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シナリオ詳細

吸血鬼へ至る物語

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●吸血鬼へ至る物語
「美しいお嬢さん。私と甘い一夜をいかがですか」
 そう女性に声をかけたのは端正な顔立ちをした青年だった。
 月明かりのもと、その肌の色は透けるように白く長身痩躯ですらりとした外見は、まるで現実感のない美青年。
 声をかけられた女性は一目で恋に落ちる音がした。
「さぁ、どうぞこちらへ」
 青年は女性をそっと腕の中に抱きしめる。
 そして――……。
「嗚呼、とても――――美味しそうだ」
 女性の首に、牙を突き立てた。

●噂話
「……っていう噂話があるんだけどさ」
 『L.Lの立証者』ヴァン・ルドゥレジィ(p3n000019)が集まったイレギュラーズたちへそう語る。彼は独自の情報網から街の噂を聞きつけていた。
 月光の明るい夜。どこからともなくふらりと現れる青年の噂。何でも見目麗しくひとりでいる女性に声をかけ、甘い夜をもたらした後、最後にはその血を残らず吸い取ってしまうらしい。
「実際に血を抜かれて殺された女性の被害情報はあるんだ。でも、あくまでわかっているのは噂話程度だから、そいつの詳細はわからない。だから、頑張って調べてね」
 ヴァンは事も無げに、ひらひらと手をふって笑ってみせた。
 手元にある情報は、月明かりが明るい夜に出没し、女性に声をかけ、血を吸い取るということだけ。攻勢になったとき、どのような手段を用いて抵抗してくるかわからない。もしかしたら分身したり、手下を呼び出すこともあるかもしれないし、さっさと逃げ出してしまうかもしれない。しかしそれはあくまで"かもしれない"の域を出ない。
「情報は図書館や酒場、街角なんかで集めればいいんじゃないかな。手伝ってほしいなら僕も僕の情報網を使って手伝ってあげる。僕の情報網は精度は高いけど、多くの情報は収集できないと思う」
 彼はそう言って、にっこりと微笑む。
「ま、頑張ってよ。君たちなら大丈夫だろうけど、失敗したら斬っちゃうからね」
 何でもない口調のままそう告げた彼の瞳は、本気であることを示す光でイレギュラーズたちを見つめていた。

GMコメント

初めまして。久部ありん(キューブ・アリン)と申します。
ご閲覧いただきまして、ありがとうございます。
今回は戦闘職の方以外でもお楽しみいただける怪物退治の依頼です。
以下に情報を開示いたしますので、ご確認ください。

●依頼達成条件
・吸血鬼を退治すること

●吸血鬼
・OPの通り、月の明るい夜に街に出没します。
 それ以外のことはわかっていません。
・収集した情報量や正確さによって強さが変動します。
 情報がゼロでも倒せない相手ではありませんが、それなりに苦戦することでしょう。
 情報をうまく集めることが出来た場合、さほど強い相手ではありません。

●情報収集
・図書館で資料を探ってみたり、酒場や街角で聞き込みをしたりしてください。
 もちろん、他の場所で情報収集をしても構いません。
・ひとつの場所につき調べる人数によって精度が上がります。
 例えば、1人で酒場で聞き込みを行うより、
 複数名で酒場で聞き込みを行った方が収集しやすい、といった感じです。
・ヴァンの情報網を使うことも可能ですが、3名以上で頼まないと動こうとしません。
 ただし、彼の情報網を使うことが出来た場合、吸血鬼の攻撃方法が1つ確実に判明します。

以上です。
ご縁がございましたら、なにとぞよろしくお願い申し上げます。

  • 吸血鬼へ至る物語完了
  • GM名久部ありん(休止中)
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年03月27日 21時00分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アルプス・ローダー(p3p000034)
特異運命座標
亘理 義弘(p3p000398)
侠骨の拳
宗高・みつき(p3p001078)
不屈の
河津 下呂左衛門(p3p001569)
武者ガエル
クロウディア・アリッサム(p3p002844)
スニークキラー
十六女 綾女(p3p003203)
毎夜の蝶
ラルフ・ザン・ネセサリー(p3p004095)
我が為に
アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)
大樹の精霊

