PandoraPartyProject

シナリオ詳細

一日使用人

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング



 ドーヴェルニュー家と言えばこの地で知らぬ者はいない名門貴族だ。山の中腹に位置する豪華な屋敷は、遠くの
田畑からもその豪華さがありありと見えるほどだ。だが不思議なことにその屋敷には、一人の主人と数名の使用人しか住んでいないのだ。村人達の話によると、前の主人と夫人が流行り病で亡くなってしまったのだとか。だから、まだ齢十二だった息子が跡を継いだのだ……と


●素直になれない少年

 大きく開かれた硝子窓から一人の少年が青々と生い茂る樫の木をぼうっと眺めていた。陽の光に照らされてキラキラ光るブロンドの髪は、微かに吹くそよ風でふわりふわりと浮き上がっている。真珠のように白く透き通った指先を窓の外にある樫の葉に滑らせて満足そうに微笑んだ
「葉っぱに手が届くようになったってことは、腕が伸びた……つまりは背が高くなったということだな!よしっ、俺は確実に成長しているぞ」
 少年は腕を引っ込め、椅子代わりに座っていた大理石のテーブルから降りた。踵の高いブーツでカツカツと軽快にリズムを刻みながら部屋隅っこに置いてあるローズウッドの本棚の正面に立った。晴れた夜空を硝子玉に描き込んだ様な円らな瞳でぐいっと一番高い棚を見上げると深呼吸を一つ。そして、踵を一生懸命に天井に上げ、華奢な腕を伸ばした。それではダメだと分かると、細い縊れた腰を思いっきり沿ってみる。……暫くの間その態勢でいたが、ようやく諦め、はぁーっと盛大に溜息を吐いた
「やっぱり全然成長してないじゃんか!」
 少年が声を荒げて地団駄を踏むとコンコンと戸をノックする音がしてから、スラリと背の高い男が入ってきた
「坊ちゃま、本当に今日お一人で大丈夫でございますか?」
 シックな執事服に身を包んだ男は心配そうに少年の顔を覗き込んだ
「本当に大丈夫だ!俺を誰だと思っている。ドーヴェルニュー家の主人だぞ」
「ですが……」
「本当の本当に大丈夫なんだって!こんなところにいないでさっさと行けってば!」
 男は不安を拭えないまま深く頭を下げ部屋を出た
「まったく、心配性なヤツだ…………ふん、一人で一日くらい留守番できるっての!」
少年の名は『アダン・エレオノール・ド・トゥール・ドーヴェルニュ』この屋敷の主人であり、神から絶大な美貌を贈られた紛れもない美少年である
アダンは使用人達が出掛けたのを確認し、屋敷の中を駆け回る。誰か残っていてはいけないと、全ての部屋を回った。そして、誰もいないことを確信すると
「うわぁあん!本当に一人になっちゃったよぅ」
 崩れ落ちるように床に手をつき、大粒の涙をぼたぼたと落とした。その悲しみに打ちひしがれている美少年の姿に、美の天使ジョフィエルは大層胸を痛めたとか痛めなかったとか
「一人怖いよ!一人寂しいよ!一人つまんないよ!どうするんだよまったく!なにが、本日使用人共全員が急用で屋敷を離れることになりました。だよ。ちくしょう!…………こうなったら呼んでやる。今日一日だけ新しい使用人を雇ってやる!!」
 そうアダンは決意したのだった

NMコメント

 こんにちは、初めましての方は初めまして美少年っていいですよね!どうも「佐茂助」と申すものです
 二日続けてのオープニング公開です!!書きたい衝動が抑えられませんでした。どうぞよろしくお願いいたします

<今回の目的・目標>
 美少年が屋敷で一人寂しがっているので相手をしてあげてください

『アダン・エレオノール・ド・トゥール・ドーヴェルニュ』……屋敷の主人。現在十四歳。両親を亡くしましたがそれで特別性格がねじ曲がったとかはありません。ただのツンデレ単純怖がりの美少年です。坊ちゃまかアダン様と呼ばれると満足します


