シナリオ詳細
無念を訴えるチョコの群れ
オープニング
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『グラオ・クローネ』。
無辜なる混沌において、心温まる御伽噺の一つ。
それにちなみ、大切なヒトに贈り物をして、その絆を形にしようという風習が混沌の地にはある。
自らの想いをチョコレートに込めて伝え、あるいは互いの愛を確かめ合うことができるきっかけを与えてくれる日ともなっている。
だが、その想いは必ずしも届くとは限らない。
告白した相手に断られ、あるいは、想いを告げる直前に不慮の事故に遭って。または、甘いものは苦手だからと受け取られない数えきれないチョコ達。
無念の想いがチョコを依り代として膨れ上がり、やがて魔物となり果てる。
「ムネン、ムネンダ……」
「ツライ……、セツナイ……、クルシイ……」
「ドウシテ、ワカッテクレナイノ……?」
多数の人の形や大きな泥状の姿を取った魔物達は、自らの無念を訴えながら幻想国内の街道を進む。
やがて、街へと至った魔物達は、人々を襲い始める。
想いが遂げられることのない魔物達は街を破壊しつくす。自分達の行為が無駄だと気付くことすらできずに。
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グラオ・クローネの御伽噺は混沌出身者であれば、知らぬ者の方が珍しい。
イレギュラーズ達もこの時季になれば、深緑の大樹ファルカウと共に生きたと言われる『最初の少女』の話を見聞きする機会も多い。
それらの話が出回れば、皆、この時期が来たなと実感する。
「今年もグラオ・クローネの時期がやってまいりましたね」
普段は淡々とした態度で依頼案内することも多い『穏やかな心』アクアベル・カルローネ (p3n000045)だが、色恋沙汰は興味津々のようで、食い入るように話を聞いてくる。
「私、皆さんから聞くコイバナがとても楽しみで……」
アクアベルも年頃の乙女らしくそうした話にうっとりして、やがて自分もと考えているのだろう。
「――それはそれとして」
彼女は真顔に戻って、依頼の説明を始める。
どうやら、幻想のとある街へと体がチョコで構成されたモンスター達が侵攻しているらしい。
人の上半身が泥状に潰れたような巨大な魔物が、人の形をした無数の魔物を連れて移動しているのだという。
「便宜上、大きな方をチョコマッドと呼称しますが……、そちらは全長5mほど。自らの体を活かして相手をチョコまみれにしてきます」
また、引き連れられた人型チョコは20体ほど。ほとんどが女性に告白して玉砕した男性達の無念と思われる。
こちらは体術の他、指で摘まめるくらいの大きさをした固形、液体のチョコを散弾のようにばら撒いてくる。
ダメージは同じだが、体が汚れる分、液体の方が迷惑かもしれない。
このはた迷惑なチョコモンスターを撃破した後、戦場に散らばるチョコを集めてチョコを使ったデザート、スイーツを作るといいだろう。
「大量のチョコですからね。街の人達に振舞うことで、少しでもこの魔物達の無念が晴らせればと思います」
イレギュラーズの頼みなら、住民達の台所を貸してくれるだろうし、街の人を巻き込んでイベントのようにして提供するのもいいかもしれない。
「ともあれ、街に被害がないように討伐を願います」
アクアベルは改めて、この魔物達の討伐をイレギュラーズ達へと依頼し、頭を垂れたのだった。
- 無念を訴えるチョコの群れ完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2020年02月23日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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幻想某所の街。
