シナリオ詳細
殺人鬼の絆
オープニング
●
賞金首ガスパー・J・エスメラルドは、子供の頃から銃が大好きだった。夜な夜なこっそりベッドから抜け出しては、父の私室に飾られた猟銃をうっとりと眺める日々を送る程度には。
見た目の格好良さ、手に持った時に感じる確かな重量感、激しくも心地よい銃声。
そして引き金1つで人を簡単に殺せる手軽さ。14回目の誕生日の夜、誕生日プレゼントに渡されたピカピカの猟銃で、両親の顔面を吹き飛ばしたあの素敵な瞬間を、ガスパーは今でも鮮明に覚えている。
人を殺すのは楽しい。特に銃を使った殺人は。ガスパーはその感情に疑問を抱いた事は1度も無いし、これからもきっと無いだろう。
幸いにもガスパーは堅苦しい貴族の家を飛び出し逃亡生活を繰り返す内に、人殺しが大好きな『同好の士』とも巡り合う事が出来た。ガスパーと同じく銃殺が好きだという面々では無かったが、皆で人を殺した夜にはささやかなパーティーを開き、好きな殺し方について語り合う。そんな時間も悪く無かった。
共に生き、共に殺す。そんな暮らしを長い間行ってきた。最早自分達は血縁すら超えた『家族』であると、5人の殺人鬼達は互いに思いあっていた。
ガスパーはもうすぐ、25回目の誕生日を迎えようとしている。その日は景気よく、全員揃ってとある小さな村を襲い、皆殺しにする予定だ。
いつもは我先にと殺しにかかる仲間、家族達だが、その日はなるべく生け捕りにして、ガスパーにトドメを譲ってくれるのだという。温かな心遣いに、ガスパーは思わず涙しそうになった。
「皆がああ言ってくれるんだもんな……僕が下手を打つ訳にはいかない。しっかり銃の手入れと、腕を磨いておかなくちゃ……」
ガスパーは両親からの最期で最高のプレゼントを丁寧に磨きつつ、誕生日に備えていた。
殺戮の宴が開かれるまで、あと僅か。
●
「賞金首ガスパー・J・エスメラルド……エスメラルド家の元貴族にして、多くの人々を銃殺してきた殺人鬼。本人の実力もさる事ながら、同じく人殺しと思われる面々と共に行動している可能性が高く、総合的な危険度はピカイチ……そんな彼らの捕縛、あるいは殺害依頼か……うん、なかなか難儀な仕事になりそうだね」
『硝晶』カルネ(p3n000010)はとある情報屋から仕入れた情報を元に、今回共に仕事を行うイレギュラーズ達に説明を行う。
「彼等人殺しパーティーは、日常的に人殺しをしながら各地を転々としているみたいだ。これまで長い間、中々尻尾を掴む事が出来なかったんだけど……幸運にも今回、現在の奴らの拠点を特定する事が出来たらしい」
だが、その拠点にいつまで人殺し共がいるかは分からない。速やかに彼らを捕縛、あるいは殺害しなければならない。
「彼らは現在、幻想領内のとある森の中にある小さな洞窟を拠点としているみたいだ。ガスパーを含め、殺人鬼は恐らく全部で5人。数ではこちらが勝っているけど、奴らは恐らく全員精鋭。決して油断できる相手では無いよ」
全員精鋭と思われる殺人鬼共だが、その中でもガスパーの戦闘能力は際立って高いと推測されている。精確に急所を狙うガスパーの射撃は、これまで数多くの賞金稼ぎを返り討ちにしてきた。
「だけど、絶対に逃がす訳にはいかないよ。彼らに命を、家族を、恋人を。大切な誰かを奪われた人は数多い。そんな悲劇を二度と起こさせない為にも、絶対に勝たなくちゃいけないんだ……僕も君たちと共に、最後まで戦わせて貰うよ」
- 殺人鬼の絆完了
- GM名YAMIDEITEI
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2018年04月22日 21時15分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●逸脱的社会性
人間にしても獣にしても『同種』に対しての友愛は少なからず持ち合わせるものだ。