<プレイングについて>
 今回何かが起こるとかは特に考えていません。決してサボったとかではありません。「○○が起こるから●●で対処する」や、「料理を作ってあげる」という感じに書いてください。全年齢対象外のものはマスタリングさせていただきますが、爆破ネタとかは喜んで書かせていただきます
 今回は一人寂しい美少年の一日使用人になることなのでどんなことでも構いません

<屋敷の設備>
 大きくて広い厨房、バラの庭園、憧れるバルコニー、ワインセラー等、大抵のものは何でも揃っています。部屋も沢山あります。好きに使ってください


皆さんのご参加お待ちしております!!!!!

  • 一日使用人完了
  • NM名伊与太
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年02月15日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
黒撃
アルメリア・イーグルトン(p3p006810)
緑雷の魔女
茅野・華綾(p3p007676)
折れぬ華
角倉・海華(p3p007805)
水軍少女

リプレイ

●俗な遊び
「で?どんな強盗や暗殺者が敵なの?全員頭部をトマトにしてやるからね!マカセテよ!」
『無影拳』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)は得意げに拳を握り締めた
「な、なんて物騒な! そんな奴らが来られたら困るぞ!」
「えっ?違うの?一日シヨウニンって言えば怪しさバクハツの怪人と戦うために雇われる職業じゃないの?」
「そんな職業あってたまるか! 怖いのなんて嫌だ嫌だ!」
「オカシイな……オレの知っているシヨウニンの仕事と違う」
 イグナートは全力で首を横に振るアダンを不思議そうに見つめ、そうだと人差し指をピンと上げる
「敵が居ないなら来たときに倒せるように身体を鍛えようよアダン様! ゼシュテル式の筋トレを覚えればその辺の山賊くらいは楽勝だよ! 暇なときは時間も潰せるしオススメだよ? ……って、どうかした?」
 意気揚々と話すイグナートにアダンはまた全力を首を横に振る。小さな肩をぶるぶると震わせている。まさに怯えた小動物のように
「オススメなんだけどなぁ……まあ、アダン様がイヤならシカタガナイね」
 そんなアダンを見たイグナートは大層残念そうに肩を落とす
「うぅ、お前、俺が今まで会ってきた人の中で一番怖いぞ……!」
 むすっと頬を膨らませるアダンにイグナートは膝を曲げ視線を合わせる
「そんな顔しなくてもダイジョウブだよ。オレはキゾクのボンボンに悪いことを教えるのは経験者だからね
オレの親友も昔は大人しい生真面目なヤツだったけれど、今ではちょっとヤンチャになって元気にやってるよ」
「や、やっぱりお前なんか怖いぞ……」
 にっこり微笑んでみたが効果はなく、イグナートは「バイオレンスなことは少し早かったかな?」と首を傾げた
「……カードゲームでも覚えるのはどうだろう?」
「それだったら安全そうで面白そうだ! 良いぞ!」
 イグナートの提案にアダンはこくこくと頷いた。アダンの反応にイグナートもうんうん頷く

 トランプに花札、麻雀にサイコロでの博打……イグナートは沢山の俗な遊びをアダンに教えた
「意外とキゾクの間でヤクに立つ可能性もあるんじゃないかな!」
 にっこりと笑うイグナートにアダンもにっこり
「あぁ! これで俺も立派な貴族だ! ありがとうイグナート!」
 楽しそうに笑い合う二人……翌日教えてもらった遊びをしていたら執事に怒られるとは夢にも思わず――


