シナリオ詳細
王の墓所
オープニング
⚫新発見
森の中、整備された道から逸れた場所で、それはひっそりの朽ち果てていた。
崩れかけた入り口のある、小さな遺跡だ。
と言ってもそれほど広くも無く、作られた目的も解らず、適当に調べ尽くされ荒らされた後のそれは、入っても特に何もない。
だと言うのに。
「ねーぇ兄貴、ここにゃなーんもありゃしませんって」
「るっせぇぞタコ、やる気ねぇ調査なんか信用できるか!」
二人組の男が、内部を熱心に探っていた。どうでもいい話だが、タコとは彼の名前であり蔑称ではない事を補足しておく。
さておき。
彼らは、壁を隅から隅まで触り、床を丁寧に叩き、仕掛けが無いかを探している。
「ある……絶対にここにはなんかある……!」
何が彼をそこまで駆り立てるのか。
それはわからなーー
「なんか見つけたって、愛想尽かした奥さんは帰ってきやしねーって……」
結構浅ましかった。
「ばっ、おめ……はー?ちげーし?あんな黒髪ロングの似合うちょっとキツ目女子の事なんてかんけーないし?俺は学術的見地から興味を持ってここにだな……」
「はいはい……あれ、ここなんかありますよ?」
みっともない言い訳を遮って、タコがなにかを発見する。
瓦礫に埋もれ、めくれかけた石畳の奥に、風の通る道があったのだ。
「でかしタコ!こりゃ隠し通路だぜ、お宝があるにちげぇねぇ……!」
勇んで掘り始めた彼らはやがて、大きな下り階段への道を見つける。その先に金銀煌めく財宝を求めて、足を踏み入れた。
しかし。
「兄貴……」
「なんだ」
「ここ、ヤバそうっす」
「せやな」
辿り着いたのは、とてつもなく広い空間だった。
長い年月を世界から隔絶されていた地下であるはずのその空間は、壁や天井や床に埋め込まれた不思議な鉱石に照らされて明るく、長方形に伸びている。
柱も無く、どう支えられているかも不明な空間だった。
不気味だ。
それでも、ここまで来た苦労を無為には出来ない。
恐る恐る歩みを進めた二人は、その奥で、この場所の真の意味を悟る。
「こりゃ、墓所じゃねえか……」
古びて尚、威厳の残る玉座と、そこに腰かける人形の白骨。
風化してはいるが、残った衣類はかなりの上物だったであろう。なにより、
「兄貴、兄貴。あの王冠、めっっっ、ちゃ高そう」
頭蓋に乗る、宝石だらけの目映い冠が目立つ。
かなりの値打ちものだ。
「こいつを持って帰りゃ、俺も……」
震える手で、それを掴もうと手を伸ばした。そのとき。
『王ノ寝所ヲ荒ラス事』
音がする。
『王ノ遺産ニ触レル事』
それは、玉座の左右に控える者達。
『何人デアレ、許サヌ』
漆黒の鎧に包まれた騎士から出るものだ。
『裁キヲ』
「う、お、うわああああ!」
反響する悲鳴が、その空間に充ちた。
⚫と、いうわけで
「興味深いね」
ギルド内でそんな話をした『黒猫の』ショウ(p3n000005)は、含みを持った笑みでそう言った。
「その、遺跡に行った二人組は、その後……」
上がる質問に、ふっ、と笑みを消した彼は静かに頷き、
「逃げて元嫁に泣きついた所をぶん殴られたそうだ」
「元気だなオイ」
入るツッコミに「まあまあ」となだめた彼は、一息を入れてイレギュラーズを見る。
「正式な依頼だ。墓所を守る騎士を、排除してほしい」
今回の発見で、宝好きの貴族や古物好きの貴族が身を乗り出したらしく、最近活発なギルドにお株が回ってきた。そういうことらしい。
「情報は?」
そう聞かれたショウの顔は渋い。