全く個を孤立させて生存出来る類の輩ならばいざ知らず、多くの場合、如何に強大な力を持ち合わせていたとしても、そこに存在する以上は何らかのくびき、何らかのしがらみを受けるのは世の常である。獣には獣のルールがあり、そのルールを高度な知性でより発展したものへと変えた人間(に類する生物)は、発展を維持する為にそこに参加する同胞により細々とした制約を架しているのは今更説明する必要すらないだろう。
だが、繰り返そう。
――人間にしても獣にしても『同種』に対しての友愛は少なからず持ち合わせるものだ――
それは確かな事実である。
さりとて、それが『同種』で無ければどうなるか。
時に『同種』であっても働かない事もある、倫理の寄り辺は全く虚ろな期待値そのものだ。
非寛容、暴力、排他、疎外、エトセトラ――古来より景気の悪い言葉が並び続けているのは周知の通りなのである。
「殺人鬼ね。まぁ、人間同士で争おうと俺には関係ない――俺はただ仕事をするだけだ」
然したる感慨も無い『暴牛』Morgux(p3p004514)の言葉は冷たい春の夜の外気よりも尚、冷ややかだった。
「貴族の家に生まれながら……放浪しながら寄った場所で殺人か。ひとでなしの鬼畜外道とはこの事か」
『勇士』ロイ・ベイロード(p3p001240)の言葉に誰かが苦笑した。
彼をはじめとした九人のイレギュラーズに与えられた今夜の任務は『賞金首ガスパー・J・エスメラルド及び彼の四人の仲間――ミズキ、アルベル、ルシア、バーツを殺害ないしは捕縛する事』である。何れも知られたシリアル・キラーである彼等は謂わば社会の毒である。当然ながら秩序を維持する側に立つ――イレギュラーズも含めた――大多数の人間にとっては排除対象であり、とても捨て置け無い存在なのは言うまでもない。
老若男女入り混じったチームに共通性は無く、まさに彼等は『生まれながらにしてそう』だったと言う他は無いのだろう。
しかしながら、特にリーダー格と目されるガスパーの経歴はロイの言う通りまさしく異彩を放っていた。幻想の名家――貴族の家に産まれ落ちた彼は何不自由なく育てられた『銃の好きな少年』だった。彼がピカピカの誕生日プレゼントで愛を注いでくれた両親の顔面を吹っ飛ばしたのは十四の時の出来事で、そこには恐らく何の不満も理由も無かった。
最初の話に戻すならば、人間は『同種』への友愛は持ち合わせても、『異種』へのそれは持ち合わせない事も多いという事。
結局、この事件は全て――その一事のみに集約されると言うしか無いのだろう。
ガスパーは家族を含めた社会を『同種』とは見做さず、そこより『逸脱』した『同種』にのみ愛情を向けている。
『決して愛情を持ち合わせない訳では無く、その対象、その基準が種族でも血縁でも無かったというだけの話なのだ』。
仲間を倒されたら残る者が奮起する何て話――人間的過ぎて、連中が言い出せばまるで冗談か何かのようである。
「まったく、絆なんてものを持つ時点で彼らは鬼にもなれぬただの人です。
私の知る殺人鬼は人を殺す性故に孤独でしたからね――同じ人ならば恐れる程の事も無いでしょう」
「生来の殺人鬼に、家族と慕う仲間たち、か。私にできるのは、彼らによる犠牲者をこれ以上産まないことだけ」
抑揚の少ない声で淡々と言ったヘルモルト・ミーヌス(p3p000167)の言葉は可憐と称するべきいたいけな少女の姿に相反するように酷く乾いていた。一方でメイド服を着たそんな彼女に応えるでも無く、溜息に似た調子で呟いた『戦花』アマリリス(p3p004731)の柳眉は曇っている。
生まれ落ちたネメシスの土地と同じく。神の存在を信じ、神を愛し、絶対の味方だと信じている――
善良なるものを良しとし、悪しきものを倒す事を誓った聖女は、人の善性を疑いたくは無かった。
「まぁ、個人的にはあんまり好みじゃないんすよねぇ」