チョコレートから生み出されたモンスターの群れに狙われたこの地を、ローレットから派遣されたイレギュラーズ達が歩く。
「ご協力おねがいしまーす!」
学校制服を思わせる服装をラフに着こなす『彷徨う駿馬』奥州 一悟(p3p000194)は事後の事も考えて、民家で鍋を借りていた。
「……そういや、オレの世界っつか、オレが生まれ育った国は女の子からの告白がダントツ多いんだけど、混沌は逆なのか?」
一悟が言っているのは、討伐対象の集団が成人男性のような姿を取っていたからだ。
「恨み辛みのチョコレート集団……か」
任侠の世界で生きてきた『義に篤く』亘理 義弘(p3p000398)がふと呟く。
単にフラれた恨みだけでなく、思いを遂げられなかった無念も合わさり、モンスター化してしまったのだろう。
「チョコレートの無念……。私には、よくわからないけれど。そういうのもあるんだね……」
無表情な女アサシン『黒紫夢想』アイゼルネ(p3p007580)はあまり興味なさそうに話を聞いていた。
「浮かばれなさすぎというか、やるせないというか」
薄紅の髪、褐色肌の少年の見た目をした『猫派』錫蘭 ルフナ(p3p004350)は倒すべき相手に複雑な感情を抱く。
何せ、今回の依頼は襲い来るそのチョコ集団の襲撃から街を守ることなのだから。
「なかなか頭が痛ぇな……。敵がチョコレートって所が特に、よ」
いかにも混沌の事件だが、気持ちは分からないでもないと義弘はヤクザの言うことじゃあねえがと自虐しつつ。
「その無念をぶち壊すのが俺達の仕事だ。全力で働かせてもらうとしよう」
メンバー達は義弘の意見に同意し、街の外に向かって歩いていくのである。
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予め、遭遇地点はある程度判別できている。
イレギュラーズ一行は街を出て街道を進み、その茶色の集団を出迎えることとなる。
後ろの山のような物体は一旦置いておいて、まずは手前に群がって歩く人型チョコ達だ。
「ムネン、ムネンダ……」
「ツライ……、セツナイ……、クルシイ……」
成人男性のような姿をしているそのゴーレム達の主張には少しずつ差異がある。
「こいつらの姿形はおまえさん達が言うように、バレンタインデー、いや、グラオ・クローネで玉砕した連中ってことか」
敵の群れを目にした義弘が仲間達へと声を駆けると、金髪にピンクの瞳、自称ミーティアの『今夜はグッスリ』太井 数子(p3p007907)が相手に同情を示して。
「悲しい思いをしてきたのね……」
数子もまた、以前は渡したチョコを陰で捨てられたことがあり、食べ物を粗末にするなんて最低と感じながらも自分で食べたのだとか。
「お前たち、卑屈になるんじゃない!」
いつの間にか、接近戦に備えて三角巾にエプロン姿となった一悟が敵陣へと呼びかける。
「自分から女の子に告白したってだけで、大したもんだぜ。めちゃんこ勇気があるじゃないかよ」
早速攻撃に乗り出す一悟はプレゼントとして、美少女フィギュア型【SADボマー】を人型チョコの群れへと投げ込んでいく。
「お前たちの悲しみ、無念、彼女いない歴=年齢のオレにはよーくわかる。その熱い思い、全部食ってやるから成仏してくれ!」
一悟の爆撃を受けた人型チョコ達だが、それだけでは歩みを止めず。
「「コノツラミヲ、ワカッテ……」」
悲しそうに告げる人型チョコ達は、小さなチョコをばら撒いてくる。
固形は痛いだけで済むが、液体は体を汚す上、当たりどころによっては視界や呼吸、動きを奪うことにも繋がる。
「ほんとにチョコで出来てるんだ……」
そんな攻撃を行う人型チョコの正面からアイゼルネが全力で逃れ、相手の視線が切れる位置まで移動した。