「正直な所、多くはわからない。騎士と言っても、その実はゴーレムの近いものらしい事、全身を黒く分厚い鎧で守られていること、それぞれが巨大な剣を持つらしいこと……それくらいだ」
それだけ?と声が上がるが、それだけである。
なにせろくな調査も無く、新発見された所へ行けというのだ。情報の物足りなさはどうしようもない。
「全長4m程の騎士、数は4体。この図体と巨大な武器だ。ただの剣振りだってどこまで範囲があるのかわからない」
遠距離攻撃も持ち合わせている可能性もある。
「倒すとなると、工夫やその場の判断が重要か」
「その通り」
数々の依頼をこなしてきたイレギュラーズならば、その辺りも上手くこなせるだろう。
そういう判断だ。
「ただまあ、無理はしないでくれ。命あってのイレギュラーズだ。よろしくな」
- 王の墓所完了
- GM名ユズキ
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2018年03月28日 22時00分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
⚫踏み入る
依頼があった墓所へ向け、イレギュラーズは大階段を降りていた。
コツン、コツンという足音が不規則に鳴り、磨き上げられた壁面に反響する。
「うーん」
静かに下る中、『狐狸霧中』最上・C・狐耶(p3p004837)が小さく唸った。
ポニーテールに結い上げた白髪を揺らしながら、うん。と一人頷く。
墓荒しですね、これ。
どう考えても、迎え打つあちらは正義で、無遠慮に踏み荒らすこちらが悪だ。
「やだなーもー」
とはいえ、これも仕事だ。
サッ、と切り替え、遠慮なくぶちのめさせてもらいましょう、と狐耶は思う。
悼まれるべき死者の世界へと踏み入る罪悪感は、彼女だけのものではない。
『悪辣なる癒し手』マリア(p3p001199)は、その最たるメンバーだった。
常に浮かべる柔和な笑みは、今回に限れば暗く翳りが見える。
「せっかく眠っていた方を暴くなんてー……神を冒涜する所業ですのー」
しかも目的は、埋葬に捧げられた宝物だ。墓をなんだと思っているのかと、微かな憤りすら覚える。
でも。
「ああ、でも……」
依頼を受けた自分も、同類かもしれない。
そういう苦しさを胸に抱きながらもマリアは、
「せめてお祈りだけでもさせてもらいますのー……!」
と、決意を新たに前を見据える。
そんな葛藤を、後ろを歩いていた『浄謐たるセルリアン・ブルー』如月 ユウ(p3p000205)が見ていた。
落ち着いた雰囲気を持つ彼女も、この依頼に思うところが無いわけではない。
それでも足取りが揺るがないのは、単純に、彼女の中で優先するものが定まっているからだろう。
それはつまり、過去に生きていた者ではなく、今を生きる者の為の戦いだ。
「財宝目当ての犠牲者が出る前に、撃破するしかないわよね」
「少し気は引けるけどね!」
ユウの声に、横合いから顔を覗かせて答えたのは、『竜騎夢見る兎娘』ミーティア・リーグリース(p3p000495)だった。
長い兎耳を歩く動きに合わせて揺らす彼女は、にこやかな表情をパッと引き締める。
「これもお仕事だからね、頑張らなくちゃ!」
言って、階段の先を見つめる。不思議に光る床が、そこには見えていた。
⚫墓所での蛮行
広い空間の奥には、情報通りの玉座があった。
堂々と座る白骨と、それを守るために横並びした四体の騎士も見える。
横幅を分割するように、等間隔を開けて前に並ぶ騎士達は、剣の切っ先を地面に当て、柄を両手で握りながら待機していた。
「奇襲を狙えそうでござるな」
