シナリオ詳細
<Gear Basilica>巨獣兵器との戦い
オープニング
●闊歩する鋼鉄の巨獣!
ゼシュテル鉄帝国首都スチールグラードに危機迫る。
突如として、歯車大聖堂(ギアバジリカ)と呼ばれた古代兵器が暴走を開始した。
この巨大な要塞とも聖堂とも形容される兵器は、無数の村や周辺の古代遺跡を蹂躙、捕食し、さらに進撃を続けている。
その進路は、首都スチールグラード向かっている。
もはやひとつの軍隊とも呼べる自律兵器は、国家そのものを喰わんとしていた――。
* * *
「退避ー! 退避ー!」
怪物であった。鋼鉄と歯車の巨獣である。
鉄帝国軍も、ギアバシリカが生み出したその怪物には対抗し得ず、後退を余儀なくされた。
四足歩行する、重量級の威容――。
長い首と尻尾を持ち、大地を響かせて荒野を闊歩する。
「バケモノめ……」
軍を壊滅させられた将校が呪うように吐き捨てた。
この巨獣は、歯車生命体ギアブラキオスと認定、呼称されると通達があった。
だから、なんだというのか……?
もはや踏み潰されるのを待つばかりの彼には、どうでもいいことであった。
歯車が回り、シリンダーが鼓動を打つ。
それは生命か? 機械か? それとも神か?
しかし、わずかに一矢報いた。
ギアブラキオスの首の下、胸部に当たる部分の装甲を魔法弾で吹き飛ばしたのだ。
後続が続いてくれることを祈り、彼は最後の祈りを捧げた。
●打倒ギアブラキオス、求む討伐隊!!
「聞いてほしいのです、皆さん!」
『新米情報屋』ユーリカ・ユリカ(p3n000003)が大慌てで冒険者たちの前にやってきた。
鉄帝国は、現在ギアバシリカの脅威に晒されている。
この移動する要塞の蹂躙も恐ろしいが、それだけではない。
併呑し、捕食したものを内部の工房(推定)で解体、再構築して新たなる兵器を生産するのだ。
そして生産されたのが、現在鉄帝軍を潰走せしめた歯車生命体ギアブラキオスである。
全長30メートル以上、恐竜という異世界の巨大生物を模したものであるという。中でも、最大級の大きさであったブラキオサウルスという種に酷似しているらしい。
らしい、というのは比較対象が存在しないからだ。
「ギアブラキオスを止めないと、また大変なことになるのです。どうにかして、止めてほしいっていう依頼です」
危険極まりない依頼である。
しかし、今やローレットも鉄帝も一蓮托生、同じ危機の延長線上にある。
協力し、危機を回避しなくてはならない。
「追加の情報ですが、ギアブラキオスの胸の当たりの装甲は吹き飛んだそうです。歯車がいっぱい回っていて、そこが弱点じゃないかって推測されているのです」
しかし、まだ推測でしかない。
歯車生命体が、通常の生命と同じ道理が通じる保証はない。
ユーリカも十分承知しているが、少しでも対抗可能となる情報がほしいところだ。
「巨体だけではなく、武器もいっぱいあるらしいです。魔法機銃とか、そういうのです」
不明な点が多いが、今はやるしかないのだ。
この機械の巨獣に挑む冒険者は、果たして……?
