シナリオ詳細
Dance with Glacier
オープニング
●裏返しの想い
拝啓、グレイシアへ。
おかえりなさい。それから、先日はごめんなさい。
絵本も、お菓子も。とっても嬉しかったわ。
私はまだ素直になることができないから、こうやって手紙を渡すことにしてみたの。
お願いだから氷漬けにして捨てたりしないで頂戴ね。
さて、今日手紙を出したのは、貴方が帰ってきたからお祝いパーティをするつもりなのだけれど、その案内よ。
勿論、ニンゲンやフルールも招いてね。
皆に楽しんでもらいたいと思っているから、貴方も来てね。
というか、貴方が主役よ。来なさい。
フローラより。
●それでも君と踊りたい
「……俺はうまく踊れるだろうか」
グレイシアは鏡台の前で落ち着かない様子で声をあげた。
その周りを飛び交うのは上級妖精たち。
「おや、グレイシア様。
貴方ともあろうお方が珍しく動揺されておりますな」
「フローラと踊るのは久しぶりだからな。
それにフローラは大きくなった。俺が相手でいいのだろうか……」
「良いのです。少なくとも拒絶されてはいないのでしょう?
ならばきっと、心のどこかで望んでいらっしゃるということですよ」
「そうか……」
「ええ、きっとそうでしょう!
フローラ様も年頃の娘ですし、素直になれないのでしょうな。可愛らしいことだ!」
「……はは、そうだな」
ここはブルーム・ブルームの地下に広がる妖精界。
妖精界の中央ともいえるその城──妖精城『フェアリィ・ステラ』では、ダンスパーティが催されようとしていた。
曰く、グレイシアの帰郷祝いとのこと。この世界では王一人に対する愛情が強いため、帰郷ともなれば盛大に祝われるのだ。
企画したのは、なんとあのフローラ。先日まで国を破壊しかねない勢いだったのにここまで落ち着くとは、流石のものである。
「さぁ、できましたぞ。
ダンスホールでのエスコート、お忘れではありませんな?」
「ああ。……行ってくる」
グレイシアは上質なマントを羽織り、眼鏡をくいっと持ち上げ、揃いのブローチを撫でると城の中央──ナイトライトへと向かった。
●祝い事
「皆、御機嫌よう」
カストルはいつもとは異なり端正なスーツを纏って貴方たちを出迎えた。
「今日はダンスパーティにお呼ばれしているんだ。
美味しい物でもあればいいんだけど」
一方のポルックスはわくわくが止まらない様子である。双子とは言うが双子とは似ても似つかないものなのだろうか。
「好きに楽しんでいいみたいだよ。皆も楽しんできてね」
- Dance with Glacier完了
- NM名染
- 種別ライブノベル
- 難易度-
- 冒険終了日時2020年02月23日 22時05分
- 参加人数4/4人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 4 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(4人)
リプレイ
●妖精たちの輪舞曲
舞踏会のその裏で、妖精たちと遊ぶ影がちらほらと。
あぁ、寂しがりで愛されたがりの妖精たちの事だから、きっと君たちを捕まえたら離さないかもしれないけれど。
それでも君たちは妖精と戯れることを選んだのだろう?
ならば、遊んでおくれ。
そして、踊っておくれ!
どうか、この夜が終わらないうちに。
ぼくと、わたしと、踊って頂戴!
●グラスの淵
「おや、君は初めて見る顔だな。
今宵はご参加頂きありがとう。良ければ楽しんでいってくれ」
グレイシアは口の端を持ち上げると、奏多 リーフェ 星宮(p3p008061)とグラスを交わした。
「初めて訪問するけどお誘いありがとうだよ。
うん、今日は楽しませてもらおうかな」
カチャン、グラスとグラスが音を鳴らす。
「この世界に珍しいお酒はあるかな?
