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シナリオ詳細

キャンドルケインの木の上で

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●キャンドルケイン霊樹集落
 深緑は森林迷宮北部。周囲の木々より突き抜けて高い巨大な針葉樹があった。
 季節外れのクリスマスツリーさながらに七色の魔術灯が等間隔に光る木の根元には、植物性のエレベーターが設置されている。
「外からのお客様を招くのは、本当に久しぶりなんですよ。私が産まれた頃だから……100年ほど前でしょうか」
 見た目には17か18ほどの体つきの豊かな女性が、そんなふうに言ってエレベータにイレギュラーズたちを案内した。
 見た目には四畳半程度の足場スペースがある巨大な紅葉である。それぞれの端が太い植物のつるでつながり、足場を奇妙に安定させていた。
「ようこそキャンドルケインへ。歓迎しますよ」
 つるのひとつに下がった凍ったスズランをピンとはじくと、小気味よいベルの音と共にエレベーターが上がっていった。

「キャンドルケインがいつから建っていたのか、私たちは知りません。
 リュミエ様ならご存じとは思いますが、それを知る必要を私たちは感じていないのです」
 のぼる景色は高く。ロープで吊されているだけだというのになぜだかまるで揺れはしない。風もなく、どこかほんのりと暖かい。
 ある程度まで登ると樹幹から伸びる太くたくましい枝の間に板を通した足場が広がり、子供たちが駆け回って遊ぶさまが見えた。
 金や赤色のボール状の家が並び、それぞれの外面が微発光しているのがわかる。クリスマスツリーめいた外観はこれゆえのことだったのだと、近づいてはじめて気づくだろう。
 高さが20mを越えたあたりで、誰かが落ちたら危なくないのかと訪ねた。すると女は自分の両腕についた腕輪を見せてくれた。
「キャンドルケインの恵みです。この霊樹で産まれた子供はみなこの腕輪をつけられます。腕輪は成長とともに大きくなっていって、死とともに枯れるのです。もし木から落ちるようなことがあっても、この腕輪があれば簡易的ではありますが空を飛ぶことができるのです」
 この文化的特性から、彼らは高所での生活を何世紀にもわたって続けてきたという。
「さあ、つきました」
 地上50m近い場所。キャンドルケインの最上階に通じるエリアに、イレギュラーズは通された。螺旋階段を上り、そのまま最上階へ。
「ご覧ください。空を」
 上を指さす女性。
 言われずとも、イレギュラーズたちは空の騒がしさに気づいていた。
 ギャアギャアと声をあげる、黒色のカラスたちがキャンドルケインの上空を飛び回っているのだ。
「あれは漆黒鳥といって、霊樹の葉を食うモンスターです。一年は飛行し続けられるといわれ、ああして時に霊樹の上を飛び回るのです。
 今は結界によって霊樹を維持していますが、結界も完璧ではありませんし誰かが転落した時に襲われでもすれば大変です。この鳥を倒し、追い払ってはいただけないでしょうか」

 依頼情報をまとめよう。
 全長2mほどのカラス型モンスター『漆黒鳥』は群れをなす性質をもち、近づいた対象や自分たちに敵意を向けた対象に集団で攻撃をしかける習性を持つ。
 そのうえやや狡猾で、罠や煙を使って追い払おうとしてもすぐにそれを見破ってしまうという。
 これらを追い払うには、実力行使以外にないだろう。
 手順は簡単だ。
 キャンドルケイン頂上から飛び立ち、漆黒鳥と空中で戦闘。
 ある程度の数を倒せばこちらを驚異と見なして逃げていくだろうとのことだ。
 自力で飛行する能力があればよいが、もしない場合はキャンドルケインにある『キャンドルケインの腕輪』を借りることで一時的に飛行能力を得ることができるという。

「無事に仕事を終えることができたら、夜はぜひこの集落で休んでいってくださいな。
 腕によりをかけておもてなししますよ。なにせ、100年ぶりのお客様ですもの」

GMコメント

■オーダー
・漆黒鳥の退治

 大空を舞台とした戦闘、その後は特別な景色で観光をしましょう。

■飛行戦闘
 必然的に飛行戦闘になります。
 今回は『キャンドルケインの腕輪』の加護があるため、飛行戦闘ペナルティを無視できます。
 また『簡易飛行』や『媒体飛行』でも若干のペナルティが加わるだけで戦闘が可能になります。
 どれも持っていないという場合でも、ふわふわ浮いて戦うことが可能です。

