シナリオ詳細
眠りの唄
オープニング
●囁くように歌う聖女
この世界には聖女の歌が響いている。
囁くように歌われるその唄は、この世界へ降り立った者全てを眠りへ誘う。それは聖女の本意ではない。
聖女は幼く未熟、故に不安定な状態らしい。けれども聖女はおうたが好きだからと今日も今日とて眠りの唄を囁く。
そんな聖女の歌にはもう一つある特殊効果があった。
「聖女様、おうたをもう少し控えて頂かないと……この世界の民はすべて眠りに堕ちてしまいます」
「どうして……? どうして私のおうたはみんな眠ってしまうの……?」
「私にもわかりませぬ……」
「やだやだ……もっと歌いたいのに……っ!」
「聖女様……」
聖女の唄は実際子供とは思えぬほどに儚く透き通った声。けれどもまだ『心』は込められていない。子供らしい未熟な唄なのだ。だからこそ、だからこそ……
「それにフラダは起きてるじゃない!」
「そうですな……私は何故か眠り堕ちませんでした。ですが聖女様、よく見てください」
「え……?」
「老輩であったはずの私フラダはこのような子どもの姿になっておりますぞ!」
「あ、そう言えば!」
先程から聖女に問いかけていた少年は、実は長年聖女の一族に仕えてきた使用人らしい。
幼い聖女は歌に集中するあまりその事実をすっかり忘れていた。
「聖女様には成長されなければなりません。主に私の為に! 私の! 為に!!」
「フ、フラダには悪いことしてるって思ってるけどっ! でも……成長ってどうしたらいいのっ?」
「それはこれから考えなければなりますまい」
「うぅ……」
見えない先の遠さに聖女はため息をついた。
●
「今日は眠姫……じゃなかった、これはどちらかと言うと眠らせ姫、だったわね」
ポルックスはそう言いながら持っていた本を開く。
「この本の聖女様はおうたの大好きな聖女様。けれど……この聖女様の歌声はとーっても眠くなってしまう歌なの。子守唄には最適よね!」
でもねとポルックスは続ける
「特異運命座標……つまりあなた達に対しては特殊な効果があるみたい。あ、痛かったりとかそういうのではないの、簡単に言うとね……」
──聖女の唄を聞いた特異運命座標は
眠りから目覚めると子どもの姿になっているみたい──
ポルックスの言葉に君達は目を見開いて驚いた。
「あちらの世界の人も子どもの姿の方はいるんだけれど、特異運命座標は確率が高いみたい。……ああでも安心して。その世界を出たら元の姿に戻るみたいだから……。今回のお仕事はそうね……聖女が心を込めて歌えるようにお歌を教えてあげる……とかになるかしらね? あなた達はおうたの先生としてこの世界に降り立つことが出来ると思うわ」
ポルックスは一通り説明をして笑顔を見せる。
「さぁ、あなた達を世界に送るわ! どうかよろしくね!」
- 眠りの唄完了
- NM名月熾
- 種別ライブノベル
- 難易度-
- 冒険終了日時2020年02月17日 22時10分
- 参加人数4/4人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 4 人
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参加者一覧(4人)
リプレイ
●
イレギュラーズはふと気づくとプラダの後ろを歩いていた。前を歩くフラダはとある部屋に辿り着きその扉をノックをする。
「聖女様、聖女様。先生をお呼びしましたぞ」
「ららら……へ? 皆子供じゃない??」
「…………聖女様の歌で子供になってしまわれたのではありませんか!!!!」
「ぇえっ?!」
あれ程お待ち下さいと申し上げましたのに! とフラダは聖女に説教を始める。
イレギュラーズはその光景を見ながら
「お話には聞いておりましたが……ただでさえ、わたしはまだ幼くて、あの方の恋人として相応しいのか、心配ですのに……」
もっと幼くなってしまったら、どうすればいいのでしょうか! と悲しみに暮れるのはいつもより更に幼く見える少女『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)。
「すっげーキレーな歌はさっきから聞こえてくるんだけど……なーんか、足りない気がすんだよなー。それが何なのかは……多分聖女ってぇのに会えばハッキリするかなー?」
フラダの後ろでまだ聖女の姿が見えていないのはこれまたいつもよりも幼くなってしまっている『雲水不住』清水 洸汰(p3p000845)だ。
「ふむ……子供の姿になるか。見た目が変わったとしても中身まで年相応になるわけではなさそうだし特に問題は無いな」
ことを冷静に解釈しうんうんと頷く『凡才の付与術師』回言 世界(p3p007315)も小学生のような見た目。
「うう、なんだか目線が低いです。十代の私でもこの効果なんですから、大人の方はもっと大変ですよね……聖女様のためにも頑張りましょう」
そう意気込む『星さがし』夏川・初季(p3p007835)もまた、小学生のような少女へと成り果てていた。
●
まずはノリア先生から。
(この、もどかしい恋する気持ちを、聖女様にも知っていただければ…聖女様の歌は、きっと、ずっといいものに、なりますの。聖女様は、わたしと、同じくらいの歳ですもの……きっと、まだ早すぎるなんてことは、ないはずですの!)