「誰も幸せじゃないよね、それ」
服が汚れるのが嫌だからとエプロン着用で戦いに当たるのは、ルフナだ。
せめて、討伐後にそのチョコの体を使って、街の人を喜ばせることで、昇華……もとい、供養ができればとルフナは距離を保ちつつチョコを浴びる仲間達の回復支援に動いて。
「得意中の得意だ、任せて」
故郷である『澱の森』の魔力を得て、ルフナは傷つく仲間達の傷痍を拒み、癒しをもたらしていく。
「気持ちはわかるけど、人に危害を加えるのは許せないわ」
敵前方へと進み出た数子は、自由なる攻勢の為に構えを取って機械剣を握る。
「その無念、私が晴らしてあげる!」
そして、彼女はその刃を至近の敵目がけて真横に一閃させていた。
「まあ、手加減や憐れみなんぞは不要」
渡す方か、受ける方か、それとも両方か。
義弘は依頼達成にはそうした行為、感情はいらないと判断し、自らの両腕を回転させて暴風域を巻き起こし、人型チョコ達へと浴びせかけていく。
アイゼルネもまたアサシンとしての本領発揮とばかりに、残像の如く影を展開しながら個別に人型チョコへと奇襲を仕掛けていた。
「ツライ、クルシイ……」
一方で、人型チョコの後ろにある巨大な物体……崩れた山のようなチョコの物体に目鼻口と両腕が付いたような姿をした、仮称チョコマッドへと注意を払うメンバー達も。
「愛に無念を残すというのは悲しい事だね」
仲間と共に人型チョコの群れを迂回する、人の形を取った獣の悪魔、『饗宴の悪魔』マルベート・トゥールーズ(p3p000736)がそんな集団を憐れむ。
「仮に叶わなかったとしても、自分の愛に誇りを持てれば良かったのに」
マルベートはチョコモンスター達を優しく諭すが、その言葉は届かない。
「それじゃあ、あの大きいのはこっちに惹きつけるよー」
そこで、近場を移動していた銀狐の獣種、『魅せたがり・蛸賊の天敵』猫崎・桜(p3p000109)が同班として移動する2人に告げる。
桜はこの後の掃除や料理に備え、ふりふりのメイド服を着用していた。
「僕、殴られると脆いから、そこはよろしくっ」
相手の気を引けるようにと、火砲を手にした桜は挑発めいた狙撃をチョコマッドの顔面に叩き込む。
「ドウシテ、ドウシテ……」
呻くように低い声を発する全長5mもあるこのモンスターが街に至れば、かなりの被害を及ぼすのは間違いない。
砲撃を受け、チョコマッドが桜へと視線を向けてチョコの弾丸を飛ばすと、その前に影が人型を取ったような姿をした『果ての絶壁』オラボナ=ヒールド=テゴス(p3p000569)が前に出て。
「愛と嫉妬の甘味に塗れても、我等『物語』は我等『物語』だ」
自我を得た『暗黒神話大系』そのものであるオラボナは淡々と言葉を並べ、物語を紡ぐ。
「想う者の為に。己を晒すのは真実の導きだろうよ。常の如くだ。貴様が恨みつらみの念ならば、悉くを受け止めて魅せよう。Nyahaha!!!」
まずは、オラボナは飛んできた弾丸をその身で受け止めようとする。
「群れるものは人の餓えか。何れにしても物語は閉ざされる」
貫通力の高い弾丸は桜にも被害を及ぼすが、それでもこの後の攻撃を通さないようにと、オラボナは立ち塞がって。
「開かれた者を嫉むのは仕方のない事か。されど。『私』は愛を掴んで在るぞ」
オラボナはチョコマッドのマークに当たり、その侵攻を阻止する。
動きを鈍らせた敵へ、マルベートも攻撃を仕掛けて。
「幸いな事に此度は私達がいる。美味しい所は綺麗に喰い尽くしてあげよう」
チョコマッドの足止めの為、マルベートは獣の眼光で相手を射抜き、その思考を奪って気を引こうとするのである。
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再び、人型チョコの相手するメンバー達。