 ペナルティ度合いは『飛行(飛翔)<簡易飛行=媒体飛行<なし』といった具合です。最大で『命中・回避-15、防御技術-20』程度になります

※キャンドルケインの腕輪:霊樹の住人が産まれた頃からつける腕輪。ゲストにも付与することができ、最大で6時間まで継続できる。ただし霊樹の加護を受信するためのアイテムであるため、大きく離れると効果が消滅する。

■漆黒鳥
 群れをなす巨大なカラス型モンスターです。
 空気を圧縮して刃や弾丸にかえる能力を持ち、これによる射撃と格闘を可能とします。
 個体戦闘力はそこそこですが、群れになるとかなり大変なので【怒り】付与による引きつけには充分注意してください。

■観光
 夜は料理が振る舞われ、一晩泊まっていくことができます。
 森林迷宮の夜景はとても綺麗なのでお勧めです。
 料理は主に肉と果物の郷土料理になります。(ちなみに漆黒鳥は肉が不味いらしいので食べません)

■■■アドリブ度■■■
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用ください。

  • キャンドルケインの木の上で完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年02月21日 22時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

鳶島 津々流(p3p000141)
かそけき花霞
シャルレィス・スクァリオ(p3p000332)
蒼銀一閃
ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)
奈落の虹
アルメリア・イーグルトン(p3p006810)
緑雷の魔女
カイト・C・ロストレイン(p3p007200)
天空の騎士
言葉 深雪(p3p007952)
護りたい意思の欠片
角灯(p3p008045)
ぐるぐるしてる
シルキィ(p3p008115)
繋ぐ者