●読書
 『かつての隠者』アルメリア・イーグルトン(p3p006810)の前髪で隠れた瞳の奥には煌びやかな門が写る
「1日使用人ねぇ……使用人なんてやったことないんだけど」
 一抹の不安を抱えながら門をくぐると、家主である今回の依頼人アダンが腕を組みながら扉の前で仁王立ちしている
「相手はほとんど歳の変らない男の子っていうのもなんというかその、ちょっと照れくさいわね……。依頼は依頼だし、がんばるのよ」
 そうアルメリアが意気込んでいると、アダンが踵の高いヒールをカツカツと鳴らしながら近寄ってくる
「俺の名はアダン・エレオノール・ド・トゥール・ドーヴェルニュだ! よろしくな」
アダンはにっと歯を見せて笑う。アルメリアは「凄い名前ね」と内心思いながら
「それじゃあアダン様、今日一日宜しく。――坊ちゃまのほうがいい?」
 と、首を傾げた
「どっちでもいいぞ」
「そう、それじゃあ気分によって変えようかしら?」
「好きにしたらいい」

「ここが広間で、あっちが図書館、それであそこが執事の部屋だぞ」
「図書館もあるのね……広い屋敷」
「まぁな」
 アルメリアが屋敷の広さに驚嘆すると、アダンはふふんと得意げに鼻を鳴らした
「あら、外に何か」
「庭園だな。薔薇が沢山咲いてるぞ」
 ふと硝子窓の外に視線を向けると、そこは美しい薔薇が咲き誇っている庭園だった

 庭園に足を踏み入れると気品高い薔薇の香りがふんわりと辺りに漂っている
「こんなにきれいなお庭があるのね。お坊ちゃま、お茶にしませんか? なんて。ふふっ。ガラじゃないわ。
でもやらない? お茶とお菓子を用意するから」
 アルメリアはアダンの顔を覗き込み微笑んだ。アダンは近づいた女性の笑顔にドキッとしてたじろく
「あら、……私使用人だから、椅子に座ってお茶を飲んだら失格かしら?」
「そんなことは……ない」
 アダンはふいっと視線を逸らすと庭園に備えてある椅子とテーブルの方へ歩いて行った
 アルメリアはふわふわと浮き沈むアダンの美しいブロンドを眺めながら「それにしても顔がいいわ。意外と性格もひねくれてないし、すごく顔がいいわ……。異世界に来たかいがあるというものよ」と、頬を緩めた
「そうだわ、坊ちゃまは普段本とか読むの?」
「本……? 読まない。あんな文字ばっかりの読んで何が楽しいんだ」
「ふふ、私は読むのよ。普段は本を読んでばかり」
「ふぅん、お前って変なヤツだな」
「そうかしら? それでね、さっき図書館で見つけてきた本を一緒に読まない?」
 アルメリアは一冊の本をひらひらとさせた。アダンは暫く黙った後に
「お前が読むんだったら……まぁ、聞いてやらなくもないぞ」
 アダンの赤く染まった顔を見て、アルメリアはふふと笑い椅子に腰を下ろした――


●スパルタ
 年端のいかぬ少年には広すぎるほどの豪勢な部屋。アダンはベッドの上で両足をぶらぶらとさせていた
「本日、アダン様のお世話を務めさせて頂きます、茅野華綾と申します。不束者で御座いますが、何卒宜しくお願い致します」
 軍服に身を包んでいる『折れぬ華』茅野・華綾(p3p007676)が深々と頭を下げた
「そういうのいいよ。それよりもそんな服着てたら動きずらくない? 着替えてきなよ」
 アダンは微笑み華綾をメイド用の更衣室に案内した
「俺は部屋に戻るから、ゆっくり着替えてていいよ」
 更衣室に入ると所謂メイド服という黒ベース白エプロンの衣装がハンガーにぶら下がっている
「はて、この給仕服……冥土服と呼ぶので御座いますか? 成程! 異国における奉公人の装いは、冥土の果てに至るまで主に尽くすという覚悟を示すものなので御座いますね!」
 着替え終わった華綾は両手をぽんと叩いた