- <Gear Basilica>巨獣兵器との戦い完了
- GM名解谷アキラ
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2020年02月28日 22時15分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●響き渡る足音
「来るぞ……」
野戦陣地に退避した鉄帝の負傷兵がその接近を察知した。
……ズシーン、ズシーン
……ズシーン、ズシーン
遠雷のように響いてくる、その足音。
遠くからでも、山間を抜けて荒野に現れるその巨影を認めることができる。
後方に退いたというのに、兵士たちはそれだけで恐慌状態に陥る。
もはや、将校たちも逃げ惑う兵を止めようとはしない。
あれの接近に恐怖を覚えて逃亡するのは、不可抗力なのだ。
あまりにも大きさが違う。
細長い首をもたげ、ギアブラキオスがその威容を現した。
「でかい……ですね……」
まだ接近距離ではないが、『協調の白薔薇』ラクリマ・イース(p3p004247) はその大きさに息を呑んだ。
近づくたび、地響きの大きさが違ってくる。
「これはまたデカいわね……」
巨体に圧倒されたのは、『穿天の魔槍姫』フィーゼ・クロイツ(p3p004320)も同じだった。
恐怖の悲鳴よりも、感嘆の吐息を漏らすほどである。
見上げるほどの高さのギアブラキオスが近づくに連れ、その脅威が実感できる。
「百聞は一見に如かずって言うけど、実際に近くで見ると想像を超える大きさだな……」
四足歩行でこれほどのものが動くのは、『特異運命座標』羽住・利一(p3p007934)とっても想像の範疇外である。
彼が元いた世界で比較すると、平均的なバス3台分以上にもなるもがそびえて歩いてくるのだ。
「でも、感心してる場合じゃないか。これ以上被害が出る前に、全力で倒しに行くわよ」
フィーゼが仲間たちに呼びかける。
どれだけ巨大であろうが目的は、この歯車巨獣の破壊だ。
指揮が崩壊した鉄帝の兵隊たちとは違い、イレギュラーズの面々が引き下がることはない。
「ゾウとアリ、どころの差ではないな。兵器でなく、戦場でなくば、好奇心のまま調べたかったものだ」
人型カブトムシのフォルムを持つ『巨人鋼虫』六角・ボルト(p3p008022)が前進する。
ボルトもまた機械の秘宝種である。
これほどの巨体を動かす生命力あるいは駆動力には興味を惹かれるが――。
「迅速かつ丁寧に破壊である」
今、必要とされるのはボルトが口にしたことだ。
情報通り、ギアブラキオスの胸部装甲は破損し、一部脱落している。
「これが恐竜、とやらを模したものとは聞いたよ。恐ろしい竜、良い響きだ。実に興味をそそる」
『竜にあこがれて』クリスティーネ=アルベルツ(p3p008006)も、ギアブラキオスに心惹かれていた。
彼女は、竜種や亜龍種を独自に研究調査している。
攻撃を開始する前に、調査をしておきたいところだ。
科学的な分析を行なえば、歯車生命体の解析にもつながるであろう。
しかし、接近は容易ではない。
「キェェェェェェェェェェェェッ――――――ン!!」
歯車の軋みと猛りを上げ、ギアブラキオスは首を振るって吼えた。
それが合図となる。
地上に向かって、魔法機銃が掃射される。
打ち込まれた弾丸が地面で爆ぜ、たちまち土煙を巻き上げた。
「さあ――さっさと終わらせようか!」
戦いは久しぶりとなる『QZ』クィニー・ザルファー(p3p001779)であったが、この巨体に挑むために万全を期す。
魔法機銃は、両前脚、後ろ脚の付け根に計四門。
それ以外に長距離兵器の類は搭載してはいなさそうだ。
胸部装甲の剥離は、擬態の可能性……つまりは罠であることも考慮に入れて慎重に戦闘を組み立てる。
機銃を潰し、脚部を狙うという作戦が効率的かつ確実だ。
戦闘プランを練って、巨獣兵器の攻略を実行する。
●接近の攻防
「はぁ……? 30mとかデカすぎっしょ……。しかも歯車でできてるとか……」
実際でかい。
『バールマスターリリー』矢都花 リリー(p3p006541)からすると、とてもではないがありえない。
「雨が降ったらイッパツで錆び錆びじゃん……? 風が吹いたら砂噛むし……。将来的に粗大ゴミ確定だよねぇ……」
そのうえ、これを回収してくれる業者は存在するように思えない。
迷惑な巨獣兵器もあったものである。
破壊しても、巨大なスクラップという処理に困るものが荒野に放置されるのだ。
ありえない、マジありえないのである。
「誰が作ったのか知らないけど、作ったやつギルティ……もうカンペキぶっ壊しの刑だから……」
そして、リリーは切れた。
彼女は激おこするとアドレナリンが爆発するほど溢れる。
そうなったら、機銃掃射も知ったことではないのだ。
「オーホッホッホ!」
機銃の発射音に負けぬ高笑いが、荒野に響き渡る。
「このルリム・スカリー・キルナイト。偉大なる騎士への最初の一歩が巨大兵器の歯車生命体が相手だとはビックリですが……相手がなんであろうと無辜なる民を守る為なら全力を尽くす所存! 先輩の皆様よろしくお願いしますわ!」
その声の主は、『「姫騎士」を目指す者』ルリム・スカリー・キルナイト(p3p008142) であった。
高笑いとともに構えたのは、巨大な剣――。
これで機銃掃射の中を突っ切っていく。
「この大剣“ジャスティスソード!”に、斬れぬモノなしですわ!」
絶対の自信を込めてジャスティスソードを構え、ギアブラキオオスの機銃めがけて飛び上がった。
跳躍力はさすがと言っていいだろう。
ひと飛びで、前脚の付け根あたりにある魔法機銃の位置まで飛翔している。
ダッダッダッダッダッ!!
