でしたが、さすがのインパクトと、
 それだけの活躍を評価させていただきました。
 今回はご参加、ありがとうございました。

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