「来なさい! 殴ってスカッとするといいわ! 殴り返すけどね……ッ!」
スキルによって再生能力を得た数子が人型チョコ達を煽ると、敵は体術で直接襲い掛かってくる。
そいつらを纏めて、義弘は暴風域を生み出して浴びせかける。
早くも体を崩す人型が出始めるが、しぶとく無念を訴えて肉弾戦で勝負を挑んでくる。
人型チョコ達を、アイゼルネは再度から狙う。
1体ずつ確実に倒す為、アイゼルネは複数の人形劇団「グラン・ギニョール」を使い、敵を奇襲し切りつけ続ける。
一悟もまた、個々に人型チョコを相手にする。
1体1体に真摯な気持ちで向き合い、彼は叩きつけた相手を炎に包んでいく。
倒して体が崩れると判断すれば、一悟はすかさずチョコを鍋で受け止める。
全部は無理でもできる限り救いとり、彼はチョコにまみれながらも安全な所へとチョコで満たされた鍋を置き、また別の鍋を持ってきていた。
「そんな攻撃じゃ、痛くもなんとも無いんだから!」
数子はある程度人型の注目を浴びており、絡まれた数体が放つ拳や蹴りを受けていた。
「相手をぶっ飛ばす時はね、こうやってやるのよ!!」
それでも、自由なる攻勢を止めることなく、彼女は機械剣を叩き込み、激しい爆発で1体を弾け飛ばす。
肉弾戦はともかく、液体チョコを飛ばす人型は厄介な相手。
仲間達が傷つけば、ルフナが迅速に癒して。
「僕の側へ。すぐに悪いものは除こう」
顔や体に受けたチョコに苛まれるメンバー数名に清浄なる火を熾して、彼は不浄を祓っていたのである。
メンバーが順調に人型の数を減らす中、チョコマッドを相手する桜はオラボナのカバーを受けつつ攻撃も仕掛けて。
「今のうちに出来るだけ削って置きたいけど、射撃は何処まで効果があるんだろ?」
距離を取りながらも、桜は「Hades03」を構えて。
「取り敢えず、溜めて痛いの行くよー!」
研ぎ澄まされた狙撃によってチョコマッドを穿ちつつ、時折相手の顔面に砲弾を浴びせて気を引く。
引き撃ちを行う桜も気掛けていたが、やはりオラボナの負担は大きい。
「さあ。物語の時間だ。貴様等の悉くを我等『物語』に叩き付けるが好い」
防御態勢を取るオラボナは、桜やマルベートのカバーとチョコマッドの抑えに注力する。
そのマルベートは出来る限り皆の負担にならぬようにと、紫雷を帯びた魔槍を両手に切りかかっていき、チョコマッドから体力を奪い取っていく。
「緑色の苦味も辛味も酸味も、舌の無い真っ赤で嚥下して哄笑(わら)って冒す。知るが好い。肉の壁とチョコレートの混沌を!」
「ツライ、ワカッテ……」
チョコマッドは叫ぶオラボナを中心にメンバーをチョコの沼へと引きずり込み、さらになぎ払いで攻め立てる。
広範囲に及ぼす攻撃が手痛いチョコマッドを抑えるのは骨だが、他班が人型を減らしたこともあり、オラボナ達も気力を振りぼるのだった。
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個々であれば、人型チョコはさほど強敵ではない。
幾度か両腕を振り回し、暴風域を出現させていた義弘は残る人型チョコが減ったこともあり、残りを他メンバーに託してチョコマッドの対処へと移っていく。
「はあ……っ! いい匂いするし、疲れてきたからお腹空いてきたんだけど……!」
甘いチョコの匂いが漂う戦場で、数子もチョコの体を切り裂き続けるが、お腹が減ってきていたようで。
「はやく倒して、栄養補給しないと倒れちゃう……」
それでも、数子が視認する人型の残りはあと僅か。
フレイムバスターで最後の1体を倒した一悟が鍋でその体を受け止め、よだれ……もとい、涙を拭きつつ、残るチョコマッドとの戦いへと赴く。
その時、仲間のカバーに当たり続けていたオラボナがチョコマッドの腕でなぎ払われ、一度意識を失いかけてしまう。