やや重い調子を見せたアマリリスに比べて退屈気な『双色の血玉髄』ヴェノム・カーネイジ(p3p000285)は別種の溜息を吐いた。
「僕が好き好んで喰い殺すのは『敵』だけっす。余計なモノ多すぎて、こんな殺人鬼気取りの殺人者にゃ欲情できないす。
だからこれは狩りで――めいくまにーって寸法っすよ。お仕事、お仕事」
彼等(いつだつしゃ)が人間を同種と見做さないならば、同じように、付き合う必要は無い。
仲間を気遣う訳では無いが、今夜がお眼鏡に敵わない逸脱者(ヴェノム・カーネイジ)は酷く気楽にそう言った。
「まずは、洞窟近くの見張りを何とかしないといけないようだな。
……こういうのは、何時もは――パティと空牙にやらせていたんだがな」
ロイが呟く。殺人鬼達は洞窟の外に見張りを立てているらしい。
「まぁ、気付かれるのは遅い方がいい。外で一人無力化出来れば幸いだ」
『硝晶』カルネ(p3n000010)が言う通り、成る程、やる事は決まっている。
これよりイレギュラーズは森の洞窟に潜む殺人鬼パーティを強襲する。
問答の無意味な相手ならば、後は腕ずく――止める事が、倒す事が仕事ならば最初からこんなもの是非も無い。
「――ま、ヴェノムの趣味の方は兎も角、だ」
犬歯を剥き出した『聖剣使い』ハロルド(p3p004465)が獰猛に笑った。
「精鋭揃いとは面白い。一先ず相手に不足なしだ。楽しくなりそうじゃないか」
「うんうん! サツジンキさんはつよいっていうから――すぐコワれたりしないよね!」
聖女の加護を受けた勇者の面立ちとは思えない面立ちのハロルドに相槌を打つ『アイのキューピット』ナーガ(p3p000225)の言葉も至極物騒で、
「殺人は良いわよ。パーッと楽しくやりましょう!」
喜色満面を浮かべるアルラウネ――『妖花』ロザリエル・インヘルト(p3p000015)も又、文字通り言葉通りの『人間外(いしゅ)』だった。
逸脱を気取って殺人を繰り返す、人間を同胞と認めない殺人鬼共も今夜ばかりは驚く羽目になるだろう。
自身等がそうして来たのと同じように、別種の連中が狩りをする――それは彼等の理屈の中では『当然』なのかも知れないけれど。
●冒涜的社会性
鼻を鳴らしたヴェノムの口元が三日月に歪む。
黒い群雲に隠れた月の代わりに冴え冴えと――彼女の『嗅覚』は確かに未だ見ぬ敵の存在を捉えていた。
凄惨な夜が始まる。
或いは殺人鬼達が望んだ通りの――それ以上の夜がここにはあった。
イレギュラーズはその戦力をナーガ、カルネ、ロザリエル、ハロルド、ヴェノムの先導チームと、アマリリス、Morgux、ロイ、ヘルモルトの後詰めに分けて夜の森を進軍している。
(出来るだけ気付かれないように)
アマリリスは、イレギュラーズ達は――暗色の衣を纏い、身を低くして接近する。
気配を殺し、殺意を消して――草木の茂みにその身を隠すようにして接近する。
(ひりつく空気じゃねぇか。だが、こっちが一枚上手だぜ――)
ハロルドの持ち合わせる圧倒的な五感は離れた敵の気配までもを掠め取る。
彼が理解する敵の様相に『気付き』の素振りは無く、闇を裂く松明の灯りは暗い森には好都合の目印で――揺らめく光の中に酷く場違いなドレス姿の女(ルシア)が浮かべば、それがターゲットである事を知るのは、パーティの進軍が順調に進んでいる事を理解するのは、余りに容易い仕事だった。
(作戦通りに――仕留めるぞ)
ハロルドの小さな素振りの合図にイレギュラーズは頷いた。
十分な工夫を加え、慎重に大胆に強襲の為の距離を殺したパーティは視線だけで合図を送り合い、『その時』の訪れを測っていた。
改めて言えば、パーティの作戦はまず外で見張りを無力化する事である。
(さて、どうなるか――兎に角、激昂されると面倒だからな)
(防御は考えずに速攻で皆殺……もとい皆半殺しにするわ!
殺したいけど。調子付かせて負けたくないし、油断はなしなのだわ!)