もしもよかったらなんだけど、それを飲んでみたくて」
「あぁ、あるぞ。妖精美酒がある。
これは今までの妖精王たちが作った酒でな。俺が作ったものもあるようだ」
「ようだ? 覚えてないの?」
「いや、俺は今日は客人として参加しているんだ。
だから君と立場は変わらないんだ」
くい、と眼鏡を持ち上げたグレイシア。興味深そうに頷いた奏多はグレイシアの作った妖精美酒を選び、飲んでみることに。
「……ん、はっきりしてる味だね。思ったよりも味が濃いのがびっくりだけど」
「グレイシアさまはね~、ぼくらにも厳しいけど、でもやさしいんだよ~!」
「こっちでわたしたちともあそぼう~?」
「こ、こら、お前たち──」
「ふふ、僕でよければいくらでも遊び相手になるよ。
君たちのお気に入りの場所に連れて行ってくれるかな?」
「うん! いっくぞ~!」
「お~!」
「あ、今日はお招きいただきありがとうご──わ、ちょ、早っ!?」
「……はは。ああ、また会おう、奏多」
妖精たちに連れてこられたのは、小さな花畑。
月の光に照らされた其処は、どこか神秘的で美しい。
「ここでね、はなかんむりを作りたいんだ~」
「花冠? ふふ、可愛いね。そうしようか」
「うん! 沢山つくったら交換しようね~!」
「わたしとも交換!」
「勿論。それじゃあ、早速始めようか」
きゃっきゃとはしゃぐ妖精たちの姿を微笑まし気に見つめる奏多。
妖精たちと奏多を、月明かりがだけが優しく見守っていた。
●sweet sweeter sweetest
『凡才の付与術師』回言 世界(p3p007315)は自らグレイシアの元へ向かっていた。
煌びやかな世界には妖精とヒトが入り混じる。そのヒトの中には、顔なじみのイレギュラーズの姿もあった。
グレイシアの姿をその瞳に映した世界は、緊張した面持ちで歩み寄った。
「こんばんは、グレイシア。改めてお帰りってところか」
「あぁ、世界か。こんばんは、先日は情けない姿を見せたな……すまない」
「謝るのは俺の方だ。兄弟喧嘩を止めるためとはいえずいぶん失礼なことをしてしまったことを気にしていてな。許してもらえると助かるんだが……」
「……なら、お互い様ということで」
くす、ははは。
どちらからともなく笑いだす。このような柔らかい雰囲気をみせるグレイシアは珍しく、招待客の中からは感嘆の声が上がった。
「良ければ踊っていくといい。俺はあまりダンスが好きじゃないんだ」
「あいにく俺も令嬢たちの足を踏みつけるのはごめんなんでね。
壁の花ならぬ壁の木にでもなろうか考えていたところだよ」
ふと世界が視界の淵に視線を送ると、そこには馴染みの妖精たちが。
「……ああ、そうだ。この後行きたいところがあるんだ。
じゃあまたな、グレイシア。今度はまたあのお菓子を持ってくる」
「あれはフローラにはよく効いたよ。俺も好きになった。
また頼む。ああ……またな」
グレイシアにひらりと手を振ると世界は小走りで妖精たちの元へ向かう。
「あ、きたきた~!」
「おう、来たぞ。俺を呼んでなかったか?」
「うん、呼んだ~! あそんでほしいな~って思ったんだぁ!」
「ぼくらね、踊りたいんだけど……グレイシアさまに踊らないっていってたもんねえ。
むむむ、どうしようかなぁ」
世界はしばし考え込む。そして閃いた。
「なら、俺の精霊たちと踊ればいいんじゃないか?」
軽快に指を鳴らした世界は、ダンスホールの端で精霊を呼び出した。
「わぁぁ!」
「一緒に踊ろ~~~!」
精霊と妖精が戯れるとは、何たる奇跡であろうか。
この世界に妖精たちがいるのは常だが、しかし精霊とは。
世界が呼びだした精霊たちは、くすくすと笑うと妖精たちの周りを包むように飛び交いだす。
