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シナリオ詳細

<高襟血風録>千代子の恋

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 その日、都は騒然となった。
 川から死体が上がったのである。
 それ自体はさして珍しい事でもない。人が多ければ事故多く、また怨恨も多い土地柄である。一日二日ほど人々の口に上ってそれで終いだ。
 しかし、そうはならなかった。上がった死体は「バラバラ」だったのである。
 上がった死体の身元が分からぬ事も、更には次々に発見された死体の断片が明らかに一人分ではない事も都の人々が熱狂した原因である。
 警察庁は事件を躍起になって調査したが解決の糸口を見つけることも出来ず、ただ人々は猟奇的な噂を娯楽にする日々を過ごしている。

「下手人は分かっているのです」
 銀臣犀樹守柊一郎(かねおみ さいじゅのかみ しゅういちろう)は小男である。先代である父、連翹(れんぎょう)が剣聖と呼ばれたのに対して如何にも覇気がなく、なで肩を更に落として落ち着きなく扇を弄んでいる。
「母です」
 ぱちん、ぱちん、と柊一郎が扇を弾く音ばかりが響く。
 無作法であったが、額に玉の汗を浮かべキョドキョドとせわしなく視線をさまよわせる男にそれを注意するのもはばかられた。
 自分の母が今尚、被害者数が膨れ上がり続ける殺人事件の犯人であると告げるのは正気では行えまい。犀樹守という地位があれば尚更に。
「いつか、いつか破綻すると父が申しておりました。それが今です。
 母が狂い、私が貴女のような方に、暗殺を頼まねばならぬ日が来ると」
 溜息。
「おそらく父は自分が死んだ後の事を、と私に告げたのでしょうが……。
 きっと思いもしなかったでしょう。呆けた自分自身を操って母が事件を起こすなど」
 柊一郎の向かいに座したヱリカは静かに目を伏せた。
 人払いを済ませた部屋の中に耳に痛いほどの沈黙が満ちる。
「何故母がそのような凶行に及んだのかはわかりません。調べる猶予もございません」
 ぱちん。
 いつの間にか、柊一郎はヱリカを真っすぐに見ていた。
「母を、銀臣千代子を殺してください」
 銀臣犀樹守柊一郎は、先代のように覇気もなく武勇もない。
 ただ行うべき事だけは弁えた男である。
「確と」


「恋心っていうのは厄介なものだね」
 イレギュラーズを集めたカストルはそう切り出した。
「今、この<高襟血風録>の世界で起きてる事件は、銀臣千代子の恋心が原因で起きてるんだ。
 バラバラ殺人に恋なんて不釣り合いなものに見えるけどね、どうやらそうじゃないらしい」
 手に持った和綴じの本のページをめくる。そこに書かれた一文を白い指で撫でて。
「『賊の首が熟れた実が落ちるようにこぼれた。人の命が失われる悍ましい光景に、我が胸は場違いに高鳴った』……。
 要するに、千代子は連翹の殺人技術に恋をしていた、というのが真相さ」
 本を閉じる音が響く。カストルは改めてイレギュラーズを見回した。
「君たちが千代子の屋敷に向かう時は、柊一郎が手を回して屋敷の中には千代子と連翹以外誰もいないようにしてくれるから何も気にする必要はないよ。
 連翹は正気を失ってしまっていて、千代子の傷つける者を皆攻撃してくる。
 千代子も連翹ほどじゃないけど戦えるから気を付けて」
 そこまで言ってカストルは少し眉を寄せた。告げるか否か、迷うように首を振って。
「……連翹は、千代子が狂ったら自分の手で殺すと約束していたみたいだ。
 どうにかして正気に戻すことが出来たら君達の味方になってくれるはずだよ。
 君達ならきっとうまくやれる……頑張ってね」
 

NMコメント

 こんにちは、はじめまして!七志野言子です!
 チョコなのでバレンタインものです。
 シリーズものですが、前後の状況はシナリオ毎に独立しているため前作を知らない方でもどうぞご参加くださいませ。