Morguxやロザリエルの考えた通り、パーティの戦術目標は決して早晩敵を殺害する事では無い。『殺人鬼の絆』なる冗談を本当の事にしない為に、彼等は倒す順番も、やり方も予め相談済みである。遠慮なく殺すのは見張りを除いた四番目――つまり、例のガスパーが最初である。もっとも、実戦で不殺がどれだけ機能するかはやり方にもよるのだろうが。
見張りのルシアの視線がパーティの方角から逸れた瞬間――それが始まりの時だった。
弾かれたように動き出したパーティの踏み出しに下生えがガサガサと音を立てる。
時同じくして吹いた風に黒い梢がざわざわと揺れた。
「――!?」
声も無く――振り向いたルシアの視界に複数のイレギュラーズ達が迫っていた。
虚を突かれた彼女が能動的な動作を取るより早く。
「――ッ!」
短く鋭い呼気を吐き出したヘルモルトが敵の動きを阻害するべく多段の牽制を放っている。
果たしてヘルモルトの意図通り――足止を食ったルシアに残るメンバーが猛烈な集中打を加えていく。
獣のような低姿勢でルシアの懐に飛び込んだヴェノムの拳が唸りを上げる。低くくぐもった声を漏らしたルシアの腹にヴェノムの拳がめり込んでいる。
同様に姿勢を乱した彼女を追撃するのはロイだ。
「ククク、闘いを前にすると血が滾る……! ……そんじゃ、楽しもうか?」
自身等がそうであったのと同じように――凶悪な笑みを浮かべたMorguxの蹴りが鋭角に女のこめかみを捉え、彼女はたまらずこれによろめいた。
「粛正と救世の騎士、アマリリス。おして参る!」
裂帛の気合と共に放たれたアマリリスの追撃もまた鋭く、不意を打たれたルシアは強烈な劣勢に立たされていた。
「く……!」
さりとて『精鋭』と称されるルシアは辛うじて猛攻にも倒れない。
頭を軽く振り、咄嗟の混乱から立ち直らんと敵を見据える。
むしろ、不意を打たれ、これだけ攻め立てられたにも関わらず――『落ちなかった』事自体が特筆すべき事実だ。
如何せん、パーティの連携は素晴らしいものだった。全員が相手の生命を奪わない徒手空拳での攻勢を見せた辺り、相手が悪い。
「楽しいでしょう? これも望んだ通りでしょう!」
自由なる攻勢(フリーオフェンス)にロザリエルの小軀が沸き立っていた。
「いいえ、私が望んだ通りなのだわ!」
「ガスパー!」
大いに飛び込んだ少女の蹴りにルシアは危機を知らせんと声を張り上げんとしたが、これは彼女が想像した程の音量にはならなかった。
急激なダメージに体がついていなかった事もあるし、何より。
「させるかよ」
その彼女の自由を奪うべくハロルドが猛然と組み付いた所が大きい。ヘルモルトの牽制をまともに浴びたルシアに本来の素早さは無く、済し崩しに始まった会敵は彼女に自由を許す事無く、再び先んじてイレギュラーズの攻勢をもたらしたのだ。
そして――巨大な影が表情を歪めたルシアの姿を覆い隠す――
「ナーちゃんのアイはムゲンダイ! キミたちのようなサツジンキでも、ひとしくアイしてあげるよ?」
――組み付いたハロルドが離れると同時に、まさに巨木のようなナーガの足がルシアの体を木っ端のように跳ね上げていた。
彼女は良く耐えたが、強烈なこの一撃に流石にその動きを失った。
「――何だ、テメエ等――!」
激しい戦いの気配に遅ればせながらに洞窟から現れた襤褸布の男――恐らくはアルベルが怒鳴り声を上げた。
彼に続くゴスロリ風の衣装を纏った少女(ミズキ)、礼装の老人(バーツ)、そして猟銃を肩にかけたガスパーの姿もあった。
「あら、ステージはここなのね!」
流石に簡単に倒せる見張り(あいて)では無かった。
洞窟内に押し込めば逃走の可能性は消え失せたが、これは止むを得ない所だろう。
「成る程、どうやら狩人さん達みたいだね」
地面に打ち据えられたルシアの姿を横目で確認したガスパーが苦笑する。
「僕の『家族』が世話になったようだね。唯で帰れるとは思わない事だ」
彼我の人数差は二倍――だが、ガスパーに恐れは無く。その瞳には場違いな『義憤』が燃えていた。
「……♪」
ロザリエルはそんな獲物の姿にいよいよ喜色満面を浮かべている。
(――こいつ等、逃げないのだわ!)