戦場を見渡して一言、『ダークネス †侍† ブレイド』Masha・Merkulov(p3p002245)が頷きながら言う。
その言葉に反応したのは、コリーヌ=P=カーペンター(p3p003445)だった。
「本当に全部壊さなきゃダメ?」
自動防衛が搭載されたゴーレム、その仕組み。鍛冶屋の娘に生まれ、鍛冶で食っていくべしと育った彼女は、それがとても気になるようだ。
「いやまあ壊す依頼でござるしな!」
「そっかー、勿体ないなー」
惜しむ感情はさておき。
「お墓で暴れるって、ちょっと申し訳ないなって思っちゃうね」
七色の頭髪を持つ『Hydrangea』紫・陽花(p3p002749)が、そんな事を言う。
躊躇いを思わせるその言葉にはしかし、好奇心が滲んでいて。
「でも、宝物があるって聴くと」
ワクワクしちゃうよね。
と、そう続けるのだった。
「話はそこまでだ、未起動の手筈通り、始めよう」
『堕眠』モルフェウス・エベノス(p3p001170)が、静かな口調で声を作る。
敵の配置と、接近による起動を考慮し、適切な先制を考えると、
「巻き込んで撃つのは無理か」
貫通する魔法で一気に、とは叶いそうもない。そう思い、モルフェウスは位置に付いた。
彼女が立つのは、超距離である入り口だ。その隣にはMashaが並び、魔術書を開いている。
そして、前線を担う狐耶と陽花、ミーティアの三人は、いつでも接近戦を仕掛けられるよう武器に手を掛けてその時を待つ。
中・遠を受け持つユウとコリーヌはその二組の間に位置取り、回復役のマリアも準備を済ませている。
「じゃあ、はじめよっか」
両手に構えたガトリングの銃口を、そびえ立つ重騎士に向け、コリーヌが仲間の顔を見渡した。
その視線を受けて一人が頷き、二人、三人と増える共通認識が広まった後、
「撃ち抜こう」
モルフェウスとMashaが両手を前に、魔方陣を展開する。
高まる力が陣に行き渡り、形成される二つの球体は、高密度の魔力の塊だ。
「――ッ、騎士が動き出したよ!?」
ミーティアの声に目を向けると、先制を決める前に、四体の騎士が伏せていた顔を上げ、順手に握り直した剣を構え始めていた。
「接近以外の起動条件が、何かあったようだね」
「まさか……拙者らの魔力に反応したでござるか!!」
一斉起動を果たした騎士の顔が、イレギュラーズを捉える。
鈍重な一歩をバラバラに踏み、侵入者を排除すべく動く。
そこへ、
「初動はこちらが先だ、撃つよ」
モルフェウスの一撃が、空気を焼きながら放たれた。
一直線に行く光は、敵を透過するように貫く。漆黒の鎧を焦げ剥がし、石の肌を露出させたその一体へ、後衛組が集中攻撃を行う。
「私も続くよ」
ガトリングから火を吹かせ、コリーヌが狙うのは剥き出した石肌だ。反動でブレる射線を巧みに修正し、絶える事ない銃撃の嵐で掘削する。
「これで一体削りきれると嬉しいなーっ、て、そうはいかないか」
「どうかしら」
弾幕に押される騎士へと歩を進めるユウは、自身へ神秘の充填を行う。
そうして作り出した魔力を手のひらに溢れさせ、適切な間合いから一気に放出した。
『――オオ』
着弾点から土煙を上げながら、人工的な声が音を作るのを彼女は聞く。
「流石に硬いわね」
晴れていく煙の後に見えるのは、ヒビが蜘蛛の巣状に広がった鎧の表面だ。
決定打には、遠い。
「ならば!」
と、戦場を突っ切る様に術式砲撃を放ったMashaの狙いは、膝の関節部だった。
巨体を支える大事な部分、そこにかかる負担を思えば、効果はあると踏んだのだ。だって重量級だし。
うん。
拙者もヒザ痛いし!