リプレイ

●探せ
 『二輪』アルプス・ローダー(p3p000034) と『カオスシーカー』ラルフ・ザン・ネセサリー(p3p004095)は図書館に来ていた。もちろん、あの怪異の事件……吸血鬼の事件について調べるためである。
 2人の作業は順調だった。その吸血鬼がどのような種別で、弱点があるのか。それを手際よく調べている。過去にこのような事件がなかったか、あるとすればその怪異事件の号外はないか、そして吸血鬼そのものに対する風土記や個人の研究誌は無いか。
「過去にこのような怪死事件を起こしているなら、何らかの形で"吸血鬼"について記された書物が残っている筈です」
 アルプスとラルフは2人で作業を分担し、適切に資料をあさっていった。
「曖昧な仕事だな」
 ラルフがぽつりと言葉をこぼす。
 今回の依頼、どうにも不明瞭な点が多すぎる。
 それは誰しもが感じていることだった。
 普段ならば、依頼を受ける時点で相手の情報はほぼ手に入っており、それに対して対応をすればよいだけだった。
 けれど今回は勝手が違う。
 情報屋がつかむはずであろう情報を、自ら収集しなくてはならない。
 その曖昧な依頼を受けて、いま、その不自然さをラルフは感じていた。
「……確かヴァン氏は貴族関係者だったしな」
 ラルフが呟きを重ねる。
 そして、調べる対象を変えてみた。
 貴族に対して吸血衝動やそれに関わった事件がないか、資料を検索してみることにした。
 すると、そこからひとつ浮かび上がる事実があった。
「これは……!」
 アルプスが思わず声をあげる。しんとしていた図書館に響いた声に、みなの視線が集まる。慌てて口を塞いだアルプスは、ラルフが見つけた資料をもう一度読み直した。
 それはある新聞記事だった。
 それもズバリ、閑静な街に吸血鬼が現れた、という内容だ。
 しかしその記事の日付は古く、今回の事件とは関係は無さそうだ。
 それでも、その内容は今回の事件と似通っており、その情報は重要なものだった。
 内容としてはこうだ。

 ――月夜の晩、吸血鬼が現れた。
 ――それはやがて、街の自警団によって討伐された。
 ――その際、どんな攻撃もほとんど効果は無かった。
 ――しかし、胸の心臓を一突きすると、動かなくなった。
 ――そしてその吸血鬼の身元を調べると、ある貴族だった。
 ――その貴族は古来より血を求め、さまよう一族であった。
 ――だが、今回の事件でそれに終止符が打たれた。
 ――もう二度と、あのような一族が現れないことを祈る。