やるにせよ、やられるにせよ。『殺人』の望みはきっと等しく叶うだろう。
●破滅的社会性
数分前まで静寂を保っていた森はすっかりその姿を変えていた。
火焔が木々を焼き、赤く火花が爆ぜる。
「木っ端微塵は、いいものですなあ!」
グレネードランチャーを片手に狂笑を浮かべたバーツは辺り構わずイレギュラーズ目掛けてその一撃を放っていた。
凶悪な威力を持つ彼の範囲攻撃はパーティに小さくないダメージを与えていた。
だが、しかし。数に勝るパーティはこの局面で『集中打を加える順番を選べる』という大きなアドバンテージを持ち合わせていた。
「……バーツ!」
ミズキが悲鳴めいた声を上げた。
「今、助け――」
「――仲良しこよしで夢って何とか語ってろ。今回じゃないコンテニュー後の来世でな」
ガスパーを遮るように触腕を振るうのは彼の抑え役とでも言うべきヴェノムだった。
遠近両方に適正を持ち合わせ、イレギュラーズを含めた全員の中で最も腕が立つ彼に対するヴェノムは徹底的な防御をもって対している。
先述の通り数に勝るイレギュラーズ側は、焦る必要がないのだ。一人目(ルシア)を落とせなければ話は少し違ったかも知れないが、流れを掴んだまま離さないパーティは集中攻撃による不殺・各個撃破をこれ以上無く運用出来る状況にある。
「一気に潰せ――!」
「みんな、いっしょにアイしてあげる!」
ハロルドの言葉は苛烈。続くナーガは笑っている。
「そうだな。精々暴れて見せろよ!」
だが、なかなかどうして笑うハロルドはクレバーでもある。
「うん。とっても――タノシイね!」
パーティは勢いで押し切る『短期決戦』を選択しながらも、ハロルドはその立ち回りで『最大ダメージソース』であるナーガに敵の攻撃が向かないよう意識した立ち回りを見せている。本能か理性かはさて置き、戦い慣れている彼ならではといった所だ。
二班の連携も含め、小さな単位でより精緻な動きを心がけるパーティは十分な戦いを展開している。
「各地で、人々を自らの快楽のために殺戮する貴様らは、確実に倒さなくてはいけない。覚悟しておけ!」
「うるさい!」
朗々と声を上げたロイをミズキのハンマーが襲う。
連携を見せたアルベルの刃が彼を抉り、鮮血が迸った。
だが、一方でパーティは殺人鬼達の焦りを肯定するかのように集中攻撃で受けに優れない重火器のバーツを陥落せしめていた。
「攻撃は最大の防御と申し上げましょうか?」
銃器を得手とする相手は懐こそに弱点を持つ――敢えて危険な相手にインファイトを申し込むヘルモルトは至極冷静に、落ち着いたまま構えを取り直しかけ――汗に張り付いた黒い髪を指先で軽く払った。
「その境遇が違えば……騎士あれば、兵士であれば、類稀ない勇者になれたその力。
たらればの話をしても仕方ありませんが――罪には罰を!」
アマリリスとカルネが連携良く次なるターゲット――ミズキを狙う。
「嗚呼、酷い光景だ――僕の家族が、やられていく……!」
その温和な表情を苦痛に歪めたガスパーが嘆き、アルベルも又、ミズキへの攻撃を食い止めんと動くが――最早、彼等は余りに無勢過ぎた。
慟哭のように憤怒を吐き出したガスパーの銃弾がヴェノムを傷付けようとも。
「僕は……僕自身に己の正しさを証明し続けなければならない。だから――」
或いは前世から、否――存在根源そのものから。『しつこさ』を体現したヴェノムは簡単には倒れない。
「――まぁ。寝てる訳にはいかないんすよ。あんたら如きに!」
執拗にガスパーに喰らいつき、あくまで自身のみを相手にしていろと強要する。
次々と崩される仲間達(かぞく)の姿を、その全てを奇しくもガスパーは見ている事しか出来なかったのだ。
これまでの罪への報いのように、彼に相応しい最期だと運命が語っているかのように。
余力を失ったヴェノムに代わりアマリリスがガスパーを受け持った。
「加減はもう、お終いだろ? 喰らえよ――!」
遂にガスパーに仕掛けたMorguxの一撃はこれまでのように不殺を意識した『温い』ものでは有り得ない。
闇炎を纏う大剣は彼が持ち合わせる殺意そのもの。
「私は食べるために人を殺す――論理的で原始的な殺人というものを教えてあげるわ!」