とは、本人の談。
「――!」
膝への着弾と共に、騎士の足が折れる。
崩れる様に見えるその挙動はしかし、すぐに違うと気づいた。
「まずい、離れて!」
誰の警告か、判断する余裕もなくソレが来る。
曲げた足を伸ばし、地面を蹴った騎士が跳ぶ。剣を大きく振りかぶり、降りてくるのは、後衛の前だ。
着地の直前から、捻りを加えられた巨剣は、暴風の様な威力で横薙ぎされる。
「あれは痛そうです」
横目でそんな襲撃をチラ見して呟く狐耶だが、彼女の立ち回りも余裕があるわけではない。
後衛へ近付けさせない為、各個撃破の為に、残り三体のうちの一体をマークしているわけだが。
大きく振り回される敵の武器は、掻い潜る狐耶の体に圧力を与えていた。
「困り者です」
言いつつ背後へ回り、身に付けた巫術で攻撃する。
回避に長けているとはいえ、何度も続けていられる戦い方ではない。
「じり貧かもしれないね」
そう陽花は思う。
魔法の様な光を蓄える敵の剣を見て、狙いを引き付けながら壁が背になる様な位置取りをする。
そうして放たれる弧を描いた白刃を全力で避けると、目に掛かる紫色に変色した前髪を指で払った。
そして前衛最後の一人、ミーティアの立ち回りは、守りに軸をおいたものだ。
相対する騎士の動きは、他と違い小さく細かい。大振りではない分避けにくいが、威力も抑えられているという判断からだ。
だから、ミーティアは構えた盾で剣を受ける。
「後ろへは、通さないよ!」
勇んで受け持ったはいいが、しかし。
「一撃が重い……」
盾越しに伝わる衝撃に、手は痺れて感覚が喪失しそうになる。
なにか対策を、と。
そう思った時に浮かぶのは、墓所の主である白骨を盾にする事だ。
「試して、みよっか……!」
●四苦八苦
「これは大変、ですのー……」
ただ一人、回復を任されたマリアは目まぐるしい活動を余儀なくされた。
騎士による飛び込みの範囲攻撃で、後衛組で無傷の者はいない。また、前衛組は騎士を相手に一対一の相対を選んでいるのだ。
いくらパンドラがあるとはいえ、それは最後の手段であって安全機能ではない。
故に、マリアはダメージの大きい者から順番に、回復魔術を飛ばすしかなかった。
「これ以上は、削らせませんのー……!」
幸いだったのは、騎士達に思考がなかったことだ。
回復役から潰す、という、考える力があれば定石とも言える行動は無く、敵対する者だけを攻撃するという意思だけが見える。
「ボクはいい、マリア。他のみんなを……!」
自分で回復のポーションを使える陽花が、口に液体を流し込んでから這う様に身を屈め、騎士の剣を避ける。
「わかりましたの……!」
ならば、と回復の光を向けるのは、ミーティアだった。
盾で受けた分、消耗があると考えての判断だ。
そうして行う後ろでは、騎士を中心とした砲火が起きていた。
「行くでござるよ!」
言葉と同時に撃ち抜くMashaの狙いは、しつこい程に膝だ。
度重なる攻撃に剥げた鎧から覗くのは、ヒビ割れ始めた球体の関節だった。それが、自重によりピキッパキッと崩れていく。
「続くわ。いいかしら?」
ぱらぱらとページが捲れていくグリモワールの上に、魔力球を形成させるユウが静かに言う。
その魔力を感知した騎士が、膝を庇う動きでそちらへ向き直り、剣を振り上げる。
「じゃあ続こうかな。いいよー」
その隙を逃さずに、背後の死角を取ったコリーヌが、言葉を返した。
それを聞き、ユウは魔力の奔流を騎士の頭部目掛けてぶちこんだ。
『ォ』
膝を前へと折る様にして体勢を崩した騎士は、仰向けに倒れていく。
その落ちてくる背中を、コリーヌは射撃した。
カラカラと多銃身を回して弾丸を連打するガトリングは、攻撃で脆くなった騎士の鎧を砕いて行く。
『オオ――』
叫びなのか、それとも壊れたのか。
漏れ出る声は短く、銃弾が石の肌を貫通する頃には、その騎士は動かなくなっていた。
……思ったより時間、かかったわね。
一息吐く間に、ユウはそう思う。
「うわぁ!?」
と、落ち着く暇など与えないという様に、悲鳴が聞こえる。