機銃がルリムを叩き落とそうと、回転式砲身を向ける。
近接防御用火器システム――CIWSというやつだ。
雨霰と弾丸が吐き出される中、なんとか一太刀浴びせる。
「砲塔部分の回転を止めれば、掃射はできない仕組みだ」
機銃の破壊を第一として、ボルトは解析結果を伝える。
「機銃は攻撃用というより、防御目的です。魔法センサーで接近するものを自動追尾して攻撃します。それは懐に入られないようにするため……やはり、懐が弱点です」
ラクリマもアナザーアナライズによってギアブラキオスの性能諸元を割り出した。
巨体によって圧倒するのが目的だが、大きいがために小回りがきかない。
接近されれば、足元や胸部装甲で覆った歯車動力源を一方的に狙われてしまうのだ。
また、脚部に寄る踏み潰し以外にも、スタビライザーの役目を果たす尻尾での薙ぎ払いも接近武器のひとつだ。
「そうなると、あの機銃からよね」
フィーゼが魔弾をギアブラキオスの死角の位置からは放った。
ルリムが飛翔斬を命中させた機銃に、狙い違わず命中させる。
これでまず一門が沈黙した。
しかし、あと三門残っている。
「まともな戦闘依頼は1年半ぶりかー…? さーて、どれだけ腕が鈍ったかな」
呟いたクィニーが、ヴァルキリーレイヴの加護を受けてやりを投擲する。
当たるか外れるか?
天運に任せた一投は、見事に命中した。
これで、機銃は残り二門となる。
「機銃はあくまでも防御用です。後方から接近しなければ脅威にはなりません」
後方二門の機銃は、現状胸部の装甲露出部分を狙うためなら放置しても問題はない。
ラクリマはそう判断して指示を飛ばした。
「なら、脚狙いだ」
ボルトのカブトムシ状の角に光が集積し、まばゆい光条が一閃する。
前脚の膝関節を狙ったオーラキャノンである。圧倒的な質量を支える膝部分の負担は大きいはず、そこに集中するのだ。
巨大兵器の運用に、四脚歩行という選択が正しかったかどうか今こそ答えが出るであろう。
さらに、光り輝く角を刃物のようにして飛び上がり、膝に斬撃を加える。
続いて、クリスティーネも攻撃をその膝に集中する。
「ま、兎も角――止めるとしようか」
マギシュートとマジックミサイルによる遠距離魔法攻撃で徹底して膝を打つ。
「機動力を殺すっていうなら、こうでしょ」
その脚を絡め取ろうと、光の縄が巻き付いていく。
利一のマジックロープだ。
ギアブラキオスが攻撃を受けて踏ん張っているうちに、動きを封じてしまおうというのである。
「デカブツは末端から倒すのが定石だべ?」
戦いの場から離れていても、変わらぬ定石というものがある。
クィニーの経験は、まだ衰えてはいなかった。
しかし、ギアブラキオスも反撃に移る。その長大な尻尾で、地面を薙ぎ払った。
「こっちよデカブツッ!!」
ルリムがその注意を引き受ける。
鞭のようにしなる尻尾が、姫騎士見習いを吹き飛ばす。
濛々と上がる土煙の中で、誰もが最悪の事態を想像してしまった。
しかし、である。
「オーホッホッホ――!!」
高笑いを響かせ、ルリムは立っていた。
すぐさま、ラクリマが回復を試みる。
それでも相当な衝撃が残っているはずだが、ルリムは巨体に向かって言う。
「……デカブツ如き、私の敵ではありませんわ!くやしい? くやしかったら私とタイマン張りなさいな!」
――いいだろう、望むならば。
まるでギアブラキオスが答えたかのようであった。
強がってはいるが、ルリムのダメージは相当なものなのだ。
「私は、所詮騎士見習いでしかない小娘です……が、騎士たる正義の心は誰にも負けません! ……うおおお! 歯車もどきが……邪魔を…するな!!」
立ちはだかってみせるルリムを、無事な一方の前脚を振り上げ、踏み潰そうとするつもりだ。
ここに、隙ができた。
状態が持ち上がり、装甲剥離部分を一斉に狙える姿勢となった。
「やっぱり、あの胸部は弱点ですわよ!」
「うん、ギシギシ軋んで音鳴ってる。やっぱ、あいつあそこが弱点っしょ……」
聞き耳を立てていたリリーが、異音を察知していた。
動力部分から、全身へ駆動を伝える歯車が噛み合っていないのだ。
そこを破壊すれば、この巨獣兵器は止まる。
「苔の一念岩をも通す。アリが勝つこともあるのだ。それを教えてやろう」
「さーてと、何が起こるやら――っとぉ!」