きらきら、きらきら。ふたつの色が折り重なる。妖精たちの声は楽し気に、精霊たちの声は嬉し気に。
重なる二つの声は世界の表情を喜色に染め上げてゆく。
楽し気に踊っている妖精と精霊を見つめ、こんな夜も悪くはないなと思う世界なのであった。
●甘い果実
銀の長髪が揺れる。高い位置──ポニーテールで結われたそれは、一定のリズムを規則正しく刻んでいた。
『闇之雲』武器商人(p3p001107) は、紫のドレスを纏っていた。『壁際の紫陽花』と名付けられたそれは、美しくもどこか妖しい。
たとえば、さらけ出された肩だとか。
たとえば、高めのヒールだとか。
シャン、シャン、と鳴り響くようなアンクレットは、武器商人の妖しさに色気をプラスしている。
(踊れない訳では無いが、我(アタシ)はどちらかというと舞踏会へ送り出す側だし壁の花が似合いであろ。誰かと踊って我(アタシ)の小鳥が拗ねても気の毒だしーー)
「可愛い我(アタシ)の隣人たち、我(アタシ)と遊んでおくれ」
ドレスを纏った武器商人の誘いに、妖精たちはくすくす笑った。
「あはは、銀のフルールへんなの! ぼくらの仲だもん、一緒に遊ぼう~」
「だよ~。せっかくおめかししたんだもん、わたしも遊びたい!」
ふっふん、と得意げに胸を張る妖精。嬉しそうによってきた妖精は、ふわふわと武器商人の周りを飛び回る。武器商人もカラカラと笑い、妖精を迎え入れた。
「何をして遊ぼうか、合体遊びは女王様たちに絶対怒られるから控えるとして……会場に星空を下ろすか、はたまたステップを踏む度に花弁が散る様にでもしようか……。
ああそうだ、ちょうどエヴァーグリーンの旦那が新作の限定菓子を販売したからみんなでお食べよ」
くすり、笑った武器商人の手にはどこからともなくいちご大福の菓子折りが。
「おかしだ!」
「ぼくら、甘いのだあいすき!!」
きゃっきゃと声を上げる妖精たちはその手にある大福を奪い取ろうとわらわらと集まりだす。
「大丈夫、大丈夫。欲しいコみんなに行き渡る様に用意しておくからね」
大福が自立するように世界法則を弄る。大福はもちもちの求肥で包まれていた。妖精たちは飛びついて口にふくむとその瞳を輝かせた。
「ん~~~~~!」
「おいひい~~~~~~~!!」
もちもちの求肥を目いっぱい口に詰め込むと、妖精たちは嬉しそうに瞳を閉じた。恐らくは味わっているのだろう。その表情は真剣だ。
「もちもち。すっごくもちもち」
「それに、あまいちゃろいのが、あまい。したざわりがいいっていうのかな?」
「うんうん。いちごもきらきらで、宝石みたいだ!」
「ね! ぼくこれすき!」
「わたしも!」
小さな羽を沢山動かして、妖精たちは武器商人の周りをくるくる飛び回った。
「あァ、そうかい。それはきっと、作り手も喜ぶだろうねェ」
口角をゆったりと上げれば、銀の髪も微かに揺れる。
大福がぷかぷか浮かぶ不思議な空間が展開されていたが、妖精たちは嬉しそうに大福を口にするのだった。
●トラブルメイカー
「ちょ、ちょまて、俺は依頼で警護と給仕の仕事があるんだが!?」
そう声を上げるのは『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)。自前で用意した鎧もガーゼで包まれた鎌も、今は役に立ちそうにない。
勢いよくサイズの腕を引く妖精たちと、あまり大きさが変わらないのがサイズである。つまりなされるがままなのだ。
「ちょっと引っ張るな!?本当に危ないから引っ張らないでくれ!?」
「やだやだ! 鎌のフルールもこっちで遊ぼー!」
「全く……何して遊ぶんだ?」
「ぼくらね、一緒に踊りたいんだ!」
きらきら、輝くような笑顔で告げられただけならまだ何とかなったかもしれない。しかし彼らは妖精である。
つまり。