それは、盾ごと吹き飛ばされたミーティアから出るものだ。
彼女の小さな身体が宙を回り、地面を球の様に二度、三度と跳ねて転がっていく。
震える四肢に力を込め、回復の甲斐無く底を尽きた体力をパンドラを用いて呼び覚ます。
そうして体を起こすが、騎士は止めの追撃を構えていた。
「このまま、倒れてられないのに……」
と、悔しそうに振り上げられる剣を見上げ、
「いいや、伏せていてくれ」
そう背後から掛けられる言葉を理解するより早く、ミーティアは地に張り付くが如く五体を沈めた。
と、同時。
「気を付けてね」
警告と共に、光りが行く。
それは、モルフェウスの砲撃だ。
ミーティアを狙っていた騎士はもちろん、射線上に位置していた残り二体の騎士を巻き込む様にして、高火力の魔法がぶちこまれる。
「うん、ちゃん撃ち抜けたね」
ぐらり、と、三騎士の体が揺れる。
ミーティアを狙って上段にあった剣は力無く落ち、切っ先が地面を潰して埋まった。
「ありがとう、助かったっ」
言いつつ、ミーティアが行く。
敵が下げた剣の背を足場にし、利き手にナイフを握る。
行く。
再起動がするより早く、振り払われるより速くと、柄を握る腕に足を掛けて跳躍。
「長い間」
鎧の隙間、首の部分へとナイフを差し込み斬り抜けながら、
「ボロボロになるまで、よく頑張ったよ」
頭を落として着地したミーティアは静かに言う。
「もういいんだよ、お休み」
●王の喪失
首を失くした騎士は、しかし、稼働を止めたわけではなかった。
無機物のゴーレムを動かす核は別にあるようで、動きが鈍りはしても、止まらない。
とはいえ、その限界は近い様だ。
身体のあちこちからギチッ、ギチッと噛み合わない駆動部の音が聞こえてくる。
「そろそろ、私も、キツいわけですが」
撃破間近の個体へ、集中攻撃が行われている。
と、言うことは、だ。
陽花と狐耶は、マリアからの回復を受けながら、やはり一人で騎士とやりあう事になる。
回避力に自信がある狐耶といえど、全くの無傷で抑えるのは不可能だ。
だから、彼女は攻撃を止めて守りに専念していた。
「まあなんとかなるでしょう」
そう言っていた依頼前の自分をちょっと恨めしく思いながら、縦と横に連続で振るわれる巨剣を、狐耶は飛び込む様にして掻い潜る。
そうして着地した、その時。
「こ、こっちを見るでござる騎士諸君!」
高低の音域が広いほら貝を鳴らし、響きの後にMashaが大声を上げていた。
そこは、白骨の休む玉座の前。
騎士が守るべき主君の前だ。
注意を引き、主を盾に攻撃を鈍らせる。そんな意図で取った行動は、半分成功した。
『王ヨ』
『我ラノ、王ヨ』
集中攻撃でいつのまにか沈んだ騎士を除き、残存する二体の騎士はMashaへ向き直る。
「ふふーん。守るべき王様を、攻撃できるかなー?」
その動きを見たコリーヌが、作戦の成功を予感して動く。
他のイレギュラーズもその隙にと続くが、騎士の行動は予想とは別の物だった。
「あ、あれあれ? なんで剣をこちらに向けるでござるか……?」
雷光を思わせる光りを溢れさせる二体の剣は、なんの躊躇いも無くMashaを狙い、玉座をぶち壊す。
「な……なんてことを、するのでしょうー……!?」
守るはずの王を消し飛ばす等、騎士のすることではない。なにより、その一撃は死者を気にもかけない蛮行だ。
「ゴーレムにそんな思考能力はない、か」
愕然とするマリアとは違い、陽花は冷静にそう分析する。
汗なのか怪我なのか、額から落ちる透き通る滴を手で払い、白くなっていた髪を平時のそれに戻すと、銃口を騎士へ。
「けれど、これはチャンスです。こやっと畳み掛けましょーか」
狐耶の言葉に、ミーティア以外の全員が頷いた。
そうして、回復手のマリアを除く6人が、損傷の多い騎士へ向かって一斉攻撃を始める。
玉座を向いて、硬直が解けずに立ち尽くすその騎士は、殺到した攻撃に崩れ落ちるのだった。
●終着と戦利品
「っはー! 死ぬかと思ったでござるな……!」
ガラガラと瓦礫を押し退けて出てきたMashaは、周りを見る。