ボルト、クィニーがオーラキャノンとJOKER JOEを集中させる。
歯車が破壊され、滑落する。
狙いしましたフィーゼの咆穿魔槍も突き刺さった。
これで歯車は思うように回らず、さらにはハイロングピアサーで凍結させていく。
「バキバキにぶっ壊しの刑だから……。あたいを騙した罪はモアギルティだよぉ……」
あからさまな弱点は弱点でないかもしれない、そう思って警戒していたリリーは激おこであった。
止めとばかりに黄金のバールを投げ込む。
激しく軋む音がして、ギアブラキオスは片足を上げたままぐらりと横に倒れた。
黄金のバールは、ちょうど歯車の噛み合わせに引っかかり、破壊していく。
「これで、歯車の恐竜も止まったな」
クリスティーネはギアブラキオスの構造を理解している。
動力源から力を伝えるギアボックスが、あの装甲剥離部分にあったのだ。
これが破損すれば、もう動きを止めるしかなくなる。
「なら、とどめといこうか」
ボルトが光を集め、再度オーラキャノンを放つ。
もはや、耐えうる術はない。
ギアブラキオスの巨体が、地面を激しく叩いた。
破損する部品と、鉄のひしゃげる音、そして地響きと土煙が巻き起こる。
ここに、巨獣兵器の脅威は終焉を迎えたのである。
●戦い終えて
「大丈夫ですか、ルリムさん」
ラクリマが駆け寄り、癒やしを行なう。
この戦いで激しく傷ついたのは、この姫騎士見習いのルリムなのだ。
「ええ、なんとか……」
正直に言えば、全身激しい打撲でつらいのだが、姫騎士を目指す者がここで弱音を吐くわけにはいかないのだ。
「あのでかいの、ばきばきにぶっ壊したから、もう安心だよぉ……」
立ち上がるルリムに、リリーが言葉を送る。
ギアブラキオスが活動を停止したことに、ルリムも安堵を覚えた。
「しかし、相手もよくこんな派手にでかい奴を作ったわね。確かに蹂躙するなら、質量というのは理に適ってるわよね。けど……生物にしろ機械にしろ、完全無欠なんてのは無い。必ず崩せる箇所というのは存在するものよ」
戦いを振り返って、フィーゼが言う。
どれだけ巨大を誇ろろうが、こうして倒すことができるのだ。
機銃を潰し、脚を狙うことで連携した勝利と言えるだろう。
「にしても、大戦果じゃないか」
ボルトが言った。
横たわり、動かなくなったギアブラキオスの巨骸がある。
この巨大兵器を、ここで倒したのだ。
「皆様のお陰で勝てました! ありがとうございます!」
何かというと高笑いをするルリムだが、その内心は年頃の少女である。
ともに戦った仲間たちに感謝を述べ、勝利を噛みしめる。
「じゃ、引き上げましょうか」
「さて、他の戦場はどうなっているか」
利一の言葉にボルトが頷き、戦いを終えたイレギュラーズは荒野を後にするのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
<Gear Basilica>巨獣兵器との戦い、ここに完結です。
やっぱり、巨獣は脚を狙う、見事な作戦であったと思います。
この巨大な敵にも恐れることなく挑み、果敢に戦った皆様に賛辞を贈ります。
そして挑発して攻撃を引き受けたルリムさんにMVPを。
では、またどこかでお会いしましょう。
GMコメント
■このシナリオについて
皆様こんちは、解谷アキラです。
歯車大聖堂が動き出しました。
それは動き出し、生産された兵器歯車生命体とのバトルシナリオとなります。
こう、機械っぽい恐竜の玩具って燃えますよね。
・ギアブラキオス
巨大な歯車生命体です。
形状と大きさはブラキオサウルスっぽいです。
基本、質量と大きさが武器ですが接近をさせないための機銃も何門か装備されているようです。
装甲によって守られていますが、鉄帝軍が一矢報い胸部の装甲をぶっ壊しています。心臓に当たる部分には、無数の歯車が見え、弱点かもしれません。
しかし、情報は確実なものではないです。
・鉄帝軍
防衛にあたった部隊が壊滅しており、戦力として期待できません。輸送や移動、簡単な補給はしてくれるでしょう。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
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