ごちゃごちゃと着飾った殺人鬼をロザリエルは肯定しない。
ナーガの裂けた口が血生臭い『アイ』を幾度目か吐き出したその時に――空を見上げたガスパーは遠い日の事を思い出した。
セピアに焼けた記憶の中。
――撃たれる前の両親は何て言っていたっけ――
自問は胡乱で、月は雲の向こう側。
「ああ――」
それでも何とかガスパーが思い出したや否や。
一瞬後、柘榴のように砕けた頭は永遠に回答を吐き出す術を失っていた。
それで、おしまい。
この殺人鬼が人を殺める事は二度と無い。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
YAMIDEITEIっす。
代筆でした、がこれは私が出したみたいな相性の良さだったかなあと思います。
いやあ、筆も乗って楽しかった。
プレイングも良かったと思います。
称号も出しておきましょう。
代筆につき、大変、お待たせして申し訳ございませんでした。
シナリオ、お疲れ様でした。
GMコメント
のらむです。繰り返される殺人に終止符を打ってきて下さい。
●成功条件
賞金首ガスパーを含む、殺人鬼5人全員の捕縛あるいは殺害
●ロケーション
とある森の中にひっそりと存在する洞窟。殺人鬼達の拠点。入口は狭いが、中は洞窟にしては相当広く、端から端までで45メートル程度。ちょっとした体育館位の広さ。
殺人鬼達が既にいくつも松明を立て掛けているので、意図的に消さない限り内部は照らされている。
狩りに出る時以外は基本的に殺人鬼達は洞窟内部に居るが、24時間常に交代で襲撃を警戒した見張りを立てている。
洞窟外部は草木が生い茂り、巨木がいくつも立っている。だが当然洞窟内部に比べ開けた空間と言える。
行動開始時刻は自由だが、灯りが無い場合夜は洞窟外部で命中回避に-10の補正。洞窟内部に灯りが無い場合昼夜問わず命中回避に-15の補正。
●賞金首ガスパー・J・エスメラルド
根っからの殺人鬼。銃と殺しが大好き。
装っている訳でも無く、常に柔和な表情と優し気な口調を崩さない。殺しの時も。
両親から貰った猟銃(改造済)を武器とした、近遠両方に対応した銃撃戦を得意とする。かなりの実力者。
得意技は精神を集中させ、標的とその周囲の人間の急所を一瞬にして撃ち抜く連続銃撃。
BSを付与する攻撃こそ行わないが、単純に命中、回避、攻撃力の値がとても高い。その中でも命中の値は飛びぬけて高く、狙われれば回避する事は困難。
●その他の殺人鬼達
ガスパー程の戦闘能力は持たないものの、かなりの精鋭。全部で4人。
1人目は人の頭を叩き割るのが大好きなゴスロリ風年齢不詳少女、ミズキ。使用武器はスレッジハンマー。得意技は相手の防御能力を無視する脳天への一撃。
2人目は人を解体するのが大好きなボロ布を纏った男、アルベル。使用武器はハンティングナイフ。得意技は出血を伴う急所への斬撃。
3人目は人が悶え苦しむ姿を見るのが大好きなドレス姿の美女、ルシア。使用武器は鋼線。得意技は全身を締め上げ動きを停滞させる妙技。
4人目は人が粉々に砕け散る様を見るのが大好きな礼装の老人、バーツ。使用武器はグレネードランチャー。得意技は複数人を巻き込み炎上させる派手な爆撃。
●殺人鬼の絆
どう考えても歪んでいますが、彼等5人の殺人鬼の間には固い絆が結ばれています。
その為戦闘中他の殺人鬼が『殺害』された場合、怒りと憎悪に心が満たされ、生き残っている他の殺人鬼は随時攻撃力が上昇します。
気絶等の戦闘不能状態ではこの効果は発動しませんが、【不殺】効果を持たない攻撃でHPを0にした場合、絶対ではありませんが高確率で死亡します。
●同行NPC
カルネが同行します。特に指示が無ければ、本人なりに最善を尽くし皆さんの援護を行います。指示があれば、あまりに無茶な内容で無ければ基本的に従います。
華奢な見た目ですがオールドワンらしく体力は高めです。
以上です。皆様のプレイング、お待ちしております。お気をつけて。
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