「…………」
ノリアがそう意気込んでいる中、聖女は彼女を覗き込むようにジッと見ていた。
「どうされましたの?」
さすがのノリアもその視線に気づいて、聖女にそう問いかけてみる。
「私より幼い方だなと思って……?」
「酷いですの!」
「ははは!」
あなたの歌でこんなことになってしまったのに! なんて、そんなことを思いながらも、ノリアは話を一つ聞かせる事にした。
「こほん。わたしが語るのは、わたしの、どうにもできなかった恋心ですの」
憧れて、今すぐにでも傍にゆきたかったのに、そんなことをすれば、嫌われてしまうのではないかと不安になって、遠くから姿を眺めていただけの日々……でも、そのせいで誰かに取られてしまったら嫌で、一文字一文字、恐る恐る文を書きましたの。ノリアがそう語れば聖女は首を傾げた。
「恋って、なんだか大変ね」
私にはわからない感覚だわとつまらなそうに聞く聖女の姿勢に、ノリアは続ける。
「聖女様の歌に、力があるということは
きっと、誰かのために歌うよう、その力が与えられたのでしょう。だとすれば……聖女様が、誰かのために、力を使いたいと、願うこと……それが、聖女様の、歌の力を、もっとも引き出す鍵なのでしょう」
「そうなのかな……」
ノリアの矛盾的な恋心は幼い聖女には難しくて。ならば、と……ノリアは一つ本を取り出す。
「恋は、様々な形がありますの……」
そう微笑みを浮かべながら、ノリアは取り出した本『温かな記憶』のページを捲った。
●
お次は洸汰先生。
「やっほー!オレ、シミズコータ!コータでもコーちゃんでも、大声に定評のある清水クンでも、好きに呼んでくれー!……で、キミの名前はー?」
「え、わ、私の名前なんて初めて聞かれた……えっと……フ、フレア……」
聖女は名前を聞かれたことがなかったらしく、酷く驚いていた。
「フレアか……よし。そしたら、オレと一緒に遊ぼうぜ!」
「え? 遊ぶの?」
「遊びと歌に関係はないだろって? いいからいいから! とりあえず使用人の人も一緒にキャッチボールしようぜ! 道具ならあるから!」
「わ、私もですかな?!」
見ていたフラダが急に話を振られて驚いているのを他所に、洸汰はいいからと三人で遊び始めた。最初は疑問を持っていた二人も、フレアが楽しそうに遊び始めて、そんな彼女をあっという間に笑顔に変えた洸汰にフラダは心を許し始める。
「よしよし! よく笑って、よく遊んだな! じゃあここからは歌の勉強だ!」
「歌のべんきょー?」
「ああ、フレアの歌について考える勉強。フレアの歌は子守唄だろ? 子守唄は、一日の最後に歌う唄だ。いっぱい遊んだ子供や、働いた大人に『よく頑張ったね』『今日はゆっくり休んでね』を伝えるための唄、だとオレは思ってる」
「子守唄の意味なんて……初めて聞いた!」
「フレアの声は、すっごく綺麗で、皆の耳にもすーって入ってくるいい声だ。だけど、そこにちょっと『お疲れ様、ありがとう』ってメッセージを添えれば、もっと皆がフレアの事を好きになる、もっと皆が聞きたくなる、いい唄になる……と思うぜ!」
「そっか……そっか!」
お疲れ様、ありがとうならきっと私でも伝えられるかも! フレアは洸汰の話に目を輝かせた。
「ところで、オレにも歌、教えてくんない? オレも子供達に歌ってやりたいし!」
「うん! いーよ!」
快く頷いたフレアは笑顔を咲かせた。
●
「初めまして、私は夏川・初季と申します。今日はあなたと仲良くなりに来たんですよ」
「初めまして、え? 私と……仲良く……?」
歌の先生じゃないの? と、聖女はきょとんと首を傾げた。聖女はいつも皆を眠らせてしまうから、フラダ以外の人々とはあまり話したことがない。だから初季の言葉はとても驚いたのだ。
「ふふ、いろんなお話をしましょう。あ、動物は好きですか? 猫を呼び出す事も出来ますよ」
「ね、こ? それは?」
「猫を見た事がない……のですか? こういう動物ですよ」
初季はポンとその場に使い魔の猫を召喚する。
「何この生き物! かわいい!」
この世界に人以外の生き物はいない。だからこそ聖女はその未知なる可愛い生き物にすぐさま心を奪われた。
「気に入ってもらえて良かったです!」
聖女は猫に対して恐る恐るだが頭や背中等を撫でては可愛い可愛いと笑顔が溢れた。
「猫さんと戯れながらでもいいので、歌について考えましょうか。ただお歌を歌うのも楽しいですけれど、色々試してみるのもいいんじゃないでしょうか? 例えば……誰かに向けて歌ってみるとか。いつも一緒にいる使用人さんに聞いてもらう為のお歌、とかどうでしょう?」
「フラダの事?」