■目的
 千代子の暗殺

■世界
 <高襟血風録>の世界です。
 ざっくりいうと江戸末期~明治初期くらいの世界観です。
 魔法もありますし、異種族も魔物も居ます。

■状況
 指定が無ければ夜に屋敷の中で千代子と連翹と相対したところから始まります。
 奇襲をかけたりする場合はプレイングで指定してください。
 日本家屋にありそうなものはだいたいあります。

■NPC
 ヱリカ
 異種族ハイカラの女性。
 柊一郎より千代子暗殺の依頼を受けた。
 イレギュラーズに対して非常に好意的で指示も素直に聞く。
 HP、物理攻撃、命中、回避、反応、機動力に優れている。

 柊一郎
 人間。連翹と千代子の息子。両親の武の才能がカケラも遺伝しなかった。
 母の乱心が外に知れると家臣団が路頭に迷うのでヱリカに暗殺を依頼した。
 依頼成功の為であればイレギュラーズの要望に応えて屋敷内の環境を整えます。

 千代子
 人間。柊一郎の実母で連翹の妻。
 連翹の剣、殺人技術に長年恋をしていた。
 欲望に対して我慢が出来ない性質で呆けた連翹を唆して連続殺人を行わせている。
 戦闘時は匕首を使用する。イレギュラーズ一人分に満たない程度の強さ。

 連翹
 人間。柊一郎の実父で千代子の夫。
 千代子の異常性を理解しつつも愛していた。
 剣聖と呼ばれた剣筋はそのままに老齢から来る呆で正気を失った。
 正気だった頃に千代子が狂った時には自分の手で殺すと約束している。
 戦闘時は刀を使用して、近距離では切りつけ、中距離には斬撃を飛ばしてくる。
 
 物理攻撃、命中、回避、CT、EXAが非常に高い。イレギュラーズ4人分以上の強さ。

■サンプルプレイング
 旦那さんを騙して連続殺人を行わせるなんてひどい!
 連翹さんや柊一郎の為にもこの事件を終わらせなくちゃ!
 夜に屋敷に忍び込んで千代子さんに奇襲を仕掛けるよ
 「旦那さん騙してるのにまさか卑怯とは言わないよね!」
 連翹さんと戦う時は、正気だった時のことを思い出してほしいって訴えかけながら戦うよ
 戦い終わったら屋敷に火をかけて千代子さんの死因を偽装するね!

  • <高襟血風録>千代子の恋完了
  • NM名七志野言子
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年03月03日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

夢見 ルル家(p3p000016)
不揃いな星辰
鶫 四音(p3p000375)
カーマインの抱擁
秋宮・史之(p3p002233)
浮草
日車・迅(p3p007500)
C級アニマル

リプレイ


 深夜。銀臣邸の前にイレギュラーズは集合していた。
 『女王忠節』秋宮・史之(p3p002233)の提案により柊一郎の命で密やかに区画ごと人払いがなされた其処は暗く、どこか空虚だった。
「人斬りの技に魅了されましたか。それもまた愛ですね。とても素敵なことだと思いますよ」
 『カーマインの抱擁』鶫 四音(p3p000375)は星明りの下で軽やかに笑った。人外である彼女にとって千代子の行いは物語を彩るほんの少しのスパイスに過ぎないのかもしれない。
「 されど見過ごす事は出来ません。其は悪ではなくとも、今を生きる者達の害に外ならぬのですから」
 その横で『求婚実績(ヴェルス)』夢見 ルル家(p3p000016) が銀臣邸の母屋を睨む。柊一郎の手によって人払いが済まされた屋敷の中でそこだけ人の気配が残っているのをルル家の鋭敏な感覚は既に捉えていた。
「すまない、我々はいつも貴殿らに頼ってばかりだ」
「いいよ。俺もヱリカさんにはお世話になってるから」
 史之は、頭を下げるヱリカに何でもないと軽く手を振る。
「……有難とう」
 掠れるような感謝の声は深い夜闇に吸い込まれるようにして消え、あとは誰が促すでもなく皆、銀臣邸の門をくぐった。

 同刻。
 月のない夜であった。音のない時であった。
 己の膝に頭を乗せて眠る連翹の頭を撫でて、千代子は何もかもが褪せた夫に囁いた。
「連翹様」
 先ほどから屋敷内に一切の人気がない。住み込みの女中も、側仕えの侍従共もいつの間にか消えていた。
「助けてください、連翹様」
 この状況とはつまり息子に己の所業が知れたのであろう。
「賊がそこまで迫っております。どうか……千代子を助けてくださいませ」
 妻の嘆願に夫は薄っすらと目を開けた。