オラボナはパンドラの力に頼って堪え、自らの傷を修復しながらもチョコマッドの抑えを続ける。
なお、駆けつけた義弘が渾身の一撃を叩き込んで敵を怯ませ、侵攻を食い止めていた。
人型チョコを倒した仲間達が戦線に加わることで、オラボナの負担も減っていく。
「後ちょっとでしょ、追い上げていくよ!」
天使の声を響かせ、ルフナは仲間達を鼓舞する。
「ツライ、クルシイ……」
自らの胸の内を吐露するチョコマッドは頭上にチョコの雲を展開し、チョコの雨をこの場へと降り注がせてきた。
苦しい思いを分かってほしいと訴えるチョコマッドだが、物理的に窒息させて来ようというのが非常に迷惑な相手だ。
これ以上、余計な真似をされぬよう、桜は狙いを定めて的確な射撃でチョコマッドの体を削る。
「ごめんね、正々堂々は苦手なんだ」
敵の側面へと回り込んだアイゼルネも、劇薬を塗布した小型のナイフを投げつけた。
威力がないのが難点だが、麻痺や毒で相手を弱らせることができる。
後で毒抜きが必要かもしれないが、一気に畳みかけられるはずと、アイゼルネは無数の刃をその巨体へと突き刺していく。
「ムネン、ムネンダ……」
それだけの想いを籠めて発するチョコ弾が貫通し、誰にも受け取ってもらえないというのは、なんとも皮肉めいている。
ルフナの癒しに加え、「いわいのけーき」で態勢を立て直したオラボナは、敵の攻撃を威力に転じて触手塊を撃ち込んでいく。
さらに、チョコマッドの至近にまで潜り込んだ一悟が掌に作り出した小型の気功爆弾を直接打ち込み、起爆させることで敵を大きく怯ませて。
機を見たマルベートがとどめにと因果律を歪ませ、この場に悪意の塊を生み出す。
「果たせなかった愛を嘆く魂達よ。少しは楽しい時間が過ごせたかな?」
巻き起こる竜巻のような渦に飲み込まれるチョコマッド。
「オ、オオォォ……!」
その無念は強い力によって霧散し、ただの巨大なチョコの塊となってしまったのだった。
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チョコモンスターの群れを討伐し、イレギュラーズ達はすぐその後始末に追われることとなる。
「食べれそうな所をかき集めて食べましょう! そうしましょう!」
テンション高く仲間に呼びかける数子に続き、アイゼルネや桜が掃除ついでにできる限り食べられそうなチョコを集めていく。
残った部分は、いつか雨で洗い流される事だろう。
「何かこう……依頼後、スタッフが美味しく食べました、とかいう感じがあるね」
土で汚れて食べられなさそうなのは仕方ないので、桜は綺麗に洗い流す。チョコマッドの残骸には毒抜きも忘れない。
作業は小一時間程で済んだようで。
「後始末は終わったけど、チョコどうしよう……?」
多数の入れ物に注ぎ込まれたチョコをアイゼルネは見回す。
アイゼルネは料理ができぬとあってスイーツの店などに託す提案を持ちかけると、ちょっと考えていたマルベートが口を開く。
「チョコレートソースでも作って、街の皆におすそ分けしよう」
他にも、何か作りたいと考えるメンバーは多く。
「生チョコ? フォンダンショコラも作れそう!」
折角だから、住民にバター、卵を借りて作りたいと数子は年頃の娘らしい笑みをこぼす。
街の人の助けを借りつつ一行はメインストリートまで大量のチョコを運び、イレギュラーズと有志の住民がチョコを使ったスイーツを作り始める。
ルフナが作るは、溶けたチョコに有塩バターにミルクを混ぜたホットチョコレート。スパイスとしてシナモンやクローブ。好みが分かれるので、そちらは大人向けに。
「チョコはお菓子ばかりに使われるイメージだけど、実は肉料理にも合うんだよね」
マルベートはビターなチョコレートソースで煮詰めた牛肉や豚肉を提供する。
「ワインやバター、塩胡椒等々で味付けすれば……」