「胸を一突きする……」
「貴族の一族……」
 アルプスとラルフが記事を読みながら言葉を落とす。
 重要な情報が手に入った、その実感を得ながら。

 一方、『武者ガエル』河津 下呂左衛門(p3p001569)と十六女 綾女(p3p003203)、『特異運命座標』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)の3名は酒場へと足を運んでいた。
 下呂左衛門はまず官憲がどの程度情報を持っているのか調べたものの、イレギュラーズとローレットの名を出してみても官憲は口を固く閉ざし、あるいは、情報が無いというように、期待する答えの言葉は無かった。
「お疲れさまでござるよ」
 そこで下呂左衛門は仕事終わりを狙って酒場にいる官憲の男に声をかけた。まだ陽は高いというのに、すでにアルコールの入っていた男は、気を良くしてグラスを掲げる仕草をした。
「そういえば、最近は吸血鬼騒動で大変でござるなぁ」
「おお、そうなんだよ。これがまた厄介でさぁ。姿を見たハッキリ見たヤツがいないんだ」
 ひっく、と男はしゃっくりをする。完全に出来上がっているようで、知っている情報をぺらぺらと話した。
 姿を見た者がいない。
 つまり、それほど隠匿性の高い事件ということだろう。
 しかし、それだけでは討伐の足掛かりにはならない。
「よぉ、姉ちゃん。ひとりか?」
「ふふ……そうよ。ご一緒してくださる?」
 綾女がカウンターで一人酒をしていると、ふらふらと男が近寄ってきた。この男も随分アルコールが入ってしまっているようで、顔は赤く染め上げられていた。
 当たり障りのない雑談を楽しんだあと、綾女は不意に瞳の奥に光をたぎらせ男に向かって何気なく言った。
「最近噂になってる吸血鬼の事件、怖いわね」
「なんだぁ、俺に家まで送って欲しいのか?」
「それは遠慮するけれど……」
「そう卑下すんなって。ほら、一緒に帰ってやるよ」
 男が強引に綾女の腕をつかむ。
 これでは情報収集どころではない。
 だが、男がいくら強く力を込めたところで、綾女は動かなかった。
 自分の意志と、やるべきことがここにはある。
 手を払い除けてしまいたいところだが、ここはぐっと我慢した。
 そして、綾女が動かないことを見ると、男はあんがいあっさりとその手を放した。
「ホントに警戒してんだな、アンタ」
「当たり前よ」
 綾女は鼻を鳴らして答える。
 その様子を見て、男はそれまでのふらふらした表情から、一変して真剣な表情に変化した。
「俺、噂なら聞いたことがあるぜ。吸血鬼の周囲には、多数のコウモリが現れるって話だ。だから町中でコウモリを見つけたら気を付けな。それはヤツが出てくる合図みたいなモンだ」
 そう言い残して、男は綾女の前から立ち去った。
 そしてアレクシアは、一足先に酒場を出ていた。
「吸血鬼……? 御伽噺なんかでは出てくるけど本物……かなあ? 何はともあれ、被害が出てるのなら止めないとだ」
 呟きながら、町中を歩いて行く。
 やがて猫を見つけると、そっと疎通を図る。それから、路地裏の雑草にも声をかけてみた。
 そこでアレクシアは情報を得ることとなる。

 ――吸血鬼は存在する。
 ――4匹のコウモリたちを引き連れて。
 ――コウモリを倒さなければ、吸血鬼には触れられない。
 ――早く街の治安を回復して。

 動物や植物から得られた情報は、綾女と同じく、手下が存在しているということだった。
 手下はコウモリ、その数は4匹。
 これらをまず先に倒さなければ、吸血鬼本体には攻撃が届かないということ。
 アレクシアは下呂左衛門と綾女にその情報を分けあたるべく、慌てて酒場へと戻っていった。

 そして、『任侠』亘理 義弘(p3p000398)と『不屈の』宗高・みつき(p3p001078)、『ナイトウォーカー』クロウディア・アリッサム(p3p002844)はある貴族の屋敷へと足を運んでいた。
「吸血鬼でありますか。私のいた世界でも伝説等の逸話の中に存在しておりましたが……果たしてこちらの世界は『本物』なのか、はたまた……」
 クロウディアが呟く。
 召使に通された広間は広く、天井は高くて、足元はなんだかふわふわしていて落ち着かない。
 ソファに座って相手が来るのを待つ。
 するとやがて、ひとりの男が広間へと顔を出した。
 『L.Lの立証者』ヴァン・ルドゥレジィ(p3n000019)だ。
 赤みがかった黒髪を結い上げ、軍服に身をまとった姿は、貴族というよりも騎士のそれだ。
 にこにこ、あるいは、クスクスと笑いながら、彼もまたイレギュラーズたちと対面のソファに腰掛けて足を組んだ。
「で、僕に何の用かな?」
「突然失礼いたします。私はクロウディア・アリッサム。ローレットの依頼の件でお伺いしました」
 クロウディアは丁寧に頭を下げた。
 そのことに好感を抱いたのか、ヴァンも、どうも、と会釈した。
「今回の吸血鬼の件、お前なら情報を持ってるんじゃねぇかと思ってよ。ヴァン、お前の情報網を利用させてほしいんだ」
 義弘は剣呑な、真剣な光を瞳に宿し、ヴァンの方をしっかりと正面から見る。
 ヤクザの自分が言えることではないが、女子供が傷付くのは見たくない。
 そう伝えると、ヴァンは考えるような仕草をした。
「みんなが安心して生活できるよう、お前の力を貸してほしい。頼む!」
 みつきが、ぱん、と両手をあわせて頭を下げる。
 その誠意が伝わったのか、ヴァンは組んでいた足をおろし、自身の右掌を見つめた。
 すると、彼の右手から釘のようなものが生成された。
 木製の釘のようで、形は釘と言ってもよいものか、複雑にねじれている。
 これは彼のギフトだ。
 生成される釘の種類で、吉凶を占うことが出来る。
 今回のそれは、やはり事前準備さえあれば簡単に事をなすことが出来る、という事を示している。
「……いいよ。教えてあげる」
 ヴァンがにっこりと笑った。
 彼から得られた情報はこうだ。