●恋の淵
「お初にお目にかかります!
 手前、生まれは鳳圏、白尾郷! 姓は日車、名を迅と申します!
 未だ拳の真髄も掴めぬ身で挑むは蛮勇と謗られても致し方なき事なれど、此度の狂乱は許し難く!
 仁と義によってその首頂戴致します!」
 『何事も一歩から』日車・迅(p3p007500)の声が銀臣邸の中庭に朗々と響き渡る。鋭い視線の先には刀を携えた老人、連翹とそれに守られるように後ろに控えている老女、千代子が居た。
「お、お、お……」
 迅の名乗りに反応するように呻きながら砂利を踏み、連翹が中庭へと降りていく。
「千代子よ、どこへいったのだ。千代子、千代子よ……賊に攫われたのか、千代子……」
「これが剣聖?何たる有様か……」
 ルル家が愕然と呟くのも無理もあるまい。
 今や連翹の耳は迅の名乗り口上も届かぬほど閉ざされ、目は濁り立ちふさがる5人の刺客どころか、千代子の事さえ認識できているか怪しい。剣により大悟を得た者のなれの果てがこれというのは余りに惨い。
「千代子さん。一応、貴女には自害して果てるという道もありますが。どうします?」
 四音は無表情に奥に控えている千代子をちらと見るが返ってくるのは冷ややかな目線のみ。
「賊が何を言う。連翹様がお前たちなど斬り捨ててくれるわ」
「そうですか。悲しいですねえ。ふふふ」
 笑い声が場違いに響き、そして、戦いの火蓋が切って落とされた。

 誰よりも早く動いたのは迅であった。
「連翹殿!」
 一呼吸にも満たぬ間に肉薄、その勢いを余すところなく連翹に叩きつける。
 尋常であれば肉体が吹き飛ぶほどの衝撃であっただろう。しかし、その手応えは余りにも軽い。
 受け流されたのだと迅は眉を寄せ、しかし、言い募る。
「よろしいのですか!」
 もう一度、踏み出す。拳を前に叩きつける。
「このままだと約束は果たせませんよ!」
 至近距離で放たれた一撃は今度こそ連翹を捕らえ弾き飛ばし――
「連翹殿! 良いのですか! 貴方がそのままであれば拙者は千代子殿を殺します!」
 爆発した。迅の攻撃に重ねるようにして放つは情け容赦のない必殺の一撃。
「愛する者への責任と最期を、異界の他者に奪われて良しとするのか! 答えよ連翹!」
 しかし、ここで全力で頬を張ってやらねばどうにもならぬ事をルル家は覚悟していた。
「千代子、そうだ……俺が守ってやらねば……」
 その甲斐あってか連翹の瞳には理性の光が灯される。
「何処へ行ってしまったのだ。俺を呼んでいたのに……お前たちが千代子を攫ったのか……」
 しかし、それもすぐに掻き消えてまたうわ言めいた口調に戻る。
 刹那。
 ぬらりと、連翹の切っ先が動いた。決して速い動きではない。その様子を誰もがはっきりと見ていた。
 しかし、誰も止める事が出来ない。動けば必ず何者かを斬り捨てる剣聖の業。
「……お目覚めになられませ、これなるは秋宮の史之。御加護を賜りませ」
 その間合いに体をねじ込ませたのは史之である。口から漏れるは祭神へ助力を乞う祈りの言葉。文字通りその身を贄として一時の奇跡を成す。
「秋宮殿!」
 その有様に悲鳴じみた声を上げヱリカが連翹へと牽制の一撃を見舞うと、連翹はひらりと再び距離を取る。
「あはは、大丈夫だよ」
 盾をつけていない手をひらりと振る史之にヱリカは苦い表情だけを返した。
「連翹さん、貴方も妻を愛していたからこそ。道を踏み外したら斬ると約束したのでしょう」
 そんなやり取りを横目に、死体の肉を繰るように癒しの力を繰り四音は史之の傷を塞いでいく。
「そうだ、俺は千代子を愛している」
 再び、連翹が揺らぐ。
「故に、悪党にはなってくれるなと、斬らねばならぬことにはなるなと……」
 ぐるりと濁った眼球が回った。
「千代子、千代子よ。お前は約束を守ってくれた。千代子よ、俺はお前を助けねば」
「違います!」
 堪らず迅が叫ぶ。
「奥方はもう道を踏み外しておられます! 止めるのは貴方では無かったのですか! このままでは始末を付けるのは夫である貴方ではなく我らとなりますよ!」
 それはきっと良くないに決まっている。
 ツンとした表情で戦いの様子を眺めるばかりで手を出してこない連翹の妻はこの剣に恋をしているのだから。最後はこの業に斬られて終わるのが一番良いはずだから。
「本当に、それで、良いのですね!?」
 がむしゃらに突き出した拳に答えは帰ってこない。