これなら、甘いものが苦手な人の口にも入るのではと、マルベートは年齢高い男性などにも振る舞っていた。
その傍らで、オラボナは持ち帰り用にとチョコレートを加工していて。
「此処からが我等『物語』の頁だ。楽しみだ。心成しか三日月(くち)の調子が好い」
自分用にと確保したチョコレートにホイップクリームと砂糖を増し増しに加え心を籠めて。
「添えた心臓(もの)の脈動は止まらない。動悸で倒れるなんて、乙女じみた言葉を吐いてやろう」
作った「けーき」を、オラボナは持ち帰る。いとおしい彼の為に。
さて、メンバー達が作る品数も増え、街の女性、子供達をメインに多数の人々が集まってくる。
数子が作った生チョコ、フォンダンショコラ、ルフナのホットチョコレートに加えて。
「色々と作ってみたのだ♪」
桜もチョコを加工し、美味しいケーキやフォンデュへと仕上げる。
一悟は鍋で掬ったチョコを溶かし、チョコフォンデュに。
「具は一悟だけにイチゴはどう?」
毒味薬も買って出た一悟は笑いながら一口食べ、皆に勧める。
多くは、女の子達が美味しそうにイチゴを口にしていたようだ。
それに興味を抱いてこちらをちらっと見ていた、ルフナに周囲からの視線が集まって。
「……何、その顔。物欲しそうな目なんて、してるわけないだろばかぁ!」
様々なチョコ料理を楽しむ仲間や町の住民を見ながら義弘は固めたチョコレートをかじり、液体の注がれたグラスを口にする。
「やはり、菓子は食べるのに限るぜ」
固まったチョコに当たれば痛いし、液体チョコを引っかけられるのもごめんだと考える義弘。
この一時の為、毒スキルを使わずに撃破したという彼は仲間達が作るスイーツもご相伴に預かっていたようだ。
悲しい想いも美味しいチョコレートへと変身して、ハッピーになっていることだろうと数子は笑みをこぼすのだが……。
「それにしても、このチョコレートのシミ、落ちるかしら……?」
服についた液体チョコに視線をやり、思わず溜息を漏らしてしまうのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPは事後を考え、借りた鍋でチョコを受け止めていたあなたへ。
今回はご参加、ありがとうございました!
GMコメント
イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
今年もやってくる『グラオ・クローネ』の陰で、
大変な事件が起きておりますので、解決を願います。
●敵……チョコモンスターの群れ
○無念のチョコマッド
全長5mほどの泥のようになったチョコの塊。いわゆるゴーレムの一種です。
某ヘドロ型のモンスターを思わせる頭と両腕だけの姿をした魔物ですが、こちらは甘いチョコの匂いを漂わせております。
・チョコの沼……(A)神自域・万能・泥沼
・なぎ払い……(A)物近列・乱れ・飛
・チョコの雨……(A)神遠域・窒息
・チョコ弾……(A)物遠貫・万能・弱点
〇無念の人型チョコ×20体
全て成人男性サイズをしたチョコ製のゴーレムです。
パンチ、キックなどの肉弾戦と、
チョコレート(液体・個体)をばら撒いてきます。
液体チョコはBSを及ぼすことがあります。
〇場所
とある幻想の街に、チョコモンスターの群れが攻めてきます。
街へと魔物達が至る前、街道上にて足止めと迎撃を願います。
事後、散らばったチョコは掃除の後、
地面に接していない部分なら料理に使えそうです。
ちょっとした手料理を皆で食べ合ってみてはいかがでしょうか。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
それでは、よろしくお願いいたします。
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