……戦闘は、どうなったでござろうか。
一瞬、意識を失っていた気がするし、立ち上がれたのはパンドラのお陰だ。だから、油断無く現状の確認に努める。
「一斉に行こうか」
そう音頭を取ったのは、陽花だ。
言葉と同時に、ミーティアと駆け出していく。
長く相対をしていた二人だ、接近した際の敵が起こす行動パターンの予測は付いている。ので、
「挟み撃ちでいくよっ」
範囲をカバーする横薙ぎの一閃を屈んで回避した二人は、起き上がる動きで左右に跳ぶ。
「じゃあ、私達は前からね」
そうして中距離を開けた空間の先。モルフェウスと狐耶、そしてユウが並び立つ。
同時発射された三条の光が真っ直ぐに行き、騎士の体を鎧ごと打ち砕く。
「どれだけの時間、ここを守っていたのかな」
ミーティアが斬り開いた石肌へ、銃身を介して魔力弾を叩き込んだ陽花は呟く。
もちろん、それは誰にもわからない。
「ほら、見てないで決めるよ、マーシャ」
「りょ、了解ですぞっ」
いつの間にか横に来ていたコリーヌに促され、Mashaは術式陣を展開させる。
そして、機銃による弾丸の掃射に合わせ、陣を通して出現させた魔力を一気に撃ち放つ。
『ォ――』
最期の音は、どこか哀しげに聞こえた。
「ああ、申し訳ありませんー……」
戦闘の後、衝撃に吹き飛び、瓦礫に大半を潰された墓所の主を助け出したマリアは、指で十字を切る。
「貴方の忠実なる片達を壊してしまった事にも、謝罪をー……どうか、この場を暴かれても、魂が行き先を見失い彷徨う事がないようにー」
そう、砕けた玉座に祈りを捧げた。
そして、崩壊した玉座の裏手。
「んー、希少金属とか無いかなー」
ひっそりと隠されていた部屋があった。
「サスガニナイトオモウナー」
ギフトのメカに突っ込まれながら、コリーヌはかつて使われていたと思われる歯車式の逸品を掴む。
どこに控えていたのかわからないロバを連れたMashaは、
「こ、これはなんと禍々しいオーラ……!」
見た目呪われていそうな黒いメダリオンを掲げてみていた。
「しばらく鎧は見たくないかも……だから、と」
「私もです。まあ、せっかくの記念に貰ってあげますが」
騎士の核とも言える、小さなひび割れた球体を陽花が。鎧の装飾にあしらわれた幾何学模様の破片を狐耶がそれぞれ手に取った。
「これは、回収しておきましょうか」
仲間から少し離れた位置で物品を見ていたユウが懐へ仕舞ったのは、昔の武器のレプリカだ。現代への転用がしやすいそれを悪用されないための行動だった。
「ま、墓荒しを手伝ったのだから、これくらいはね」
「これは、よさそうな物だ」
渡さない為のユウとは逆に、モルフェウスが選んだのは、貴族に気に入られそうな、渡すのを前提としたものだった。
「私は」
そんな中、ミーティアが手に取るのは、メダルだ。
特殊な形を彫り込まれたそれは、恐らくは王家の紋章なのだろう。
「自己満足だけど、せめて」
改めて弔いを。
そう思い、ローレットへ持ち帰るのだった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
お墓荒らしお疲れ様でした。
お仕事は世知辛いです。
今回はこちらの不手際でリプレイが遅れてしまいました。誠に申し訳ありません。
お持ち帰りいただいたアイテムをどうぞ。
GMコメント
『マスターコメント』
ユズキです。
でかいの一狩り行きましょう。
●依頼達成条件
・騎士ゴーレムの撃破
●目標敵
漆黒の鎧に全身を包まれた騎士型ゴーレム。
身長4m、数は4体。
その体躯に見合った巨剣を持っています。
攻撃方法は横薙ぎに振る、上段から振り下ろす等の他にも、遠距離攻撃や範囲攻撃も予想されます。
●ポイント
情報の少ないエネミーです。
ある程度「こんな攻撃してくるかも」という心構えで挑むといいかもしれません。
もしも倒せたら、ちょっと位お宝をくすねてもバチは当たりません。ほんとです。
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