 ――吸血鬼は超音波を使う。
 ――その音波は聞いたものは、老若男女問わず、彼に魅了される。
 ――しかしそれも簡単な話。
 ――耳を塞いでしまえば効果はない。

「僕のところにある情報はこれで全部。どう? 役に立ちそうかな?」
「ええ、ありがとうございます」
 クロウディアは最初のときと同じように、丁寧に頭を下げて礼を告げた。
 得られた情報を脳内で反芻しつつ、3人はソファから立ち上がる。
 そして、ふと。
 扉に手をかけたところで、みつきが振り返る。
 今回依頼に参加したイレギュラーズたちが気になっていたことを、投げかけた。
「今回の依頼主は、ヴァンなのか?」
「うん、そうだよ」
 返答は一瞬だった。
 あっけないくらいに簡単に、なんでもないくらいに簡素に、彼の返答は迷いがなかった。
「どうして……?」
「どうしてって。別に。僕、これでも情報屋だからさ。奇っ怪な事件が起きてるのに見過ごせないよ」
 ヴァンは苦笑する。
 自分がどう思われているのだろう。
 あまり好印象とは言い難い印象を持たれているのだろうか、と考える。
 しかし、この一件はきちんと片付けて貰わなければならない。
 何しろ、依頼を出したのはヴァン自身だ。
「精々頑張ってね。中途半端なことすると、斬っちゃうよ」
 その物騒な言葉を背に、イレギュラーズたちは屋敷を後にした。

●倒せ
 夜。
 月が空の支配者となり、太陽の威厳を殺していた。
 薄暗い路地。しかし灯りが点々と付いていて、月明かりもあるので行動に支障はない。
 そこで、綾女がふらふらと当てども無く歩いている。
 綾女に任された使命は囮だ。
 夜に現れるという吸血鬼をおびき出す。
 情報は充分に得られた。
 図書館で資料を探し、酒場や街角で聞き込みを行い、ヴァンにも頼って得た情報の数々。
 取りこぼした情報も無いだろう。

 ――曰く、手下のコウモリを連れていて、それらを先に倒さなければならない。
 ――曰く、超音波で相手を魅了するが、耳をふさげば防げる。
 ――曰く、胸を一突きすれば容易に殺せる。