 何合やりあったであろうか。戦いは分水嶺を迎えつつあった。
 剣聖とまで称えられた連翹の守りは固く、一撃振るたびに余裕というものがそぎ落とされていく。
 それでも史之の守りと四音の回復で戦いは拮抗していた。しかし、それもいつまでも続くものではない。
 連翹の説得をあきらめ、千代子を暗殺するという選択をせねばならぬ時が迫っていた。
「千代子殿!」
 遠間からでもたやすく首を狙ってくる剣閃を潜りながらルル家は声を叫んだ。
「貴殿の恋を否定はしません。恋の在り方に何かを言える程、拙者はそれを知りません」
 ルル家の胸には疑念があった。
 この連翹に守られるままに後ろに控えている女は本当に狂気に沈んでしまっているのか。
「されど一つだけお聞かせ願いたい。その道を貴女に唆したものはおりますか?」
 本当は純粋に恋をしているだけで、誰かの悪意によってねじ曲がってしまっただけではないのかと。それは祈りにも似た清らかな問いかけであった。
「ハッ」
 しかし、如何に、と迫るルル家を迎え撃ったのは凄絶な嘲笑であった。
 連翹に守られるばかりで、戦いの趨勢にも関わろうとしてこなかった女はただその一言で激高したのだ。
「お前に! お前に何が分かる!」
 取りすましていた千代子の顔が歪む。武家の奥方然として取り澄ました表情の後ろに隠していた感情の坩堝が晒される。
「私はこうせねばならぬのだ! 私が「あくにん」になれば連翹様は私を斬ってくれる!
 もう一度私を見つけてくれる! お前達に言われずとも! 連翹様は約束を守る方だから!」
「千代子さんも、自分の身で夫の剣を味わってみたいと思っていたのですねぇ」
 煮詰まり切った千代子の叫びに、まるでハッピーエンドを祝福する様な四音の声。そして、
「嗚呼」
 酷く冷静な嘆きが夜に溶けた。
「千代子、お前を苦しめていたのは俺だったのだな」
 剣閃が走る。命が落ちる。
 悲鳴も、おそらくは苦痛もなく絶命させる業にルル家は目を張った。
 迅は夫が妻を斬り殺す凶事に目を伏せ、史之は事の終わりに息を吐く。
 そして、観客席(一番後ろ)でそれを眺める四音は物語の終幕に微笑んだ。
 倒れ伏した千代子の顔は安らかで、きっと幸せだったのだろうから。

●愛の骸
 千代子の死体は庭に埋められることとなった。
 彼女は死人ではなく、失踪者となる事が決まっている。それが史之が柊一郎と描いた絵図である。
 それならば、部外者の立ち入らぬ屋敷の中に埋めるというのは理にかなった方法ではあった。
 皆、黙々と庭石をどけ、史之が用意したシャベルを使って穴を掘り死体を埋める。
 史之が庭石を墓標代わりにと立てると、迅は見様見真似ですがと念仏を唱えた。死後の世界であれば千代子も己の性癖に悩まされずに過ごすことが出来るだろう。
「連翹さん。一旦、柊一郎さんの所へ戻りましょう」
「よかろう。しかし……」
 史之の提案に連翹は鷹揚に頷いたが。
「妻が、千代子が居らぬのだ。どこへ行ってしまったのか……まだこんなにも暗いというのに……」

成否

成功

状態異常

なし

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