 バーン!
 華綾は扉を思いっきりアダンの部屋の開く
「アダン様! 鍛錬のお時間で御座いまする!」
「え? いきなりなんするんだ!」
 豆鉄砲を食った鳩のような顔をしているアダンに華綾は構わず木刀を差し出す
「さあ! この木刀をお持ちになって!」
「い、嫌だ! なんかすっごい危なさそう!」
「おや、何故下がられるので御座いまするか? 貴方様はいずれ父君の後を継がれるお方!家を背負うというには、強くなければいけませぬ! さぁ、お立ち下さい、アダン様! 一日限りで御座いまするが、不肖この華綾!祖国鳳圏式地獄極楽超鍛錬にてアダン様を立派な男児に鍛えてみせましょうとも! さぁ! お外へ! さぁさぁ!!」
「い、いやだぁあ!」
 華綾は嫌がるアダンをぐいぐいと無理矢理外に連れ出しみっちり鍛錬させる。なんというスパルタ。これでは立派な美少年が立派な屈強男子になってしまう
「アダン様もっと腕を上げて!」
「この、鬼! 悪魔! 人でなし!」
「口を動かさず腕を動かしなさい!」
「は、はい!」

 そして暫く……かなりの時間が経った
「アダン様、お疲れ様で御座います」
「はぁ、やっとこの地獄から解放された」
 すっかり疲れたアダンは草むらの上にどさっと倒れた
「ふふ、恐れず挑んでくるその意気、素晴らしいもので御座いました。ですが、そんなところに寝転んでおりますと風邪を……あぁ、もう、動く気が御座いませんね? でしたら、せめてわたくしの膝にお頭をお預けくださいませ」
 アダンはぐったりとしたまま華綾の膝に頭を乗せた
「ふふ、風邪が気持ち良う御座いますね……あら、もうお休みに」
 微笑む華綾の膝の上ではもうアダンは深い眠りに落ちていた
「わたくしが貴方様にお仕えしたのはほんの一時、泡沫の物語では御座いますが……遠き地で、貴方様が立派に育つ事を祈っておりますよ」
 華綾は空を仰いだ。青く澄み渡った空には白い雲がふわふわと漂っていた――


●平和な一日
 『水軍少女』角倉・海華(p3p007805)の目の前には絹のようにさらさらとしたブロンドを垂らすアダンが葡萄酒色の椅子に足を組んで座っている
「ふぉぉ、ずいぶんと美少年なご主人様っスね……!」
 優雅に振舞うアダンの姿を見て、海華は浅く息を吐いた
「このお年で館の主人なんだからしっかりした立派な方なんだろうけど……どんな人だってやっぱり一人は寂しいっスよね。少しでも、アダン様の寂しさを癒すためにも精一杯頑張るっスよ!」
 そう意気込むと、海華は屋敷の厨房に足を運んだ
「寂しい時はを美味しいものや少量の甘いものを食べるのもいいって聞いたことがあるっスね……」
 海華は棚から材料を取り出し、お菓子を作り始める
 小麦粉と砂糖と卵とバターとベーキングパウダー……分量が違うのを二つ作り、片方にはチョコチップをパラパラと。もう片方は、鉄板に乗せてからドライフルーツを散りばめる
 数分後、甘い匂いが屋敷中を漂った
 完成したのはカップケーキとクッキー。紅茶を入れてから海華はアダンの部屋に向かった

「ども! アダン様! お菓子とお茶をお持ちしましたっス! ちょっとティータイムにしないっスか?」
 海華は扉をノックし、アダンの部屋に入る。両手で持つトレーの上には美味しそうなお菓子と紅茶
「ティータイムか? もちろんだ」
 アダンは甘い香りにつられ海華の傍に駆け寄る
「そこのテーブルに置いてくれ」
 海華はアダンが指さしたテーブルにトレーを置き椅子に腰かける
「これは美味しそうだな!」
「へへ、料理は得意分野っスからね!」
 にっこりと笑う海華を見てアダンも自然と笑みがこぼれた
「それじゃあ頂くぞ!」
 何もない日、美味しいお菓子と紅茶でアダンは幸せで満たされていた――

成否

成功

状態異常

なし

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