サイズの弱点である。鎌を包むガーゼにめいっぱい妖精美酒を吸い込ませて、やっとのところで吸血衝動を抑えれば、ふぅ、とひといき。
「踊り……? あーそうか、まあ俺なら確かに君たちと同じ大きさになれるから、他のフルールと違って一緒に踊れるな……。
わかったから少し離れててくれ……」
十秒たてばあら不思議、妖精たちと同じ大きさのサイズの姿がそこに。
「わぁい! それじゃあ、いっくぞーぅ!」
「ひゃっほー!」
「少しだけだからな……あんまり長時間は俺のコア……げふん、警護と給仕の依頼を長時間ほったらかすのはフルールとして出来ないからな……」
第二楽章、妖精たちの星歌「エトワール」。
もちろん知らない音楽であるが、流れ出す音色に合わせて手を繋いでくるくる飛ぶ。
それだけで楽しんでいる妖精たちの姿は、とても愛らしいものだった。
「はい、終わり、ほら、ほかの子と踊って来い……」
少し疲れた様子でサイズが手をふると、妖精たちはまたね~っ! と飛んで行っていってしまった。
やれやれ、妖精たちは。崩れなかったポーカーフェイスのうちに、サイズはため息を吐いた。
(さてこれで警護に集中……あーうん、しまった、妖精は一人じゃなかったな……これは俺の体力と精神力持つかな……妖精の酒をギリギリまで使って何とか妖精の相手をしきるか……)
もう一度、今度は大きなため息を吐くと、サイズは会場の警備を再開したのだった。
成否
成功
状態異常
なし
NMコメント
お世話になっております、染です。
NMキャンペーンとのことで、一人で連動シナリオ的なものを出してみました。
もう一方の『Dance with Flora』も内容はほぼ変わりませんが、少し異なった点もありますので是非お楽しみくださいませ。
●依頼内容
ダンスパーティに参加する
フローラの企画したダンスパーティ改め晩餐会に参加しましょう。
●晩餐会
【1】ダンスホールで踊る
【2】お酒を飲みまくる
【3】妖精たちと遊ぶ
以上の3つのコースをご用意しています。
大切な方とのひと時を過ごすもよし、妖精美酒を飲むもよし。
遠慮なく楽しみましょう。
同行者がいる場合は愛称を、NPCや同行者に踊りたい相手がいる場合はお名前を記入していただければと。
●注意
ドレスコードに注意しましょう。
正装での参加が推奨されます。
●世界観
魔法世界『ブルーム・ブルーム』。
花と魔法で満ちた世界。魔法で文明が築かれています。
基本的には物理攻撃よりも神秘攻撃がメインの世界です。
また、ファンタジーな世界ですので、妖精やドラゴンなど、ありえない生物がいます。
●NPC
・フローラ(ティターニア)
妖精女王。引き摺るほど長い若草色の髪が特徴。桜色の髪留めが宝物。
エルフのように長い耳を持つ。成長が遅いとはいえ、いつまで経っても凹凸のない身体に悩んでいる。
桜色のドレスを着ている。パーティを満喫している。
・グレイシア
前の妖精王。鋭い目つきと薄氷色の髪が特徴。ガタイがいい。
エルフのように長い耳をもつ。シスコン。眼鏡。
他国の妖精へ外交をしに行っていた。
騎士に近い恰好をしている。緊張気味。
・カナタ
花冠師ギルド『Flowers Flag』のギルドマスター。齢19にしてトップクラスの実力を持つ温厚な青年。
胃薬が手放せないのが最近の悩み。今回も護衛役。
何かあればカナタへ。
●サンプルプレイング
【1】
……踊りたい?
君からそんなことを聞ける日が来るなんて。
勿論、構わないよ。俺は君が望むなら、なんだって。
さぁお手をどうぞ、プリンセス。
今宵ばかりは、この腕の中に。
以上となります。どうぞよろしくお願い致します。
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