リプレイ

●キャンドルケインの木の上で
 森林迷宮を突き抜けて高い巨大針葉霊樹の頂上にて、『行く雲に、流るる水に』鳶島 津々流(p3p000141)はキャンドルケインの腕輪を両手にはめた。
 するとどうだろうか。まるで周囲の空気が彼自身を抱き上げているかのように、ふわふわと身体が浮き上がりはじめる。
「これがキャンドルケインの加護……まさか、腕輪を付けるだけで、飛べない僕でも空を飛べるなんて。
 て。感激してるばかりじゃいられない。依頼をきちんとこなさなくてはね」
「霊樹の害になる漆黒鳥の駆除……だったね」
 同じく腕輪を装着した『可愛いメイドちゃん(男)』言葉 深雪(p3p007952)は、試しに煌輝『源の黒蓮』を強く握ってぶんぶんと振ってみた。
 地上で踏ん張るときほどの安定性はないが、頭上でいまぎゃあぎゃあと言っている漆黒鳥を追い払う程度の戦いはできそうだった。
「この漆黒鳥は、霊樹の葉っぱを食べるんだったね……。逃がしたら、また戻ってくるのかな……」
「なにも、過去百年間狙われなかったわけじゃあるまいし、自分たちでも駆除できるんじゃないかな」
 案内人のハーモニア女性はとくに理由を話さなかったが、こうした時の依頼理由は大抵人手不足によるものである。たまたま戦える者が出払っていたり、いつもより数が多いので手伝いが必要だったりするときだ。
「子供たちの遊び場であることもそうだし。
 こんなに大きくて希少な大樹を荒らされるのは少し気持ちが良くはないな。
 漆黒鳥たちも何かしらこの木を狙う理由があるのだろうけど……すまないな、此処から退去していただこう!」
 『六枚羽の騎士』カイト・C・ロストレイン(p3p007200)も自力で飛び上がり、漆黒鳥たちへと挑むべく上昇していく。
 キャンドルケインの腕輪は空での戦いをサポートしてくれる。
 本来ならペナルティ効果によって動きづらくなる高所での戦闘が容易になるだけでなく、本来なら戦闘できないような飛行状態でもそれを可能にしてくれるのだ。
「素敵なご褒美も待ってるし……初めての依頼、頑張っちゃうよぉ」
 そういって箒を取り出した『特異運命座標』シルキィ(p3p008115)。
 ストンと横乗りすると、魔法の力でふわりと浮き上がった。
 そのまま旋回しながらゆっくりと上昇をかけていく。
「それにしても、わたし達が百年ぶりのお客さんなんて、びっくりだよねぇ」
 ねぇ、と首をかしげるように話を振られ、『かつての隠者』アルメリア・イーグルトン(p3p006810)は『それもそうね』と長い前髪をいじった。
「森林迷宮の中も、本当に見たことのない場所ばかりなのね。
 それにしても、キャンドルケイン……か」
 アルメリアは薬を飲んだ効果によって浮き上がり、シルキィと一緒にキャンドルケイン上空へと至った。
 見下ろすと巨大なクリスマスツリーさながらの灯りがきらめき、幻想的な森林迷宮の景色をその向こうにひろげている。
「本当にシャイネンナハトのツリーみたいだったわ、面白い構造物ね。
 こんな所を飛ぶなんて楽しそうじゃないの」
「わかるよ。昔からここは美しかった」
 『魔風の主』ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)はうっとりと風をあびながら、舞い上がる自らの身体を風にあそばせていた。
「いや、昔に遠目に見た時よりも綺麗かもしれないね。漆黒鳥が狙うのも分かる気がするよ。……そういう意味では森の営みの一部ではあるけれど、流石にこの数はちょっと困るね」
「そうね。力の強い霊樹はそれだけモンスターを集めるのかしら」
 甘い砂糖菓子にほどアリがあるまるようなもの、だろうか。
「霊樹や同胞達が傷つくかもしれないのを放っては置けないし、彼らには悪いけど別の場所へ行って貰おうかな」
 こちらに気づいた漆黒鳥たちがギラリと目を光らせ、周囲の空気を固めて刃へと変えていく。
 それが放たれる――よりも早く。
 『疾風蒼嵐』シャルレィス・スクァリオ(p3p000332)が疾風を纏って垂直に急上昇していった。
「やっぱり深緑は素敵な所だよね。漆黒鳥もここに生きる命ではあるんだろうけど……この集落に暮らす皆の為にも! 悪いけど、追い払わせてもらうよ!」
 咄嗟に放たれた空気の刃を剣によって切り裂くと、くるりと反転して漆黒鳥を蹴り飛ばす。
 同じく『ぐるぐるしてる』角灯(p3p008045)も飛び上がり、翼のような腕を広げて漆黒鳥の上をとる。
(よそ者のおれ達にも優しくしてくれる、いい人達。困ってるなら、助けないと。かも)
 角灯は空中で器用にホバリングをかけると、狙撃銃のセーフティーを解除。
 漆黒鳥へと狙いを定める。
(混沌に来て初めての戦闘依頼だから、どう動いたらいいか分からない。
 から、だけど……だからこそ。同じ状況の仲間もいるし、この機会に先輩達を見習って経験を積みたかったり。しっかり学ぶ。つもり)
 追って津々流たちが飛び上がり、漆黒鳥へと襲いかかっていく。