 これだけの情報があれば、充分と言える。
「お嬢さん。こんな月夜は危険ですよ」
 長身痩躯の男が、綾女に向かって声をかける。
 綾女が振り返ると、男は優しい面持ちで話を続けた。
「どうです、今宵ひととき、私と甘い時間を――……!?」
 そっと綾女を抱きしめようとしたところで、綾女がばっと地を蹴って距離を取る。
 すると、それを皮切りに傍に潜んでいたイレギュラーズたちがぞろぞろと現れた。
「く……っ!」
 男はばさりとマントを振るう。
 逃げようとしたものの、退路は塞がれていた。
「どうした、吸血鬼。女ひとり誘うことは出来るのに、これだけの数だと尻込みか?」
 義弘が挑発する。任侠の道を生きる者に取って、不義理は絶対に許されない。ましてや力のない女子供が踏みにじられることをただ黙って見ていることは出来ない。
 どうした、吸血鬼よ。
 お前の敵はここにいるんだろうが。
 正面から迎えてみせろ。
 そう警告のように告げてから、義弘は素早い動きで距離を詰める。
 すると、男はマントの中からコウモリを召喚する。
 数は事前に知れていた通り、4匹。
 その内1匹を、義弘のナックルが殴り飛ばす。
 それに合わせて、建物上、男の頭上から下呂左衛門が飛び降りてきた。その勢いに任せて、男に向かって斬りかかる。しかし、男は無傷だった。血を流している様子もない。コウモリがいる限り男に攻撃することはできず、また、出来たとしても通常の攻撃が効かない。必要なのはただひとつ。その心臓を貫くことだ。
 下呂左衛門がコウモリに噛みつかれたことを見て、みつきが素早く回復する。コウモリの攻撃は大したことは無い。こうして回復役にも特化した面々の前では、無駄な攻撃にしかならないだろう。
 クロウディアが鋭い踏み込みの後、コウモリに向かって肉薄戦を繰り広げる。ふらふらと空を飛ぶコウモリに攻撃を与えることは難しかったが、コツさえ掴んでしまえばどうということはない。
 そんなクロウディアがコウモリから受けた些細な傷を、綾女が順当に回復していく。
 そして回復をしている最中、吸血鬼が大きく息を吸い込んでいることに気付き、ラルフが声を張り上げる。
「気を付けろ! 耳をふさげ!」
 全員が一斉に耳をふさぐ。
 するとその直後、ハウリングのような超音波がビリビリとイレギュラーズたちの身体を震わせた。もしもこの超音波を防げていなかったら、全員が魅了状態に陥っていたに違いない。
 一番最初に気付いたこともあり、ラルフが最も早く次の行動を取った。
 ゼロ距離からのコウモリに向かって炎を放つ。火炎の焔に包まれたコウモリは、耳触りの悪い甲高い声をあげて燃えていった。
「吸血鬼には【シルバーバレット】と地球では相場が決まっているんですが……そういう月並みな存在で居て下さいよ、吸血鬼さん!」
 そう叫びながら、アルプスがライフルを構える。男の方を狙おうとしていたが、コウモリがまだ1匹残っている。男を狙った銀の弾丸は、それをかばうように飛んできたコウモリに命中する。コウモリは燃えた紙のようにひらひらとその身を塵として風に流した。
「ぐ……っ。な、ぜ……」
 男はわからなかった。
 なぜ、ここまで自身の攻撃が届かないのか。
 なぜ、ここまで自身の手法を知っているのか。
 なぜ、ここまでして自身を手に掛けるのか――……。
 しかし、その答えは決まっている。
 みながみな、この街の治安を守るため、調査し、聞き込みを行い、貴族に頭を下げた。
 イレギュラーズたちの瞳に曇りはない。
 これもまた、ただ、目の前にある障害を排除したたったひとつの、これっぽっちの案件に過ぎないのだ。
「これで終いにござる」
 コウモリがすべて打ち果てたのを視認して、下呂左衛門が飛び出す。
 そしてその刀は正確に、精密に、男の心臓を貫いた。
 やがて、全てが灰になって、これが男の――吸血鬼と呼ばれた男の最期となった。

●終われ
「無事に終わって何よりだ」
 義弘が煙草に火をつけながら言う。
 これで、怪事件の全部が終わったのだ。
「それにしてもこの世界には興味深い方々が集まったものです」
 クロウディアがしみじみと言った。
 吸血鬼という存在もそうだが、下呂左衛門のようなカエルの姿をしたものも珍しい。
 ちょっと触ってみたい……。そんな視線に気付いたのか、下呂左衛門は笑ってみせた。
 アルプスもそれにつられて笑ってしまった。
 自分も含め、彼、いや、彼女……そのどちらとも言えない存在がこうも揃うと、何やらおかしかったのだ。
「これで、被害を受けた女性にも顔向け出来るな」
 みつきが呟く。それに対して、綾女も大きく頷いた。
「吸血鬼退治は初めてだったわ。お相手をした事ぐらいはあるんだけど……」
 綾女の何気ない言葉に、みつきが、えっ、という顔で振り向いた。
 けれど彼女は微笑むばかりで、それ以上は何も言わなかった。
「悪い夜は終わりさ」
 ラルフが言う。
 そう、この悪夢のような悪い夜は終わったのだ。
 どこか怪しげな昼行灯の貴族、ヴァンの依頼を達成した。
 報酬はきっと弾むことだろう。
 けれどそれ以上に、街の治安を守ったという事実が、イレギュラーズたちの心を満たしていた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき


お疲れさまでした。
この度はご参加いただきありがとうございました。

皆さまの入念な調査により、吸血鬼は無事に倒されました。
きちんと役割分担もされていて、さすがイレギュラーズの皆さまです。
ヴァンもきっとその報告に喜んでいることでしょう。

素敵なひとときをありがとうございました。
次回もご縁がありましたら、ぜひよろしくお願いいたします。

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