「そうですそうです。それから私達にお話をするかわりにお歌を聞かせてもらったり」
「お話の代わりに歌う……!」
初季の言葉にその発想はなかったとばかりに聖女は目を見開いた。
「私がもし歌うなら……やっぱりいつもお世話になっている友人や仲間、それからさっきの猫さんに向けて、でしょうか。いつもありがとう、これからもよろしくね……ってお歌が歌えたら素敵だと思いませんか?」
大好きなお歌で素敵な言葉が伝えられたら、きっと楽しいと思います! と伝えると聖女は納得したようにうん! と元気よく頷いた。
●
「あなたは変わった髪飾りね、女の子みたい!」
「はぁ……やっぱカチューシャは取れなかったか……」
子どもの姿になれば……などとほんの少し、ほんの少しだけ世界は期待したが……結果はまぁお察しである。世界は軽く落ち込みながらも直ぐに切りかえて、本題に入ることにした。
「……んで、心を込めて歌う方法か……そりゃ簡単だろ、その歌を好きになればいい。すでに好きなら今以上に…な」
「今以上……?」
簡単という言葉に聖女はきょとんと首を傾げ、世界はそのまま話を続ける。
「例えば歌詞の意味を考えてみたり、好きなフレーズを力を込めて歌ったり…上手である必要は無いんだろ? ならそうやって理解を深めて思いの丈をぶつけるだけでなんとかなるものさ」
「意味を考える……力を込めて歌う……思いの丈をぶつける……」
ううんと考える幼い聖女の様子に、世界は少し苦笑気味に。
「まああれだ…そう言うのってごちゃごちゃ言われてもわかりにくいよな。手本を見せるのが手っ取り早い。……という訳で俺にその歌を教えてくれよ。そして一緒に沢山歌おうぜ。下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるってな」
「なんだか難しくてよくわからないけど……歌うのは好きだから、いーよ! 一緒に歌う!」
聖女の歌は段々に意味を覚え始める。愛と感謝と温かなもの……それをぶつける力。子供ながらに理解しようと吸収し、共に歌い意味を込め始めてみる。
四人の言葉を聞いて、幼聖女フレアはつまらなそうに歌う自分を思い出した。
きっと今日もどこかで誰かが眠ってしまっているのだと、どこか諦めている自分を思い出した。
──気持ちを込める
それだけで世界は変わる事が出来るのかな?
●
聖女は囁くように『歓迎』の唄を歌う。先生に教わった愛、感謝、温かさ、気持ち……それらを込めて意味を大切に歌った。
すると辺りは無数の光に包まれてイレギュラーズ達は混沌での姿に戻っていった。
それはフラダも例外ではない。
「聖女様……こんな短期間で成長されるとは……やれば出来るではございませんか!」
「先生のおかげよ! ……先生、さっきは失礼な事ばっかり言ってごめんなさい! 先生から教わったこの気持ち……それらはとても大切で……こんなにも世界は変わるのね……ん?」
聖女が満面の笑みを浮かべれば、遺跡の外から大勢の声が聞こえる事に気がつく。聖女はその声が気になって、足早で入口に近づき外を覗く。
すると──
「聖女様ーー!!」
「皆!!」
聖女フレアはその光景に崩れ落ちて、糸が切れた様に涙を流した。
成否
成功
状態異常
なし
NMコメント
月熾と言います。
今回は心情やほのぼのとかそんな感じの物語です。
●依頼内容
聖女が歌に心を込められるように教える
●詳細
この世界の聖女は歌が命。
しかし心を込めず歌うと周りを眠らせる
または子どもの姿へと変えてしまうようです。
そこで
あなたならどんな気持ちを込めて歌うか等
思いを書いて頂けたならと思います。
今回は皆さんと相談し合ってと言うのもありかと思います。
聖女と仲良くなって、と言うのもいいかと思います。
●世界観
森と岩に囲まれた遺跡に聖女と使用人が二人。
靴という概念がなく両名とも裸足で歩いている。
聖女の唄は常に世界に響いている為
子どもの姿に変わる事は避ける事ができません。
●聖女について
名前はフレア。十歳。
ですがフラダも『聖女』呼びしている為
彼女に聞かないと知りえないものになります。
幼いが故に未熟でまだまだ使命や決まり事には疎い様子。
露出度の低い踊り子衣装のようなヒラヒラの衣装。
●サンプルプレイング
聖女様に心を込めて歌わせる、か。
少し難しそうな仕事だけど頑張ろう!
まずは聖女様と仲良くなってみようかな?
心を込めて歌う……僕なら友達を思って……とか
誰かの為に歌う……とかかなぁ。
それではご参加、お待ちしております。
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