●空中戦
「任せてくれ!女性たちを守るのも、これぞ騎士であることの本懐とも言えよう! それに女性の体を傷つけるならば僕が傷ついた方がいいしな!」
 カイトが漆黒鳥の間を飛び回り、漆黒鳥を引きつけてはレジストクラッシュで突撃していく。引きつけられた漆黒鳥は空気を圧縮した爪で反撃するが、カイトの剣がそれをはじいた。更に斬神空波で切り裂いていく。
 斬撃によって打ち落とされた漆黒鳥とは別に、勝てないと察したのか一部の漆黒鳥が逃げ出した。逃がさないようにと魔砲を放つカイト。
 放たれた魔砲に巻き込まれ、漆黒鳥が激しくよろめく。
「狙い撃ち……かも!」
 角灯はそんな漆黒鳥に狙いを定めると、丁寧に身体を打ち抜いていった。
 直後、後方上部より迫る漆黒鳥の羽音を感知。
 素早く反転&リロード。
「息が詰まるほどの毒を贈ってやるの……」
 窒息毒の含まれた銃弾をたたき込む。
 わずかなノックバック。
 されど空圧刃を放とうと迫る漆黒鳥に、津々流が後方からマジックロープを絡めて拘束した。
 いまくからんだ魔法の縄が漆黒鳥の動きを鈍らせ、津々流はすかさずエメスドライブを発動させた。
 手のひらに文字を書き、フッと息吹をかけたその途端。『鳥』という文字をかたどった疑似生命が漆黒鳥へと襲いかかる。
 次々と打ち落としていく漆黒鳥。
 深雪は漆黒鳥たちの間にわざと割り込むかたちで通過し、『おいで』と言いながら反転。
「さあ、君の相手はこっちだよ……僕だって戦えるんだから!」
 怒りを覚えたらしい漆黒鳥たちが追いすがってくるのを確認すると、深雪は周囲に無数の気刃を形成。
「これで貫け……連鳴鈴(つらなり)!」
 放たれた漆黒鳥たちの空圧刃と交差し、空で見えない爆発を起こした。
 が、そこで止まる深雪ではない。
 爆風を無理矢理突き抜け、気であんだ刃を自らのもとへ戻し剣周囲へ集中。
 握りこんだ柄部分から赤いエネルギーラインを走らせると、密集させた刃によって巨大な剣を形成した。
「これで……!」
 集まっていた漆黒鳥たちをなぎ払うように斬り付ける。
 風圧にふきとばされないように距離をとりながらも、シルキィは空をひゅるひゅると蛇行していた。
 彼女を追って飛来する漆黒鳥。空圧刃を発射してくるが、シルキィは素早く作ったネットによって刃を受け止め、防御した。
「しつこいねぇ」
 コンッと箒を叩いて急停止&垂直反転。膝で軸にぶら下がるようにしながら漆黒鳥の真下をとると、腹めがけて指鉄砲を構えた。
 圧縮された繭弾がマシンガンのように発射され、漆黒調たちの腹へめり込んでいく。
「さ、そっちに行ったよぉ」
 射撃をうけてよろめく漆黒鳥たち。
 飛行能力があったとて、高いダメージを受けると墜落を始めるものである。
 戦場下部で待ち構えていたウィリアムは『いいとも』と爽やかに応えると、自らの周囲に大量の紋章魔方陣を展開。
 その一部を望遠鏡レンズのよに重ね合わせると、圧縮した空気を砲撃として打ち出した。
 漆黒鳥の空圧刃など比べものにならないような空圧の暴力がかれらを襲い、黒い肉体を滅茶苦茶に破壊していく。
 散った羽根が黒く空を染めるが、アルメリアはかまわず追撃。
 ウィリアムの砲撃をかわしてなんとかいきのびた漆黒鳥たちを攻撃すべく、アイススケートのように『空のレール』を走った。
 手袋の甲部分に埋め込んだ魔術媒体にアクセス。
 回路起動。安全装置解除。術式瞬間構築。――リリース。
「今日は360度いっきにいくわよッ!」
 かざした手から解き放たれる暴力的な雷の球。
 漆黒鳥たちを巻き込んだそれは一羽たりとも逃すことなく黒焦げに焼いて、キャンドルケインへと墜落させていった。
「それと、オマケっ!」
 アルメリアはターレット式魔方陣をガチャリと回して焦点を変えると、術式を熱量単発集中型に変化。わずかに息のある漆黒鳥にしっかりと火が通り、反撃しようと繰り出した空圧刃が構築したそばから解消されていく。
「だいぶ、安定しそうだね」
 ウィリアムは大量の紋章魔方陣を組み替えメガ・ヒールの術式をあちこちに飛ばし、シャルレィスへと合図を送った。
「そろそろ仕上げのタイミングじゃないかな」
「みたいだね!」
 シャルレィスは空気を圧縮したホッパープレートを次々に蹴りながら空を飛ぶと、迎撃しようと空圧刃を繰り出した漆黒鳥――の攻撃を素早くかわして上部をとった。
 剣を握り込み、周囲の風を操り始める。
「来い! 守りの剣として、私が相手だ!」
 『蒼嵐』を模したような空圧の刃が無数に生まれ、その全てが周囲の漆黒鳥へと突き刺さっていく。
 それだけではない。
 シャルレィスは剣に暴風を纏わせると、すぐそばの漆黒鳥を文字通りの八つ裂きにした。
「制圧――完了っと!」
 舞い散る羽根をバックに、キャンドルケインの枝へと着地するシャルレィス。
 戦うまえには聞こえていたあのぎゃあぎゃあという声は、もうなかった。

●キャンドルケインのごちそう
「お疲れ様でした。皆さんのお口にあえばいいですが……」
 なにぶん百年ぶりなもので。と言いながらテーブルに用意されたのは、キャンドルケインの民が腕によりをかけて作ったご馳走の数々だった。
 天井からさがった沢山のオレンジ色のミニライトが、二十人はゆうにかけられるようなサークル状のテーブルを照らしている。
 独特な民族衣装をきたキャンドルケインの民がお皿を持って、サークルの内側からシャルレィスたちの前へご馳走を置いていくといった具合だ。
「わーい、美味しいご飯だー!!」
 美味しご飯がきらいというひとはそういない。
 見るからに『マンガ肉です!』てかんじの肉を掴みあげ、大胆にかじりついてみるシャルレィス。
「はー、やわらかくっておいしい。油がしみるー」
 もっきゅもっきゅとほっぺを大きくして食べるシャルレィスを見て、津々流は
『じゃあ僕も』といって赤と黄色のストライプ模様をした洋梨みたいな果物に手を伸ばした。
 かじってみると酸味と甘みが混じり合ったフルーツの味わいとシャクっという小気味よい食感がひろがる。
「頑張ったあとの美味しい料理はやっぱり格別だねえ。ところで、この果物はなんていうんだい?」
「ペパルポロギュレですね」
「ぺぱるぽろぎゅれ……」
「そしてそっちはガチメペイニュの丸焼きですね」
「がちめぺいにゅ……」
 名前から味も姿もまったく想像がつかない二人だが、うまきゃなんでもいいやの精神でもりもり食べた。
「楽しみにしていたんだ、手料理なんて久しぶりだなあ。
 騎士として出されたものは食べ尽くす!」
 『料理をいただくことができるとのことで!』とカイトも料理に手をつけ、美味しそうに食べていく。
 主食として用意されたのは平たい円盤状のパンで、円盤の上に美しい花や鳥の模様が装飾されたものだった。
 すでに一枚ぺろっといった津々流が、まじまじと二個目をみつめる。
「こういう所でも、パンは焼くんだね……」
「魔術醸成釜は深緑ではポピュラーですよ。炎をたてずに料理に熱を通すのは、深緑ではごく当たり前……といっていいでしょうね」
「そっか。火を使ったらダメっていうところもあるらしいもんね」
 それでここまで美味しく作れるならたいした物だなあ、なんて思いながらも、シャルレィスやカイトたちはおなかいっぱい料理を堪能した。

 ずっと遠くで鈴の音が聞こえるような気がした。
 深雪は腕輪の加護をかりてキャンドルケインの上空をぼんやり漂いながら、静かな時間を楽しんでいた。
「静かで綺麗な場所でも、賑やかな場所でも無くなった故郷を思い出す……難しいよね、忘れるのって」
 ぽつりとつぶやいてから振り返ると、角灯が枝に腰掛けてなにかをもふもふ食べていた。
「やあ。それは……?」
「あ。見つかった」
 角灯はお弁当箱の中にみっちり入った大根炊きを食べていた。
「お袋が張り切ってお弁当作ってくれたの。もてなしの料理は嬉しい、けど……」
「そっか。だよね……」
 出されたものはどちらもちゃんと食べてあげたいよね。と苦笑する深雪。
 そうしていると、ウィリアムとアルメリアも同じように空へと上がってきた。
 残り数時間できれる加護を、もうすこし味わっておきたいということなのだろうか。
「いい景色だね。僕たちが守った夜景だ」
「ここから私の家、見えるかしら。……さすがに見えないか」
 夜のとばりに包まれた森林迷宮は、昼間の色鮮やかな風景とちがってどこか黒い海のようにも見えた。
 そんななかでひときわキラキラと美しいキャンドルケインを振り返りながら、ほうっと息をつく。
「こんなに高いところから夜の森林迷宮を見たことはなかったわ……。綺麗ねぇ」
「この景色を守ったんだって思うと、これからも頑張れそうな気がするよねぇ」
 会話に交じって、シルキィが箒にまたがって登ってきた。
 高い高い木の上から眺める世界は、知っているはずなのに新鮮で、なじんだはずなのにソワソワする。
 この世界にはまだ知らない場所がいっぱいあるのだと、教えてくれているようで……。
「初めてのお仕事が、ここので良かったぁ」
 シルキィはほっこりと微笑んで、おなかとこころをいっぱいにした。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete

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